第320話 血の学園祭
『百獣の魔王』ダンデライオンは、この日が『学園祭』であることを知ると、自身の欲望を叶えるべく、部下たちに語っていた。
「オデのメインディッシュはァァァ、エニシダだァァァァ!!!だが、そのマエにィィィ、ゼンサイがホしいなァ!!オデをナゾのチカラでクルしめたァ、あのニンゲンのオスゥゥ!!!あいつをォォ、サキにコロすゥゥ!!!!」
「「魔王様!!!オレたちにも褒美を!!」」
「そうだったなァァァ!!!ナガらくガマンさせてきたオマエらにもォォォ、そろそろホウビをアタえないとなァ!!!」
「「ええ!!そうですよ!魔王様!」」
「どうせならァァァ、ニンゲンどもがァ、イチバン、アツマってェ、イチバン、タノしんでるシュンカンにィ、アバれてやろうぜェェェ!!どんなふうにオドロくのかァァァァ、ミてみてェェェェェェ!!!」
その思いに応えるべく進言するのは、彼の第一の側近であるキツネ魔族ウゥルペースだ。
「であれば魔王様、『学園祭』では”剣術大会”が開催されます。国の内外から猛者が集い、力を披露しあうのです。観客が最も多く集まる一大イベントでございますぞ」
「それだァァァァァ!!!それにランニュウするぞォォォォ!!!!」
好戦的で強欲で、それでいて長い期間、地下で隠遁生活を送って来たダンデライオンは、溜まりに溜まった自身の欲求を、最も華々しく発散できる機会を狙い、その瞬間を涎を垂らして待つことにした。
中途半端に知恵を身につけたせいか、妙なところでこだわるライオンであった。
こうして、ただ人間を襲うだけでは、つまらないと考える彼が望んだのは、『血の学園祭』だったのだ。
彼は、”剣術大会”の決勝トーナメントが始まる午後になると、地中の移動を開始した。
地上から響いて来る音を頼りに掘り進み、やがて”剣術大会”の場所を特定した。
「ニギやかなァァァ、オトがキこえるなァァァァ!!!このマウエだァ!!!」
そして彼は、最も歓声が強くなる決勝戦のタイミングで顔を出した。
ドッゴオォォーーーーンッ!!!!
まず第一に目にした審判員を一撃で頭からペシャンコにし、会場全体に雄叫びを上げた後、自身の名を名乗った。
「ヒャクジュウのマオウォォォォォ!ダンデライオンサマのォォォォォ!!サンセンだァァァァァ!!!!」
「な!!!なんだぁ!?」
眼前でそれを見る”斧旋風”バードックは仰天した。
その唐突すぎる登場と、巨漢である自身よりも1.5倍は大きいダンデライオンの迫力に、さしもの彼も驚きの色を隠せない。
しかも、真に恐るべきは魔王の強さそのものだ。
この次の瞬間、会場の誰の目にも信じられない惨劇が起きた。
グバシャッ!!!
なんと武力では最強のハンターと言われる”斧旋風”が、ダンデライオンが放った裏拳で、木っ端微塵に粉砕されてしまったのだ。無数の肉片と体液を飛び散らせて。
これを見た観客たちは、ただならぬ事態であることを悟った。
「「うわあぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」」
「「なんだアレはぁ!?」」
「「逃げろぉぉーー!!!!」」
阿鼻叫喚であった。
人々は慌てふためいて席を立ち、逃げはじめる。
観覧席にいた客はまだよい。憐れなのはグラウンドに降りて間近で観戦していた観客たちだ。
彼らは、真っ先にダンデライオンが開けた大穴から這い出て来た”殺人鬼魔族”に強襲されることになった。
「ボクチンたちからァ、逃げようなんてェーー、無理な話だよォーーーー」
「ウガァァァ!!!ついに人間を喰えるぞォォーー!!!」
「待ちに待った人間だァーーーー!!!!」
カマキリ魔族のマントダエを筆頭に様々な姿形をもった”殺人鬼魔族”たちが観戦客を蹂躙する。
ズバッ!!!
ドガッ!!
グシュアッ!!!
各所から血しぶきと肉片が舞う凄惨な剣術大会となった。
まるでそれを花見のように楽しむ『百獣の魔王』は、破壊された舞台中央で高らかに笑う。
「ガハハハハッ!!!キョウはマツリだァァ!!!チマツリだァァァァァ!!!!オマエらァァァ!スきなだけェェェ、クえェェェェェェ!!!!」
まさに地獄絵図だった。
情け容赦ない殺戮者たちの狂気。逃げ惑う人々の悲鳴と断末魔。それに囲まれて歓喜の雄叫びを上げる人外の魔王。
さらに、グラウンドの地面を新たに掘り起こし、遅れて登場した漆黒の魔獣たちも惨劇に加わった。
”闘技場”は、散乱した血肉による異臭が立ち込め、それがますます殺人鬼たちを興奮させ、殺気立たせる――
――はずだった。
だがしかし、彼らが感じるのは、全く無味無臭で味気ないものであった。
「ま、魔王様……な、なんかおかしいですぜ?」
「殺した感触が……ない」
「ていうか、なんだコレ……ニオイも気配もしねぇ……」
「ま、魔王様!!!これ、人間じゃねぇですよ!!!」
「なん……だとォォォ?」
部下たちが不思議そうに愚痴をこぼすように報告した言葉で、『百獣の魔王』もようやく様子がおかしいことを認識した。
念願を成就できた喜びで有頂天になり、自分たちが騙されている事実に今まで気がつかなかったのだ。
そうしてキョトンとする彼に向かい、呆れた声で語り掛ける者がいた。
「やれやれ……会場に来たら、すぐにバレると考えていたんだが、思いの外、ノリツッコミで付き合ってくれたな……お前たち全員、気配がボヤける環境に居すぎたせいで、感覚が鈍ったんじゃないか?」
そう。それは僕、白金蓮である。
”闘技場”の観覧席の先頭にあたる位置に姿を見せ、彼らを見下ろしながら告げたのだ。
「本物の会場は向こうだ」
僕は、別方向を指差しながら言った。
ここは、アカデミーの北東部にある”闘技場”ではない。北西部にあるグラウンドのような”修練場”なのだ。
理事長に頼み、学園祭の期間中は人通りの少ないこの場所を借りて、ここを決戦場としたのである。
僕が考案した”金”を生成する魔法を応用し、”鉄”を生成する魔法で、グラウンドの周囲に鉄柵を打ち込んで包囲した。しかも、それを何重にも重ね、上に鉄網の足場も乗せているので、まるで壁のようになり、この上を歩くことも可能だ。
そして、ここに映像魔法で”闘技場”の様子を立体的に映し出していたのだ。
つまり、僕が今、実際に立っているのは、鉄柵の壁の足場である。
また、逆に外側からは、ここがただの”修練場”に見えるよう、映像を映している。多少の違和感はあるだろうが、何のイベントも無いこの地に近づく人はほとんどいないため、誰も異変には気づいていない。
僕は、内側に映していた”闘技場”の立体映像を解除し、本当の景色を『百獣の魔王』とその配下たちに見せた。
この変化に度肝を抜かれる魔族たち。
彼らは、檻の中に閉じ込められた猛獣と同じなのだ。
ここで、一人だけ冷静な者が疑問を口にした。キツネ魔族ウゥルペースである。
「い、意味がわからない……こんな罠が可能だったとして、なぜ『百獣の魔王』様の行き先を知り得たのだ……?」
それは当然の質問だ。
僕は『百獣の魔王』を見ながら悠然と答えた。
「お前がネコ科で助かったよ。ダンデライオン。実を言うと、お前の言動は全て筒抜けだったんだ。フェーリスの【猫猫通信】でな」
フェーリスの猫通信の魔法は、彼女と友達になった猫に発動し、猫から猫へ伝染する魔法である。しかし、彼女が直接ツメで傷つけた相手にも、それがネコ科の動物であれば、強制的に発現することが可能なのだ。
彼女は、『百獣の魔王』の逃走時に一撃を与えていた。その真の目的は、相手がライオンであることに望みをかけ、この能力が通用するか試すことだったのだ。その狙いは見事に的中した。
ダンデライオンの見聞きする情報は全て、フェーリスが掌握していたのである。
「”剣術大会”への乱入を計画しているというなら、逆にそれを利用して、ここに誘導させてもらった。音を使うのはお前だけの専売特許じゃない。僕も得意なんだ」
彼らの会話を傍受したフェーリスと僕は、直ちに迎撃する準備を整え、音を使っておびき寄せたのだ。
『百獣の魔王』が逃走した地点も幸いした。彼は地中深く潜り過ぎたために地層が邪魔をし、自身の”声”の能力を地上にまで届かせることができなくなった。よって生物操作も使えず、地上の情報は、かすかに地面を伝わって聞こえる音でのみ判断していた。
そこで僕は、本物の”闘技場”の地下室に真空の膜を作り、その音が彼らに届かないようにした。
その上で、”闘技場”の音声を録音し、それをあえて彼らに届くように地中で放送していたのだ。その音を頼りに進めば、この場所まで誘導されるように。
こうして、まんまと”ダミー闘技場”に彼らは誘い込まれたのである。
ちなみに僕は、午後からずっとこの場所に待機しており、ダチュラの試合も映像を通じて観戦していた。嫁さんは本物の会場にいるのだが、僕を立体映像で映すことで、あたかも一緒にいるように周囲には見えていたはずだ。
また、『百獣の魔王』の登場シーンは、逆に本物の会場にも映像を流させてもらった。
それは、緊急事態が発生していることを人々にも認識してもらいたかったからである。ただ、それに対するリアクションが想像以上に大きかったことから、魔族たちも喜んで人々の映像に向かい、襲い掛かったのだ。
この頃、本当の闘技場では、突如として目の前で上映され、すぐに消え去った『百獣の魔王』にバードックは唖然としていた。
「な……なんだぁ!?今のは!?絵が動いてたのか!?」
僕の映像のせいで、審判員と彼が死んだと思っている観客たちが、慌てて逃げ出そうと立ち上がり、大混乱の様相を呈している。その中で、中央にいる彼とダチュラだけは舞台上に立ったままだった。
「すみません。バードックさん。仕事が出来てしまいました。私はここで棄権します」
「は!?なんだと!?」
急な申し出に驚愕する”斧旋風”だが、それにダチュラが答えるよりも先に、舞台上に乱入する人物がいた。
「みなさーーん!安心してください!今のは、アカデミーに危険が迫っていることをお知らせするために、『プラチナ商会』が見せた幻覚です!」
「オマエ!レンの嫁のユリカ!」
バードックが驚くとおり、舞台に無断で上がったのはウチの嫁さんだ。
このまま放っておけば、ごった返した人波で大惨事になる可能性があると考え、彼女は大声で群衆に呼び掛けたのだ。
その力強くも優しい声は、透き通るように会場全体に響き渡り、不思議と全員を落ち着かせた。
「「え……?」」
「「……幻覚?」」
立ち止まり、振り返った観戦客たちに嫁さんは堂々と告げる。
「これから、私たち『学園防衛部』と『連邦騎士団』による合同作戦で、”殺人鬼魔族”たちを一掃します!みなさんは、ここで待機していてください!」
この言葉は、”剣術大会”に熱狂していた人々を現実へと引き戻した。実際は、本物の危険がすぐ近くに潜んでいるのに、彼らはそれを忘れて、試合観戦を楽しんでいたのだ。
「……そ、そうか!ついに”殺人鬼魔族”を討伐してくれるのか!」
「一掃ってことは、1体じゃなかったのね!魔族は複数いたんだわ!」
「『学園防衛部』って何?そんなのあった?」
「よくわかんねぇが、『プラチナ商会』も絡んでるなら、安心じゃねぇか?」
「そういえば、シルバープレートハンターが営む商会だって話だったな!」
「悪徳商会じゃなかったのね!」
「いいぞぉーー!!!やれやれーー!!!」
人々は納得し、賛同しはじめた。
これを見て、嫁さんは安心し、振り返って親友に告げる。
「じゃあ、ダチュラ、私は後方支援だけど、先に行ってるね」
「うん!私もすぐに向かうわ!」
嫁さんは風のように消え去った。
それを見送ったダチュラも早速、走り出す。グラウンドを出ると、”闇の千里眼”スカッシュが彼女の横に来た。
「とてつもない気配がいきなり地上に現れた。ワレも行くぞ」
「ありがとうございます!」
また、特別席で観戦していたローズは、剣を取って立ち上がり、アクセサリーを外し、父親である理事長に告げている。
「親父、ついに来たようだ。行って来る」
「ローズマリー!」
「安心してくれ。あたしは強い」
心配して呼び止めるドラセナ理事長に彼女は悠然と微笑み、ドレスのまま走った。
彼女は人々が混乱している最中に闘技場の壁の窓を跳び越えて、いっきに地上まで飛び降りてしまった。
その際、彼女は”携帯端末宝珠”の魔法を発動し、全身が光に包まれる。僕が人獣魔族の仲間や牡丹のために開発してあげた”着せ替え魔法”を発動したのだ。
光のエフェクトと共に華麗に着地した彼女は、いつものハンターとしての戦闘スタイルになっていた。要するに彼女は、公爵令嬢ローズマリーから”女剣侠”ローズに変身したのだ。
ちょうど外に出て来たダチュラは、合流しながら笑ってツッコんだ。
「ローズさん!それ!ボタンちゃんと同じ”変身魔法”ですか!」
「レンがあたしの”スマホ”にも搭載してくれたんだ!ドレスから着替える時間が惜しいだろうってな!ただし、金属製のアクセサリーは対象外だそうだ!」
そうして一緒に走り出した彼女たちに、後ろから豪快に叫びながら追いつくのはバードックである。
「ローズ!!やっぱオマエ、ローズか!!!似てるヤツが偉い連中の席にいるとは思ってたんだ!」
さらにスカッシュも微笑む。
「ワレは最初から気づいていた」
「ああ、くそっ!君たちに見られたのだけは誤算だった!」
”闇の千里眼”と”斧旋風”を加え、”女剣侠”と”葉隠れ剣舞”は決戦場であるダミー闘技場へと走った。
そうしてハンターたちが向かって来る頃、既に僕は、『百獣の魔王』一派への攻撃を開始しようとしている。
彼の配下の”殺人鬼魔族”たちに加え、『百獣の魔王』は地中深くで”魔獣”をも生み出していた。今、修練場に出現しているのは、モグラのような魔獣が1体。巨大ミミズの魔獣が2体。巨大イモムシの魔獣が1体である。
「地下で魔獣を作り出していたのも知っている。たった一晩で12体も誕生させていたな。やはり規格外の魔王だ。だから、ここで待っていた。全てを一網打尽にするために」
言いながら、僕は彼らを一掃するための特大魔法をお見舞いする。
ピッシャァァッ!!!
ドッゴオォォォーーーーンッッ!!!!
かつてデルフィニウム魔王軍にも炸裂させた大規模落雷魔法である。
突如として頭上から放たれた特大の電撃に、魔王も魔族も魔獣も、全てが一斉に蹂躙された。
ちなみに僕が今乗っている鉄柵にも電流が誘導されてしまう可能性があるため、僕は圧縮空気の上に立っている。
「すまないな。『百獣の魔王』よ。こっちは”正々堂々”の剣術大会じゃない。罠を張った”討伐”だ」
この一手で、4体の魔獣は死に絶え、ほとんどの魔族が気を失った。残るのは、ダンデライオンと3体の魔族である。
「『百獣の魔王』は想定内として、僕の雷に耐えられる魔族が2体。事前に察知して避けたのが1体か」
雷撃というものは光の速さに近いため、見てから回避するのは不可能である。ゆえに鋭い戦闘センスで発動前に避けた者がいる。それが、カマキリ魔族のマントダエだ。また、キツネ魔族のウゥルペースとアルマジロの人獣魔族は雷を受けたが、耐え切って立っていた。
「それと……遅れてこれからやって来る魔獣が8体もいる。ずいぶんと足の遅い連中だ。これは場外に出てしまうな」
敵の足並みが完全に揃っていなかったのは見込み違いである。こういうところは、なかなか理論どおりにはいかないものだ。とはいえ、取りこぼしがある可能性も想定の範囲内だ。
「だが、包囲網は出来ている。ディエラマ騎士団長、そちらに魔獣が2体、向かいました。よろしくお願いします」
『りょ、了解だ』
ドローンに付けた携帯端末宝珠を通じて、『連邦騎士団』の団長ディエラマとも連携を取る。既に共和国の精鋭たちにダミー闘技場を囲んでもらっており、ドローンで指示を出せるようにしているのだ。もちろん、この技術に騎士団長は目を丸くしていたが。
また、さらにその外側についても、街全体に計16個のドローンを飛ばすことで、魔族も魔獣も1体たりとも逃さないよう、索敵網を張っている。
「もう6体はバラバラに行動しはじめた。知能が低くて魔王に付いて来れなかったか。こちらについては、後方支援の百合ちゃんが遠隔『マナパンチ』で迎撃してくれる。問題ない。百合ちゃん、よろしく」
『りょ!』
「そして、他にも遅れている魔族が2体。うち1体はローズ、ダチュラ、それにバードックとスカッシュが近づいている。これなら大丈夫だ」
つまり、ダミー闘技場に僕たち『学園防衛部』。その外側に『連邦騎士団』による包囲網。また、さらにその外には、部長であるウチの嫁さんの補佐が入り、そこに飛び入りのハンターたちが向かっているという構図だ。
以上のように、敵の全勢力を僕は把握し、それらを確実に仕留められるよう、盤石の布陣で戦力を配置した。これは勝つことが確定した戦いなのだ。
「さぁ、ここからは各個撃破の殲滅戦だ。みんな、よろしく頼む!」
僕の号令と同時に、鉄柵の上に牡丹、フェーリス、カエノフィディア、さらに桜澤撫子、山吹月見が立った。
「パパ!かっこいい!」
「ウチ、今日は朝から”ギャオ”の気分ギャオ!」
「アタクシ、この学園のためなら、全力で戦います!」
「さっすが『超魔王』だねェーー!ちなみに電気って、おいしそう!」
それぞれ意気込みを語るのだが、僕の隣に来た桜澤撫子は、半分呆れながらボヤいている。
「ハッキリ言って私……そろそろ『幻影の魔王』って呼称は返上しようと考えてるわ。だって白金くんの方が、よっぽど『幻影の魔王』してるんだもの」
「いやいや、何言ってるんだよ……」
一方、待ち伏せ包囲された上に配下を一斉に沈黙させられた『百獣の魔王』は、僕に向けて雄叫びのような疑問をぶつけた。
「オマエらァァァ!!!いったいナニモノだァァァァァ!!!!」
憤る彼の問いには、僕の味方となった3人の魔王女子が順番に答えた。
「そうね……あえて名乗るなら……」
「牡丹チャン、言ってあげてェーー」
先頭に立った我が娘、牡丹は、目をランランと輝かせ、鼻息を荒くしながら、嫁さんから仕込まれたらしいポーズを決めて宣言した。
「わたしたち!みんなそろって!がくえんぼうえいぶ!だよ!」
実は、大規模戦闘に最初から蓮が参加するのは、今回が初めてとなります。




