洞窟の奥には何がいる?
ルームは黙々と歩いていく、そしてある分かれ道で足を止めた。
「ん? まさか二手に分かれたの?」
道の両方から反応がある、それはつまりインテルとスコラが別々になっていること意味している。ルームの身体は一つしかないためどちらかを選ばなければならない。
「すぅ」
ルームが大きく息を吸う、胸いっぱいに空気を吸い込むとそのまま吐き出した。すると息に合わせて胞子が放出され風に乗って奥へと向かう。
「どんな感じかな」
胞子の動きを把握することで地形、敵の有無を確認する。洞窟内にあまり風はないがある程度の範囲がルームの認識内に入った。
「途中で合流もなし、か」
道は確かに二手に分かれており、途中で一本になるということもなかった。やはりどちらかを選ばなければならない。
「どっちにしようかな、あんまり時間をかけるのも駄目だし」
何か他に判断材料はないかと探すが、分かっている分では何も手掛かりはなかった。
「じゃあこっち!!」
そう言ってルームが向いた方はインテルのいる道であった。スコラとインテルを見る限りでは死ぬのはインテルの方だと判断した結果である。ルームの中では強いのはスコラであった。
「崩さない程度の速さでいかなくちゃね」
衝撃を極力を抑えた最高速度でルームは駆ける、そして強烈な獣臭さが鼻に直撃する。幸い血の匂いはしていないようだ。
「グガァアアアアアアアア!!」
「クマ? こんなところに?」
行き止まりらしき広めの空間には猛ったクマが一匹いるだけであった。周りには裂けた布と道具が散乱している。
「こうなるともう確定かなとは思うんだけど、なんかおかしいなあ」
クマにインテルが食べられたとすればそこらに臓物やら骨やらが散らばっていて然るべき。しかし、いるのはクマと布と道具だけ。そして、クマには胞子が付着している。
「聞こえますか?」
「グルルルル……」
クマには身を低くして襲い掛かる体勢を整えている。あとは機を見て飛びかかるのみという状態であった。
「落ち着かせようか、おいで」
「ガァアアアアアアアア!!」
わざと背中を見せるルームに飛びかかるクマ、もちろん誘いであるので待っているのはカウンターである。
「よっと」
「カッ!?」
後ろ回し蹴りでパックリと空いていた下顎を蹴られ、一気にクマの視界が混濁する。本物のクマならば脳が小さく首が頑強なためこれでは効果がないのだが。このクマはそうではないようだ。
「ぐ、かか」
「聞こえますか」
ふらつくくクマの顔を掴んで目を見る。目を合わせたクマは次第に落ち着きを取り戻していった。
「あ、あれ?」
「気がつきましたかインテルさん。それにしても人熊なら早く言ってください。倒すところでしたよ?」
「ルーム君? なんでこんなところに?」
「助けに来ました、あんまり危険はなかったようですけど」
「そうだ!! スコラは!?」
「今から助けに行きます、インテルさんはここで待っていてください。まだフラつくでしょう?」
「す、すまない。正直言って歩くのがやっとなんだ。だが気をつけてくれ。スコラは僕とは比べものにならないんだ」
「と、言うと。スコラさんも何か特殊な?」
「ああ、超希少種の人熊猫さ」
「わーぱんだ」
「そう、人熊猫だ」
熊猫化する亜人、それが人熊猫である。
「危険ですか」
「危険さ、なんせ人熊猫は」
続きを話そうとした瞬間に地面の下から何かが猛烈な勢いで生えてきた。
「攻撃!?」
咄嗟に腕を使って生えてきたものを殴るが、それは大きくしなることで衝撃を逃すとそのまま壁に突き刺さるまで伸びていった。
「ああっ、もう遅かったか。大変だぞルーム君このままではこの一帯が笹の森になる!!」
「すみません説明お願いします」
「人熊猫は、自らの食糧である笹を自由に操れるんだ。生やすも枯らすも自由自在さ」
「いや、あれどう見ても竹ですよね」
「何を言っているんだ、あれは笹だ。人熊猫が生やすのが竹なわけないだろう」
「そうですか、では笹ですね」
めんどくさい空気を感じ取ったのでルームはすぐに引いた。
「スコラを早く止めに行くんだ、早くしないと手遅れになる!!」
「分かりました、じゃあ行ってきます」
笹が急激に成長したのは一本だけで他のはゆっくりと生茂るようにその範囲を広げていた。それでも自然からは異常に早い。あながち笹の森というのもない話ではないと思えるくらいではあった。
すぐさまスコラのいる方の道へと向かうとそこはすでに笹に覆われており、非常に視界が悪い状態となってしまっていた。
「通りにくいなぁ」
それを意にも介さずにずんずんと進んでいく、刃のごとき葉であるが少しばかり菌糸で皮膚を強化するだけで進むことが可能であった。
「スコラさーん、何があったんですかー」
「アアアアアアアアアアアア!!!」
咆哮が響く、スコラがいることを確信すると一息にそちらへ飛び出した。




