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HIPHOPブーギー  作者: 純一郎
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3/14

フリースタイルバトル

 初めてのクラブでの記憶はねえ!アガリまくってテキーラガンガン。成人式なんてブッチしてバッチリ決めてったパブリックエネミーのTシャツが朝になったらゲロまみれ。あきれ顔のバイブだってさすがに顔色悪かった。

だけどモチ、音の記憶は鼓膜に残ってたぜ。胃がひっくり返るような重低音。ハーコーな曲に呼応する歓声。いやマジ、やっと自分の場所を見つけたって感じ?

 確かその日のハーレムには重鎮のおっさんDJがきてたが、俺は奴よりバイブのDJの方がハートにキタぜ。それを奴に言ってやったらこう言った。

「当然。俺は負けねえ」

 いやマジでバイブはクールだ。あいつが相方で最高だと思ったね。

 それから毎週末はクラブ三昧よ。合コンなんかクソ食らえ!

渋谷ハーレム、アゲハ。最近じゃHIPHOPのイベントは少なくなってたが、とにかく行ける所は全部行った。ナンパなんかしなかったぜ。俺が聞きてえのはマジのDJの繋ぎとHIPHOP。

チカ―ノ系ハーフのバイブはモテてヤバかったが、俺はそれ横目にスピーカーに張り付いて、下手くそなサイドMCにはブーイング。


 そんな感じで客としてクラブに行くのに飽きた頃。ある日のハーレムのイベントだった。俺らはその日やってやろうって決めてた。

 金曜、土曜。いつもフロアは満員。都内で一番客が集まるこのパーテイーのステージに立ちたくなった。

踊らされるより、踊らせるのが俺らの目的だと気付いた。さっさと一線に躍り出て、俺らの力をみせつけてやろうってな。フリースタイルダンジョンも流行り始めてたし、先陣切ってやろうって感じ。

 でも問題はどうやってステージに立つかだった。俺らには友達もコネもなかった。出演者はVIPルームにいて会えねえ。売り込む隙間なんてねえ。だったらどうしらいい?

 そんなら飛び入りでマイク握っちまったらいいって話になった。そんなのマジクールだろ?フロアから飛び込んで、フリースタイルでおっさんのMCコテンパン。

 そしたらどうよ?客は間違いなくロックできる!出演者は大物ばっかだったが、同じステージ立ちさえすれば蹴散らせるって自信が俺らにはあった。根拠なんてなかったがな。

 その日のゲスト。ライブアクトはフープラ。いわゆるキングよ。HIPHOPの伝説。そんでバックDJは盟友DJ HASEGAWA。このイベントの主催。

相手に不足はねえ。やってやろうじゃねえか。あいつのフリースタイルは最近聞いてねえ。フリースタイルダンジョンでも司会なんてやっていい気になりやがって。本当はフリースタイルできないんだろ?俺はすでに勝者の気分でクラブに向かったね。

 深夜二時。ピークタイムは熱気がハンパなかった。流石のDJ HASEGAWA。オールドスクールからミドルまで週末らしくアゲアゲの選曲。マジものニガーだって盛り上がってたね。そんな中、俺とバイブは虎視眈々。フープラの出てきた瞬間が勝負よ。

 そんで最高のハーコーチューン。NASの「NAS IS LIKE」がかかった。間違いないHIPHOPクラシックよ。するとどいつもこいつもハンズアップして大歓声。

そんで2バース目だったか?HASEGAWAが音を止めた。その瞬間、照明も暗転。とうとう来たぜ。俺は緊張なんてしてなかった。自信タップリ。

「YHEA」

 フープラののシャガレタ声が響くと、客は歓声バンバン。聞こえてきたのは「ドリームストーリー」奴の代表曲よ。俺も好きな曲だが、今回はおあずけさ。そんでキングは焦らして姿見せずに声だけで客を煽った。

「お前ら調子はどうだ?」

 はは。まるで俺に言ってんのかとも思ったね。俺はマイクを握り締めた。マイクは裏からバイブがパクッてきてた。頭ん中で様々なフレーズがライムを紡ぎはじめた。

 そんでとうとうフープラがステージに現れた。怒号の様な歓声。その中を小っちぇ俺は客をかき分けて、セキュリテイーの間ぬってステージに駆け上がってやったのさ。

 そん時のあいつの顔ったらなかった。目ひんむいてこいつ誰?って表情。客だって呆然よ。だから俺は理解させる為にまず一発ライム。


 HEY YO フープラ


 キング気取りか?


 最近じゃフリースタイルしてねえな


 スキル不足か?俺が怖いか?


 それがバレたらキングは陥落だ


 マジキマったって思ったね。唖然としてた観客も盛り上がったね。DJ HASEGAWAも音止めたね。したらフープラが苦笑い浮かべてこう言った。

「OK。わかった。こいつ俺とフリースタイル勝負したいみたいだ。どうだ?お前らも見たいか?このルーキーが負けるとこ」

 マジイラついたが客もノリノリよ。そしたらビートが流れ始めた。まっさらな飾りのないブレイクビーツ。やってやるぜ。アウェイだろうが関係ねえって燃えたね。

そんでついでにフープラの懐の深さにも感激したね。こいつはまだB‐BOYだ。媚びてメロウな曲をメジャーシーンに送ってる奴らなんかとは違うってな。リスペクトよ。

したらフープラが仕掛けてきやがった。

 「YOYO。まずは俺から。俺がキングさ、フープラ様だ」


 エイトマイル気取ってるルーキーが


 この街にも最近増えたな


 今宵もウサギちゃんをお相手に


 ライム作り出すのはマジウザい


 だって見てみろあいつビビってら


 マイク持つ手がかなり震えてら


 ここは俺のステージだわかるだろ?


 ガキはママの懐で眠ってな!


 いや、マジ正直ヤラれたって思ったね。さすがにキング。腕は錆ちゃいなかったぜ。一瞬で客も敵にまわったよ。DJもバトルブレイクで「FUCK FUCK」ってスクラッチしてやがった。

 俺はフロアのバイブを探した。さすがに一人でも味方を見つけたかった。だけどあいつときたら、フープラの腰巾着に捕まっちまってたんだ。デッケービギーみたいな奴よ。

 正直そん時はビビった。だってよ、よく見るとスゲー人数の取り巻きが袖から睨んでんだぜ?負けたらマジボコボコだと覚悟した。そんで客達も俺を見てるんだ。「こいつホントに大丈夫か?」って視線でな。

だけど逃げる気なんかなかったぜ。ビートは鳴りやまずに俺を呼んでいた。負けるわけがねえ。俺は深呼吸をしてからライムした。


 OK キング ていうかお前のオリコンのランク


 あんなもんでお前は満足?


 マジダセえよあの曲 ブラックの影もなく


 まるで愛想笑い 浮かべるただの犬


 捨てちまったのかよ HIPHOP


 今のお前の本当のラップ?


 老いぼれはそろそろ ギロチンでタップ


 その為に来たんだ このFLOW JACK!!


 客はそこそこ沸いたぜ。俺は元々フープラが嫌いじゃなかった。とにかくシーンに媚売る最近のあいつの曲が許せなかった。その想いを受け止めた奴がフロアに何人かいるってわかって、俺の緊張は解けたね。そんで初めてのライブのヤバさも知った。部屋の中で叫んでいた言葉がマイクを通じてフロアに響いた時の爽快感。最高にアガッた。

だけどあいつもさすがにキングよ。間髪いれず反論してきやがった。


 わかったような口きくな坊主


 MAKE MONEY それがHIP HOP


 俺はその曲で稼いでる


 お前は親の脛齧ってる


 お前がエムなら俺はPUFF DADDY


 上がってみろよこのデンジャラスラリー


 星の数ほどいるぜお前みたいなルーキー


 下の毛そろえてから出直しな!


ここでやられるわけにはいかねえ。当然俺はイこうとしたさ。そしたらあの野郎たたみかけてきやがったんだ。俺に割り込む隙なんかなかった。


ていうか さっさと消えな マジうぜえぜボーイ


お前はこのステージの意味をわかってねえ


この場所は俺だけのものじゃねえ


スタッフ MY MEN 皆で作り上げた 汗と涙の結晶だ


ラップしたきゃB―BOY PARKに行け ダンジョンは深くて無理だろうが


それが筋ってやつだ YOU KNOW I‘M SAYING?


礼儀もわからねえクソガキが


っていうかお前ぜってえ童貞だろ!


 いやもう、俺は何も返せなくなった。フープラの言ってる事は間違いなかった。ステージは一朝一夕にはできねえ。日々作り込んで披露するもんだ。

それに、ライムを見せる場はB‐BOY PARKだってよかった。そこで見せるのが道理だ。自分の浅はかさに気付いたね。そんでもって、確かに俺は童貞だった・・・。

 客から俺に対するブーイングが巻き起こった。マイク持ってなにも言えねえラッパーはステージ立つ資格がねえ。DJ HASEGAWAが「COME BACK HOME」ってスクラッチで連呼してやがる。

 それでも苦し紛れにマイクを持とうとした瞬間に、俺はさっきまでバイブを捕まえてたビギーみたいな奴に抱えられてステージの袖に連れ出された。

それと同時に、DJ HASEGAWAがもう一度「ドリームストーリー」をかけた。やべえ歓声が地鳴りみたいだった。どうにか振り向いて見たステージ上のフープラはスポットライト浴びてマジキングって感じ。勝てるわけねえって思った。

 「YHEA。お前ら待たせたな」

 あいつのその煽りは、いつか俺が言ってやろうと思ってた決め台詞だった。

完敗よ。そんで俺は自分の運命も覚悟した。これでHIPHOP界では生きて行けねえ。ボコボコにされて終わり。情けねえけど、抱えあげられながら俺は泣いちまってたんだ。

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