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(新)幼馴染と行く異世界転生~亜人を保護しましょう~  作者: 春風
第5章.学園編 荒ぶる学園トーナメント戦
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4.戦闘、二回戦と三回戦

 ヴェルさんの戦闘スタイルは、クリス先生より攻撃力に比重を置いた『スピードファイター』である。

 その為、それなりに威力の高い拳をテンポよく打ち込める、バランスのいいインファイターだ。


 攻撃力・攻撃速度のバランスのとり方。

 攻撃のテンポの組み方。

 相手が嫌がるポイントへ打ち込める命中精度。

 隙を見逃さず打ち込む決定力。


 これらすべての要素を高性能で兼ね備えたのがヴェルさんらしい。

 根気よく相手の調子を崩し、流れを自分に持ち込み、焦る相手をなお追い込む。

 リネアの5個下らしいので23歳らしいのだが、その年齢にして既に純銀級に値する実力の持ち主だと噂だ。

 まだまだ成長出来る年齢だ。


 真に、ヴェルさんの優れた才能は『技術力(DEX)』にあるだろう。


 だからこそ―――



「くっ、ここまでやりずらいとは………!」



 全く俺のテンポを崩せないヴェルさんは、攻撃の合間にそう愚痴る。


 スタートと同時に、俺とヴェルさんは拳の打ち合いになり、互いに相手の攻撃を弾くなり避けるなりしながら、隙を狙って攻撃を叩き込んでいる。


 そんな中、俺は全くヴェルさんに流れを与えない事に成功している。


 ヴェルさんのジャブ速度は、シロより遅い。

 ヴェルさんのストレートの威力は、ミナ姉より弱い。

 ヴェルさんの隙を突く狙いは、クリス先生より甘い。



 正直な所、ヴェルさんは自分よりも上のレベルの経験を積んだ選手を撃破出来ない。



 まぁ、普通はこれら三拍子揃った経験をしてる奴の方が少ないからね。

 ヴェルさんは、この中のどれか一つでも優位性があれば、そこを活かして敵を撃破する策を練るんだろう。


「レイ選手、あのヴェル選手の怒涛の猛攻を安定感を持って捌き切っている!隙が全くと言っていいほど見当たらない!」


 ナレーターは、先ほどから自分がが興奮している事を隠す事無く、熱のこもった実況を続けている。


「先ほど見せた、大剣を片手で砕けるほどの高いSTRを持ち合わせながら、この猛攻を捌ける器用度と反応速度を持っているとなると、とてつもないポテンシャルを秘めた選手である事にもう間違いはありません!」


 そして、やたらと俺をよいしょする。ここまで言われると少し照れる。

 だが、ナレーターの言葉が紡がれれば紡がれる程、観客の俺を見る目が変わっていく。


 もしかして、ナレーターが俺の味方になってくれる『女子』だったのは幸運だったのでは?


「こうなったら、奥の手を………!」


 このままでは勝ち目が無い事に気付いているヴェルさんは、そう呟くと俺から離れる様に後ろに向かって飛び去る。


 ほう?これだけの技術を使って戦闘していて、尚手段があるのか。

 それなりに持っている手数を相手によって使い分けて戦うのだろう。

 本当に器用だな。


「【風刃爪(ソニッククロー)】ッ!」


 ヴェルさんがスキルを発動すると、風の魔力がヴェルさんの両手に纏われる。

 そして、その状態のまま再度俺と拳の打ち合いを行う。


 俺の右頬を狙った右ストレートが取んでくる。


 俺はその攻撃に対し、首を傾けて避けようとしたが―――



 戦闘中は常時発動している【精霊眼(スピリッドアイ)】は、ヴェルさんの両手で渦巻く風の刃を捕えていた。



「………!」


 俺の右頬すれすれに打ち込まれる右ストレートを回避するも、風の刃が俺の頬に一本の切り傷を付ける。


「おぉっと、これはどういう事でしょうか!?レイ選手はヴェル選手の右ストレートを回避したはずですが、それでも頬に傷が出来ています!」


 ナレータが見逃さなかったように、俺の頬から血が垂れる。


「あれは、両手の周辺に風の刃を纏っているわね。ギリギリで回避しようとしたり、拳で攻撃を受け止めれば風の刃が相手を攻撃する様に出来ているわね。素晴らしい魔法コントロール力よ」

「成程!このスキルを足す事で、千日手のような拮抗した状況を少しずつ覆せるという訳ですね!レイ選手はこの状況を一体どうするつもりなんでしょうか!」


 ヴェルさんが発動させた魔法について学園長の解説が入る。


 確かに拮抗した状況でありば、この追加ダメージは状況を切り崩すのに有効だろう。

 地道に相手にダメージを蓄積させる事も出来るし、この攻撃を無理やり回避しようとすれば相手のペースを崩す事が出来るだろう。


「フッ!シィッ!ハァッ!」


 ヴェルさんは、風の刃を纏わせながら拳の乱舞を叩きつけて来る。

 恐らく、ここが正念場なのを察しているんだろう。


「………」


 だが、俺は傷が付くのを厭わずに先ほどと同じく、すれすれで避けたり拳で弾いたり、此方からも相手の拳めがけてジャブを打ち込む。


「レイ選手、時間が経てば経つほど少しずつ傷が増えています!ですが、全く堪えた様子がありません!寧ろ、奥の手を出したヴェル選手の方が焦っている!」


 俺らの戦闘を見ていたナレーターは、そう実況する。


 確かに、拮抗していれば有効な手だ。


 だが、俺とヴェルさんは拮抗していたというより、ヴェルさんが此方に食らいついていただけだ。

 そしてこの攻撃は、俺のHPを削るには威力が足りない。



 結局の所、俺への有効打になりえないのだ。



 なら、俺が焦るのも変な話であるし、避ける必要も無い。

 つまり、状況は変化していないのだ。


「チッ、やっぱこの実力差はどうしようもねぇか………くそ」


 全く変化しない俺を見たヴェルさんは、再度後ろに飛び退くと―――。



「参った。もう俺はお前に足掻く方法がねぇ」



 と、両手を上げ降参の意思を示した。


「おぉっと、ここでヴェル選手はギブアップ宣言だ!勝者はレイ選手です!誰もが予想だにしてなかった下克上が、また一つ成しえました!」


 試合が終了した瞬間、観客から歓声が上がる。


 怒涛の拳の打ち合いは、観客にとって良い見世物になったのではなかろうか。

 その中で、俺がどれだけ余裕感を醸し出せていたかは分からないが、まだまだ本気では無いのは伝わっただろう。


 俺は余裕を持って、ステージを退場した。





――――――――――





「おい、聞いた話と違うではないか!あのレイとか言う男、それなりどころかかなり強いではないか!」


「こ、侯爵様………!」


「し、少々落ち着かれた方が………!?」


「私は、確実にこの学園で勢力を作れると聞いたから乗ったのだぞ!それが蓋を開けてみればどうだ!?あの男は余裕そうにこの二回戦を勝ち抜いているではないか!」


「ですが、次は侯爵様の御子息が相手で御座います!リネット様はこの学園でも三本指に入る屈指の実力者!」


「むっ、確かにそうだな。私の息子があんな平民に負けるなど、ありえんな」


「でしょう?それに我々は秘策も用意してあります。あの―――」


「ほう………。それはいいな、確実性が上がるな」


「更に―――」


「ほうほう、素晴らしい。ならば、任せようではないか」


「御意」


「ふふっ、この学園での覇権もすぐそこだ………!」





――――――――――





「さぁ、遂にブロック決勝戦の時間です!Aブロック決勝戦、選手紹介を行います!」


 ナレーターの声が会場に響く。


「まずはこちら!トーナメント唯一の2年生でありながら、二試合とも余裕を持って相手を撃破し圧倒的実力者の片鱗を見せる、『攻・速・守』三拍子揃った超前衛的回復士(ヒーラー)召喚士(サモナー)!この戦いでも後衛職の常識をどんどんぶち壊していくのか!?」


 ナレーターの声に合わせながら、ステージの中心に歩みを進める。

 選手紹介の褒め殺しよ。


「二年Aクラス!回復士(ヒーラー)、レイ選手!」


 俺の名前が呼ばれた途端、会場を揺るがすほどの大きな歓声が上がる。

 盛り上がりの為にやってるのは分かるが、これは気持ちいいな。テンションが上がる。


「続きまして、こちら!全生徒3本指に入る学園屈指の実力者!伯爵家長男に相応しい実力を持った、誇り高き由緒正しき魔術師(マジシャン)から放たれる『豪炎』の二つ名に相応しい【火魔法】が、新進気鋭の奇才を迎え撃つ!」


 相手もナレーターの声に合わせてステージに上がってくる。


「四年Aクラス!魔術師(マジシャン)、リネット選手!」


 湧き上がる俺よりも大きい歓声をうけて、リネットは嗜虐的な笑みを浮かべて俺に話しかけて来る。


「おぃおぃ、STRが他より高いとか程度で回復士(ヒーラー)如きが調子に乗ってんじゃねぇぞぉ?平民如きお前は、私に言われた事に粛々と従って這いつくばっていればよいのだ」


 案の定、下手に実力を持った典型的な屑貴族の様だ。

 開会式のセルディマの話を聞いて無かったのか、コイツは?


「ハッ、社会のゴミでしかない屑に従う道理がどこにあるんだ?」


 今回のシロの件に関して、俺はかなりイラついてる。

 俺は、自分のテリトリーに手を出されるのが一番嫌いなんだ。


「き、貴様、次期伯爵たる私に何という口の利き方を!」


 リネットは、俺の言葉に簡単に怒りを爆発させる。

 本当に、こういう貴族は世界の全てが自分の思い通りになると思っている。

 だから好き放題しても許されると考えているし、それで自分の思い通りにならないと簡単にキレる。


 一応、肩書などは関係無いと公式で宣言してる空間なんだがな、ココ。


「やはり、貴様は許さん!貴様を無残に弄った後、お前の奴隷も私が弄んで私なしでは生きていけぬ体にして―――」




「あ?」




 リネットの言葉に俺の感情が爆発しそうになる。

 感情を何とか抑えた代わりに、俺の体内から魔力の奔流が一瞬外に噴き出てきた。



 俺の魔力が結界内で吹き荒れ、結界が音を立てて揺れる。



 リネットは魔力の奔流をもろに浴びて、服がばさついただけで無く髪型も少し崩れる。

 少し青い顔をしている。


 この程度じゃねえぞ?


「レイ選手。試合開始のコール前の威圧行為は禁止です。次の警告で退場になります」

「はい、申し訳ありませんでした」


 ルルーナさんから警告を受けたので、素直に謝る。

 感情、魔力と共に押さえつけているが、あまり長くは我慢したくない。


「レイ選手、今のはどうしたのでしょう?」

「リネットと何を話してたのか分からないけれど、感情が荒ぶって魔力のコントロールに失敗したみたいね。それで、体内から魔力が噴き出てきたのよ」

「何と、抑え込んだ魔力で結界が揺れたのですか!?これは、一度レイ選手の本気が見てみたいですね………」

「えぇ、私も見てみたいわ。だから、今のは開始前の攻撃って訳じゃないようだから警告のみね」


 ナレーションで学園長が状況説明を行ってくれていたお陰で、俺の違反が予期せぬものであると会場も理解してくれていた。

 学園長、助かります。

 

「それでは、ブロック決勝を開始します!」


 そして、ようやく試合開始のゴングが鳴るようだ。


 リネットは、既に俺に杖の先端を向けている。

 攻撃する気満々だ。



 さぁ、かかって来いよ―――








◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇








「試合開始ッ!」



小炎玉リトルファイアーボールッ!」


 試合開始と同時に、リネットからスピード重視の先制攻撃がレイめがけて飛んでくる。

 事前動作無しのその一撃は、レイの顔に直撃する。


「おぉっと!?開始早々レイ選手が一発もらったぁ!?リネット選手は、その隙を突いて畳みかける構えだ!」


 リネットは、レイの視界が何も見えていない内に全てを決めるつもりだった。

 その為に『魔法を一つストックできる指輪』という魔法道具(マジックアイテム)をこっそり持ち込んでいた。

 そして、ポケットの中に『次に使用する魔法の効果を上昇させる』という使い捨ての魔法道具(マジックアイテム)も複数個仕込んでいてそれらを全て使用する。



 実は、トーナメント戦は魔法道具(マジックアイテム)使用禁止だ。



 元の世界のドーピングと同じく、選手自体の実力では無くなるし、金に物を言わせられる貴族が有利になってしまう。

 それの持ち込みを防ぐ為に入場前に持ち物検査を行うのだが、リネットは持ち物検査担当の教師と裏で繋がっている為、持ち込む事に成功していたのだ。


 ちなみにだが、武器も事前申請した物のみ持ち込み可能となっている。

 レイは、『左籠手、革靴、手袋』で申請を出している。


 数多の違反の下に成り立ったドーピングを行った後、リネットはお得意の【豪炎(クリムゾン)】をレイの真上に発動させる。




 その魔法の規模は、ステージを容易に飲み込めるほど大きく、観客席に伝わるほどの熱量を持っていた。




 結界のお陰で死なないとはいえ、当たれば只では済まないだろう。



「フハハハハ!私に楯突くからこうなるのだ!」



 会場にリネットの高笑いが響く。



「な、何という規模の【豪炎(クリムゾン)】でしょうか!?一回戦の時より圧倒的に出力が違います!」

「この規模、もしかして使用禁止の魔法道具(マジックアイテム)を―――」

「レイ選手、早くも絶体絶命か!?」



 ナレーターの実況の裏で学園長は何かに気付くが、それは誰の耳にも届かなかった。


 かなりピンチの状況の中、レイはスタート地点から一歩も動いていない。

 そして、今も身動き一つ取っていなかった。



「食らうがいい、私の()()()っ!【豪炎(クリムゾン)】ッ!」



 そして、そんな状態のレイめがけて『太陽』が降ってくる。


 ルルーナは一瞬だけレイの様子を窺った後、ステージの上から飛び去る。





 そして、『太陽』が地面に落ちた。





 『太陽』がステージに直撃した瞬間、落下の衝撃で発生した熱風が観客席を直撃する。

 結界越しのはずなのに、相当の熱量が最前列に吹き込んだ。


 そして、当たったと同時にステージが焼ける音が大きく響き、ステージ自体も多々ではすんでいないのが観客にも伝わった。



 観客は見ていた。


 ナレーターも見逃さなかった。


 学園長にも見えていた。


 ルルーナも確実に目撃した。





 レイは、直撃した。





 『太陽』は、一定時間ステージを飲み込み、全てを焼き払った後、蒸発するように消えていった。




 そして、黒い煙が黙々と上がる中、観客が見たのは―――




 リネット周辺以外、表面が溶解したステージと。



 その中で佇み、ドヤ顔を含んだ嗜虐の笑みを浮かべたりネットと。



 黒煙が上がるステージの上で―――





 ()()で立つレイの姿だった。





「な、何と何とぉ!ステージすらも溶かすあの一撃の直撃を受けて尚、レイ選手は立っています!しかも、傷が全く見当たらない!?これは一体どういうことだぁ!?」



 ナレーターは即座に実況席から、自身の驚きを伝える。



「ば、馬鹿な!?何故、あの一撃を食らっていて立っていられる!?無傷でいられるのだ!?」



 無傷で立つレイを見たリネットは、予想外の事態に動揺が溢れていた。









◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇









 舞い上がる黒煙の間から見えるリネットは、面白いくらいに驚き動揺している。




 あぁ、ざまぁみろ。




 確かに強力な一発だった。


 だが俺は、ドラゴンのブレスに耐えれる様に、【魔力操作(サイコキネシス)】で魔力密度を上げる特訓を行っているのだ。



 お前の小手先程度のイカサマをどれだけ詰まれようが、俺には全く効かない。



 努力を忘れ、才能に胡坐をかいたお前にやられるはずが無い。





 お前程度の男に負ける訳が無い。





「次は俺のターンだ」

「ヒィッ」



 俺が顔を上げ、リネットを睨みつける様にして見ると、リネットは引き攣った様な悲鳴を喉から零す。




「よぉく、見てろ」




 両腕に【王覇(オーラ)】を纏う。




「『必殺技』ってのはな」




 【王覇(オーラ)】を片腕に集中させた後、【二重詠唱(デュアル)】を使ってもう片方の腕にも纏う。




「『必ず』『殺す』『技』と書いて『必殺技』と言うんだ」




 左手を添えながら右掌をリネットに向け、【充填(チャージ)】を発動して魔力を溜める。




「小細工ばかり仕組まれたお前の技は必殺技じゃねぇ」




 溜まっていく魔力により、プルプル震える右腕を左手で抑えながら、右掌の出力口を絞り込む。




「こういうのが必殺技って言うんだッ!」




 限界量まで貯めた魔力を、右掌から放つ。







「竜にも届く一撃ッ!【金魔光線(レーザーカノン)】ッ!」







 解き放たれた虹色の極太光線は、リネットをあっさりと飲み込み、消し飛ばす。



 その時点で姿勢の維持の限界を迎え、右腕が真上に跳ね上がる。



 光線は観客席を縦断しながら真上へ撃ちあがり、空目掛けて伸びていく。



 十数秒後に光が消えたと同時に、ステージに貼られていた結界が音を立てて崩れ落ちた。





 そして、残ったのは真っ二つになったステージと、一直線に裂けた雲の浮かぶ空だけだった。





「………」





 会場全体は無言で包まれる。





「………き、決まったぁー!巨大な光線が、地を割りッ、結界を砕きッ、空を裂くッ!レイ選手、圧巻の『必殺技』がリネット選手を一撃で葬り去りましたぁ!!」





 ナレーターの興奮した叫び声が会場に響いた瞬間、爆発的な歓声が会場を包んだ。

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