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Card Age  作者: しろ
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第二話 様々なスタート

「……ん?」


起きたその時、俺は夜の曇った空を眺めていた。


「なんなんだ、このキモチワルイ液体は…」


何故か背中がべっちょりと何か浸っている。

粘性のある生暖かい液体に浸かるってのはかなり気持ち悪い。


できれば早めにここから抜け出して風呂に入りたいところだけど、動いて何が起こるか分からないからまず、少し整理しよう。


俺は虎春が家に入ったのを確認したところから。あの時は何もなかった。いつもの景色だった。その後俺は歩き始める。そして…歩いている途中で何かカードデッキらしきものを拾って、そのあと刺されて、気を失って…


ん、刺されて?あ、俺刺されたのか。

そーかそーか。んじゃこのキモキモ液体は俺の血、ってことか。


「ん?何で俺死んでないんだ?」


溜まるような量の血を失っているなら、今頃確実に失血でぽっくり行ってるとこなんだが…


俺が頭の上に?を大量に載せているその時、


ウィン


「なんだ?」


暗い路地の中に急に目の前に出現した光に俺は反射で目を細める。

目が慣れてきた頃にしっかりと見てみると、青白いディスプレイが空間に浮かんでいた。


「ガチャ?」


その画面に映っているものは一台のガチャだった。


どこか古臭く、至る所が汚れている。それに背景はくすんだパステルカラーの様な色で、その上には「初心者ボーナス」の文字が深夜のネオンのように光り輝いていた。時間と経費は無かったけど頑張って作った、という風な雰囲気をまとっていた。

「…」


もしこんな得体の知れないガチャを引いたら、俺はもっと危険な目に合うかも知れない。もしかしたら今の『何故か生きている』という状態が無くなってしまうかも知れない。


だけど、この『得体の知れないガチャ』という物はゲーム中毒の俺には魅力的すぎた。それこそ、死への恐怖が気にならなくなる程に。


ガララッ ガララッ


ガチャのハンドルが音を立てて回る。

一回転を少し過ぎた時、ハンドルが止まった。


コレは余談だが、うちの近くにあるアニメキャラのガチャと最近やってるソシャゲのガチャは二回転して出てくるタイプのガチャだ。


ゴトン、コロコロコロ…


すると画面からコロコロと3つのカプセルが出てきた。

カプセルの色は銀色が2つに金色が1つ。


カプセルが浮いた画面から出てくる、という絵面をある程度は不思議に感じたものの、自分が生き返ったという事実を知ってからはこの世の中なんでもありなのかも知れないと思ってかあまり驚きはしなかった。


「…」


俺はそのまま無言でカプセルの上下に手を置き、力を込めて引っ張った。


かポッ


金属製のようにも見えるそのカプセルは、なんとも間の抜けた音を出して開いた。


「!」


俺は驚愕した。

このガチャの中身は何なんだろうか、とワクワクしながら開けたが、入っていた物は軽くそのワクワクを飛び越していった。


カードが入っていたんだ。それも、カード名と絵柄、『効果』と書かれた枠。


これはカードゲーム用のカードなんだ。俺は瞬時に理解した。


次のカプセルも、またその次の金のカプセルも同じようなカードが入っていた。

1つ違うことがあるとするならば、金のカプセルから出てきたカードは、やっぱり金色のカードだった。


「ほう…」


そのカードの出来に、俺は声を漏らすことしかできなかった。


そのカードはどこか金属のような光沢があるような、それでいて自分の手に吸い付くような、まるで最初から自分の体の一部だったかのような、そんな不思議な感覚があった。


そして曲がらない。俺は次にこのことに驚いた。


薄さは本当にただの紙のカードほど。なのに、どれだけ力を加えようともびくともしない。指で弾いてみれば軽いように感じるのだが、もしかするとこの世の何よりも硬い物質でできているのかも知れない。


「『効果』ってなんだ…?」


俺が次に気になったのは、カードの「内容」だった。

こんな得体の知れない強靭さを持つこのカードは、何のために存在するのか。


ただのカードゲーム用ならば、ここまでの硬さは要らないはず。

そこから考えるに、このカードは何か強いエネルギー、またはとても高い価値を持っているのではないかと思われる。


この予測の段階でも只一つだけ、確かに分かることがある。


これはただ”ゲームをプレイするため”に作られた物だ。


それ以上のことは何もない。

そしてこのカード自体の技術力から考えて、かなり高度なゲームであることは確かだろう。


「…ふふふ」


ニヤニヤが止まらない。

久々に楽しめそうな物が自分の前に現れてくれたことに、喜びを隠しきれない。

もしこのゲームに参加できるとするなら、俺は命だろうとなんだろうと賭けることができそうだ。


だが…

俺が生き返ったあとにゲームのカードが出てきたということは…

やれやれ。このゲームには本当に命をかける必要がありそうだな。


入鹿は心の中でため息を吐いたが、その顔にはベッタリと狂喜が張り付いていた。


続く


読んでくれてありがとうございました!

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