8.精霊王、経緯と現状と精霊憑依
「今の精霊王ね。まず、精霊じゃないのよ」
精霊の王が精霊じゃない?何を言ってるんだ?
良く分からない事を言い出した張本人に詳しく聞こうと思う。
「まずソイツ………今の名前ラーナって言ったっけ?ソイツが、精霊王をやめた理由だけどね」
リボルは初めから説明を行ってくれる。
「精霊王が決まって、そのごたごたが片付いてから十年くらいした頃かしらね。ずっと平和だったんだけどね、ある日神様が現れたのよ」
「は?」
何故ここで急に神が?
「神は全精霊を集めて、こう言ったのよ」
『精霊共が集まりだして『王』を作り出したから、何が起こるかと期待しておったのだが、ただ集まっただけに過ぎぬではないか!期待外れもいい所だ、まったく。だから我が楽しくしてやろう。そうだな、今の王と特級の10人を上級に戻してやるから、全員で王の座を取り合ってみせよ!』
「ってね」
肩を竦めてそういうリボル。
すごく聞いた事ある感じの事を喋る神様だなー(棒)
「………ちなみにその神の名は?」
「世界神アルカナよ」
やっぱりあいつかよ!?
思わず力が抜けて、膝から崩れ落ちる。
「ど、どうしたのよ?」
「あ、主様?いかがなされましたか?」
急に崩れ落ちた俺を、二人は心配そうにする。
「な、何でもない………」
あの神、そこまで干渉しに来るのかよ………。
「話をぶった切って悪い。で、そっからどうなったんだ?」
立ち上がり直して、リボルに話を戻してもらう。
「そっからが大変だったわよ。ホントに十人とも上級になっていたし、何故か他の精霊からアタシ達やたら狙われるし」
そりゃ上に上がる条件が分かってないなら、元幹部クラスを倒せば上に行けると思うもんな。
「だから、アタシ達は精霊界の端っこの端っこまで逃げて、そこで戦いから離れてのんびり暮らしてたわね」
「あの時は本当に恐ろしかったのです。外に出るたびに魔法の雨が降るのですから」
リボルはげんなりした表情になり、それに同意を示す様にラーナもうんうんと頷く。
「それは戦えないラーナからすれば凄く怖ぇな………」
「でも、皆が守ってくれたお陰で何とかなっていたのですよ」
そんな風にラーナは微笑みながら言う。
やっぱり、特級精霊達の事を信頼してんだな。
「気が付けば他の精霊が精霊王になれたらしいけど、すぐ誰かに倒されて、その精霊が精霊王に変わって、またすぐ倒されて、っていうのを繰り返していたらしいわ」
「精霊界、殺伐としてんなぁ………」
俺、精霊界ってもっと穏やかな世界を想像してたんだけどな………。
やはり精霊王になると優先的に狙われるから、王の期間は長くはないみたいだ。
「でもその周期も、5年前くらいに終わったのよ」
そうリボルは言うが、その顔は全く嬉しそうではなく、むしろ相当嫌そうな顔をしていた。
「また神様がやってきたのよ………」
「あぁ………」
そりゃ、そんな顔にもなるわ。
『やはり、同じ事の繰り返しではないか!何も面白くないぞ!これは他の因子を取り込んでみるか………』
精霊界の安定を勝手に引っ掻き回しといて、何様だよって話だな。
まぁ、神様なんだが。
その後、新しく精霊王になったのが『ラグニ』らしい。
そのラグニに、今まで通り他の精霊が挑んだらしいが、誰も勝つ事が出来なかった。
その時には特級精霊に戻っていたリボルやミナ姉達でも勝てなかったらしい。
何故、平穏な生活を手に入れたリボルやミナ姉がラグニに挑んだのか。
それは、ラグニが王になった際に行った宣言が問題だった。
『俺が新たな王のラグニだ!
俺は人間だが、勝ったからには精霊王だろう!
俺が精霊王になったからには、女の精霊達は俺の嫁にしてやる!
それで、精霊ハーレムを作る!
ちなみに、俺はチート持ちだから勝とうとしても無駄だからな?』
「って言い「ちょっと待て」ど、どうしたのよ?」
話を続けようとするリボルを止める。
リボルは急に話を遮った俺を訝しげに見る。
「本当にそのラグニとやらはそう言ったんだな?」
「え、えぇ。一言一句違わずこう言ったわよ」
確定だ。
確実に転生者だ。
「話を戻すわね。そんな事を抜かしたラグニに何人も挑んだわ。でも誰一人勝てなかったのよ」
そう言いながら、リボルは本当に悔しそうな顔をする。
「まず私たちの操る魔法が一切効かないのよ。そして戦闘スタイルが近接なのよ。精霊達は皆魔法で戦うから近接に弱くてね、誰も勝てなかったわ」
恐らくチートはその『魔法が一切効かない』スキルなんだろう。
近接自体は元々のステータスが高かったか、精霊達が弱かったかのどっちかだと思う。
あのアルカナがチートを二個もくれる筈が無い。
実際に会った事があるからこそ、そう思う。
「で、負けた精霊はラグニに捕まって眷属にさせられるのよ」
精霊王が他の精霊を眷属に出来るって奴か。
眷属の能力が使えるのどうの。
それは相当強化されてしまっているんだろうなぁ………。
「それで宣言も気に入らなかったし、捕まった女精霊を助けようと私達も挑んだのよ。結果はミナの転移スキルが無かったらみんな捕まっていたわね………」
精霊の魔法が効かないのなら、それはミナ姉やリボルでも無理だろうな。
「でもその時に他の女精霊は全員連れ出せたのよ。で、別の空間をミナに作ってもらって、そこを隠れ家にしたのよ。で、ミナは避難先に人間界を選んでいたから、恐らくアンタに会ったのはその頃ね」
そう言うと、リボルは横にいるラーナを見る。
「でも、コイツだけ戦闘に参加してなかったからその時いなかったのよ。ラーナを連れて行く為に、あの中だったら戦闘力の高いアタシが隠れ空間から出たの。でも、ラーナがいた場所に行っても、荒れ地になってて何もなかったのよ」
「はぁ………。なんでまたラーナはいなかったんだ?」
御本人に聞いてみる。
「リボル達がラグニと戦っている時、私だけ留守番していたのですけれど、そこを襲われたのですよ。勝てないのはわかっていたので、直ぐに『魔力爆発』したのです」
「やっぱりね………。アンタが下級になっていたから、そうだと思ったわ」
ラーナがいつも通りに喋ると、リボルは分かっていたようで表情はあまり変わらないが、少しだけ落ち込んだ雰囲気が零れる。
「ちょっと待ってくれ。クラッシュ?ってなんだ?」
響きがやばいんだが………。
「『魔力爆発』っていうのは、精霊の最終自衛手段なのですよ」
リボルの落ち込み方がどんどんひどくなる。
恐らくその最終自衛手段を使わせてしまった事を悔やんでいるのだろうが、そんなひどいのか?
「自分のMPを全て体内に集め、それを全て魔力に変えて暴走爆発させる事なのです」
はっ?
「それは、使った本人は只じゃすまないんじゃ………?」
「もちろんなのです。使った後は跡形も無くなりますから」
「はぁ!?」
「だからこその最終自衛手段なのです。精霊は復活出来ますからね。階級が一段階下がるだけですよ」
ケロッと言い放つラーナだが、とんでもない事を言っている。
つまりラーナが死んだ理由は、自衛の為に自爆したからだというのか………。
「ホントにアイツ等絶対許さないわッ!非戦闘精霊を集団で襲うなんで屑の極みよッ!」
前回のラーナの最後を本人から聞いて、リボルが本気でキレだす。
「それには俺も同意だ。話を聞いただけでも気分が悪い」
ラグニのタイプはすぐに分かった。
『チートを手に入れて周りを蹴散らせるようになって調子に乗り、この世界は自分の好きにしてもいいと勘違いしている』
そういう類の転生者だ。
異世界関連の本を読んでいれば分かるはずなのだ。
そういった転生者はそうじて周りからの恨みを買い、敵を大量に作る。
そして最後は、増やし過ぎた敵を抑えきれなくなり討たれる。
そうなるのがお決まりなのだ。
それが転生者として分からないはずが無い。
だが、ラグニは実際に自分の好き勝手に生きているらしい。
つまり、討たれるとは微塵も考えていない事になる。
それほどに奴が手に入れたチートは強いというのか?
奴に勝つ手段は無いのか?
………何も思いつかない。
「…………ま?」
だが、何かが引っかかるのだ。
「…るじ…ま」
矛盾してる事があるように感じるのだ。
「……じさま」
それが分かりそうでモヤモヤする。
「主様!」
「うおっ!?びっくりしたぁ!」
耳元に大声で叫ばれ、びっくりする。
振り返ると俺を心配そうに見るラーナと、怒りの目を俺に向けるリボルがいた。
「ちょっと!アタシの話を聞いていなかったわねッ!?」
どうやら、俺は考え込んでいる横でリボルが何かを言ったらしいが、俺には聞こえていなかったらしい。
「悪い悪い。少し考え事してた」
「まぁいいわ!それよりもアタシが手に入れたスキルの話よッ!」
リボルは気にせず話を戻してくれる。
「確か【精霊憑依】だったか?」
「そうねッ!」
「どんな能力なんだ?」
そういえばちゃんと見てなかったな。
なにせ、他の能力がインパクト強くて………。
「何でも『周囲の魔力と一体化する』能力らしいわ!」
「kwsk」
「周辺で一番大きな魔力の下に、周りの魔力を集めて合体させる能力で、MPが常時よりも増えて減りにくくなって、魔法の威力が上がるらしいわ!」
「つまり、めっちゃ魔法強化って事だな?」
「そうねッ!」
そいつはつえーわ。
リボルの魔法攻撃力がまた上がるのか………。
さすが【極振り】の称号を持つだけはあるな。
「主様が与えた能力なのですから、強いのは確定なのです」
ラーナは自分が強化された例があるので、俺を上げてくれる。
「おう、ありがとな」
何となくラーナの頭を撫でる。
「ん………!」
嬉しそうだ。
「ちょっと目の前でイチャつかないでよッ!」
「悪い悪い」
放置されたと思ったのか、リボルが俺に飛びついてくる。
リボルも撫でてやる。
「わ、悪くないわねッ!」
顔ニッコニコしてますよ。
「試しに一回やってみるわ!しっかりと見なさいよねッ!」
ご機嫌になったリボルは、俺に新能力を見せたいらしい。
一歩下がって俺達から距離を取る。
「行くわッ!【精霊憑依】ッ!」
リボルがそう唱えた瞬間、辺りに蛍の光のような玉がたくさん浮かぶ。
周辺を漂う微精霊が反応しているのだ。
そして、一つになろうと集まりだす。
反応しだしたのはそれだけではなかった。
「な、なんだ!?」
「ッ!?」
俺の魔力も、ラーナの魔力も光りだした。
まさか、魔力の塊とも言える精霊も一体化の対象なのか!?
それはつまり―――
「えッ!?」
周りの光玉は俺に吸い込まれるように集まる。
『一番大きな魔力』を持つ俺に。
微精霊も、上級精霊も、特級精霊も関係なく俺の中に吸い込まれる。
そして、周りの光玉が全て俺に吸い込まれた。
「………どうなった?」
今立っているのは俺一人だ。
ラーナもリボルもいない。
『どうやら、主様と一つになっているようなのです』
頭に声が響く。
【念話】のような感じだ。
『ラーナか?』
『はい』
【念話】と同じ感覚で話しかけてみると、ちゃんと伝わるようだ。
『あ、アンタ何をしたのよッ!?』
リボルの大きな声も聞こえた。
どうやら、吸い込まれても意識はしっかりとしているようだ。
『なぁリボル。確かあのスキルは一番魔力の大きいものに集まるって言ったな?』
『えぇ、だからこそアタシに集まるはず―――』
『いや、それなら元は俺で間違ってない』
『どういう事なのですか?』
気になったのかラーナの方が先に聞いてくる。
『リボルはMP240だったな?』
『え、えぇ、そうよ』
『俺MP350超えてるんだわ』
『はぁッ!?』
『えっ!?』
俺の言葉に、リボルだけじゃなくラーナも驚いている。
『あれ、言ってなかったっけ?』
『聞いてないわよッ!』
『聞いてないのです』
まじか、そういえば俺のステータス教えるのすっかり忘れてたな。
ただ、かなりひどいことになってるんだよなぁ………。
☆★☆★☆ステータス☆★☆★☆
名前:レイ
Lv:69
種族:精霊
年齢:0
性別:女
職業:上級精霊
状態:【精霊憑依】化(02:52)
HP:107/107(352/107)
MP:356/356(712/356)
STR:C
VIT:D
INT:B(A)
MID:D(C)
DEX:C(B)
AGI:D(C)
LUK:S
《称号》
【女群集の呪】【真祖妖精族の友】【王の血統】【神狼の兄】【剣豪の弟子】【黄泉還】【母の愛】
《スキル》
・物理系
【剣術Lv.2】
・魔法系
【魔力弾】【浮遊剣】【噴火】【二重噴火】
・強化系
【魔力武装】【二重詠唱】【連撃】
・移動系
【縮地】
・耐性系
【魔法耐性Lv.3】
・生産系
【料理:Lv.1】
・回復系
【回復魔法:Lv.3】【継続回復】
・探知系
【魔力探知】【魔力操作】【魔力遮断】【精霊眼】
・特殊系
【×念話】【血の眷属】
《限定スキル》
・魔法系
【雷魔法Lv.5】【雷弾】【放電】【雷撃】【閃光張手】
・強化系
【充填】【蓄電】【感情爆発】
・耐性系
【魔法耐性Lv.4】【麻痺耐性Lv.5】
・特殊系
【録音】【再生】【二重奏】
☆★☆★☆☆★☆★☆★☆★☆
これは強化され過ぎじゃないかなぁ?




