五月編3 生徒会会議
今日も放課後、生徒会会議が始まった。
内容は新部活動について申請内容を確認して許可するか皆で議論する。今回申請来たのは二件だ。その内容を議論して許可するか生徒会で決める。だから会議が必要。
で、例によって私が司会進行役を生徒会長に頼まれた。全く私ばかり頼りにするのは悪い癖。出来れば御門渉に絡んで欲しいのだが、いかせん彼女の興味の対象が私なのが困ったものだ。
しかし、なんとか二人の仲を親密にさせたい。今現在は全く会話すらしてないからな……実に難儀だが私は作戦を遂行するのみだ。
そう、私はホワイトボードの前に立って、人任せに話しを聞いてるだけの少年を睨んだ。
「副会長申請書の内容を順に説明して」
「了解しました。では最初の部活動申請は……ええと、幽霊部活動。んっ? 活動内容は、特になし。ええっ帰宅部ってこと?」
冗談みたいな申請にしょっぱなから面食らった。
「副会長ふざけてるの?」
「いえ、本当にそう書いてますの……」
「あっそう。ひひっ……副会長もたまには面白いこと言うのね?」
「……」
今笑ったな会長。絶対ワザとこんなふざけた申請書私に読ませたんだ。大体最初に会長が目を通して選別するでしょう。それでふざけた申請書だった場合その場で取り下げるはず。
だけどそれを会長が選んだのは、皆の前で読みあげ困惑する私の顔が見たいからだ。その証拠に私ばかり見てニタニタ笑っている。
いや本当、私ばかりに興味が行くのは不味い。当初は御門と会長をくっ付けるために潜入したが、返って逆効果ではないのかと思ってきた……
「副会長っ」
「……」
「副会長おーーいっ起きてる?」
「えっ!はいっ何かっ!?」
「なにかじゃないわよ部活動申請の説明中でしょう。ボーっとして寝ぼけてまた徹夜で勉強し過ぎて寝不足?」
「ふふっごめんなさいね。余りに馬鹿げた内容でしょっ? ですからちょっと困惑しただけですの……」
ほら突っ込みを入れてきて私の反応を楽しんでる。だからこれ以上味を占めない様に、絶対この女の前で焦る姿は見せられない。
「では二枚目の申請内容はと……食べ歩き部ですね……ええと、一応内容言いますと、外に出て文字通り食べ歩きグルメを研究する部活内容ですね……」
「それについてどう思う副会長?」
良い加減にしてよ生徒会長。少年には興味がないのかまた私に振る……本当絶望的だが始まったばかりだ。頑張るぞ。
「ええ、そうね……出来れば校内で行える部活内容が好ましいですわ。……ねえ御門君もそう思うでしょう?」
「えっ……僕……」
急に私に話しを振られて戸惑う御門。『……』今まで寝てたのか? 君に人類の運命がかかっているのだからしっかりして欲しいな。
本当訳を言えないのがもどかしい。
「御門君の率直な意見を聞きたいですわ」
「……えっと、活動の場が校外なのは間違ってますし、飲食の予算は少ない部費でまかなえるとは思えません」
「……なるほど分かりました。ご覧の通りこの申請も却下でよろしいですか?」
皆うなずき異論を唱える者はいなかった。そして皆真摯に話しを聞いていて、居眠りする政治家共とは大違いだった。
あと収穫あったのは、初めて御門少年の意見が聞けたこと。しかもしっかりした自分の考えを持っていて安心したよ。
「解説ありがとう副会長座って良いわよ」
「はい」
会長に肩を叩かれ入れ替わりに私は席に戻った。
「それでは最後の案件です。秋の文化祭の出し物でうさぎ喫茶の申請が三年二組から来ております。それについて許可すべきか皆で話し合いたいと思うわ」
そう言って会長は私の顔を見た。また振るなよ私に……
「副会長どう思う?」
「……」
ホラ振った。全く私に依存するなっ!
「動物と飲食の組み合わせは衛生的に素人がやるには危険過ぎます。ですから私はお勧め出来ません」
「なるほど流石副会長の意見は的を得ている。ならば動物は却下で単なる喫茶なら良しとしよう」
「……」
結論が出てしまった。だから先に私に聞くなと思った。これではいつまで経っても御門少年と生徒会長との親睦が深まらない。
私は頭を悩ました。
(いや、人類、娘のために私はこの恋愛ゲームに勝つんだ)
会議が終わって皆が帰り支度をしてるところに私は動いた。ターゲットは当然御門と会長の宝石椿だ。
「ちょっと御門君良いかしら?」
「えっ……僕に用ですか副会長……」
振り返って不安そうな顔するなよ少年。こんな魅力的な私に声をかけられたのだからもっと喜べ。
「今週の日曜日暇ですか?」
「ええっちょっと副会長っ!」
反応したのが離れて聞き耳立てていた会長だ。『ふふっ』釣れた釣れた。おかげで会長にも声をかける手間が省けた。
「どうしました会長?」
「どうも何も、貴女もしかして御門君に気があるの?」
「……何を早とちりしてるのです会長。私はただ御門君に頼みがあって日曜日に予定がないか確認しただけです」
「だったらなによ!この私生徒会長を差し置いて御門君に声をかけるなんて納得出来ないわ!」
「……」
大人気ない生徒会長はまるで弟に嫉妬する姉だ。だけどこれで釣れたも同然よ。
私はすかさず次の一手だ。
「実は生徒会の親睦会を開きたいと思いまして、ジュースやお菓子の買い出しに御門君に手伝ってもらいたいと声をかけたのです」
「親睦会……聞いてないわよ」
それはそうだ。私が今日思いついた策だからね。
「会長の許可を頂いてなかったのはお詫びします。ですので改めて親睦会を来週の金曜日に開きたいと思います。宜しいですか?」
「……まだ馴染めない役員との親睦を深めるのは良いことね。分かりました。許可しましょう。ですが、あたしも買い出しに同行するわよっ!」
良し釣りあげた。私は心の中でガッツポーズした。でもちょっと煽ってみるか……
「ですが会長。御門君に手伝ってもらいますからせっかくの休日お休みになったら?」
「むうっむう〜〜うう、何でそんな意地悪言うの〜〜?」
頬を膨らませ意地ける生徒会長は娘がタダをこねる時と一緒だ。
「分かりました。良いですよ一緒について来て」
「ぐぬうぅぅ……これであたしに勝ったと思うなよぉ……」
私にマウント取られて悔しがる会長と、消極的な御門少年とを付き合わせることに成功した。
でも、焦りは禁物で告白イベントは早くて年末だと思っている。だから些細な交流させてお互い気になる様に導くのが、我々恋愛防衛隊の任務だ。
こうして今週の日曜日に、学校近くのスーパーで三人で買い出しに行くことが決まった。