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恋愛敗北者

作者: ちゃとらねこ

思いついたので書きました。


どうぞゆるりとお楽しみください。





 高校生活が、もうすぐ終わる。


 クラスのやつらもそれぞれの進路に期待や不安を抱えながら、みんな笑顔だった。


 男子達が馬鹿みたいに、制服のボタンを貰っていってくれるかわいい女子が来ないか〜なんて、冗談めかして笑い合い、女子達は進んだ先でどんな恋愛をしたいか語り合ったりしていた。


 終わりと始まりという真逆の側面を持つ春の、いくらかはやく開き出した桜の花が咲き誇る卒業式の日、僕は、片思いを告白するんだ。





 彼女は、いわゆる幼馴染ってやつだった。小さい頃から一緒に遊んだり、家族ぐるみで仲が良かったり。一番身近な女の子だった。


 昔は仲のいい友達だっ感じてた。


 けど、中学生になってだんだんとかわいくなって、きれいになってきて。ドギマギすることが多くなり、以前より距離を置いてしまうようになった。


 高校生になって前より恋愛に興味が出てきたみたいで、そんな彼女に、モヤモヤとしたよくわからない感情を抱くようになった。


 他の男子と仲良さげに話している。それを見るだけで、心が苦しくなった。





 それが恋なんじゃないかと気づいたのは、2年の夏だった。


 久々にお互いの家族と一緒に、なんと海へ行った。


 贔屓目なしにかわいかった彼女は、そこでナンパに遭遇していた。


 彼女の父が居合わせてくれていたおかげで事なきを得たのだが、その時、ふと思ったんだ。





 盗られたくない。





 その夜から、その感情を一人で噛み締めて、噛み砕いて、やっと理解した。




 彼女のことが好きなんだって。




 ただの独占欲なのかもしれない。けど、それでも、そう理解してしまったら、もうそれ以外だとは思えなくなってしまった。


 そこから、僕は彼女に好かれようといろんな行動を起こした。


 見た目に気を使うようにしたり、周りに今まで以上に親切に接するようにしたり。


 高校生活が終わるまでに、なんとか好きになってもらいたくて、頑張ってみた。やれるだけ、やろうとした。



 でも、彼女の僕を見る目は変わらなかった。


 焦りを覚えつつ、彼女を観察しながらどうにかならないかと考えていたある日、彼女から相談を受けた。


「ちょっと、教えて欲しいことがあるんだけど、さ…」





 ()()()()、だった。



 相手は、僕が高校生になってから最初にできた友人だった。


 僕はその時初めて、嫉妬というものを知った。



 幼馴染の恋が、仲のいいやつへ向かったのが、許せなかった。


 我ながら醜くて、惨めで、愚かしくて、自分が嫌になった。


 応援してあげなきゃ、と必死に言い聞かせながら、僕にわかることを教えていった。


 それでも諦めきれず、嘘であって欲しいと願いながら彼女を観察すれば、よくよく見れば、そいつのことをチラチラと見て、明らかに気にかけていた。



 この時点で、きっと僕の恋は終わっていたんだとは思う。


 でも、現実から目を背けるように自分を磨き、いつかこっちに振り向いてくれるんじゃないかと淡い希望を抱えて、未練がましく色褪せた恋にしがみついたまま、ここまで来てしまった。



 いっそ、バッサリ切り捨てて貰えば、諦めもつくのかもしれない。ふとそう思った僕は、告白をしようと思い至った。


 生まれてこの方、告白なんてしたことがなかった僕は、このときばかりはアニメなんかで告白しているキャラの勇気に尊敬した。僕に、そこまでの勇気はなかった。



 告白のために、ちょっとした約束を取り付けるのさえ一苦労だった。


 緊張しすぎて、卒業式の前日まで言い出せなかった上に、「明日、ちょっと話したいことあるから、時間つくれない?」と聞くだけだったのに、「あ、明日、その、話したいことがあって…」なんて、酷くかっこわるい自分には呆れ返るしかない。


 でも、ここまできた。きてしまった。


 もう引き返せない。


 だから。






「話って何?」



「あの、さ。僕…えっと…」




 テンパるな。深呼吸しろ。


 スゥ〜〜、ハァ〜〜…







「好きです。僕と付き合ってください」







 大真面目な顔して、やっとそんな一言が言えた。





「……」






 どうしたんだろ?黙りこくって、目を見開いて。


 そんなにびっくりするんだ?












「…な〜んて、驚いた?」





「…えっ?」


「嘘告ってやつだよ。もしかして本気にしちゃった?」


「もう〜、びっくりさせないでよ!」


「ごめんごめん、ただ、どんな反応するのかな〜って」


「こんな反応ですよ文句ありますぅ?」


「ごめんて。ほっぺ膨らませるとか、かわいいけど子どもみたいだぞ?…ごめん、この後、用事あるから。またね〜」


「あっ、うん…またね」









 あ〜あ、みっともない。



 逃げることしか、できないなんて。



 これから来るだろう、辛い現実に耐えられなくて、逃げ出してしまうなんて。



 やっぱり、僕は弱っちぃなあ。




 できるだけ冗談みたいに笑って誤魔化したけど、目尻とか口の端とか、震えてなかったかな?


 こんなしょうもない事で、変に気を使わせなくはないし、気づいてなかったらいいな。



 はぁ、やっと、僕の恋が終わらせられた。


 ここからが、僕のスタートだ。







 終わりと始まりの季節。


 こうして、ちっぽけな恋が終わり。


 新しい生活が始まる。



 彼女とは違う進路を選んだんだ、きっとこれからは今まで程関わりはなくなっていくだろう。


 ようやく、僕は再出発するんだ。





 独りごちる僕の頬に雫が伝い、零れ落ちた思いをまだ肌寒い風が攫っていく。



 気づけば桜吹雪になっていて、春の訪れを感じさせた。




 



よろしければ評価・感想等お願いします(_ _)


好評ならひょっとしたら彼女視点とか書くかもしれません。期待しないで待っててくださいませ(_ _;)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 字の空白の取り方が良くて読みやすい [気になる点] 盛り上がりに欠けている。現実性を重視したと言えるかもしれないがあまりにも薄い。敗北者というタイトルならもっと明確に散る様を描写してもらわ…
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