4.反省、自分と母さんの事
カミアのステータスを一部変更しています。
「さて、何から言えばいいかしらねぇ」
ロッジハウスに戻ってすぐ、母さんはリネアに子犬を洗うように頼んだ。
子犬は、最初は俺の傍を離れなかったが、俺が頼み込んだら渋々リネアについていった。
もしかしたら、言葉がわかってるのかもしれない。頭のいい子だと思う。
そして今は母さんと部屋のテーブルで向かい合って座っている。
「まず一つ目。あれだけ一人で動いちゃダメって言ったのに走って行っちゃった事。私達から離れたら、私達はあなたの事を咄嗟に守れないのよ?」
母さんはそう言って右手の人差し指を立てる。
いつものニコニコした顔じゃなく、真剣な顔をしていた。
本当に怒っている事が伝わる。
「二つ目。小さいとはいえ魔物に不用心に近づいた事。もっと大きい魔物だったら食べられてたかもしれないのよ?」
そういって、中指も立てた。
「三つ目。噛みつかれたのに避けなかった事。あの魔物が何か病気を持っていたらどうするの?」
薬指まで立ち上がった。
あぁ、その考えは無かったな………。
これは確かに不用心だった。
今の俺じゃ病気までは回復できないしなぁ。
「レイはこんなに悪い事をして、母さんやリネアに心配をかけたのよ?何を言うべきかしらぁ?」
そう言って、少し悲しそうな顔をする母さん。罪悪感が半端じゃない。
「母さん達に心配かけてごめんなさい!!」
俺は、テーブルにぶつけそうな勢いで頭を下げる。
本当に今度から、もうちょっとしっかり考えて行動しよう。
「すぐに謝れるのはいい子よ。リネアにも後で謝っておきなさいね?」
母さんはニコニコした顔に戻ると、そう言って俺の頭を撫で、俺をぎゅっと抱きしめる。
家の母さん、マジで包容力すごい。
前の世界の母親なら、俺に反抗期は来ないと確信出来るレベルの包容力の持ち主。
………着痩せするタイプなんですね、そうですか。こんな状況でそんな事を考える俺最低じゃないですか。
俺自身がある程度の精神年齢だからなのか、母さんが偶に母さんに思えない時があって本当に困っている。どうも、母親にしては若すぎる気がするのだ。
そんな不純な思いの罪悪感もあり、母さんから離れようと思ったが抱擁が解けない。
「さて、そんないい子のレイなら母さんの聞きたい事もわかるわよねぇ?」
うっ、頭が捕まっていて逃げられない。
しょうがないので、俺は1歳くらいからなぜか回復魔法が使えて、自分の怪我を治しているうちに回復できる量が増えた、と説明した。(頭は開放してもらえたので、対向に座ったままだ)
神様云々は信じてもらえないと思ったし、変人扱いされて母さんに嫌われたくなかった。
前世では、母さんの記憶はない。
妹が生まれてすぐに病気で亡くなってしまった為、物心ついた時にはもう父さんしかいなかったのだ。
父さんには本当に申し訳ないが、幼い頃には何回か母さんが欲しいと思った事もある。
なので、この世界での母さんであるこの人に嫌われてしまうのはとても嫌だった。
だから、大事な所はぼかして説明したのだが―――。
「あらあらぁ、嘘おっしゃい?生まれた時から使えていたでしょう?」
と、何とも無かったかのように母さんは言う。
えぇぇぇぇ、嘘、バレてるじゃん、何でぇ………?
「えっ?何で知ってるの?」
隠そうと思っていたのも忘れて思わず普通に聞いてしまったが、それくらい驚いている。
え、本当に何でバレてるんだ?
「母さんねぇ、実は【鑑定】というスキルを持ってるのよぉ」
「え」
ニコニコしながら衝撃の事実を暴露する母さん。
思わず声が漏れる俺。
【鑑定】というとアレですか?異世界恒例の?ステータス見れるやつですよね?
「その顔だと、やっぱりスキル名だけで分かる様ね?」
しかも、俺の表情を見て更に追い打ちがかかる。
やっぱりって、そんな確信どこから………?
「レイが初めて母さんの部屋のベットで目を覚ました時に、初めてステータスを見たのよ。その時には【回復魔法】持っていたものねぇ」
まさか、あの目が光っていたアレか!
「それに生まれた時から凄い称号もいっぱい持っていたじゃない?それを見て母さん、レイの事将来有望だと確信したわよぉ」
そう言って、母さんは自分の事のように誇らしげに胸を張る。
「それに生まれてすぐからずっと魔法を使っていたでしょう?今ではMPが母さんよりも多いものねぇ。しかも一歳くらいには新しい魔法まで作っちゃって。ほんとに自慢の息子だわぁ」
え、そっちもばれてるんですか!?
確かに常にMPを使い続けていたおかげで、MP上限は相当増えたと思う。
ていうか、増えすぎた。
伝説のエルダーエルフである夕莉よりも増え、200を超えたのだ。
予想より増えた理由を夕莉と話し合った事がある。
実は【回復魔法】は他の属性魔法に比べて使用MPが多いらしい。
その為、赤ん坊だった俺の体に相当の過負荷が体に掛かったと思われる。だから、俺の体の防衛本能が働いてMP切れを起こさない様にMPの上昇率が高くなったのではないか、と推測している。
増えすぎで困る事はないのでそこは嬉しい。
「それに【魔力探知】と言って、魔力を探知できるスキルもあるのよ。レイは常に【魔力探知】の反応の中でもひと際強かったわぁ。気づかない方がおかしいわよぉ?」
待ってくれ、そのスキルも初耳なんですが………。
「じゃあ、つまり母さんは僕が普通じゃない事を最初から知っていた………?」
俺は思わず素が出た状態で、そう問いかける。
実は母さんから気味悪がられていたのではないか、そう考えてしまい視線が無意識の内に下を向いた。
どんな反応が来るのか、拒絶されるのではないか。
対面に座る母さんの顔を見るのが怖かった。
だが、母さんはいつも通りの様子で言葉を返してくれる。
「えぇ、知っていたわ。我が子ながら、面白い子だと思ったわよぉ」
「えっ?」
母さんからの予想外の言葉に、俺は驚いて顔を上げる。
母さんは、いつもの様にニコニコした顔をして、少しドヤ顔のような表情だった。
自惚れじゃなければ、まるで俺の事を誇らしく思っているような顔つきだった。
「………気味が悪くなかったの?」
「あらあら、なんでそう思うのかしらぁ?あなたは私の―――母さんの子よ?何を恐れるのかしらぁ?」
そして、続いた言葉で俺が抱えていた不安を簡単に吹き飛ばしてくれた。
普通の母親を知らない俺でもわかる。
この包容力は並大抵のモノじゃないと。
何か安心したら涙が。
「うぅ、母さん!!」
思わず母さんに飛び込んだ。
やはり、精神年齢が胴体に多少なりとも引っ張られている様で、感情は爆発して母さんに甘えたくて仕方がなかった。
「あらあら、急に泣き出してどうしたの?母さんはレイの傍にずっといるわよぉ?」
そう言って、俺の頭を優しく撫でてくれる母さん。
精神はそこまで子供じゃないはずなのに、母さんに抱き着いているとすごく安心する。
改めて思う。俺は母さんの事が大好きなんだ。
だから母さんに真実を伝えるのが怖かったし、嫌われるのも嫌だった。
そして、母さんが嬉しそうにすると俺も嬉しくなるし、俺の事が自慢になるのなら頑張ろうと思えてくる。
初めて接する母親という存在に対し、俺はすっかりマザコンになってしまったような気がする………。
後悔は全く無いけどな!
俺は、母さんにもたれかかり抱きつかれたまま、これまでの事を話す。
違う世界から来た事。
神様に連れ去られ、幼馴染と一緒に転生している事。
今は二人で自分の強化をしている事。
そのための一環として、魔法を使っていた事。
母さんはそれを無言で聞きながら、ずっと頭を撫で続けていた。
「レイ、落ち着いたかしら?」
俺の事を全て話し終わった。
未だに母さんは俺をぎゅっと抱いたまま頭を撫でてくれている。
気持ちが落ち着いてくると、何て恥ずかしい事を………!
精神高校生が母親に泣きつくなんて………!
「うん………。急に泣き出してごめんなさい」
俺は謝りながら、座っていた母さんの足から降りようとするが―――。
「気にしないでいいのよ。遠慮しないで母さんにどんどん甘えなさい。ほらっ」
と言って、俺が降りない様に抱きしめ直す。
今の母さんは母性本能を刺激されたのか、俺を甘やかす気満々のようだ。
くっ、凄い落ち着く………!
「つまりレイは精神は違う世界の大人という訳ねぇ」
この世界では15歳で成人となり、酒が飲めたり、結婚出来るらしい。
「うん、やっぱりこんな子供は嫌かな………?」
母さんの言葉に対して、思わずそう問いかける。
どうにも俺は、母さんに嫌がられないか不安に思ってしまい、喋り方も体の年齢に引っ張られている様な感じになってしまう。
「あらあら、そんな訳無いじゃない。むしろ母さんの自慢の子よ?周りから見たら、レイは天才じゃない。それだけで母さんは鼻が高いわ」
本当に誇らしそうな顔をして笑みを深くする母さん。
「後は、普段から見た目相応にもうちょっと甘えてくれるともっと嬉しいわぁ?」
「う、うん………」
普段からこの胸の中に飛び込んで来い、と?
それは、とても甘美な誘惑だけども………!
「それに今のレイになら、母さんの事も教えてあげるわ」
「えっ、ほんとに!?」
俺がそれなりに自分で考える事の出来る事がわかったからか、母さんはそう言ってくれる。
これまでの母さんなら、母さんの事教えてくれなかったから、これは嬉しい!
「ステータスオープン。リアライズ」
母さんが『リアライズ』と言った瞬間に、目の前に青い板の様な物が出てくる。
「おぉ!『リアライズ』を付けたら、自分のステータスを人に見せる事が出来るんだ!」
成程、コレは便利な事を知った。
コレは今後使えそうだな。こんな感じの特殊詠唱は他にもあるんだろうか?
「うふふ、そうよぉ。さぁ、母さんのステータスを見て頂戴」
母さんは、俺が知らなった事に目を輝かせているのを楽しそうに見つめる。
俺は気分を落ち着かせてから、母さんのステータスを見せてもらう。
☆★☆★☆ステータス☆★☆★☆
名前:カミア・キルシュ・サンベルジャン
Lv:123
種族:ヒューマン
年齢:19
性別:女
職業:冒険家【白金】
HP:184/184
MP:139/139
STR:C
VIT:E
INT:A
MID:C
DEX:C
AGI:D
LUK:E
《称号》
【天涯孤独】【固定砲台】【氷の魔女】【白金冒険者】【母性本能】
《スキル》
・攻撃系
【水魔法Lv.5】【氷結魔法Lv.5】【槍連砲】【氷地獄】【氷結剣】【氷結盾】【氷翼】【氷結武装】
・耐性系
【毒耐性Lv.2】【麻痺耐性Lv.3】
・生産系
【裁縫Lv.2】【料理Lv.3】
・補助系
【生活魔法】【充填】【並行詠唱】【鑑定】【隠蔽】【魔力探知】【魔力操作】
・特殊系
【???】【???】
☆★☆★☆☆★☆★☆★☆★☆
お、おぉう……。
母さんのステータスを見て、思わず呆然とする。
まずレベルがかなり高い。そして恐ろしく強い。
更に、水属性と上位属性の【氷結魔法】がLv.5の魔道兵器クラスの魔術師であり、エルダーエルフである夕莉と並ぶ化物クラスのINT。
そして、魔法のレベルで使えるようになる魔法以外のスキル化した魔法を六つも覚えている。
【氷地獄】に関しては、必殺技感が凄い。
また、特殊系のスキルが二つ共見る事が出来ない。
恐らく【隠蔽】のスキルの効果なんだろうけど、つまりこのスキル群以上の隠し玉が有る様だ。
更に、職業の『白金冒険者』も半端ない。
一歳を過ぎた頃に、リネアに冒険者について聞いた事がある。
この世界では、魔物を狩ったり迷宮を攻略する職業を『冒険者』という。
各町にある『冒険者ギルド』で試験に合格する事で、冒険者になる事ができる。
そして冒険者のランクは、一定の依頼を成功させて昇格試験に合格する事でランクを上げる事が出来る。
また、依頼にもランクがF~SSまであり、冒険者のランクの高さによって受けられる依頼が決まる。
冒険者のランクは、
【青銅】:冒険者登録時のランク。依頼内容は採取依頼のみ。Fの依頼のみ受ける事ができる。
【純銅】:最も在籍数の多いランク。依頼内容に討伐依頼が追加。Dまでの依頼を受ける事ができる。
【純銀】:対人の経験が必要になる。依頼内容に護衛依頼が追加。Bまでの依頼を受ける事ができる。
【純金】:トップクラスの実力保持者。依頼内容に指名依頼が追加。Sランクまでの依頼を受ける事ができる。
【白金】:単体で国と同等の戦力とされる。全ての依頼を受ける事ができる。
となっている。
母さんが化物なのは、ほぼ確なようだ。
この強さと実績を19歳にして所持している事はおかしい。
ていうか、母さん19歳!?
そりゃ若く感じるわ………。
そして、称号に関しては、
【天涯孤独】:一人になりやすい人生となる。一人で行動すると全ステータスがアップする。
【固定砲台】:冒険者としての二つ名。止まって魔法を使うほど、魔法の威力がアップする。
【氷の魔女】:冒険者としての二つ名。【氷結魔法】の威力がアップする。
【白金冒険者】:数少ない最高峰の冒険者に贈られる称号。全ステータスがアップする。
【母性本能】:母親としての庇護欲が凄い者。庇護対象の状況に応じてステータスが変動する。
うん……、色々すごい。
自分の能力を上昇させる称号が多い。
ツッコミどころも多いがな。
【固定砲台】に【母性本能】………。
「一通り見たよ、母さん。とりあえず、一つ言わせて欲しい」
そう言って俺は、此方の様子を窺う母さんの顔を見る。
母さんのステータスを見て色々思ったが、これだけは言わねばならない。
「母さんは、僕が―――俺がいる限り、絶対に一人にはさせないから」
ステータスが下がらないのであれば一緒にいてもいいはずだ。
それに俺も母さんと別れるのは嫌だしな。
「レイ………!」
俺の言葉を聞いて、嬉しそうに笑う母さん。少し目が潤んでいた。
俺の気持ちを伝えたついでに、もう一つ聞きたい事を聞こう。
「なぁ、母さん。俺は、母さんのこれまでの人生を知りたい。それも教えてくれないか?」
母さんのステータスは年齢の割におかしい。
恐らく【天涯孤独】の影響を受けたのだと思う。
ステータスの一番最初の称号は、生まれた時から持っているものらしいから。
俺は母さんの人生を知らない。
でも、この称号はきっと母さんの人生に様々な影響を与えていたはずだ。
苦労もしてきたんだと思う。
その苦労を共有して、母さんを楽にしてあげたい。
今の俺の率直な願いだった。
「ふふっ、急に大人びた雰囲気になっちゃって………。面白い話じゃないわよ?」
「全く問題無いよ」
「あらあら、即答しちゃった。いいわよ、教えてあげる」
そうして、母さんは過去を振り返るように上を見た。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ある冬の日、迷宮都市『グランディア』にあった孤児院で働くシスターが外に出た時、玄関の前に小さな籠が置いてあった。
その籠の中を見ると、赤ん坊と手紙が入っていた。
『この子はカミアと言います。私達では育てられませんので、よろしくお願いします』
と手紙には書いてあった。
シスターは赤ん坊を孤児院で育てる事にした。
カミアが孤児院に来てから四年経った冬。
迷宮からモンスターが溢れ出し、町で暴れていた。
孤児院には巨大な木の魔物、トレントが現れ、孤児院を中にいた人ごと壊してしまった。
偶然、外で魔法の本を読んでいたカミアは崩落に巻き込まれなかったが、トレントに捕まり迷宮の中へ連れ去られてしまった。
カミアは食べられると怯えたが、トレントはカミアに自分に実っていた実を食べさせた。
そして、水が出てくる不思議な水筒もくれた。
また、同じ階層にいる他の魔物にカミアが襲われそうになると、その魔物の前に立ち塞がり、魔物を排除した。
カミアはこのトレントが何をしたいのかわからなかったが、とりあえずここを出る為に強くなろうと思った。
そこで自分が一緒に持ってきていた、魔法について書かれた本を読んで魔法の練習をした。
カミアは生活魔法と、水属性魔法を全て使えるようになった。
カミアがダンジョンに来て二年半くらいの頃。
ある朝、トレントはいなくなっていた。
代わりに、水色の実と綺麗な石の付いた枝が落ちていた。
カミアは、水色の実をその日の朝ご飯代わりに食べ、水筒を肩にかけて枝を持ち、迷宮を上がる事にした。
お腹が空いたら、魔物と戦闘してドロップしたお肉を生活魔法で焼いて食べて飢えを防いだ。
お腹が痛くなったり体が痺れたりもした。
でも、我慢していると気が付けばそんな風になる事は無くなった。
また、何回か戦闘している内に、【氷結魔法】が使えるようになった。
【氷結魔法】を使って遊ぶのが楽しかったので、剣の形にしてみたり、盾の形にしてみたりした。
羽を使って飛ぶ魔物がいたので、真似をして羽を作って飛んでみたりもした。
それから四年半。
11歳のカミアは迷宮の外に出た。
出た時にひと悶着あったが、黒いローブを着て赤い剣を持った女の人が守ってくれた。
その時、女の人が自分に色々教えてくれたので、その人と同じ冒険者になった。
それからは毎日、その人と二人で依頼を受け、達成し、同じ宿で寝る、という生活を繰り返した。
更に四年。
15歳のカミアは『純金冒険者』になっていた。
ある日、いつも一緒にいた女の人が「必ず帰ってくる」と言って一人でどこかに行き、何日経っても帰ってこなかった。
周りに聞くと、迷宮に行ったのだと言うので、カミアも迷宮に入った。
入ってみてもすぐには会えなかったので、会えるまで下に降りて行った。
下層と呼ばれていた辺りに降りた時、女の人がいつも着ていた黒いローブが落ちていた。
赤い血に塗れて落ちていた。
すぐ近くに赤い剣が首に刺さっていた竜がいたので倒した。
黒いローブと赤い剣を拾って迷宮を出た。
カミアは『白金冒険者』になった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「『白金冒険者』になってから二年経った頃かしらね。宮廷魔導士の指南依頼で城に来た時に王様と会ったのよ。そしたら、王様が一目ぼれしたとかで、結婚した流れかしらねぇ」
「話の最後、軽っ!?」
俺の予想の数倍壮絶で、中々重い話だったのに、最後が………。
しかも、父様からって、18に39がアプローチ掛けたのかよ……。
「どうだったかしら?面白くないでしょう?」
「凄く波乱万丈だったのはわかった」
本当に、重たい過去を持っていましたよ、えぇ。
やはり称号というモノは、人生を左右するモノなんだろうな。
俺の称号も、どれだけ俺の人生を荒らしていくのかと思うと、アルカナに対して何とも言えない気持ちになる。
「レイは、こんな母さんは嫌?」
俺の頭の上から、俺の顔を覗き込むようにして、母さんは問いかけて来る。
「別に?それよりも、迷宮の話を教えてほしいな!」
そんな母さんを気にする事なく、俺は食い気味に母さんに詰めよる。
迷宮には、やっぱりロマンがあると思うんだ!
「あらあら、こんな話をした後なのに………。まったくもう、レイったら………」
そんな俺を見て、母さんも困ったように笑っていた。