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―――――もしもし、お疲れさま。 急にごめんね、ビックリした?
あのね、今日も帰りにご飯食べてた時「今日なんか元気ないぞ。大丈夫か?」って何回も心配してくれてたよね? 気遣ってくれてありがとう。だから今日金曜なのに早めに解散にしてくれたんだよね?
でもごめんね、あれ本当に大丈夫だったの。体調も悪くもなんともなくって、本当に元気だったの。あれはその……緊張してたっていうかなんていうか……。
それで「考えてみれば最近はずっと思いつめた様な顔してる」って言って相談にも乗ろうとしてくれたじゃん。でも私は「流石に君にはどうしても言えない」なんて言っちゃたから尚更に心配させちゃって、あの後でナツに連絡したんでしょ? 「何か悩んでるみたいだから相談乗ってやってくれ。男の俺には言いにくい様なことみたいだから親友のナツちゃんなら乗ってやれるかもだから連絡してやってみてくれ」って。ナツから教えてもらった。
君ってば本当に優しいんだから。口だけで終わらないって言うか、ちゃんと責任持って心配してくれる感じ? すごいと思うよ。
……でもまさかそんなにまで心配してくれてたなんて、逆に申し訳なくなっちゃう。でもナツったらそんな君に「そのうちわかるよ、鈍感男」って言ったらしいじゃん。いきなりそんなこと言われて意味わかんなかったよね。
だからね、そう言われた理由を今教えようっていうか、それと同時に私の悩みを解決させようっていうか……。
とにかくね、申し訳ないなって思ったの。君にずっと心配させっぱなしで、家に帰って来て罪悪感みたいなのもあったし。それに私自身もこのままズルズル引き伸ばしてもダメだなって思って、だから今すぐ伝えようって。
でも君ったらそんな日に限って会社にスマホ置いて来ちゃうんだもん。他人への気遣いは完璧なのに、自分に対してはそういう抜けたとこあるんだよね。でもそういうとこも含めてそれが良さっていうか魅力っていうか……。いや、あの。だからこうやって自宅の方の電話にかけてあげたんだよ。
それでその、こうやって電話してまで言いたかったのはね……君が、君のことが好きだってこと。
うん、そう……好き。
ずっと言えなくて悩んでたの。でもやっと言えたからこれで解決! あーよかった。これでスッキリしたよ! ごめんね、私そんな浮かない顔してた? 悩みって君のことだったんだよね。
あとは君の答え次第で今後のお酒が美味しくなるか不味くなるかだね、あははは……。
あの、だからそういうことだから。君が私のことをどう思っているのか教えて欲しいなぁ。
……えと。もしもそれがさ、いい方なら一緒に美味しいお酒飲もうよ、なんてね。
じゃ、これ聞いたら連絡くださーい。―――――
『午後9時43分のメッセージです』ツーツーツー。
俺はジャケットを片腕に抱え、ネクタイを外そうと手をかけた状態で固まったまそれを最後まで聴き終えた。
今やほとんど出番が無くなってしまった部屋にある固定電話。靴を脱いでリビングへ行くと暗闇の中でそれは点滅していた。留守番電話なんてこの電話で初めてかもしれない。なんだか怖くなって恐る恐る近づき、再生のボタンを押した。そして聞こえて来た声がお前だったことに一気に安堵感に満たされたと思えば、なんなんだ。これはどう言うつもりなんだ。
色々と言いたいことはあったが、何よりも真っ先に感じたことが思わず口から飛び出す。
「――――なんでルスデン!?」