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友達と遊べる家

 年明けから日が昇るまでゲームをしていた私だが、目が覚めて違和感があった。

 人の足を枕にして寝ている晃は起きてすぐ重さに気付いたので違うとして……。

 頭に敷かれた太ももを一気に引き抜こうと思ったが、カーペットが敷かれているとはいえ床にぶつけるのは可哀想だと思い返してゆっくりと退かす。

 うう、寒っ!

 暖房はつけているのだが、身体の芯が冷えるような感覚が止まない。……とりあえず風呂に入るか。

 寝起きの回らない頭でふらふら歩いて、母さんの部屋に向かう。

 ああ、そうか。最近では珍しく自分で起きたんだ。床で寝たせいで身体の節々が痛いけれど眠った実感はある。昨日……というか今日ではあるが、途中からナビィがいなくなったからてっきりまた朝早くに起こされるものだと思っていたのだが……。


「やあやあ、ありかちゃん。おはよう。といっても既に日は上りきってるけどね! 今日の洋服一式はこれだよ。ああでもその前にお風呂か」


 ドアを開けると待ち構えていたかのようにナビィに話しかけられた。なんだか妙に元気だな。


「おはよう、ナビィ。ご機嫌だな」

「うんうん、今日はお出かけの日でしょ? 初詣だよ初詣。どのみち一回しか行かない最初で最後の詣だよ」

「あー、それって初詣に行けってこと?」

「もちろん! そのためにありかちゃんにゆっくり眠ってもらったんだから!」

「……なるほど」


 着替えを持って風呂場に向かいながら話す。

 長い時間眠れたのは裏があったというわけだ。行かないといえばまた脅して来るのだろう。ため息を吐く。


「いいけど、晃が行くかわかんないだろ」

「ありかちゃんが誘えばオールオッケーだよ!」


 うん、私もそう思う。最後の防壁なのだが破られるのが早すぎる。

 ナビィが沸かしてくれていた湯船に浸かり、固まった身体をほぐした。








 風呂を上がって晃に出掛けるかどうかを聞くと、二つ返事で初詣が決まった。予想通りではあるが、混むから嫌とか言ってくれればナビィに駄々こねれたのに。

 すぐに準備するから待ってて! といって風呂に向かう晃にゆっくりでいいぞーと声を掛けて十分ほど。どうしたって時間がかかることはあるんだから焦らなきゃいいのに。ナビィに髪型を弄られながら思う。

 手持ち無沙汰になって、ボーっと鏡を眺めて諸々を待っていると、我が家の呼び鈴が鳴らされた。なにか注文してたっけなぁと玄関先に向かったのは注意が足りなかったとしか言えない。


「よ! 晃! 初詣い、こう……ぜ?」


 玄関のドアを開けたその先に居たのは、クリスマスにぶっちした祐介だ。本来ならこの家には今、晃しか住んでいないのだから祐介の呼びかけ方に問題はない。しかし、今は私が居るわけで、更にはこうして事情の説明の一切なく出会ってしまった。

 さて、どうしようか。

 一つ目。何食わぬ顔で返事して初詣に行く。祐介は抜けてるところがあるし、誤魔化せそうな気が……しないな。流石にそこまでバカじゃないだろう。


「あーすみません、家間違えたかもしんないです」


 そう言って背を向ける祐介。この時点でさっきの案は完全にダメだな。

 二つ目。祐介が言ったように違う家――


「この家って柏倉さんちで合ってます?」

「あ、はい。柏倉です」


 ――じゃないことは表札を見ればすぐに分かる。大体似たような形の家がそうそう近場にあってたまるか。少なくとも近所じゃ中々被らんぞ。

 三つ目。晃が連れ込んだ女。……一番納得は行く気がする。でもクリスマスぼっちだし……ついでに言えばその扱いになるの嫌だし……。


「じゃあ晃のお姉さんか妹さん……はいないし、親戚の人ですか?」


 その手があったか! というかナビィが取り入ろうとしたときも親戚ってことで行こうとしてたな。なぜ真っ先に思いつかなかったのか。


「そうそう、お爺ちゃんの兄ちゃんの息子の従兄弟のむす、めです」

「それほぼ晃くんの立ち位置じゃん……」


 うっさいナビィ、今まで話さないなと思ってたのに。


「そうなんだ! 晃の親戚かー。よかったー、家間違えたかと思ったよ」


 よし、誤魔化せたな。反射で話すようなやつでよかったよ。


「あ、俺、祐介って言います。晃の友達で、初詣に誘いに来たんだけど晃います?」

「ああ、いるよ。今風呂に入ってる。リビングに入って待つといい」

「マジですか!? それじゃありがたくお邪魔しまーす。まさかこんな可愛い子が来てるなんてなー」


 祐介はデカい独り言を言いながらリビングに向かった。何度も遊びに来てるし勝手知ったるものだろう。


「あいつに惚れたりしないでね」

「誰がするか。男になびくつもりはないし、アイツはああいうやつなんだよ」


 整った顔で気の有るような言葉をそこら中にばら撒くせいで年中修羅場らしい。そのくせ俺は彼女一筋だ。なんて真剣に言ってやがる。


「でもでも、家にまで入れちゃってさ~。二人きりで行ってもらおうと思ってたのに~」

「そうは言っても、追い返すわけにはいかないだろ?」

「それはそうなんだけどさ~!」


 ナビィは不満げに飛んで行った。思わず苦笑いが出る。祐介にイタズラしなきゃいいけど。冬休みを一人で過ごすことになるはずだった晃を気にかけてのことだろうから、丁重に頼むよ。

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