4.到着、検問とギルドにテンプレ
さぁさぁ、遂にやってきました、迷宮都市グランディア!
前に話した通り、グランディアは大きな城壁で囲まれている。
理由は皆さんお察しの通りの迷宮恒例の『迷宮から出てきた魔物を外に出さない為』である。
それはこの世界でも一緒らしい。
この世界には迷宮が複数存在する。
グランディアにある迷宮は、その中でも一番大きい迷宮であり、迷宮内の階層も他とは段違いに多い。
他の迷宮が20~30階層なのに対して、ここは100階層あると言われているらしい。
『らしい』って言うのは、誰も踏破したことが無いからだ。
それでも階層数を知っている理由は『神からのお告げ』なんだとか。
絶対アルカナが、興味本位でゲームバランス考えずに作り出したんだんだろうな。
そしてバランスを考えず作り出されたここの迷宮は、攻略難易度もアホみたいに高いらしい。
この迷宮は、物語の迷宮のテンプレで出来ている。
迷宮では魔物が出現する。
迷宮で死んだ生物は素材を残して、迷宮に吸収される。
迷宮のフロアには宝箱もあるが、罠もある。
迷宮のフロアの何処かにある階段を降りると下の階層に行ける。
迷宮は階ごとに環境や敵が変わる。
各十階層ごとにボスがいる。
。
各十階層ごとにセーブポイントのような場所があり、次回以降そこから入る事が出来る。
迷宮の魔物は下に行けば行くほど強くなる。
迷宮の宝箱は下に行けば行くほどいい物が入っている。
そして迷宮には、階層の強さに釣り合わないほどの魔物が出現することがあり、その魔物は迷宮を徘徊する。
お察しの通り『迷宮の掃除屋』と呼ばれる存在である。
曰く、安全な階層で留まり続ける冒険者を蹴散らす存在であるらしい。
それが迷宮から出て来る事がある。
絶対設定ミスだろぉ?
勿論『迷宮の掃除屋』なんて呼ばれる魔物が弱い訳が無い。
迷宮から出てくれば、たちまち外は地獄と化す。
十数年前も一度迷宮から出てきた事があるらしい。
その時は町中で暴れまわる中、突然迷宮に帰ったので被害は少なかったらしいが、それでも町が半壊したらしい。
それ、母さんの話で聞いた事ある気が………?
まあそんな難易度・危険度と共にクソ高い迷宮だが、その分武器や防具にするにはいい素材も集まりやすく、宝箱の一攫千金も夢ではない。
その為、強さに自信のある人や野心の強い人、金を求める人といった多くの人が集まる都市になっている。
そんな迷宮都市グランディアだが、中に入るにはその城壁に備えられている検問を通る必要がある。
人が多く集まるこの都市では、犯罪者や危険人物といった問題のある人も当然集まってくる。
その為、犯罪者や危険人物を入れない為の検問がかなり厳しい。
そこを俺達は通り抜ける必要がある。
母さん曰く、ここさえ超える事が出来れば、後は簡単らしい。
じゃあどうやって検問を抜けるかだが、これはここに来るまでに話し合ってある。
「はい、次!」
検問所に立つ、立派な鎧を着た兵士から呼ばれる。
俺と母さん、シロアは兵士の前に立つ。
「お、美人の姉ちゃん二人か」
兵士は、俺と母さんの方に顔を向ける。
「あらあら、美人だなんて口がうまいわねぇ」
「ちょっと待て、俺は男だ」
嬉しそうに笑う母さんと、顔を顰める俺。
確かに今の俺は、長い金髪を後ろで括ったスレンダーな美少女の様な姿をしているのは認める。
精霊王になる時に『男』に戻った俺は、ミナ姉の体を基準の状態から胸がしぼんだ以外は殆ど変わっていないのだ。
「はっ?まじか………」
やっぱり兵士も本気でで驚いた顔してるし、女にしか見えないんだろうな。
「残念ながらマジだ」
「ハァ………、こいつは驚いたな。自分の目には自信があったんだがな………」
兵士は驚きをそのままに、俺に質問する。
「まぁそれはいいとして、二人とも身分証はあるか?」
「どっちも無いな」
「いや、そんな堂々とされても困るんだが………」
兵士の質問に対し、俺は隠す事無く堂々と伝えると、苦笑いを返された。
「じゃあ、この板に手を乗っけてくれ」
そう言って、掌サイズの板を前に出される。
この板は『簡易ステータス板』と呼ばれ、その名の通りに掌を乗せた人物の簡単なステータスを知る事が出来る(母さん情報)。
「分かった」
俺は躊躇う事無く右手を乗せる。
すると当然ステータス板が浮かび上がる。
名前:レイ
種族:人間
性別:男
職業:魔術師
「マジで男だった………」
「いや、信じてなかったのかよ………」
兵士から漏れた心の声に、俺は思わずツッコむ。
「いや、まぁ、うん、すまん」
「まぁ、今更気にしてないから大丈夫だ」
しどろもどろになる兵士。
ホントにこの見た目に関しては、これからも言われ続けるんだろうなぁ………。
「じゃあ次はそっちの人も頼むわ」
「わかったわ」
母さんも簡易ステータス板に肌色の手を乗せる。
名前:カルネリア
種族:人間
性別:女
職業:冒険者
「お?あんた冒険者だったのか。なのに、ギルドカードは無いのか?」
母さんの職業を見て、疑問に思ったようだ。
「ギルドカードを無くしちゃったのよ。だから、この街に再発行しに来たの」
「成程な」
「何か問題があったかしら?」
「いや、問題ねぇな」
そう言いながら兵士は、後ろの部屋に下がる。
そして、手に黄色の薄い札を持って戻ってきた。
「ほい。これが仮身分証明証だ。これは一週間の間だけ二人の身分を証明出来るものになる。その間にちゃんとした身分証を作ってきな。その後にそれは返しにくればいい」
「オッケー。了解した」
「わかったわ」
兵士は、大まかに仮身分証明証について説明した後、その札を俺と母さんに渡してくれた。
「それじゃぁ、迷宮都市を存分に楽しんでくれ。………はい、次!」
兵士は俺達をすんなりと通してくれた。
そして、すぐに次の人の対応をしている。
忙しそうだ。
俺達は、周りの邪魔にならないようにすぐに移動を開始した。
そして、検問所が見えなくなった辺り。
「ふぅ。なんとかなったけど、すごく緊張したわぁ」
「………ん、でも全然バレなかった」
ローブのフードを被り、一息つくようにため息をする母さんと、表情を全く変える事無く言ってのけるシロ。
あえて言おう。あのステータスは嘘だ。
これは母さんのスキル【完全隠蔽】の効果だ。
【完全隠蔽】は、MPを消費して母さんに関する事の見た目を『誤魔化して偽る』事が出来るスキルだ。
母さんはこのスキルを使って、肌色とステータス欄を偽った。
そして何が便利かって、母さんに関する事の中に何故か『俺』も含まれる事だ。
そして先ほどは母さんに頼んで、俺のステータス欄も見た目を偽ってもらったのだ。
完全にチートスキルである。
まぁ、偽った事は実際には影響しない。
例えば母さんがスキルを使って角を生やしたとしても、触る事は出来ない。
簡単に言えば『視界を誤魔化す』スキルって感じだ。
また、偽る部分が増えれば増えるほど、MPの消費が大きくなる。
なので、先ほどはスキルで偽った部分は最小限にしてあった。
ならば何故シロは、いる事すら気付かれなかったか。
そっちはシロのスキル【完全隠密】の能力だ。
このスキルは名前の通り、完全に自分の存在を隠す事が出来る。
存在感が消えるというべきか、いる事に気づかなくなるのだ。
しかも何とスキル発動中は【魔力遮断】ですら気付かれないのだ。
シロはこのスキルを使って、兵士から気付かれなかったという訳だ。
こちらも同様にチートスキルである。
このスキルの欠点としては、スキルにクールタイムが存在する。
その為、連続しては使えない。
だが、弱点はそれだけだ。
このスキルは『先手を必ず取れる』という、戦闘において相当の優位性を取れるスキルだ。
恐ろしく強い。
「ホントに二人とも、何でそんなスキルを覚えたんだか」
俺はもう笑うしかなかった。
何とか検問を超えてグランディアに入る事が出来た俺達。
えっ?精霊組?
あの二人はまた別で呼ぶ予定だ。
現在は、グランディア外周辺を探索している。
ラーナが「この時間を使って何かお役に立って見せるのです!」とやる気を見せ、ミナ姉がそれに巻き込まれた形になる。
ラーナ、一人では戦闘出来ないもんな………。
その為、迷宮都市内には俺らが先に入る事になったのだ。
元々ここに住んでいた母さんの案内で、俺達三人は冒険者ギルドに向かった。
「へぇ、ここが冒険者ギルド………」
そう呟く俺の目の前には、2階建ての木造建築の大きな建物がある。
こう、いかにも異世界物のギルド!と言わんばかりの雰囲気を醸し出している。
これもまた定番だが、確かに初見では入るのを躊躇うのも無理はない場所だと思う。
だって、絶対絡まれる気しかしないし………。
そうやって俺が躊躇っているのを尻目に、母さんは何の気なしにずんずんと進んでいく。
元冒険者である母さんは、やはりこういう環境に慣れているのだろう。
「ちょ、ちょっと待って母さん!」
俺も慌てて後を追いかけた。
ギルドの建物中に入ると、とたんに溢れだす喧騒の声に思わず足が止まる。
右側は、建物の奥の方にカウンターがあり、手前側には丸テーブルと椅子が並んでいて、これまたよく漫画やアニメで見る酒場感のあるスペースとなっていた。
恐らく、冒険者を対象とした飲食スペースだろう。
現在時刻は昼間だが、昼飯を食べる人の中に混じって既に酒を飲んでる人が居たり、その客達の注文に忙しそうに対応するメイド服を着た女性など、異世界感が溢れている。
左側は、こちらも奥の方にカウンターがあるが、こっちのカウンターは4つに分かれており、そのカウンターの一つ一つに美人の女性が座っており、カウンターの対面にいる人と話している。
また、左の壁の方には高さ2mほどの大きな掲示板が壁に貼られており、その掲示板にもたくさんの紙が貼られている。
こちらは、依頼の受理や達成報告を行ったりするスペースなんだろう。
カウンターの女性たちは受付嬢なんだろう。やはり美人だらけだ。
他にも、中央部には大きな階段があり、二階に行けるようになっている。
推測だが、ギルドメンバー専用の売店だったり、書類室、いるであろうギルドマスターの執務室なんかがあるんだろう。
まさに想像通りの異世界ギルドだ。
みんなゴツイ人ばっかですげー。
小並感の感想で申し訳ないが、本当にココにいる人達がごついのだ。
外の街にもゴツイ人はいたが、明らかに実力者っぽい人が集まっていて、この建物内の『圧』というか『雰囲気』が濃ゆいのだ。
そんな普通の女性なら尻込みしそうな環境を、やはり慣れているのか、母さんは躊躇なく左のカウンターの空いている所に並ぶ。
俺も母さんに大人しくついていく。
………シロは【完全隠密】を展開し直していた。ずるい。
何も起きないように、と祈りながら大人しく並ぶ。
「おいおい、そこの怪しいフード野郎。ガキなんか連れてこんなとこに来るんじゃねぇよ。うっとおしい」
だが俺の期待とは裏腹に、2mはありそうな茶色い肌をした大男に母さんが話しかけられる。
この男、顔が赤い。どうやら、先ほど飲食スペースで酒を飲んでいたのはこいつのようだ。
あぁ………やっぱり絡まれた………。
このフラグ回収の早さよ………。




