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(新)幼馴染と行く異世界転生~亜人を保護しましょう~  作者: 春風
第5章.学園編 荒ぶる学園トーナメント戦
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3.観戦、または控室

「い、今のは一体何が起きたのでしょうか………!?私にはさっぱりわかりませんでした………!」



 ナレーターが、動揺を隠せないながらも言葉を紡ぐ。

 咄嗟の事態でも仕事を忘れない、素晴らしい根性だ。





 静まりかえる会場。



 回復士(ヒーラー)が大柄の剣士(フェンサー)を一撃でぶっ飛ばす、という理解の範疇を超えた現象に、只々唖然とする観客。

 もれなく教師陣ごとだ。



 そんな中、学園長は冷静に状況を説明する。



「今の一瞬で、レイの魔力コントロール技術が卓越したものである事と、素のSTRの高さが垣間見えたわね」

「というと?」


 学園長の言葉に、ナレーターが観客全員の疑問を代弁する。


「まず、バーデアの大剣を止めたのは、右腕に魔力を集中させて防御力を底上げしていたわ。その魔力を練る速度があまりにも速かったから、周りには素手で受け止めたように見えたの。しかもあの速さで、相当な魔力を練り込んで右手に集中させていたわ。あれほどの魔力なら、大剣が直撃しても切り裂かれる事は無いわ」


 そこで、学園長は一旦解説を区切る。


「でも、その魔力操作はあくまで防御力を底上げ。実際に大剣を片腕で止めて見せたのは、素のSTRでしょうね。大剣を破壊しながらバーデアを場外に吹き飛ばした時も、集めた魔力はあくまで補助であり、STR頼りの攻撃でしょうね」

「ひ、回復士(ヒーラー)であのSTRなのですか!?凄まじいですね………!」


 学園長の解説を聞いて、ナレーターは驚きの表情を浮かべる。

 殆どの観客が、ナレーターと同じ表情を浮かべていた。


 教師陣の驚きに満ちたあの顔と言ったら、見ものですわ。


「えぇ、あの子はあれだけのセンスを持っているけれど、それでも最適性は回復士(ヒーラー)よ。それに加え、召喚士(サモナー)の適性も持っている二重職(ダブル)だったはずよ」

「だ、二重職(ダブル)で、更に希少職の召喚士(サモナー)なんですか!?しかも、両方後衛職だから、STRに補正は無い筈ですよね!?ふぁー、本当に才能の塊みたいな選手ですね………」


 ただでさえ驚きに満ちた会場は、学園長の更なる爆弾投下により、動揺で満ち溢れる。

 勿論、この情報公開は俺の許可済みだ。





そんな初戦で会場を驚かせた張本人である俺は、周りの目を気にすることなく退場済みである。


 現在はステージ控えのベンチにて、シロアが入れてくれた紅茶を飲みながら次の試合をボーっと見つつ、考え事をしている。

 因みに、紅茶は小粒の角砂糖を7つだ。これだけは譲らん。



 次の試合を見てる限り、次の対戦相手は、拳闘士(グラップラー)のヴェルって人が来るだろう。


 ヴェル選手は、暗い紅色の猫耳をした猫型獣人族の女性だ。

 非常にスレンダーな、ワイルド系美女。美脚。

 特徴的な猫耳やホットパンツからはみ出る尻尾は、俺の幼少期に非常にお世話になった赤猫族メイドのリネアと比べると、野性味あふれる毛並みをしている。

 同じ赤猫族だからか分からないが、何処かリネアの面影がある。


 ヴェル選手の相手はレイピア使いの剣士(フェンサー)なのだが、レイピアの攻撃は全く直撃しない。

 速度のあるジャブを連発して相手を牽制しつつ、相手が焦れて隙が出来れば強打を打ち込む事で、相手にペースを掴ませずに試合のリードを奪い続けている。

 中々の技巧派だ。そして、素晴らしい速さの持ち主だ。


「そこまでです!勝者、ヴェル選手!」


 と言っている間に、決着がついた。

 勿論、ヴェル選手のKO勝ちだ。


 試合が終わると同時に、ステージ上を【範囲回復(エリアヒール)】の光が包み、両選手の傷を癒す。


 この【範囲回復(エリアヒール)】は、ステージ横に控えるベールを被った修道女―――シトラスの仕業である。

 各試合が終了するごとに、シトラスが回復させるというアルバイトだ。

 教師陣に【回復魔法】を使える先生が居ないかららしいよ。


 シトラスは、両膝を付き、両手を胸の前で合わせながら【回復魔法】を唱えている。

 その姿は、どう見ても神に祈りを捧げるシスターなのだが、服の上からでもわかる爆乳と、スリット越しに見えるストッキングに覆われた太ももが、とても艶めかしい。

 その体で、シスターは無(ry


 因みに、シトラスは元々の姿を知るティオ様とも仲良くなっており、試合の合間には精霊教談義で盛り上がっていた。

 今度、マルスメティアに観光に行く際は、シトラスも連れて行こうと思う。


 というより、どこかで時間を作ってデュエラ様に挨拶に行かないとな。

 それを言ったら、もう正体もばれてる事だし、セルディマの所にも行っとくか。




 そんな感じで考え事をしていたら、もう4試合目が始まっていた。




 4試合目は、魔術師(マジシャン)リネットVS弓士(アーチャー)テュリスの試合だ。


 この『リネット』という人物が、シロを付け狙う『伯爵家長男・学園の実力者・イケメン』と三拍子揃った厄介な人物だ。

 リネットが学園内の貴族派の先頭を切っているので、どうにかここで叩き潰―――諦めて貰いたい所だ。



 そんなリネットの試合は、終始リネットが圧倒して相手を追い詰めている。

 というか、アレ、わざと止めを刺さないで甚振ってねぇか………?


 というのも、相手の弓士(アーチャー)の矢を完全に防ぎながら、じわじわと炎でダメージを与えているのだ。

 あのコントロールが出来る実力があるなら、一撃で沈めるのも簡単だろうに。

 面白くない。


 テュリスは、炎のダメージに苦しめられながら回避を続けていたが、両足がやられたようで地面に倒れこんだ。


「フフフ、無様だな。私の相手になったのが運の尽きよ。いい加減止めを刺してやろう!【豪炎(クリムゾン)】ッ!」


 リネットも飽きたのか、ステージ上空に大きな炎の塊を作り、相手にとどめを刺す様だ。


「ま、まいった………!」


 それを見たテュリスは、即座に降伏宣言をする。


 だが、リネットは炎を消す事無く、魔法を発動させたままだ。


「そこまでっ!勝者、リネット選手!」


 ルルーナさんのコールを聞いても魔法を消さない。

 しかも、リネットは愉悦に満ちた笑みを浮かべながら、そのまま【豪炎(クリムゾン)】をステージに向けて落とした。



 あの野郎、試合は終わってるのにまだ攻撃する気か!?



 終了のコールとともに、シトラスが【回復魔法】を発動させるも両足の怪我は重く、魔法直撃までには回復は間に合わない。

 その為、テュリスは避ける事も出来ない。



 あわや、攻撃が直撃する、と誰もが思った瞬間―――





 ステージを覆うほど巨大な炎は、十字に切り裂かれ、掻き消える。





「な、何ッ!?私の【豪炎(クリムゾン)】が!?」


 リネットは驚きの声を上げる。


 そんなリネットに、炎を掻き消した張本人から冷ややかな声がかけられる。




「私は、試合終了と申し上げたはずですが」




 炎を消したのは、ステージ上で二本のシミターを抜いたルルーナさんによるものだった。

 あのシミター、何処に隠してたんだ?


 ルルーナさんは、冷徹な瞳でリネットを睨みつけている。


「敗者を甚振る貴方の行動は明らかにルール違反です。次に同様の行為を行った場合、失格とさせていただきます」

「な、何だと、文句があるのか!?この私を誰だと―――」


 ルルーナさんに指摘され、リネットは権力を盾に逆切れしようとした。

 だが、その言葉は最後まで紡ぐ事は出来なかった。




「関係ありません。ルール違反です」




 ルルーナさんは、リネットを肉薄し眼前にシミターを突き付け、言葉を強制的に断ち切る。


「国家認定の審判に文句を仰るおつもりでしたら、反逆罪と同罪になりますが、それでもまだ何かありますでしょうか?」

「くッ………!?くそッ!」


 リネットは、ルルーナさんの威圧に圧倒されながらも、横柄な態度を崩す事無く退場する。



 やっぱり、あいつにシロは渡せないな。

 シロの頭を撫でつつ、俺は改めて再実感した。


 因みにシロは俺にされるがままに撫でられていた。

 顔はいつも通り無表情ながらも、目を瞑り満足そうに尻尾がパタパタしていた。

 可愛い。





 現在、Bブロックの試合中。


 Bブロックは、学園一位の生徒会長さんが圧倒的に強い。

 事前情報通り、生徒会長はエルフだったのだが、試合中に俺の事をチラチラ見ていたので、もしかしたら俺の事を知っているかもしれない。

 夕莉には、俺がクリカトル学園にいるって話してたしね。




 俺は、次の試合の準備をする為、一旦控室に戻っていた。



「ん?お前は………」



 控室に入ると、そこには次の対戦相手のヴェル選手が椅子に座っていた。


 足を組み、背もたれにもたれかかりながら飲み物を飲むその様子に、試合への緊張は見当たらない。

 平常心で戦える奴は、基本厄介だから気を付けるかな。


 って、何かめっちゃこっち見てるんですけど………?



「なぁ、俺から一つ質問良いか?」



 うぉ、話しかけてきた!?


 突然、ヴェル選手から話しかけられて驚いた。

 『俺っ娘』だった事も含め、ちょっとびっくりした。


「なんでしょう?」


 何とか、動揺を殺して返答を返す。


「お前がさっきまでベンチで一緒に過ごしてた銀狼族の少女、いるだろ?」


 ん?シロの事か?


「えぇ、それがどうかしましたか?」

「あの子はお前の奴隷だと聞いてるんだが、本当か?」


 ヴェル選手は、俺の事を凄む様に睨みつけてくる。


 え、まさか、お怒りの琴線に触れちゃった系?

 獣人族は結束が強いと聞くし、もしや同族が奴隷なのが気に食わなかった感じかな。


「えぇ、本当の事ですよ」


 嘘を付くわけにもいかないので、正直に話す。

 さて、何と言われるか。


「そうか」


 俺の言葉を聞いたヴェル選手は、そう呟き一息つく。




「アイツも運が凄く良かったんだな」




 と、そう零した。


「………」

「………」

「あれ、それだけですか………?」

「あぁ」


 俺が疑問気に問いかけると、ヴェル選手は頷く。

 あれま、予想外。


「であれば、何故先ほどのような質問をしたのか、聞いてもよろしいですか?」


 俺は気になったので、聞いてみる。


「あぁ、いや、獣人の奴隷少女が人族に仕えてるのに、あそこまで笑顔で生活できるっていうのは、お前はいい主人なんだろうなって思ったのさ。それを見て『獣人に優しい良い主人はいる』って言ってた姉さんを思い出したんだよ」

「姉さん、ですか?」


 何故、そこで姉が出て来るんだ?


「あぁ、すまん、説明してなかったな。俺には姉が一人いるんだよ」

「はい。その姉様がどうしたんですか?」

「十年くらい前だったかな、住んでた村が飢饉に襲われてな。その時に、17歳の働き盛りの姉さんが、村にお金を送る代わりにって言って、人族の街で借金奴隷になったんだよ」

「人族の街で奴隷とは、それはまた………」


 それは凄い覚悟がいる事だろう。

 只でさえ、人族は獣人の事を格下として扱う。そんな環境に成人迎えたての獣人の女性が奴隷としていくなんて、色んなモノを失う覚悟だったに違いない。


「あぁ、俺も正直姉さんは帰ってこない事も覚悟してた。もしくは、戻ってこれても色々ズタボロになっていると思っていたよ」


 ヴェル選手は悲しそうな表情でそう話す。


「だが、そうはならなかったんだ!7年くらい経った頃だったかな、姉さんはひょこっと帰ってきたんだ」


 ヴェル選手は表情を明るくしながら、そう話す。


「その時の姉さんの様子は今でも覚えてるよ。髪や肌は綺麗で、良い生地の服を着て、姉さんらしいニッコニコした笑顔で元気一杯はしゃいでた」


 思い出すように話すヴェル選手は、嬉しいという雰囲気が溢れていた。


「あの時は村中総出で姉さんの帰りを喜んだよ。宴までする始末さ。そん時に姉さんが、自分から人族の街でどう暮らしてたかを教えてくれたよ。何と、その国の第三王子直属のメイドをしてたらしいのさ」


 ん?


「しかも、仕えた王子とその奥方は、獣人である姉様を色々守ってくれたらしいのさ。それのお陰で姉様は7年間何不自由なく生活できた、と嬉しそうに教えてくれたのさ。その時の姉さん、自分の仕えた主人の自慢ばっかりしてたんだよ」


 んんん?


「き、興味本位なんですが、その姉さんのお名前は?」


 俺はその話を聞いて、思わずそう聞いてしまった。

 ちょっと思い当たる節があり過ぎて、ドキドキしてる。


 そんな俺を尻目に、ヴェル選手はサラっと教えてくれる。




「名前か?『リネア』って言うんだ」




 はい、ストライクー!


 面影があると思ったが、何とヴェル選手はリネアの妹だったのか。


「その、リネアさんは今どう過ごしているんのですか?」


 シロを出てからリネアとは全く連絡を取っていなかったので、少し心配ではあったんだ。

 まぁ、あのリネアなら元気いっぱいで間違いは無いと思うが。

 『幼馴染と一緒に店を開きたい』と言っていたので、そちらの方が気になっている。


「姉さんの今か?数年前に、姉さんの幼馴染と一緒に料理店を開いてから、ずっとそこで働いてるよ。姉さん、王子付きのメイドをしてたから料理が凄く旨いんだ!」


 嬉しそうに自分の姉自慢をするヴェル選手に対して、俺も一緒に頷いてしまいそうになった。


 あぁ、俺もよく知っている。

 リネアは、俺のメイドをやる様になってから、母さんと一緒に料理を一杯勉強していた。

 最後の方なんか、シロのメイド師匠になってたしな。


 そうか、幼馴染ともうまくいったのか。それは素晴らしい。


「リネアさんは、その幼馴染と結婚を?」


 思わず聞いてしまった俺に対し、ヴェル選手は不思議そうな表情を浮かべる。




「結婚?いや、姉さんの幼馴染は女の人だよ?」

「えっ!?」




 ヴェル選手の言葉に、俺は驚きの声を上げてしまう。


 幼馴染が女の人って、俺知らなかったよ!?

 てっきり、男の人かと思ってた。


「何を驚いているんだ?」

「い、いえ、幼馴染と聞いてつい男の人かと思ってしまったもので………」

「ははっ、それはとんだ勘違いだ。姉さんの幼馴染の人は既婚者だしな。万が一もねぇよ」

「そ、そうですか………あはは」


 思わず苦笑い。

 何だ、俺の早とちりだったのか。


「さて、そろそろ試合か」

「本当ですね」


 ヴェル選手に言われて初めて、時間がかなり過ぎていた事に気付いた。


「いや、お前が噂通りの奴じゃなくてホッとしたぜ」


 ヴェル選手は、リネア譲りのニコッとした笑みを浮かべて、そう零す。


「俺ら獣人からしたら、あいつの事が気になってしょうがなかったからな。そこんとこが試合前にハッキリしたのは良かったよ」


 そして、明るい笑みを獰猛な物に変化させる。




「もし噂通りの奴だったら、刺違えてでも殺す気でいこうと思ってたしな」




 怖ッ!?


「あはは………それは俺としてもよかったですよ………」


 本当。


「でも、次の試合、全力で来てくださいね。負けませんから」


 だが、あえて俺は挑発していく。

 俺は本気で来る相手を圧倒したいんだ。


「ほぅ、言うねぇ………!」


 俺の言葉を聞いて、ヴェル選手は舌なめずりする。


「さっきの試合を見てたが、お前は底が知れねぇ。だから、元から手を抜くつもりは無かったが、お望み通り本気で行ってやるよ」


 ヴェル選手はそう言って、控室を出ていく。


 さて、俺も行こうか。





「学園トーナメント戦、二回戦に移ります!」



 会場にルルーナさんの声が響く。



「二回戦Aブロック、一試合目!回復士(ヒーラー)、レイ選手VS拳闘士(グラップラー)、ヴェル選手の試合です!」



 試合のコールに、観客席から歓声が上がる。



「さて、約束通り全力で来てください」



 俺は、右足を引いて半身になり、手袋をつけた両手を前に構える。

 よく格ゲーとかで見る構えだ。



「お望み通り、俺の全力見せてやるぜ」



 向こうも、右足を引き両手を前に構えるが、俺よりも腰を落として両手の構えも違う。



 あれは『豹の構え』か!



 腰を落とす事で、此方の攻撃に当たりにくくなり、それと同時に俺に対して下からの攻撃を優位に行う事が出来るという、何処かの格ゲーで見た奴だ。


 俺は格ゲーは苦手で全然やった事は無いが、恐らく格ゲー通りの動きはしないだろう。

 格ゲーはあくまでゲームだし、リアルで出来るかと言ったらどうなんだろうな?

 まぁ、この世界まで動きが伝わっている訳は無いので、気にしないで行こう。





「それでは、始めッ!」





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