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求む。嫌いな幼馴染から逃げる方法2

作者: 橙夜

読んでくださりありがとうございます。

今回も軽い気持ちでお読みください。

今日は、幼馴染兼親友の家に遊びに来ている。

月に一度開催しているお茶会だ。

いつもは二人きりなのだがなぜか今日は親友の弟もいた。

私たちが楽しくおしゃべりしている横で珍しく静かにお茶を飲んでいる。いつもなら何かと突っかかってくるのに。

例えば、家に遊びに来た時に玄関で待ち構えていて「帰れ、ブス」と言われたりだとか。因みにこの後、彼は姉に頭を叩かれ、使用人に連行されていった。

まだまだ、ほかにもあるがいつもこんな感じだ。

私に暴言を吐いて連行されていくのである。


そんな彼が大人しいのはなんだか気味が悪いが下手に突っ込んで暴言を吐かれては面倒なので黙っておく。


お茶会は和やかに進み時間になったので、お開きになった。

何でも親友は、王宮に行く用事があるらしい。


親友の名前は、シャーロット・プルメリア。プルメリア公爵家のご令嬢だ。因みに王子の婚約者である。

弟の名前は、ルイ・プルメリア。あれでもプルメリア家の長男である。

なんでそんな人と友達かって。家が隣同士で母親同士が仲がよく昔から交流があるからだ。

プルメリア家は古くから続く由緒正しい公爵家であるため、敷地が広く大きな庭を挟むため歩くと30分くらいかかる。ちょっと遠い。


そう言えば、私の自己紹介をしていなかった。

私はヴィオラ・カリステプス。カリステプス伯爵家の次女である。あまり見えないかもしれないがこれでも伯爵令嬢である。

我がカリステプス家は代々騎士である。よって家族のほとんどが剣術を嗜んでいる。果ては使用人までもが戦えるし訓練を受けている変わった家だ。

私も剣は使える。勉強よりも得意だ。

婚約者にすらなかなか勝てないので腕前はまだまだだが。


そう言えば今日は兄が訓練場で剣の稽古をやっていると言っていたな。

見に行ってみるのもいいかもしれない。


一緒について行こうか。

あの婚約者に会うのは嫌だが、こっそり行けばバレはしないだろう。



「シャーロット。私も王宮に行きたいのだけれど一緒に行ってもいいかしら?」


「まぁ、かまわないわよ。一緒に行きましょう。」


にこやかにシャーロットは承諾してくれた。

何故かルイまでが一緒に行くと言ったのは驚いたが。


そんなこんなで三人で王宮に行くことになった。





王宮は定期的にある王子からの呼び出しで良く行くため結構行き慣れている。

城門が見えてきた。


城は白塗りのレンガ造りの大きな建物だ。


入口に着いたので馬車を降りる。

珍しいことにルイが手をかしてくれた。


「ん・・。」


と言って、手を差し出されたので初めは何事かと思った。

呆然と手を見つめていると睨まれた。


「手をかしてくれるんですって。珍しいこともあるね~。」


そう言って既に降りていたシャーロットはクスクスと笑っていた。


「ありがとう。」


そう言ってルイに笑いかけたら、赤い顔でそっぽを向いたけど大丈夫かな?



宮殿に入る入口でシャーロットと別れた。私は騎士の訓練場へ、シャーロットは王子の執務室の方へ。

ルイは何故かこちらについてきた。


訓練場ではたくさんの騎士たちが訓練していた。剣と剣を交える音や怒号が響ている。

訓練している騎士の1人がこちらに気付いて近づいてきた。その騎士は、ふわふわとしたくせのある黒髪にルビーのような赤い瞳で細身だががっしりとした体型の男だ。


「よう。どうかしたのか?」


片手をあげそう言った。


「ルーが今日は訓練をするって言っていたから見に来たの。」


「そうか。まぁ、ゆっくり見学していけよ。あいつが来るまで・・・。」


「ええ、そうするわ。ありがとう。」


最後の一文は聞き取れなかったがそんな重要な事でもないだろう。脳筋の兄のいう事だ。

そうルーことルフスは私の兄である。二番目の兄で現在は第二騎士隊、隊長を務めている。デスクワークが苦手で良く逃げ出すことで有名だ。そのたびに捕まえるために翻弄している副団長がかわいそうである。


私たちには二階に設営されている観客席に移動した。

観覧席には私たちの他にも何人か人がいた。全員女だ。誰でも自由に見られるのだ。そのためお目当ての騎士がいるご令嬢が見に来たりしている。

そう言えばなぜルイは一緒についてきたのだろう。


「ねぇ、なんでルイはついてきたの?」


「別に。お前には関係ないだろう。」


そう言って睨まれた。


「ええ。そうね。」


それもそうだがそんな言い方をされると腹が立つ。相変わらず可愛くないやつだ。

全くなんでこんな奴に育ったのか。昔は素直で可愛い奴だったのに。


私は騎士たちが訓練しているところを見るのに集中した。やはりこういうのは勉強になる。


集中していた私は気付かなかったのだ。ルイがこちらを見ていたことに。





おそらく1,2時間は経った頃だろう。我が婚約者様の使者が呼びに来た。

今回は遅かったな。いつもすぐに見つかるのに。シャーロットが何かしたのだろうか。

本当は行きたくはないが、ここで変に抵抗すると各方面に多大なる迷惑が掛かるのでやめておく。一度やったことがあるがひどい目にあった。


ルイも一緒についてきた。

婚約者とは仲がすこぶる悪かったはずだが。まぁ、いいか。大体顔を合わせたら私そっちのけでケンカしているので、私的には楽だ。


使者の後をついて廊下を歩く。

たまに拝んでくる人がいるがいつもの事なので諦めた。


「きゃッ‼」


もう少しで婚約者の執務室という所で、何かにつまずいて転びそうになった。

地面にぶつかると思って身構えたが、いつまで経っても痛みはやってこなかった。


「何やってんだ。」


つぶっていた目を開けるとルイの腕の中にいた。

助けられると思っていなかったので呆然とルイの顔をしばらく眺めた。

ルイの事なので転んだ事を馬鹿にして笑うと思っていた。


「なんだよ。」


少し不機嫌そうな顔でぶっきらぼうにそう言った。

その様子がなんだか可愛くって可笑しくって笑ってしまった。ルイはさらに不機嫌そうな顔をして睨まれた。

お礼を言ってそろそろ離してもらおうと思った。その時だった。


「何をしているのですか。」


地を這うような声が響いたのは。それと同時に周りの温度が1,2度下がる。

使者の人や周りのいた人は悲鳴をあげて逃げて行った。それが賢明だろう。


あまりの怒気に思わずルイに抱き着いてしまった。いきなり魔王が目の前に現れたら誰でもこうなるだろう。

かなりお怒りのようなので、婚約者の方を向いて訳を話す。


「いえ。あのね、転びそうになったところをルイが助けてくれたのよ。ね。ありがとう、ルイ。離して。」


そう言ってルイの方を向いたが離してくれなかった。

むしろ拘束する手が強められた。何故だ。


「そうですか。取り敢えず、ルイ・プルメリア、ヴィオラを離しなさい。」


「嫌だといったら。」


そう言ってルイは不敵に笑った。

一瞬だけ鬼のような形相でルイを睨んだが、すぐに真顔になった。

無言でこちらに近づいてきたと思ったら、私をルイの腕の中から奪った。

そのまま流れるように片腕に座らされる形で抱っこされた。この齢で抱っこは恥ずかしいのだが、それとさも当たり前のように頬にキスをするのをやめてほしい。

ルイはあまりの手際の良さと速さに初めは何が起こったのか分からないような顔をしていた。

婚約者はそんなルイを見て鼻で笑っていた。性格悪。


「ヴィオラは僕のものです。残念でしたね。」


お前のものになった覚えはないのだが。

初耳である。一応婚約者だが、こちとら解消するき満々ぞ。


「なっ。うるせぇ!この性悪が。」


「そんなこと知っていますが。それと貴方を呼んだ覚えはないのですが。」


「邪魔するために来たんだよ。レイモンド・ブーゲンビリア」


「そうですか。ではもう気が済んだでしょう。お引き取り下さい。」


「帰るからヴィオラを返せよ。」


「何故です?ああ、帰りの事なら心配いりませんよ。僕が責任をもって送り届けますから。」


「何だと!!」


二人はギャーギャーと言い争いを始めてしまった。ギャーギャー言っているのは主にルイだが。

こうなると長い。誰かが止めないと終わらない。

だが、私は面倒なので止めに入る役をするのはごめんだ。

どうせもうしばらくしたら騒ぎを聞きつけた王子がやってくるだろうし、王子に何とかしてもらおう。

ああ、お腹すいたし、眠くなってきたな。


あまりにも暇すぎて婚約者に抱っこされたまま眠っていたらしい。

目覚めたら婚約者の腕の中で、婚約者は満足そうな顔をして私にすりすりしていた。前にはげっそりとした顔で婚約者の事を説教する王子が座っていた。因みに婚約者は王子の方を見てもいないし聞いてもいなかった。

辺りを見渡したがルイの姿が無かったので帰ってのだろう。

どうやら、ケンカは王子が止めてくれたらしい。

ありがたやありがたや。今度何か王子には好きそうなものを差し入れに持っていこう。




それにしてもこの生活いつまで続くのだろう。ああ、早く婚約破棄したい。

それにいつまですりすりしているだ。鬱陶しい!!











本編には出てこなかったのですが、

主人公が16歳、婚約者と王子が21歳、シャーロットとルフスが18歳、ルイが15歳、です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 恐らく破棄は無理、諦めろん。 主人公もいやだいやだといいながら、流されて結婚するんだろうなぁ~。
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