参考図書、エロ本
年始は中々書く時間の確保が難しいですね。書き溜めを作りたいところです、
学生は冬休みに入っているが、世間は平日だ。晃が準備を終えて、家を出れるとなった時間は、通勤ラッシュにだだ被りだった。
なにより、相談したところどちらも、というか俺がショッピングモールの開く時間を知らないのが決定的だった。どうしようか、となったので、
「寝るから、時間調べて。後で起こして」
リビングの椅子を立って向かいに座っている晃に言った。眠かったし、ちょうどいいか。
(ちょっとちょっと!せっかく準備出来てるのにどういうこと!?)
あのな、ナビィ。お前の時代じゃ違うのかもしれないが、朝の時間は戦いだ。俺は平和主義なんだ、戦いたくない。
「ごめん、そりゃ今すぐじゃないよね。俺、浮かれちゃって」
焦るのは分かるが、俺の格好を見ろ。今すぐ行く気だったぞ。浮かれまくりだぞ。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、俺が三人集まってもダメだろうなと思わずにはいられない現状だ。
晃の横を通って階段を上っていると、ナビィが眼前に飛び出して来て口を開く。
「え、なんでなんで?晃くんなんか傷ついた顔してたよ?ねぇ!?」
「ありゃバツが悪いだけの顔だろうよ」
母さんの部屋に入って、コートをクローゼットに適当に掛けてベッドに倒れこむ。ぐるっと回れば布団も纏えて暖かい。
「そもそも店が開いてないかもしれないんだ、今家を出たってしょうがないだろ」
「ああそうか、この時代じゃ自動販売は……ってそうじゃなくて、カフェにでも行けば良かったじゃん!」
「やだよ、鏡に話しかける趣味はないんだ」
言い捨てて、目を閉じる。無理やり動かすなら死なない程度に勝手に動かしてくれ。どうせあっちも俺だから行こうとは思わんだろ……。
「ああ!もう!」
焦ったように部屋を出て行くナビィに少し気分を良くして意識を手放した。
ナビィリィンは少し、焦っていた。自分の思うように事態が進まないからだ。この時代のデータにあった本を参考にありかを作ったはいいが、参考資料とその後の流れが違い過ぎる。なによりも、柏倉晃の理性の強さを読み違えた。
(でもでも、まだまだどうにか出来るよね!)
飛びながら自分に言い聞かせて、リビングの晃の元へ向かう。直接襲わせる思考誘導は上手く行かなかったが、今から遊びに行かせるぐらいなら出来るはずだ。
リビングに辿り着けば、椅子に座ったままの晃の姿。
「この時間に開くなら、もっかい寝てもいいな。今日は何故か早起きしちゃったからなぁ……ラッキーだったからいいんだけど」
見ていたスマホを閉まって立ち上がる晃。今を逃すと寝ることだけに意識が行ってしまうだろう。
(カフェに行け〜、カフェに行け〜)
ナビィリィンは明らかにの頭の横で思考誘導を行う。これは単語や文を頭に送りつけることの応用であり、強制力はない。つまりは本人のやりたいことを後押しする程度の効果しかないのだ。
「なんか急にカフェに行きたくなって来たな。紅茶とかコーヒーって買ってたっけなー」
そして晃にとってカフェとは会話をしたり、変に長居するような場所ではなく、飲み物を買うところであった。
「あー、ないなー。まあ後で買い物行くときに買えばいっか」
軽く冷蔵庫の中を確認して諦める晃。その姿にナビィリィンは歯噛みしていた。
(ああ、もう!なんでこんなバカからパパに繋がるの!?ささっと洗脳して子供だけ作らせればいいのに!)
パパに付けられた保護装置を恨む。晃以外であればタイムパトロールの出動案件になる可能性がある程度だが、晃の精神に対して作用することは大幅に制限が掛けられている。
結果、そのまま階段を上って行く晃に対して念を飛ばすことしか出来ないのである。
その問題の晃は、階段を上った後に、彼の母の部屋の前に立ち止まる。今はありかが使っている部屋だ。
(おお!まさかの!いいよ!襲って!ぜひぜひ!)
急遽思考誘導の内容を変える。ナビィリィンの思惑通り、晃は扉を開き、ベッドの横に立ち、眠るありかを見下ろす。
数秒ほど見つめて、
「ほんっと可愛いなぁ……本当に俺の親戚なのか?」
そう呟いた。
「父さんに聞いても『運がいいじゃねぇか、そのまま捕まえとけ』みたいなことしか言わないし……」
腕組みまでして完全に考え込む風体だ。
「でも、そのうち話してくれるだろうしいっか。俺も二度寝しよっと」
そう言って部屋を出て行く晃。この間送り続けていた念波は、またしても効果をなさなかった。
(え、え、ええ……?)
そうして部屋にはすやすやと眠るありかと、空中で呆然と立ち尽くすナビィリィンが取り残されたのであった。
(うーん、母性プログラム、却下。女性の生き方教本……時代に合ってないかな、却下)
晃の予想以上のヘタレっぷりに不能なのではないか?など様々な要因を考えたナビィリィンだったが、立ち直りは早かった。
晃を変えれないのであれば当初の計画通り、弄りやすいありかを変えようと切り替えたのである。
(性格のプリセットを突っ込めれば楽だけど、良くて二重人格、悪ければ壊れちゃうかなぁ……)
しかし、ナビィリィンに蓄積された既存の性格矯正プログラムは、今まで男として生きて来た記憶を持つありかには適合しないであろうものばかりであった。
(もっと意識を変えれるような何かが……むむ、これは!)
目が覚める。身体のだるさが取れている。俺は起こしに来なかったんだろうか。
「ナビィ、俺はどうした?」
「なになに?俺って、晃くんのこと?」
いるだろうと思ってナビィに問いかけると、妙な返事が返ってくる。
「そう、私、起こしてってアイツに言ったよな?」
「うんうん!そうだね!晃くんなら隣の部屋でグッスリだよ!」
マジか。このスッキリ具合だと間違いなく昼は過ぎてるぞ。アラームをかけ忘れたか、アラームも無視して寝続けたかのどっちかだな。
「はぁ……起こしに行くぞ」
「はいはーい、行こ行こ!……言葉遣いの矯正ぐらいなら問題なさそうだね」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないよーだ!キミらはホントに手間がかかるよね!」
なんなんだ、急に。まあでも、無理に起こされた時の俺の機嫌の悪さは私が良く知ってるし、ちょっと手間かもしれないなぁ。