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宝物を探して隅々まで探索

 休みが来た。予定があろうがなかろうが、休みというのは嬉しいものだ。

 いつも通りなら、前日に夜更かしをして昼まで寝て、それからまたゲームをしたり、動画サイトを見たりするのだが、今日は違う。


「どう? アリー、これ可愛くない?」

「うん、可愛いな」


 たくさん並んだ服から一つ手に取り、身体に重ねるリコ。傍らでは真剣な表情で服見ている結花もいる。


「アリーそればっかじゃん! やっぱりこれはやめとこ……」


 可愛いかどうかを聞かれたから可愛いと答えたのになぜなのか。ナビィの指示を受けた私に連れ回された晃もこんな気持ちだったのだろう。既に五軒目の店だ。いつ決まるのだろうか。


「こっちか……いやでもこっちも……」


 結花は真剣な顔で二着の服を見比べている。私から見ると同じ服にしか見えないのだが何が違うのだろう。


(ボタンかチャックかの違いじゃない?)


 どうやらナビィには分かるようだ。

 だが結花のそれも買うには至らなかったようで、とりあえずキープかな。と言っていた。それ前の店でも言ってなかった?


 次に向かった店はゴスロリ系の店だ。


「結花と莉子はこういう服も着るのか?」

「んー? わたしは可愛いと思うけど着るのは無理かなぁ」

「リコも着るのは勇気いるなー」

「え、じゃあなんで?」

「「そりゃあ、ね?」」

「え?」








 鏡の前にはひらひらした服を着た私の姿。白を基調とした明るい印象を受けるゴスロリのワンピースだ。イメージはアニメでよく見るようなメイドだろうか。

 私が試着するまで店から出ないと言わんばかりの姿勢を見せる二人に押し切られて着ることになった。

 試着室のドアを開けると、飛びかかる勢いで二人に押し寄られる。


「うわぁ……可愛い!」

「ありかちゃん凄く似合ってるよ!」


 何度も可愛い可愛いと言われて、恥ずかしくなってくる。少し嬉しくなって、それがまた恥ずかしい。


「……もういいだろ、着替えるぞ」

「えー!? 買おうよ買おうよ!」

「……やだ」


 結花を引き剥がして試着室のドアを閉める。


(ふむふむ、ありかちゃんはこういうのが好きなのか。買ったげようか?)


 違うし、絶対に買わないからな!


 元の服に着替え、頭の中で騒ぐナビィと、だだをこねるようにゴスロリを推してくる結花と莉子を引きずって店を出た。




 女の買い物は長いとよく聞くが、それからも特になにか買うこともなく、ただただ長かった。ウィンドウショッピングってやつだろうか。

 ショッピングモール内の服飾店全てを回る勢いの二人に追い付けなくなった私がベンチに座り込むと、気を使った二人によって行き先がカフェになった。なにやら莉子が新作を飲みたいとのことらしい。

 洒落た印象があるカフェで呪文のような商品名を唱えた結花に乗っかり、同じの下さいと注文を乗り切った。


 結花の頼んだものはとてつもなく甘ったるい飲み物だったが、疲れた身体にその甘さが心地よい。

 元々体力に自信がある方ではなかったが、女になって余計に減ってしまったんだろうか。椅子に座ってようやく弛緩した足をブラブラ揺らして力を抜いていく。


「これからどうしよっか?」


 一息付いたところで莉子の問いかけ。私を気遣って別の遊び方を考えてくれているんだろう。

 これは都合がいい。どうにか家に誘って結花と晃を会わせよう。


「わたし、気になったんだけど、ありかちゃん財布持ってないの?」

「え、うん」


 支払いのときにポケットから金を出したのが気になったのか。ありかになってから買ってないのだから、持っているはずがない。


「ええ!? そうなの!?」


 過剰なほどに驚いた様子の莉子。けど電車の切符を買うときもポケットから支払いを……って二人は先に改札機を通っていたか。


「それじゃアリー、お金どうしてるの?」

「こうしてるけど」


 ポケットからお札をちらり。違和感は凄いが、無い物は仕方がない。


「……ありかちゃんの財布を買いに行こうか」

「そうしよ! こうしちゃいられないよ!」


 いや、こうしていようよ。足痛いし、動きたくない。

 そうした思いを伝えることも出来ずに手を引かれてカフェを出る。わぁデジャヴ。足が痛いからもう少しゆっくり歩いて欲しい。


 ……ナビィ、これは?


(まあまあ、必要経費でしょ。ボクが出したげる)


 よかった。やりくりしてる分だと買えないと思っていたが、どうにかなりそうだ。







 結局私はそれから財布を探すこと三店舗、財布を入れる鞄を買うために追加で五店舗を歩き回ることになった。

 一軒目で決まらなかったときに私は思った。

 なぜ私が使うものを私が選べないのだろうか? 確かにマジックテープの財布を選んだのはおふざけだったけれど。でもいいじゃん、バリバリって。


 足が棒になるほど歩き回って、帰りの電車に乗ったのは日も沈んでしばらく経ってからだった。

 当然のごとく、結花も莉子もそのまま帰るとのことで家には遊びに来ないことが確定した。くそぅ……どうして……。

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