6.8歳、現状の説明と黒エルフ
どうも!8歳になったレイヤードだ。
前回から六年経ったが、その間の振り返りをしていこうと思う。
バルラの森で一週間療養を行った後、城のある町に戻った俺らは直ぐにシロの奴隷登録をする為に、城下町の奴隷商の所に向かった。
いきなり覗いてくる奴なんかいないと思うが、奴隷商に入るまでの町中で【鑑定】持ちがいないかドキドキでした。
奴隷商の店に入っても、見た目だけでシロを売って欲しいという奴隷商人を丁重にお断りしたり、シロに対して【鑑定】を使わない事を【契約】というスキルで決めたり(流石に犯罪歴の有無は確認した)、何故か母さんでは無く俺の奴隷にする事になったり、母さんが持ち込んだ首輪の初期設定を行ったり、とだいぶバタバタした。
何とかかんとかシロを俺の借金奴隷として登録し、首輪の効果でシロの種族と称号を隠す事に成功した。
そしてシロを城まで連れて帰ってひと悶着あったが、奴隷商の時の比じゃないくらい揉めまくったので全略!
結果だけ言うと、俺と周りに完璧な亀裂が出来た。
いやー、嫌われ具合が凄い凄い。
メイドさんなんかは普通に接してくれるんだが、貴族連中とか俺なんかいないように扱い、そこらで悪口が聞こえる。
特に俺の家族なんか―――
「ガルザードの王族としての誇りは無いのか、このゴミがっ!」(第一王子)
「まったく、無駄飯食らいを増やしてどうするつもりなんですかねぇ。兄弟として恥ずかしいんですよ、屑が」(第二王子)
「………おまえは誰だ?」(国王)
上二人は、俺を見ればすぐに罵倒の嵐。父様に関しては、俺の事を忘れてしまったらしい。
いやー、扱いが酷過ぎて泣きそう。
まぁ、そこはどうでもいい。いや、良くないけど。
この件もあり、城内での居心地が本当に悪くなった。
その為、シロを連れて城に戻ってからは、自分の部屋か母さんの部屋でしか過ごさなくなった。
貴族としてのマナーなどのレッスンの時は連れ出されるんですけどね。
なので、6歳になった辺りからは、貴族としてのレッスンが無い日は城を抜け出し、一般人として城下町に降りる様になった。
その中で、城下町のにある一つの孤児院によく遊びに行く様になり、そこで同年代の友達をようやく作る事が出来た。
………男子には避けられているんで、女子なんですけどね。【女群集の呪】強すぎる。
それと、最近MPの増加量が少しずつだが減ってきた。
だが、それでも300を超えたMPを手に入れる事が出来たので、もう十分ではないかとも思っている。
このMPを生かす為に、4歳くらいから母さんに魔法を教えてもらった。
母さんも俺の事情を知っているので、自衛の為の手段として細かく教えてくれた。
そこで分かった事が一つ。
どうも、俺は属性に関する魔法を使えないらしい。
属性魔法の前に、魔法の基礎として生活魔法について母さんから教えてもらってはいたのだが、『ほんの小さな種火を起こす』『そよ風を吹かす』といった、殆どの人が出来る生活魔法の部類ですら出来なかった。
母さんですら、これには苦笑いだった。
だが俺は、相当に焦ってしまった。
せっかく魔法が使える様にMPを鍛えたのに、魔法が一つも使えなければ意味が無いし、攻撃の手段が減ってしまう。
どうにかならないか、母さんに相談してみた所。
「う~ん。ここまでMPが多いのなら【魔力操作】を覚えましょうか」
【魔力操作】とは、自分のMPを使って微精霊自体を『魔力』としてコントロールする技術の事らしい。母さんも覚えているスキルだ。
その中で、【魔力操作】で行った一定の動作や状態を技として認識されれば、一つのスキルとして登録できるのだとか。
【魔力操作】の強みは、自分で自分に合った様々な技をいくつも作る事が出来るので、手札を沢山増やす事が出来る事。
また、それら全てがオリジナルのスキルになるので、相手の知らないスキルとして優位性も取れる事。
更に、スキルに登録出来ていなくても、その場で開発したり状況に合わせて使うことが出来るので、咄嗟の対応力が上がる事と応用も効きやすい事。
まさに万能である。
母さんの持っている【氷結武装】や【氷地獄】といったオリジナルスキルも、【氷結魔法】を【魔力操作】を使ってコントロールし、自分の使いやすい様に変化させて作ったのだとか。
このスキルの問題点は二つ。
一つ目は、思い通りに操作出来る様になるには、相当の鍛錬が必要な事。
二つ目は、通常の魔法と比べて、スキル使用時のMP消費量が大きい事。
一つ目の問題点は、目に見えない第三の手を作り出して動かしていると言ったらわかるだろうか。
要するに、慣れとコツや技術を掴むまでは、手探りで覚えていくしかないのと、魔力が透明なので変化出来ているのかがわかりにくく、成長出来ているかどうかもわからないのだ。
母さんの場合、【氷結魔法】という目で見える魔法を変化させて作った為、コントロールさせたい所がわかりやすかったのと、実際に魔法を変化させるとどうなるかを目で見てわかったので習得出来た。
俺の場合は【属性魔法】が使えないので、純粋な魔力を操作させる必要がある。
この場合は、魔力自体が目に見えないので、変化が見えない所が問題になる。
だが、この問題点は【魔力探知】というスキルを覚える事で解決した。
【魔力探知】は、周囲の魔力を感知して魔力の位置を把握するというスキルで、覚える事が出来れば魔力の流れを掴めると思ったのだ。
こういう時、一般の転生者達は『魔力』という存在を認識するのに時間がかかるのが定番だが、常に【継続回復】を掛け続けて魔力垂れ流しの俺には、魔力の流れを掴む事は簡単だった。
だって、二年も使い続けてたら、自分から何か溢れてるのが流石に分かる。
しかも、コントロールの練習ついでに【魔力操作】で自分の魔力を抑える練習をしていたら、【魔力遮断】という新しいスキルを覚える事が出来た。
このスキルは自分の魔力を内側に抑える事で、【魔力探知】で感知出来なくする事が出来るスキルだ。
もう万々歳である。
二つ目の問題点は、俺には関係なかったね。
「普通は二つ目の問題点のせいで使う人が少ないんだけどねぇ………」
母さんには呆れられてしまったが、どうにかMPを使う手段は手に入れる事が出来た。
【魔力操作】を覚えた後、俺はまず最初に、魔力を固めて飛ばすという基礎的な操作で【魔力弾】という魔法を作った。
やっぱり遠距離は大事ですよ。
ただ、ノーモーションで空中の任意の場所に魔力を固めるのがどうにも難しく、うまく出来なかった。その為、親指と人差し指と中指の三本を立て、手全体を使って拳銃の形を作り、指先に魔力を固めてから飛ばす、というイメージしやすい形を作る事で解決する事が出来た。
見た目の年齢に相まって完全に拳銃ごっこである。
しかし、固めた魔力をそのまま飛ばすのではなく、『筒状にする』『流線型にする』『先端をとがらせる』みたいな感じで、実際の銃弾っぽくなる様にイメージを固め、練習を繰り返したので威力はそれなりに出ていると思う。
でもね、発射時の反動まで再現しなくてもいいんですよ?
【魔力弾】の威力を上げると、発射の反動で腕と肩が死にそうになるので、身体面の強化が急がれる。
またもう一つ、【魔力操作】の事を聞いてみた時からやってみたかった魔法を開発中だ。
それは完成したら報告しようと思う。
他には、【継続回復】による身体強化は順調だと思う。
最近はMPがだいぶ増えてMP切れを起こさなくなってきたので、常に強化状態でいられるようになったのは大きいだろう。
その強化状態で身体を効率良く鍛える為に、5歳くらいから騎士団の練習に入れてもらっている。
そこでは主に、剣の素振りから足運びなどの基本的な体の動かし方を学んでいる。
子供だからしょうがないね。
周りの騎士達からは変な顔をされるが、真面目にやっていれば何も言われないので問題ない。
子供にしては、それなりにハードなメニューを組んでもらっているが、【継続回復】のおかげで何とかメニューを消化する事が出来ている。
また騎士団の中で、一人めちゃくちゃ剣術が綺麗な人がいたので、その人に頭を下げ続け、何とか弟子入りを認めてもらって、一昨年からは騎士団の練習後に1対1で鍛えてもらっている。
一本でも取れる気配が毛ほどにも無いが、まだ子供だから伸びしろがある、と開き直っている。
そういえば、実はリネアが借金を完済しきって、去年故郷に帰っていった。
別れ際はもの凄く大泣きだったよ。
「坊ぢゃんの、グスッ、おがげで私は………私は無事に7年も働き続げる事が出来まじだぁぁ!」
あの時は、とりあえず鼻水を拭けと言いたかった。
まぁ、俺も少し泣きそうだったのを誤魔化そうとしていたのは否定しない。
リネアは、地元に戻ったら目標があるらしい。
何でも、地元の幼馴染と一緒にお店を開きたいのだとか。
幼馴染か。
是非ともうまくいって欲しいものである。
「坊ちゃんもシロちゃんも、私の村に絶対に来てくださいね!?サービスしまくりますから!」
こんな感じで、最後の方はいつもの様にテンション高めで故郷に帰っていった。
獣人の国サフィルスか………。
シロの事も何かわかるかもしれないし、ぜひ行ってみたいな。
人生の目標に追加だな。
リネアの代わりに、仕事はシロが全て引き継いだ。
シロは、リネアがいなくなるまでに従者としてのイロハを学んでいたので、今ではリネアの代わりとして遜色ないレベルに達している。
シロもここ数年で成長した。
煌めく銀髪を腰の辺りまで伸ばし、顔も美人になるのは確定しているといわんばかりの可憐さまで手に入れている。
それに、元々物静かな雰囲気だったのが成長してクールっぽさが増し、八歳にしては大人びた雰囲気まで出し始めた。
もはや、カッコいいレベルにまで来ている。
絶対男女両方からモテるタイプと思う。
それに元々モフモフだった耳と尻尾は、健康的な食事と適度な運動にて艶が増し、触り心地が最高である。
俺が訓練を始めたタイミングで、シロも戦闘訓練を一緒に始めた。
俺と初めて遭遇した時に魔物にやられかけていた時から、戦える力が欲しかったらしい。
ここで神獣としての力をシロはいかんなく発揮した。
身体能力が半端なかった。
最初の時点で、元々身体強化に務めていた俺と同等の戦闘力を発揮したのだ。
更に今では、俺と力では近いものの、素早さに関しては全く勝てなくなっている。
ついこの前だが、AGIは既にCに突入した。
それに加えて【加速】を使えるシロは、間違い無くスピードタイプだった。
兄貴の面目丸つぶれである。
まぁそんな事よりも、自分の妹分がこんなに強いと、この先どこまで強くなるか、という期待でワクワクする。
それに、強くなるたびに「褒めて褒めて」と言わんばかりに俺の下へ走り寄ってきて、尻尾をパタパタさせながら上目遣いで見つめてくるのだ。
もう、嫉妬なんか抱く暇なく可愛くてしょうがない。
シロなら最強クラスの強さを得ると思う。いや、得る(兄バカ)。
また、エルフの族長としてようやく活動し始めた夕莉だが、最近すごく冷たい。
まぁ、マザコンに加えてシスコンにもなりかけな幼馴染はやばいと俺も思う。
まぁ、そこはどうでもいい。いや、良くないけど。(二回目)
つい最近まで、エルフの里では一つの問題が起こっていた。
なんでも、魔の森を超えた北側には吹雪が吹く山岳地帯があるらしいのだが、そこで暮らす黒い肌をした女エルフ達が森に降りて来て、元々森にいたエルフ達と揉め事を起こす様になったのだという。
エルフとダークエルフの仲が悪いのは異世界の定番だな。
ダークエルフをどうすればいいのかは、俺も夕莉から相談を受けた。
俺は、山に住んでいた筈のダークエルフが降りてきたのには事情があるんじゃないか、と思ったので「何か理由があるんだろうし、ダークエルフとコンタクトをとってみるのはどうか」と言ってみた。
夕莉はその次の日に、「危険だ!」「無駄だ!」「やめろ!」と止めるエルフ達やハイエルフ達を一人で蹴散らし、ダークエルフの下に一人で行ったらしい。
それを聞いた俺は、夕莉らしい大胆でアクレッシブな行動だと思った。
元の世界であった夕莉らしい代表的な事件を教えよう。
小学校の頃、夕莉の友達が消しゴムを隣のクラスの男子から嫌がらせで取られて泣いていた事がある。
それを見た夕莉は、「消しゴム無いと、間違った時に字が消せないでしょ!」とちょっとずれた事を言いながら殴り込みをかけ、問題の男子全てを薙ぎ倒した事がある。
これ以降、俺らの学年では消しゴムを取る奴はいなくなった。
この事件の様に、何処かずれていながらも、自分の意思をはっきりと行動に移し、目標を達成させる。
これが夕莉だ。
今回も、ダークエルフの所に一人で向かい、止めるエルフや襲い来るダークエルフを全て一人で蹴散らし、全員を戦闘不能にして集めてから、ダークエルフに色々聞いたらしい。
まさしく『説得(物理)』である。
で、ダークエルフ達曰く、元々自分達が住んでいた住処にドラゴンが現れて、暴れ回り、犠牲を出しながらも逃げてきたらしい。
戦える男達は逃げるダークエルフ達を守る為にドラゴンに挑み、山岳地帯から降りてこられたのは老人と女子供だけしかいなかったとか。
その話を聞いた夕莉は、ダークエルフ達を村の仲間に入れた。
勿論「嘘だ!」「我々を騙すつもりだ!」「中から暴れまわる気だ!」と反対意見が沢山出たらしい。
その意見に対し、夕莉はエルフ達やダークエルフ達に対して―――
「なら悪い子は私が全て潰すわ。誰であろうと」
と言って、敵味方全てを黙らせたらしい。
俺の幼馴染は異世界でチートを得て、恐ろしい存在になっている様だ………。
前作よりも、内容を濃く出来ないか色々考えていますが、中々難しいですね。
もっと、主人公以外にもスポットライトを当てていけるといいのですが。