11.特級、発見と撃退と再会
誤字報告をまたいただきました。
この機能本当に便利ですね。
いつも本当にありがとうございます。
闇に覆われた城の中を駆け抜ける怪しい影×3。
俺とラーナ、リボルだ。
城の中に潜入中。
城の中は証明一つ無く真っ暗で、何も見えない。
話を聞くと、ラーナとリボルには普通に見えているらしい。
やはり俺は他の精霊と違い、魔力では無く普通に目に映る物を視界にとらえている様だ。
その為、明かりの無い夜は何も見えない。
【精霊眼】を使おうとも思ったが、あれは目に魔力を集めるので【魔力探知】に引っかかってしまう。
同じ理由で、俺からの【魔力探知】バラまく事は出来ない。
なので俺は月明かりに照らされた微かな視界を頼りに走っている。
何が飛び出してくるか分からない暗闇の中を疾走。
凄くドキドキする。
最近は常に【魔力探知】をバラまいていたので、今では無い方が不便になってしまっている。
背負っているラーナの言葉を頼りに暗闇を進む。
今の所、誰とも会っていないし、【魔力探知】の魔力が俺に当た事も無い。
非情に順調である。
「………そういえば、今の特級ってどうなってるんだ?」
俺は声を潜めながらリボルに聞いてみる。
潜入任務中にお喋りは厳禁って?
だって敵の戦力が気になったんだもの。
城の前で見たんだよ。
監視任務中のはずの特級クラスの精霊が寝てたからな?
敵の戦力にそんな余裕があるのか、と思わず気になったんだよ。
「………確かレイと会う前に聞いた話だと男女で5:5だったはずよ」
リボルは、いつものおっきい声を押さえて、静かに喋ろうと頑張っている。
「でも、ミナ姉の代わりに俺が来たって事は………」
「そうね。女側の特級が一人減っている事になるわ」
「………すまんな」
「あら、気にしてないわよ。その分アンタが戦力になってくれるもの」
罪悪感から即座に謝るも、リボルはホントに気にしてなさそうに言ってくれる。
………助かる。
「それにどうやら、朝のあの一撃で一人やられてるっぽいしね」
そういえばそんな事も見張りが言ってたな。
つまり今の所4:4で、一人城の外にいたからこの城の中には最大でも3人の特級精霊がいる。
「なかなかにしんどそうだな」
ミナ姉やリボル三人分とか勝てる気がs(殴
「あら、そこは大丈夫よ。アタシやミナは格が違うぶっ!」
「(ボソッ)しー!でかい声出すなよ!」
やっぱりテンションが上がってくると声がいつも通りの大きさになるリボル。
やはり潜入向きでは無いな。流石F。
まぁその分戦闘の時の安心感は半端じゃないんだがな。
まぁ言わんけども。
手を離すと、流石に恥ずかしかったのか「ンンッ!」とわざとらしく咳払いをして、また話し始めた。
「ちなみにだけど、こちら側の特級は、このアタシと『契約精霊』のティナ、それとミナが初代からの復帰組ね。他の皆は上級でもなんとかなってたから上がってなかったの」
どうやら、特級になる際に『進化しますか?』的なことを聞かれるらしい。スキルガイダンスに。
それで、断ると進化はせず、特級の座は他の精霊に行くらしい。
「新規組は、天候を操れる『蒼天精霊』のヒヨリと、結界の使い手の―――」
「前です」
「「んっ?」」
ラーナが急に声を出したので、二人して止まる。
どうやら、いつの間にか俺らが進んでいた廊下の終わりまで来ていた。
あかん、話に集中してもうた。
潜入中にあるまじき失態………!
ラーナに右手で、謝る意味を込めるジェスチャーをする。
頷いてくれた。
ありがとう。
どうやらここから先は左に曲がるようだ。
だが、なにやら騒がしい声や音がする。
ここからが本番だ。
三人で気を引き締める。
………引き締めなきゃいけなかったのは俺とリボルですがね。
ラーナを降ろし、壁に沿い曲がり角からひっそりと顔を出す。
そして前を見ると―――
「おらっ!開けろ!」
「いつまで籠城できると思ってンだ!」
「さっさとしてくれないかな?手間がかかって面倒なんだよ」
2mほどの大きな観音開きの青い扉に向かって、三人の男が何やら魔法を撃っていた。
扉寄りに2人、手前に1人だ。
そして、扉の向こうから声がする。
「あ、姉御!自分そろそろ限界っす!」
「大丈夫だ」
「いや、全然大丈夫じゃないっすよ!?」
という追い詰められているのに、そんな雰囲気を一切感じさせない声が聞こえてきた。
「「えっ?」」
だが俺とリボルはそれどころではない。
だいぶ素で驚いてしまった。
「「あ、あの声は………!」」
また被る。
ラーナが不思議そうにこっちを見ている。
だが、あの声に聞き覚えがあるのだ。
あの気だるげに流す感じの話し方と声質に。
恐らくそれはリボルもなのだろう。
「………リボル、ココでやるぞ」
「………了解したわ」
お互いに何となく察している為、理由は必要なかった。
「………あの三人、特級よ」
「………なんとなくわかった」
確かに城の外で見た精霊達よりも魔法の質が高いのだ。
だが、それでも外で寝ていた特級の方が強く感じる。
「………でも正直大した事は無いわ。扉に近い二人は魔法耐性が少し高そうだから、任せてもいいかしら?」
「………いいのか?俺が戦っているの見た事無いだろ?」
「………構わないわ。絶対アンタの方が強いもの」
「………そうか。なら任せろ。手前一人は頼んだぞ」
「………もちろんよ。先に妨害してあげるから、さっさと倒しなさいね」
「………それじゃあ」
「………えぇ」
思いっきり飛び出す。
そして、見つかるのも厭わず、足元に魔力を込める。
その横ではリボルが、手前の一人を止めようと魔法を発動する。
「【縮地】ッ」「【雷弾】ッ!」
三人とも、魔法が発動したタイミングで振り返る。
だが、そのタイミングは1テンポ遅いッ!
「何ごt―――ぐわぁっ!」
手前の知的眼鏡精霊に【雷弾】が当たる。
流石、電気。
納得の速度だ。
【雷弾】が当たり、怯む眼鏡の横を飛び抜ける。
飛びながら【魔力武装】を発動する。
金色魔力は俺の両腕に纏い出す。
最近よくやる全開の魔力はいらない。
こいつ等なら、5割で十分だ。
そして、驚く男二人の前で【縮地】の移動が止まる。
「な、何だきさm―――」
「い、いったいどこかr―――」
「失せろ」
片手でそれぞれの頭を掴む。
そのまま、右足を思いっきり前に踏み込む。
体が前傾姿勢になるが気にしない。
むしろ、倒れそうな勢いのまま―――。
「砕けろ」
地面に頭から叩きつけてやる。
床にクモの巣状のヒビが入る。
「グッ!?」
「ガッ!?」
掌で声が籠って、男共はくぐもった悲鳴を上げる。
まだ終わらせない。
そのまま、それぞれの腕に纏っていた魔力を、手に集中させる。
「弾けろ。【魔力爆散】」
男二人の顔の部分が爆発する。
そして、そのまま体も消えて行った。
「ふぅ………」
何となくだが、技のイメージが簡単に浮かぶ。
精霊界に来てから気にしてなかったが、このスキル習得率はやはり何かあるのかもな。
後ろを振り返ってみる。
「がぁぁ!」
「【雷撃】ッ!」
両腕を下から打ち上げたポーズで、眼鏡を上に打ち上げていた。魔法ごと。
流石、テンションで威力が変わるお方は一味ちげーや。
「そっちも倒したわねッ!?」
「おうよ」
普通に魔法も使った為、もう隠れる必要は無い。
いつも通り喋る。
「それじゃあ行きましょうか」
「おう」
「ミナ姉の所に!」「シーラの所にッ!」
「………………………」
「………………………」
「………………………?」
互いに顔を見合わせる俺とリボル。
そんな二人を見て、ラーナは首を傾げる。
「「えっ!?」」
互いに驚き合う、俺とリボル。
「ミナ姉の声を聴いたからやる気出したんじゃないの!?」
「シーラがいたから戦力を増やすためにマジになったんじゃないのッ!?」
互いに顔を見合わせる。
「………二人は何を言っているのですか?」
ラーナの声が暗がりの廊下に響いた。
おk、落ち着こう。
「まず、シーラって誰だ?」
聞いた事の無い名前のはずだ。
「そういやアンタはミナじゃなかったわね………」
リボルは、今更感の強い事を言い出す。
「嘘やろ?」
「だってノリの感じが一緒なんだものッ!間違えたってしょうがないわよッ!」
「そうか?」
俺とミナ姉は似てないと思うが………?
「そうよッ!………雰囲気が似ているのよ、だから思わずさっきも戦闘任せちゃったし………。ま、まぁいいわッ!」
何かボソボソと喋るリボル。
難聴系主人公じゃないが、マジで何て言ってるか分からない。
「シーラはさっき紹介する途中だったけど、女子組の5人目の特級精霊の『結界精霊』よ!さっきのを見た感じ、シーラが屑三人衆の攻撃を受け止めてたっぽいわねッ!」
なるほど、そりゃ強いわ。
なんせ、そうでもなかったとはいえ特級三人からの攻撃を何度も受け止められるのは、それほど精霊としての性能が強いんだろう。
………結界か。
滅ッ!って結界で戦う漫画を思い出した。
あれは子供心にグサッと来たな。かっこよかった。
「そッ!れッ!よッ!りッ!もッ!」
リボルがアクセントをガンガンに聞かせながら、一歩ずつ詰め寄ってくる。
「ミナってどういう事よッ!」
「おぅ、落ち着け………。いや、シーラ?とやらと喋ってたじゃねぇか」
あれはどう聞いたってミナ姉だと思ったんだが。
「ミナは今のアンタと同じ声だったわ!?あの声とは全然違うじゃないッ!」
だが、リボルはそう言ってテンションの上昇が止まらない。
そりゃ、この体はミナ姉のだもんな。同じ声のはずだ。
「でも人間界にいた時、ミナ姉は今の俺と色々違うって言っただろ?その時の声や感じがあんな感じなんだよ」
そう、気だるげで言葉遣いとかまったく気にしてなくて、普通に男言葉でしゃべるし、自分の事『俺』って言う系女子だったミナ姉の声だった。
俺ら二人が扉の前で揉めている中―――。
「ハァハァ………。何か外で起きてて、何とかなったっす………」
「お疲れ。な?何とかなっただろ」
「明らかに偶然っすよね!?」
「そんな事よりも、俺は外の奴らを倒したっぽい奴らの方が気になる」
「流さないでほしいっすよ!?」
「うるせぇよ。とっとと切り替えろ、新入り」
「理不尽っす!?」
「外の奴ら、どうも味方っぽいんだが、片方は聞き覚えがあるんだよ」
「はぁ………。確かにあの大きい声はリボル先輩っぽいっすね」
「でももう片方がどうにも分かんねぇんだよな。どっかで聞いた事あるんだが………」
「そうっすねぇ………。あ、あれですよ姉御」
「なんだ?」
「姉御の元々の声と似てるっすよ」
「………何?」
「そうっす、そうっす。そう考えると確かに元の姉御の声と瓜二つっすよ」
「おい、出るぞ!」
「えっ!?急にどうしたっすか姉御!?」
ギィィィィィィィィ………。
「「んっ?」」
二人でウダウダ言ってたら、後ろの扉が開き始めた。
てか、またハモった。今日何度目だよ。
そして空いた扉から、二つの影が飛び出してきた。
「あぁ………!」
思わず声が漏れる。
だって最初に飛び出してきた、灰色の髪をしたスレンダー美少女を見間違うはずはない。
「ミナ姉ぇ!!」
声を上げた俺と目が合う。
すると、やれやれといった顔をする。
「全く………。落ち着けよ、俺はちゃんと復活するって言ってただろうが」
肩も竦めて、やれやれといった感じを出してくる。
やっぱりそんなポーズが似合っていた。
感情のままに駆け寄る。
そして………。
「やっと会えた。これで俺も謝る事が―――」
「ウッソ、ホントにミナ!?」
偶然だろうが俺の言葉に被せる様に、リボルはいつも以上の大きい声を上げる。
「ホントに胸が消めt―――」
「いっぺん死ねやぁッ!」
「ぶへっ!?」
禁断の話題に触れてしまったリボルが、思いっきし全力のミナ姉の右ストレートによりブッ飛ばされた。
いやミナ姉、女子相手に顔面ストレートはアカン。
「【超回復】!っと、どうどうどう、落ち着けミナ姉………」
吹っ飛んだリボルに【超回復】を飛ばしつつ、ミナ姉を落ち着けに入る。
今の見た感じ、かなりのダメージをリボルは負っていた。
FではないにしろEなのだ。
恐るべきミナ姉の怒り。
くだらない事を考えながらも、俺はミナ姉を落ち着かせようと近寄る。
だが、俺の余裕もすぐに消えた。
「やかましいわ!レイ、貴様俺の体を奪いやがったなッ!」
ミナ姉を抑えにかかった俺だが、何やら矛先がこっちを向いた気がする。
思いっきり胸ぐらを掴みあげられる。
精霊界に来てから、やたらと胸ぐら掴まれる気がするぜ………。
「転生したって思ったら人間界の姿のままだし、レイがなんかしたのかと思って城に乗り込んだら普通に捕まったじゃねぇかよッ!」
どうやら、何故か俺がまだ精霊王になる前にミナ姉は復活したらしく、復活できたって事は俺が精霊王だと思って乗り込んだらしい。
そしたら、精霊王に撃退されたとか。
「ホンットにどうしてくれやがる!こちとら捕まった挙句、先にいた後輩に笑られる始末だぞッ!?」
「ちょ、ちょっと、ま、って………。い、いきが………ッ………!」
息がめっちゃ苦しい。
どんだけ本気で持ち上げてんだよッ!?
後、後輩は知らんわ!




