第1話
仮面ライダーとかアメコミのヒーローとかに触発されて書きました。良かったら読んでやって下さい。
古めかしきは逆に新しいのかも知れない。港の倉庫で密輸というのも、温故知新になるのだろうか。
いずれにせよ、密輸されてくる品物は、ここ日本国でも世界にとっても危険な物である。何としても阻止せねばなるまい。
的場薫は気だるい身体に鞭打つと、『QPS(Quantization Powered Suit)』を起動させ、まるでカウボーイのような出で立ちとなり港湾部の入り口に立った。
「こちら“オーバーロード”。『QPS-P03』、聞こえるかい?」
「通信良好。聞こえてます。オーバー」
「よろしい。では作戦内容を伝える。港湾部での闇取引に介入し、全『不死人』を駆逐した後に密輸品を確保せよ。簡単な任務だ。お使いだと思って、気楽にやってくれたまえ」
「了解。『QPS-P03』アウト」
通信を終えた薫は、次いでパワードスーツに搭載されている“AI(人工知能)”へ声を掛ける。
「ターナー、居るか?」
「はい、薫様。いつでもお側に」
耳に嵌めたインカムから女性の人工ボイスが流れる。
因みに“ターナー”というのは薫が勝手に付けた名前で、正式名称は他にある。けど、難しいから覚えていない。
「隠密に行くか、派手に行くか。どっちが良いと思う?」
「倉庫内に侵入するまでは隠密行動を取り、侵入してからは派手に暴れまわるというのは如何でしょう?」
「了解、それで行こう。サブマシンガンを出してくれ」
薫が指示を下すと、右手に光の粒子が収束していき、やがて一挺の短機関銃へと変化した。
『QT-MP40』短機関銃。
『エルマベルケ MP40“シュマイザー”』を独自改良し、量子変換に最適化した銃器である。基本性能は変わらない。今回は作戦目的に合わせ、消音器を装備している。
「港湾部内をスキャン。『アンデッド』の反応を探ってくれ」
「了解、五秒程お待ちを」
そう言うとHUD(Head Up Display)の右上に表示される縮小地図に、赤い光点が幾つか現れた。敵『不死人』の反応である。
『不死人』の反応を探すのはとても簡単らしい。『不死人』は元が死人である為、生命反応が無く、かつ動いている物体を捜せば良いのだ。
「第3倉庫付近に集まってるな。ここが取引場所で間違いないだろう」
「では、倉庫までの最短最適ルートを表示します」
今度は地図に黄色い線で道筋が表示された。
敵に気付かれづらく、なおかつ最短で辿り着けるルートである。
「一つ忠告を」
「何だ?」
「薫様の胴体に複数の打撲痕が見られます。任務に支障を来す恐れがあるので、鎮痛剤の投与を推奨します」
「…………あぁ、やってくれ」
「了解」
瞬間、左手首にチクリと蚊に刺されたかのような痛みが走り、心無しか身体が楽になった気がした。
「鎮痛剤投与完了」
「では、これより任務を開始する」
薫は『MP40』のコッキングハンドルを発射位置に持っていくと、指示されたルートを駆け出した。