二人で暮らしてるのに?
あれから結花と莉子は人の部屋を漁り始めて母さんの服や下着を見て騒いだり、コスメがどうだのスキンケアがどうと私に授業をして帰って行った。
ナビィの指示がゆるく思えるくらいに女子ってのはいろんなことをしているらしい。
(ボクの時代じゃ必要なかったけど、イロイロあるんだね!)
出来れば私には適用しないでくれると助かる。
夕飯を作る時間になると、二人は帰っていった。
莉子がどこか複雑な表情で頑張って! と言ってきたが、余計なお世話だ。
結花は結花で次は化粧品持ってくるから試そうね! と言い残して行った。既に手遅れな気もするが、それは越えちゃいけない一線な気がするからやめて欲しい。
それと、晃から夕飯のときに、
「に、似合ってるね。髪」
と、初対面振りのテンパり方で褒められた。私もそう思うが、微妙な距離感になるのはやめてくれ。
一緒にゲームしているといつも通りに戻ったが、晃の部屋に遊びに行ったときに距離を取られたのは避けられているようで少しショックだった。
このところ、眠くなるのが早い。朝に早く起きているので当然のことではあるのだが、よく晃の部屋で寝落ちてしまいそうになるのでよろしくない。
日が変わる前に自分の部屋に戻り、髪をほどく。ヘアゴムは莉子がくれるというのをそのままもらってしまった。なにかお礼しなきゃな。
女の子からなにかもらったのって初めてかもしれない。
そんなことを思いながら、可愛らしいデザインのヘアゴムを胸に抱いて眠った。
朝。
ナビィに起こされ寝ぼけまなこでキッチンに向かう。道すがら少しボサッた髪をナビィが手入れしてくれる。今まで意識していなかったが、こうやって直していてくれたのだろう。
手に持ったままのヘアゴムでポニテにする。教えてもらった発展系の数々はもうおぼろげになってしまったが、基本は簡単なものだった。
元々邪魔になる長さではなかったが、久々にうなじにひんやりとした空気を感じながら料理していると、自力で起きたらしい眠たそうな晃が下りてきた。
「髪、今日もポニテなんだね」
「ああ、気に入ってな。晃も好きだろ?」
「……まあ」
茶化して言うと晃は照れくさそうに頬をかいた。あんな反応しといて、今さらだろうに。
学校に着くと、なんだかクラスに活気があるように思える。なにか行事があっただろうか。いつもであれば祐介に確認するのだが、今日は一緒に登校しており、思い当たるものもないようだ。となれば、私を見てにこやかに手を振ってきた莉子もおそらくわからないだろう。
「今日からロングホームルームは修学旅行の下調べになります。そのときに参加に必要な書類を配りますから、ちゃんとお父さんやお母さんに渡すように」
と、ホームルームの時間に担任が告げたことで騒がしかった理由は判明した。誰かしらが聞きつけたか、ロングホームルームがある日なのでみんな話題に挙げていたかのどちらかだろう。
ロングホームルームは一校時分の時間を丸々学校行事の相談などに当てる授業だ。体育祭が終わってしばらくは自習するだけの時間が続いていたが、今日からは三月の修学旅行に向けて準備をする時間になるのだろう。
確かこの学校の修学旅行は自由参加だったはずだし、私は不参加かな……。
(なに言ってるのありかちゃん! 晃くんが参加するとしたら参加しなきゃダメだよ!)
そうは言うがナビィ、修学旅行ってのはバカにならない金がかかるんだ。流石に旅行費まで晃に払わすってのはおかしな話だろ?
(うぐぐ……それは……確かに……)
第一、 晃だって行くかわからないぞ。父さんと母さんは自分らの生活費がある上に晃に仕送りをしてるからな。修学旅行に行く金まで果たしてあるものか……。
(でもでも、晃くんが行くって決めたら行くよ! こんな大チャンス逃がしていいの!?)
大チャンスもなにも、私はそう思わないし、金の問題はどうしようもないんじゃないか?
(大丈夫、ボクがどうにかするから)
……そうか、ナビィが言うなら、そうなんだろう。
まあ、晃次第だな。
(だねだね! 二人で迷子になったあとに力を合わせて帰ってくるんだ……)
いったいなにを計画しているんだこいつは。そもそも、修学旅行ってどこに行くんだろうな。
「沖縄だって! ありかは行くの!?」
ロングホームルームの時間になって、すぐに駆け寄ってきた莉子の言葉だ。聞けば例年修学旅行は沖縄らしい。
「どうしようかな……晃は?」
今日のところは修学旅行への参加不参加も未確定なので、とりあえずは好きにグループを組んで話し合えとのことだ。私と祐介の席は前後なので、そこに晃と莉子が集まった形になる。
「うーん。父さんに聞いてみてかな。今でも結構無理させてるだろうし」
な? ナビィ?
思った通りの晃の反応を引き出せたので私も同じように答えておこう。
(ぐぬぬ……)
「だよな、私も聞いてみてだ」
「そっか! リコは多分居残り組になるから、ありかも居てくれると嬉しいな!」
「そうなのか?」
「うん!」
莉子に落ち込んだ様子はない。修学旅行に行きたい気持ちはないのだろうか。
「祐介は?」
「俺は行くよ。早苗と沖縄に行く理由にもなるからさ」
晃の問いにらしい答えを返す祐介。自由時間ってグループごとの行動になるはずだがそこのところいいのだろうか。
しかし、修学旅行か。行けるなら行ってみたいが、リコのことも気がかりだ。
まあ、なんにしても父さんの返答次第だろう。
修学旅行なら仲が進展するという迷信。




