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熱くなると素が出る

 成功したとはとても言えない朝食の後で、ナビィに言われるがままになぜか晃と並んで皿を洗っている。調理実習みたいだ。

 そう大きいなシンクでもないので時折肩をぶつけながらも役割分担をして洗っていく。こうなると合体できるならして一人で洗った方が楽なんじゃないかと思える。


(まあまあそう言わないでよ。みてみて! 晃くんの嬉しそうな顔!)


 頭に乗ったナビィからそう伝えられる。前は気にしなかったけどこれって考えてることダダ漏れなの?


(んーうん、大体は!)


 えー……私のプライバシーは……?


(え、ボクに対しては必要ないでしょ?)


 当然のような声色に、顔は見えないがなにを言っているんだと言わんばかりの顔をしたナビィが浮かぶ。

 必要あるよ! 権利としてくれよ!


(うーん、まあ……うーん)


 非常に曖昧な返事が返ってきた。不安だ。

 作った量のこともあり、使った皿は少数だ。フライパンもあるが、役割分担したこともあり皿洗いはすぐに終わった。


「ありかちゃん、改めてごちそうさま」

「あっと、あーうん。おそまつさま……?」


 こう面と向かって言われるとどう返したらいいのか分からない。母さんはどう返してたっけ。


「それじゃ俺は部屋に帰るよ、ありがとう」

「ああ、おやすみ」

「ん……? ああ、おやすみ」


 休みの日にこの時間から起きようとやることはそうそうない。部屋に帰ってやることとなれば二度寝だろう。私もそうしよう。


(いやいやありかちゃん、このまま晃くんの部屋に突撃だ!)


 えーめんどくさ……。

 そう思いつつも行かないとナビィが騒がしいだろうなという考えと、ゲームがしたいと思い晃について行く。


「ありかちゃん? どうしたの?」

「ゲームさせて」

「え?」


 部屋のドアを閉めるときに私に気付いた晃の横を通り抜けて部屋に入る。


(晃くんの部屋汚いなぁ……)


 やかましいわ。女の子になってからも何度か入ったが、言われてみれば凄く雑多だ。だが、それでいい。どこになにがあるかは自分だけが知っていればいいのだ。


「ちょ、ちょ、ちょ、ありかちゃん!? なに探してるの!?」


 そう焦るなよ。電子版で買ってるからエロ本が見つかるわけでもなかろうに。

 モニターを中心にして生活圏が築かれている机を漁るも目的のゲーム機が見当たらない。記憶ではここに置いたはずなんだけど……。


「部屋を、部屋を片付ける時間をください……」


 既に何回か入ったあとなんだから手遅れでしょ……あ、ゴミ箱が溢れそうになってる。なるほど?

 室内を見渡せば目的のブツはベッドの上に。据え置き機としても携帯機としても遊べるゲーム機が定位置にないとなれば行き先はベッドか鞄の二つに一つだろう。


「よっと」

(晃くん、意外とお盛んなんだねー)


 ベッドに飛び込みながらゲーム機を手に取り半回転。慣れた動きで仰向けになりゲームを起動する。ちょうど頭に枕が来る位置取りだ。


「お、スマブラじゃん。やりたかったんだよね」

(今日の夜は眠れないだろうね〜)


 ……なんだかナビィに余計な情報を流してしまった気がする。

 せっかくだからモニターでやろう。なぜか固まっている晃を放置して配線を繋ぐ。

 スマブラはパーティーゲームとしての側面も強いが、ネット対戦がしたい。身体が……かはわからないが心が熱い戦いを求めている。

 机の端に寄せてあった、何世代も前から愛され続けているコントローラーも使える状態にする。


「俺も、やっていい?」


 フリーズから復帰した晃がコントローラーを用意しながら言う。言葉尻は疑問形だが、確実にやる気だろう。ネット対戦……。

 ただまあ一応持ち主は晃なのだ。だから私はこの呪文を唱えることにした。


「ストック三個時間五分アイテムなしの終点固定タイマンで」









 自分がもう一人いれば。自分と戦ってみたい。対戦ゲームでそんなことを考えたことはないだろうか。それが実現するとこうなる。




「ああ! バカ! それやめろ!」

「さっきやっといて言うことか!? おら落ちろ!」



「ここじゃない? ここじゃない? はい〜!」

「うわムカつくー! もっかい!」



「おい、早く動けよ」

「そっちこそ」

「……」

「やべ! 時間切れるじゃん!」

「気付いてなかったのぉ!? やーいやーい」

「おい! 待てこら!」




 煽り合いに煽り合いが重なった。晃に対してあまり話す意欲が出なかったことも、晃から私に対する遠慮したような話し方も全て吹き飛んで、心の底から楽しんで、心の底から怒っていた。



 使用キャラも同じ、戦い方も同じ。そんな私たちの戦いは五分のまま、ナビィの制止も無視して夜まで続いた。

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