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五月編1 副会長の凡ミス

 

 五月に入って卒業まであと十一ヶ月に迫った。まだまだ時間があると思うなかれ、歳とるとどうも(身体は少女だが)一年なんかあっという間に過ぎ去る。

 例えて言うのなら、夏休みの子供みたいに余裕こいて宿題を後回しにしたら、のこり僅か日数で手を付けなかった宿題に追われ泣くことになる。


 我々恋愛防衛隊はそんなことにならない様に少年少女を陰ながらサポートする。例えば短い期間内に、デートなどイベントなどの計画を地道に計画していくつもりだ。


 昨夜も徹夜で政府に提出する計画書を作成していせいで寝不足だ。それといつもなら眠気覚ましにタバコを吸うのだが、何せ女の子の身体で高校生だから吸えなかった。

 タバコ臭い女子高生何か嫌だろ?


「ふああぁぁ……」


 生徒会の会議中に不覚にもあくびをしてしまった。ハッ!として口を手で押さえるが、皆も気づいて私を興味深げに見つめていた。


「完璧な副会長もあくびするのね」

「あら嫌ですわ。この私としたことが……」


 真っ先に指摘したのが生徒会長の宝石椿(ほうせきつばき)最重要少女Bだ。

 気が緩んだ私を始めて見た生徒会長は、すかさず鬼の首を取ったかの様に皮肉を言ってきた。まあ、同じ完璧女子と認めライバル視してる私の失態は嬉しいに違いない。


 全く私は君たちのために徹夜して政府に送る書類を作成してたのだぞ。それなのに裏で苦労しても皆んなに言えない。実にもどかしい。


「会議中何だからしっかりしてよね副会長」

「あっはいっ」


 勝ち誇ったかの様に私の肩に手を叩く生徒会長。本当にこっちの気持ちを知らない負けず嫌いな女だ。

 だがいかん!この眠気を何とかしないと大きなミスを引き起こす。だから私はそっとサラリーマン御用達の眠気スッキリガムを口に入れた。


「それでは六月行事に関する会議を始める前に皆んなも承知の様に、先週アフリカにある国で巨大地震が襲い。悲しいことに壊滅的被害に遭われたことを心から冥福を祈りたいと思います」


 皆目をつむって黙とうした。このゲームに勝てば失った命は元に戻して貰える。とは言え、多くの尊い命が失ったのだ。我々が勝利するまで安らかに眠ってくれ。


 それにしても本当は異星人の襲撃による壊滅なのだが、政府は真実を隠ぺいしフェイクニュースで隠した。

 もっとも、実は宇宙人の攻撃に遭い国が壊滅したと言っても荒唐無稽な陰謀論だと笑われるオチだがね。


 生徒会長は地震の話しを続ける。


「あたしたちが住む日本も地震大国ですので決して対岸の火事ではございません。ですから副会長」

「えっ私ですかっ!」


 何かと私に頼る生徒会長には困った物だ。私よりも、彼女と結ばれなくちゃ人類が滅亡する最重要少年Aこと御門渉(みかどわたる)君に話しかけて欲しかったよ。


「……」


 私はガムを噛みながら生徒会長を横目で睨んだ。


「ちょっと副会長何噛んでるの?」

「あらっ気のせいですわ……」


 彼女の観察力にはいつも脱帽する。本当に気が抜けない。


 それはそうと、私が生徒会に入ってからターゲットの二人が仲良く会話しているのをまだ見てない。本当に先が思いやられる事態だ。


「本当に今日はどうしたの、ぼんやりして副会長……」


 私の苦労を知らぬ生徒会長が呆れる様な目で私を見つめ言った。だから寝不足なんだって!


「済みません。正直に申しあげますと寝不足です」


 私は頭を下げて正直に言った。それで訳を聞かれたら勉強のし過ぎでと答えれば皆納得するでしょし、優等生で通っている私が徹夜で勉強しても何ら不思議ではないでしょう。


「分かりました。けれど勉強も程々に」

「ん……」


 生徒会長が勝ち誇った目で私を見下ろした。もうっ競ってないから迷惑だ。


「ですので生徒の防災意識を高めるために地震に関する書類の作成頼めますか副会長?」

「え……」


 顔を覗き込んで聞いてきた。書記担当のおかっぱ少女の村上小丸(むらかみこまる)ちゃんに頼んで欲しいな。


「さて、副会長例の書類皆んなに配って頂戴」

「えっ!」

「ちょっと本当に大丈夫? 三日前にあたしが頼んだ五月の生徒総会に関する書類の作成のこと忘れたの?」

「ああっ!も、もちろん作成してここにっ!」


 かなりテンパってる私はファイルに挟んだ書類を生徒会長に渡した。いや〜書類作成はしんどかった。何せ政府から頼まれた侵略宇宙人スピラリス星人に関する資料の作成を同時にこなしたのだから。


「……ん?」


 受け取った書類を怪訝な目で見つめ首をかしげる生徒会長。


「いかがなさいました生徒会長。まさかこの私が作成した書類に不備でも……」

「……ちょっと何よスピラリス星人って……」

「ばっ…………!!」


 何たる凡ミス。生徒会の書類と政府の超極秘書類を入れ間違えやばい資料を生徒会長に手渡してしまった。

 寝不足とは言えやっちまった……ああ、終わりだ。秘密をバラしたからにはゲームオーバーだ。


 私は目をつむり異星人の襲撃を覚悟した。


「……あ、あら……」


 しかし、何も起こらなかった。私は顔を見あげ生徒会長を見ると書類を興味深げに目を通していた。

 読み終えた生徒会長は私の顔を見た。流石に怒られるか?


「凄いっ特撮か何かの企画書?」

「え、あ……」


 どうやら生徒会長はスピラリス星人の資料を特撮の何かの企画書だと勘違いしてる様だ。

 ならば好都合。そのままアドリブで嘘言って誤魔化そう。


「いやぁ実は私デザイナーやってまして、このスピラリス星人ってのは今度制作予定の怪獣と戦う巨大ヒーローのライバルですわ」


 我ながら苦しい言い訳だ。


「凄いっ副会長ってこんな絵の才能があったのね!」

「え、ええ……」


 感激した生徒会長は私の手を握った。才能って見たまんま描いただけだけど……

 まぁスピラリス星人の形状(フォルム)は着ぐるみみたいな奇抜だから、生徒会長は宇宙人じゃなく特撮の星人と勘違いしたのね。


 まぁとにかく皆んなは、この書類を特撮の資料だと認識したからセーフらしい。ヤレヤレ一瞬肝が冷えたよ。


「スピラリス星人の着ぐるみが完成するのはいつかしら?」

「えっ!」


 凄く笑顔の生徒会長が振り返って私に聞いた。


「ねえっ今度撮影現場にお邪魔するのはどうかなぁ?」

「……えっちょっと待って下さい生徒会長。そんなに特撮がお好きなのですか?」

「んっ? 別に好きじゃない」

「……」


 だったら何故見学したいと言って私を困らす……まさか嫌がらせか?


「あのねっ副会長がデザインした星人の着ぐるみ見たいじゃない普通?」

「……確かにね……」

「本当っ!? ありがとう副会長〜着ぐるみ完成したら皆んなで見学しに来るからあとで教えてね♡」

「あ、はい……」


(しまったーーっ!何たる不覚。凡ミスを上手く誤魔化したが良いが、新たな問題が発生してしまった)


 全て私のミスだが、出まかせの嘘から発生した事態に頭を抱えた。イカン防衛大臣に何て説明したら良いのか……


「本当に寝不足みたいね副会長大丈夫? 保健室に行く?」

「ふふっお構いなく……」


 今更気遣っても遅いです生徒会長。額に冷や汗タラタラです。

 そんな訳で私は頭をフル回転していた。今から制作会社にスピラリス星人の着ぐるみ受注して間に合うのか考えたていた。


 しかし、何も知らない業者に極秘資料を見せるのはアウトなのではと不安に思った。

 仕方ない。授業が終わったら急いで帰ってスピラリス星人本人に許可を貰おう。


 どうやって異星人と連絡取るって? この身体はスピラリス星人が作った素体だから、テレパシーを送れば通じる筈だ。

 しかしまさか異星人に頼ることになるとはな……


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