3.能力、自分強化の調整と新技
精霊王の所へ向かっている途中、移動中気になっていた事を聞いてみる。
「そういや、ラーナは眷属化してスキル増えたんだよな?」
「ケロ」
「元々スキル持っていたんだよな?」
「ケロケロ」
「ラーナって何精霊なんだ?」
地味に聞くタイミングが無くて聞いていなかったが、聞いてみたかった事ではある。
「ケロロ?」
見ててね?っと言わんばかりに自分を指さしながら鳴く。
さて、どういう精霊なのか………。
「ケロ~ケ~ロ~ォ~」
突然歌うように鳴きだした。
「へっ?」
「ケロケ~ロロ~ケロケロケ~」
しかもカエルの鳴き声なのに、上手に歌う。
「歌?」
「ケロ~」
腕で×表示をするラーナ。可愛い。
「なら音か?」
「ケロ!」
手をこちらに指し、正解!と言わんばかりに鳴く。
「まさか、音響精霊的な奴か………?」
「ケロッ!」
その通り!というジェスチャーをするカエル。
世の中の現象は、精霊が生み出した。
そういう説がある。
火を起こしたり、水を生み出したり、精霊(微精霊含む)は様々な現象を生み出す。
だが、精霊によって火の大きさが違ったり、水を生み出す量が違う事が分かっている。
それは、精霊にも得手不得手があるという事。
つまり、精霊には各個体ごとに、得意とする現象がある。
それは、身の回りに溢れる、例えば風が吹く、音が聞こえる、時間が進む、といった現象。
それらは、疾風精霊、音響精霊、時空精霊、といった、それぞれの現象を得意とする精霊の仕業ではないか?
という、正直暴論である。
だが、この説は精霊信仰の強い人々に好まれ、意外と信じている人も多い説だ。
この信仰を基盤にされているのが、六大宗教の一つ『精霊教』になる。
そしてこの説通りならば、このカエルは音を生み出した精霊となる。
日常でも必須な現象である『音』に関する精霊である。
ラーナが転生する前は、相当上位の精霊だった事は間違いないだろう。
「はぁ~、お前すごかったんだなぁ」
「ケロケロッ!」
そうだぞ!と胸を張るラーナ。
あの空間で見た美少女は、こんなに自己主張が強かったけ………?
「それじゃ、ラーナが得意な事を教えてくれるか?」
「ケロロ」
「なら見せてくれ」
ラーナが頷いたので、俺がそう言った瞬間。
『なら見せてくれ』
と、ラーナが俺の声で喋る。
はっ………?
「は、はぁ!?」
『は、はぁ!?』
「なんで俺の声がするんだよ!?」
『なんで俺の声がするんだよ!?』
驚く俺に対し、ラーナは俺の言葉を繰り返す。
俺と全く同じ声で。
説明中………。
now loding………。
「オッケー、成程な。多分理解した」
『オッケー』
ラーナのスキルは。恐らく【録音】と【再生】。
【録音】は、自分が聞いた音を一定区間保存出来る。保存数は5個。
【再生】は、【録音】で保存した『音』を再生できる。切り取って再生する事も可能。
音を司る精霊らしいスキルだった。
「つまり、【録音を工夫すれば会話が可能だと」
『可能、可能』
ラーナは俺の声を使って同意を示す。
「でも、俺ラーナのケロケロボイス凄い好きだからなぁ」
「ケロっ!?」
「そうだな。普段はそのままでいてくれ」
「ケ、ケロロン………!」
ラーナは俺の言葉を聞いて飛び上がって驚いた後、しょ、しょうがないな………!って感じで照れる。
やっぱり、自分の声って違和感すごいよな。
そろそろ二日目の夕方になる。
ラーナを肩に乗っけて歩いているが、ラーナは昼前くらいからずっと寝ているので、喋り相手が誰もいない。
寂しい。
精霊界に来てそろそろ二日経つがラーナ以外は見ていない。
流石にそろそろ焦ってきている。
時間が経てば経つほど、シロは危険だ。
その為、早く何かしないといけない訳だが、正直詰まっている感がある。
まず、精霊王の所に行ったとして、今の俺では勝つなんて正直無理だと思っている。
特級精霊であるミナ姉が匙を投げるくらいに強いはずなのだ。
今のままの俺だと、勝ち目は全く無いだろう。
まず、なぜミナ姉達が勝てないのかがわからない。
時空精霊なんてチートクラス確定だ。
『時間・空間』を操る精霊なのだから、転移といった移動能力は使えるだろう。
下手をすれば『おれが時を止めた………』なんて出来るかもしれない。
………まず、ミナ姉にどうやって勝てばいいのだろうか?
だがそんなミナ姉でも精霊王には勝てないと言う。
勝てない敵には、当たり前だが勝てない理由が存在する。
例えば、【魔力付与】を覚える前の師匠であれば、『物理が利かない・魔法が使えない』という理由で勝てない敵がいた。
俺だったら、シロには『スピードが追い付かない』、師匠だったら『剣の腕が劣っている』といった感じだ。
ミナ姉が精霊王に勝てない理由がわかれば、そこを工夫して突破口にするかもしれないのに………。
そこがわからないので今は自分の強化をするしかない。
そして今の俺が工夫出来そうな所は、『新魔法開発』か『【魔力武装】の実用化』の二点となる。
正直、ステータスとレベルは今はどうしようもない。
敵も魔物も居ないんだもの………。
なので現在の保持能力の強化をしようと思う。
とりあえず、新魔法は全く思いつかない。
異世界系の小説で最強になるスキルと言えば、『奪う系』か『一点特化系』が多い。
両方とも【魔力操作】では作るのはムズイ。
てか俺が作り方を考えつかない。
てなわけで【魔力武装】をどうにかしようと思う。
夜。
今日も木の上です。
ていうか、森すら抜けられなかった………。
幹に大きめの【魔力弾】で穴を空け、ラーナを寝かせる。
てか、こいつも起きなかったな………。
さて、【魔力武装】をどうするかは、歩きながら目星をつけた。
最初に使った時は、限度を考えないで使った。
その結果、スーパーサ〇ヤ人のようなオーラを纏ったが、その分消費が激しすぎて倒れた。
つまり、抑えて使うべき能力だと思う。
ハ〇ター×〇ンターの『オーラ的なアレ』をイメージした。
地面に降り、件の二人の様に自然体で立つ。
片シャツ出したあの人の修行をイメージする。
「体内から溢れ出ている、ね……間違った『魔力』だ。魔力を肉体の周りにとどめる………」
余計な魔力を流出しないようにイメージを強く持つ。
………。
………………。
………………………。
よし、イメージは完璧だ。
「行くぞ………!【魔力武装】!」
スキル発動と同時に金色の魔力が溢れ出し、即座にスーパーサ〇ヤ人状態になる。
【魔力探知】を使い、自分の魔力の状態を把握………!
【魔力探知】使ってみて初めて分かった。
相当広範囲に魔力が広がっている。
2mはくだらないだろう。
これではすぐに魔力が切れるのも頷ける消費量だった。
急いで抑えなければ。
【魔力操作】を使い、魔力を抑える………!
溢れる魔力を体の周りに纏わせ、それ以上の流出を防ぐ。
だがこれが難しい。
部位一つ一つではなく、全体的に抑える必要がある。
気を抜くと、抜けた一点から吹き出すように流れていく。
集中集中………!
そして何とか魔力を少量だけ纏い、流出を防ぐ事が出来た。
かかった時間は恐らく十秒程度で済んだはずだ。
【魔力武装】を止める。
「ふぅ………」
止めた瞬間、思わずため息が出た。
………かなり疲れている。流出した魔力は相当なものだろう。
そして自分のステータス板を見た。
「ステータスオープン、………ッ!?」
驚いた。
十秒程度しかスキルを使っていないのに、350を超える俺のMPが残り13になっていた。
後数秒でも遅れていたら倒れていただろう。
これは早急に特訓が必要だ。
このまま実践で使うなど論外すぎる。
俺自身が死んだ時、咄嗟の事に体が動かなかった。
そんな状態の改善もしないといけないのに、その状態でこの集中力とMPの消費は大きすぎる。
まだ使えるレベルでは無い。
「まぁ、とりあえず今は寝るかぁ………」
とりあえず今はMPの消費が多すぎてもうしんどい。
寝てMPを回復させようと思う。
木の上に登る。
ラーナはまだ眠っていた。
「おやすみ」
俺も太い幹を背に、枝の上に座る。
そして寝る前に………。
「【超回復】」
残ったMPをオーバー気味に吹っ飛ばす。
上昇量が落ちてきたとはいえ、やれる時にやっておかなければ。
おや……す………み………………。
朝!
木漏れ日が目に当たり、眩しくて目を覚ました。
「ふぅ………。行くか!」
今日こそ進むぞ!
「………ケ……ロ…ォ~」
………ラーナが目を覚ましたらな。
俺が目を覚まして少しして、やっとラーナが目を覚ました。
「お前良く寝るなぁ」
「ケロ?」
そう?と首を傾げる。
精霊は寝なくても平気なはずなのに、何故にラーナはこんなにも寝れるのだろうか?
「まぁいいか。行くぞ」
「ケロッ!」
俺の声掛けに応じ、肩に飛び乗るラーナ。
「さてラーナ。今日は全力で走ってこうと思う。だから服の中に入っていてくれないか?」
「ケロ!」
そう鳴いて、ラーナは俺の胸元に飛び込んだ。
よし、準備オッケーだ。
今日から本気で急ごうと思う。
体を前傾姿勢にする。
重心を前に。
「行く………」
後ろに下げていた右足で思いっきり踏み込む。
「ぞッ!って、わぁ!?」
思ったより加速した!?
ようやく素早く流れる景色に目が慣れ始めた。
自分のスペックを確かめる為に全力で駆け出してから、既に10分ほど。
未だにスピードを落とす事無く、森を駆け巡っている。
息が切れる感じは全くしない。
どうやらスタミナも上がっているようだ。
「それにしてもっ!スッゲーなッ!この体!」
かなりのスピードを出して走っているので、景色の移り変わりが激しい。
ましてやここは森だ。
乱立する木は至る所から伸びている。
それが、目まぐるしく視界の中を入れ替わっていく。
だが俺には、それがはっきりと見えていた。
ましてや、見てから避ける、というワンテンポ遅れた行動ですら、木に突っ込む前に避ける事が出来るほどの高スペックな体。
これが、一段階伸びたステータスの効果………!
自分が明らかに強くなった事を実感し、テンションが上がり始める。
そして目の前に、太い幹の木が見えた。
これは流石に避けるのも間に合わなそうだ。
ならばこそ―――
「押し通るッ!」
あの木をぶち抜いて見せる!
今ならいける気がする!
走りながら両手を前に突き出し、手の甲をクロスに重ねる。
完全に勢いとテンションで魔法を作る。
「【噴火】!」
イメージは、両手に集めた魔力を真っ直ぐに掌から吹き出す魔法。
火力の高いガスバーナーの様に。
吹き出した魔力は、俺のイメージ通りに真っ直ぐと伸び、幹に直撃する。
ドオォォンッ!!
すると、幹にはやけに簡単に大きな穴が開いた。
その作った穴を走り抜ける。
技の威力と勢いが爽快だった。
「フゥゥゥ!!」
テンションが更に跳ね上がる。
そのままのノリで、木に大穴をブチ空けながら走り続けた。
そして、昼過ぎくらい。
やっと森を抜ける事が出来た。
そこはまた草原ではあったが、右奥の方にようやく見えた道の方まで走り、後は道なりに歩き始めた。
テンションが落ち着いてきて、少し恥ずかしくなる。
「あぁ、またやっちまった………」
昔からこうだ。
テンションが上がったり、感情が高まったりすると、どうしても勢いで行動してしまう。
小学校の運動会では、かけっこで一位になってテンションが上がり、終わったのに疲れきるまでグラウンドを走り回ったり。
その後の競技は倒れて全部参加出来なくなってしまった。
せんせい、めいわくかけて、ごめんなさい!
中学校の文化祭では、劇の役に熱中するあまりアドリブで演技をしてしまい、予定と違う劇にしてしまったり。
夕莉のアドリブの演技が無かったら大滑りでした。
本当にありがとう。
そして高校の頃には、妹と二人でやっていたマイナーなアクションゲームで開催された日本大会のタッグマッチの決勝戦で、決勝という舞台にアドレナリンがドパドパになり、クサイ台詞とかっこつけた戦い方でギリギリ優勝出来、悪い目立ち方で有名になってしまったり。
妹よ、ゲームにログインするたびにフレンドから絡まれるようになっていたな。
巻き込んでしまって本当に済まないと思っている。
こんな感じで駄目だとわかっていても、感情のままに動いてしまうのは俺の悪い癖だ。
実際、あの森の駆け抜け方は大問題だろう。
俺は、敵に見つかってしまうのはあまりよろしくない。
見た目が女だし。
そして、精霊の女を殆どミナ姉が守っているらしいので、この世界は男だらけだ。
俺は『男=敵』である。
敵しかいない。
更に、【噴火】の乱発で、MPを半分ほど消費している。
未知の敵との戦いを前にしてこの余裕である。
反省点しか出てこない………。
「クワァ~~。ケロ?」
ラーナが欠伸をしながら、胸元から肩によじ登る。
あんなに動き回っていたのに、まだ寝てたんかいな。
「まぁいいか」
もう終わった事だ!
これからの事を考えようか!
「ラーナ。この道を進んでいけば、町に行けるのか?」
「ケロ」
つまり、この先に精霊王がいる。
だが俺は見た目をどうにかしないといけないだろう。
見た目で目立ちすぎてしまう。
さて、どうしようか………。
「おぉ?女だぁ!」
「ん?」
顔をどう隠すか悩んでいたら、そんな声が聞こえた。
何にも考えずに道のど真ん中を歩いてたせいで、いとも簡単に見つかってしまった!




