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シーン27 正義の味方は誰の為

 シーン27 正義の味方は誰の為


 見積もりが出た。

 Vトアールをベースに、ボルドーウィングの両腕、無事だった背中のウィングパネルをツギハギにする。そこに、レイライフルと、実弾式の小型バルカン砲。そして、ディックブレードは流石にきびしかったため、小型のレイナイフを二本装備した。

 いざという時のフィールド式エネルギー拡散装置もつけると。

 うん。普通の相場なら、2億3000万ニート。

 割引してもらって・・・4500万ニート。

 まあ。素敵。契約書にササっとサイン。


 まさかこのゼロって人も、私が、全財産15万ニートの女とは思うまい。

 知ったら、どんな顔するかなー。

 大丈夫、後払いだし。

 プレーンさえあれば、何かしらの仕事ができるし。

 何とかなるでしょ。


 バロンの方は、手堅く安い実弾式のミサイルランチャーをストックも含め購入した。

 割引後で250万ニート。素晴らしい。ちゃんとお金を残している。


 作業の手続きも一通り終わりにして船に戻ろうとすると。


「先に帰ってくれ。俺とバロンは、ゼロの旦那と飲みに行って帰る」

 シェードに言われた。


 ま、それは男だけって、事ですかー。

 アタシは仲間外れって、事ですかー。


「一緒に行きたいんだけど。最近飲みになんていってないしー」

 そんなに行きたいわけじゃ無かったが、言ってみた。


「駄目だ。俺たちはその、大切なボーイズトークがあるんだ」

「そ、そうでやんす。たまには男同士での語りあいも必要でもやんすよ」

 普段、そんなに仲も良くないくせに、急に何を言ってるんだ。こいつらは。


 ははーん。

 ったく、きっといかがわしい店に行くんだ。

 そうに違いない。

 これだから男ってのは。



 仕方なくアタシは一人だけで船に戻った。


 何よー。バロンまで。

 シェードはどうでも良いけど、あいつだけは少しはまともだと思ってたのに。


 アタシと一緒に居るより、そっちのがいいのか。


 考えると、何故だか、むかむかしてきたので、勝手に彼の部屋に入った。


 バロンのモニターに「馬鹿タコ―」とでも落書きしてやろうかと思ったが、これは完全にあたし一人の勝手な感情だ。そう考えると、虚しくなってきたし、痛い女みたいな気分になったのでやめた。

 って。

 アタシって、なんでこんなに機嫌悪くなってるんだ。

 別に、バロンが誰とどこに行こうが、彼の勝手じゃないか。

 あいつタコだし。タコなんだし。


 デスクの上を見ると「ヤイバ」のプレーン模型が、だいぶ完成してきていて、シルバーと黒の塗装が途中になっていた。


 やっぱりカッコいい。

 それに、肩の所に可愛いマーキングが入っている。これって、彼がデザインしたものかな。青色の女の横顔がシルエットになって、金色の翼が重なっている。


 もしかして、コレ、アタシをイメージしてない?


 アタシはそれを見て、にやにや笑った。


 そうだ、今度のアタシのプレーンは、「ヤイバ」と同じシルバー塗装にしてもらおう。

 フレームは黒。

 ありきたりな組み合わせかもしれないが、それが良い。



 通路に戻って、ふと気になった。


 この通路も大分片付いた。

 6つの部屋のうち、4つまでが使用中になって、残る二つが、未だに物置と化している。

 シェードが、ちゃっかり自分の部屋を作ったのだ。いつまで居座る気なんだか。


 それにしても。

 アタシはキャプテンの部屋の扉を見た。

 いっつも、使用中の黄色いランプがつきっぱなし。

 唯一、アタシが中を見たことの無い部屋。


 どんな人なんだろう。

「ラガー」ってゼロが呟いていたけど、それがキャプテンの名前だろうか。


 キャプテンラガーか。


 ・・・。


 ・・・・。


 ・・・しっくりはくるけど、なんだか、・・・・妙に。


 いや、人の名前をどうこう言ってはいけないけど。

 なんだか、妙に。

 ださい・・。



 突然、コクピット方面からコール音が聞こえた。

 シャーリィの呼び出しだった。

 アタシはドッグ星の指令室へと向かった。


 毎度の厳しいチェックも、今回貰ったアクセスナンバーでちょちょいっと潜り抜けて、見覚えのある指令室に入る。

 ミリア統括長官と、シャーリィがお茶をしていた。

 案の定、男どもは来ていなかった。


「バロンさんたちは、まだですよねー」

 アタシは事情を知っているが、一応聞いた。


「あいつらの事は、いい。馬鹿どもは後だ」

 シャーリィが呆れた口調で言った。

 おそらく連絡を取って、彼らが何をしているのか、察したのだろう。


「何かあったんですか?」

「ああ、ちょっと調べてもらったんだ。例の、カースの別工場についてさ。そしたら、わかったことがあってね」

 彼女はミリア長官を見た。

 ミリアは言葉を引き継いだ。


「アタシ達も、商売柄、他のプレーン工場やメーカーの事は、よく調べているんです」


 ふーん。内通者を作っているという事か。

 まあ、その位でなければ、ドッグ星なんて危なっかしい存在を、ここまで維持し続けていられるはずがない。

 おそらく、かなりの情報網を、彼女達は構築しているのだ。


「惑星リドルの工場というのは、実際には、現在の工場よりも古くて、現在はメンテナンス用やリコール整備に使われている所のようです。でも、少し前に施設売却のうわさが出て、色々あった挙句、オコーネルカンパニーっていう会社が、経営に参画しました」


「簡単に言うと、子会社化だよ」

 シャーリィがアタシの為に噛みくだいた。


「ところで、このオコーネルって、聞き覚えが無いか」


 オコーネル。・・・オコーネル。

 確かに、聞き覚えがある。

 そうか、シェードが言っていたあいつだ。


「あ、フィリンクス・オコーネル。確かブリックの前の上司で、オルダーのプレーン事業のナンバー1でしたよね」

「そう、こいつは彼の会社さ」


 ふむふむ、色々と見えてきた。

 カース本星の工場は、オルダー社の直営。そこが宇宙海賊によって破壊されたため、子会社のリドル工場に出荷所を変更。なるほど、会社全体としては損失だが、彼個人としてはうまい話、と、いうわけだ。


 軍との契約もあるだろうから、出荷時期はずらせない。となると、急ピッチで3000台もの軍用プレーンを作らなければならないオルダー社は、必死になってリドル工場の増産体制をはかる。当然お金は流れ込む。しかも自分自身は痛みもなく、自分の会社だけが儲かっていく。


 嫌な野郎だなー。こいつ。


 フィリンクスの薄い金髪顔を思い出した。

 金髪には、ロクな奴がいない。・・・今のところ。


「でも、プログラムがどうとか、言ってたよね」

 アタシが聞くと、思いがけなく背後から男の声がした。


「そっからが、リングの出番。ってわけだ」

 金髪よりも、もっとたちの悪い黒髪だ。


 シェードとバロンだった。

 うわ、酒臭い。

 それに、シェードの奴、首元に口紅のあとつけちゃってるじゃない。

 しかもバロン、あんたなんで頭にネクタイ巻いてるの?

 何をしてたの?

 普段ネクタイなんかしてないくせに。


 最低・・・。

 アタシ達三人は、氷の様な目で彼らを見た。

 ほろ酔い加減の二人が、それを気にしたかどうかは定かではない。


「3000台の軍用プレーンが配備されるのは、トマス星系の、惑星カドラン。トマス星系は、知っての通り内戦も激しくて、現在エレス同盟の火薬庫だ」


 シェードはニヤッと笑って、ミリアを見た。

 ミリアは驚いた顔をした。

 ドッグ星の内通者がようやく探り出した情報を、この男は、既に掴んでいた。人間としては最低でも、やはり、情報屋としての腕は宇宙一を名乗るだけの事はある。


 トマスか。

 アタシもその星には馴染みがあった。

 巨大な太陽を中心に、数重の居住可能惑星をもつ、新興星系。

 オーバーテクノロジーの流入による文明崩壊。そこに、ドゥやルゥ、そしてエレスの勢力圏拡大競争がぶつかって、泥沼の内戦が繰り広げられた。

 現政権はエレス同盟への加入を表明しているが、反発する勢力も依然多く、常に一触即発、特に支星の数々では、戦争はまだ続いている。


「今回の3000台は、反政府勢力に対するけん制だ。エレス同盟が自ら武力制圧をはかるためのものじゃない」

「だけど、トマスにとっては、政府に対しても、反政府に対しても、どっちにも脅しにはなるわよね」

「さすがに話が早いなラライちゃん」


 ざわわっとした。

 ラライちゃんって、呼ぶなあ。気色悪い。

 あんたには名前を呼ばれたくない。それに「ちゃん」は止めろー。


「ところがだ、ここで、ちょこっとプログラムに悪さをする。3000台のプレーンが、もしどっちかの勢力に向けて、攻撃を開始したら。さて、どうなるかなー」

 彼の眼は、アタシを通り越して、ミリアを見た。


「戦争の再開。だけではないでしょうね。おそらくは、静観している筈のドゥ帝国やルゥ惑星連合まで、動き出しかねない。ただでさえ、あの勢力は、介入したくてしょうがないでしょうから」

 彼女は冷静な口調で言った。


「ミリアちゃん大正解―」

 ミリアが顔を赤くした。

 ちゃんって、呼ぶな。って、心の声が聞こえる。


「でも、そんなことをして、誰に得が」

「得だらけさ。戦争ってのは、第三者にとっては、有難い商売の場でしかない。軍事業者も、プレーン業者も、それに、軍そのものにとってもな」

「軍にとっても?」

「ああ、世の中金だ。軍は何の為に存在する。宇宙平和の為? 違うね。軍備予算を確保するためだ。限られた資金の中から、自分たちの予算を奪い取るために、あいつ等は生きているのさ。正義の味方は、なんのために戦う。答えは、金のためだ」


 アタシは怒りで前が見えなくなった。

 とりあえず、彼が悪いわけではないが、目の前のシェードをぶっ叩きたくなった。

 その辺のものを、とにかく手当たり次第に壊したくなった。


 もちろんそんなことはしないけれども。


「ゆるっせない」

 アタシはそれだけ呟いた。


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