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友達の家は楽しい

「アリーおかえり!」


 教室に戻ると、莉子がパッと笑って手を振って来た。なんだか尻尾を幻視してしまいそうだ。


「ああ、ただいま」


 私が購買に行ったこともあり、今日は莉子の机で食事をしているようだ。机に違いはないのだが、莉子の席の方が廊下側で、少し教室の見え方が違うな。空いている席から椅子を拝借して莉子の隣に座る。


「ありかちゃん、今日は弁当じゃないんだ。寝坊しちゃった?」


 弁当をパクつく合間に結花が言った。

 お母さんに作ってもらってるんだー。と言っていた弁当は、今日も一定水準を超えており結花のお母さんの努力と愛が伝わってくる弁当だ。


「いいや、起きてはいたんだけど、アヤが朝食を作りに来ててさ、弁当も作ってくれてるのかなー? って思ってたけどそんなことはなかった」

「そっかー」


 これならアンドロイドがどうだの平行世界がどうだの話しをする前に、弁当があるかを確認するべきだったかもしれない。

 多少食が細くなったとはいえ、菓子パンの一つや二つじゃすぐにお腹が空きそうだ。


「でもさ、なんで冴野さんはあんなに晃くんにアタックしてるんだろうね。もしかして、晃くんちの……」

「結花……それ系の話は食傷気味だ。やめてくれ」

「え? そう? なんだー、せっかくありかちゃんを焦らせようと思ったのにー」


 会う人会う人から言われてちゃ、たまったもんじゃない。しかも焦らすってなんだ。家から追い出されでもしない限り、それほど焦りは……まさかその可能性が? いやいや。


「じゃあじゃあ、今日はどこに遊びに行こっか?」

「莉子、遊びに行くのは確定なのか?」

「ありかは、リコと遊びたくないの……?」

「そういうわけじゃないけどさ」


 そういうわけじゃないから、上目遣いに目を潤ませるのはやめなさない。意味もなく悪いことをした気持ちになってしまう。


「それなら遊びに行くとして、わたしはリっちゃんのお家に行ってみたいでーす!」

「ええ!? リコんち!? ユイユイの家にしようよぉ〜」

「わたしの家は、えっとー、そう! とても見せられないぐらい汚れてるから今日はダメ! だからリっちゃんちね!」

「別に、また私の家でいいんじゃないか?」


 どっちの家に行くかで揉め始めた二人だが、私の家の方が私としても居心地がいい。


「アリーの家は広くていいんだけど、なにもないんだよ!」

「それに、ありかちゃんちばっかりなのも悪いかなって二人で話してて」


 なるほど。確かに話をするにしても、なにか話題になるものはあった方がいい気がする。


「だから、リっちゃんちね!」

「ユイユイんちにしようよ〜!」

「リっちゃんち!」

「ユイユイんち!」

「リっちゃん!」

「ユイユイ!」


 とうとう二人はあだ名を呼び合うばかりになった。

 結局、昼休みも終わりに近づいた頃に莉子が折れて、莉子の家で遊ぶということで落ち着いた。二人とも家に入れづらいなら無理しなきゃいいのに。











「うぅ、入るのはいいって言われたけど、リコんちもなにもないからね!」

「いいっていいって。わたしはリっちゃんちに行けるだけで楽しみなんだから!」


 億劫そうな莉子とうっきうきな結花に挟まれて歩く。いつの間にか両手は二人に握られて、状況はまさに両手に花だ。

 男にすれば嬉しい限りのはずだが、この状況に慣れつつある私もいる。というかむしろ上機嫌な結花に右手を振りまわされていることに疲れつつある。


「あれだよ〜」


 そう言って莉子が指差したのは年季の入った集合住宅だ。

 小学生の頃に遊んでた友達の家がこんなんだったなーなんて、違う場所の建物なのに思ってしまう。構造が似通っているからだろうか?

 エレベーターに乗って上階へ上がり、莉子の先導で歩いていく。


「この時間だと多分、ママがまだ寝てるから、静かにね」

「了解」

「はーい」


 しーっと口の前に人差し指を立てた莉子にそれぞれ返事をする。結花は快諾しつつも期待が隠しきれない様子だ。

 ドアを開けた莉子に招かれるまま家に入る。


「お邪魔します」

「おじゃましまーす。さあさあ、リッちゃんの部屋楽しみだなー。真っピンクだったりしないかなー」


 小声でぶっ飛んだ予想を立てる結花。流石にそれはないだろう。


「ふすまの先に寝てるから、静かにね」


 いつもの明るさはどこにやら、真面目な顔で莉子は注意をして、奥の方のドアを開いた。


「リコの部屋だよ。入って入って」


 入ったその部屋は、うん。普通の部屋だな。想像してた女の子らしい部屋って感じだ。

 しかし、横目に見た結花は露骨にガッカリしていた。なんでだ?

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