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エピローグ

 という分けで、この小説はここで終わりです。

 もしかすると続編を書くかも知れませんので、その折はどうぞよろしくお願いします。

 学舎である『咲浪学園』に登校した的場薫は、戸嶋兄弟とその取り巻きを前にしていた。


「よう薫ちゃん、昨日は大活躍だったそうだな?」


 戸嶋兄がいきなり胸ぐらを掴んで来た。

 何故、彼が昨日の事件を知っているのかは分からないが、どうやらその事が気に食わないらしい。


「お前、まだ身の程ってのを分かってない様だな?」


「人間が出しゃばるなって言ってんだよ。『不死人(アンデッド)』は俺ら『ハイヒューマン』に任せて、テメェら人間は隅っこで震えてりゃ良いんだよ」


 始まる、と薫は歯を食い縛った。

 いつもの事だ。慣れはしないが、パターンは分かってきている。

 戸嶋兄弟とその取り巻きにとって、薫を殴る理由など何でも良いのだ。ただ何かしら因縁を付けて、殴れれば何でも。


「待ちなさい!」


 しかし、今日は違った。

 何と戸嶋兄の許嫁である三科凛子が、薫と戸嶋兄の間に割って入ったのだ。


「何だよ、凛子。これから面白い事があるってのに」


「そうだぜ、引っ込んでろよ」


 戸嶋弟は三科を退かそうと肩を掴んだ。

 刹那、パキキッと嫌な音が鳴った。


「ひ、ぎゃあぁぁぁぁーーーー!」


 戸嶋弟が悲鳴を上げる。

 見ると彼の右手の指が、全てあらぬ方向を向いているではないか。


「テメェ、凛子! 何のつもりだ!?」


「いえ、ただウジ虫が私に触れたので払っただけですが?」


 これは一体どういう事なのか。

 理解できていないのは薫も戸嶋兄弟もその取り巻きも、クラスに居る全員がそうだった。


「テメェ、俺らに楯突こうってのか? あ? テメェの親父の会社、どうなっても良いってのか?」


 戸嶋兄の発言に、三科は深く溜め息を吐いた。


「親の七光り無しでは何も出来ない雑魚どもが、私に逆らうつもりですか」


「っざけんじゃねぇぞ! このクソ尼!」


 激昂した戸嶋兄が三科に殴り掛かった。

 不味い、と薫は反射的に彼女を押し退け戸嶋兄の前に立った。瞬間、薫の胸に拳が振り下ろされた。その衝撃に薫は束の間、呼吸困難に陥った。


「おう、薫ちゃん。お前を殴るのは後だ。引っ込んでろ」


 息を吸おうと喘ぐ薫を蹴り飛ばし、戸嶋兄は三科に向き直った。


「お前もあぁなりたくは無いだろ? 今、謝れば許してやらんでもーーーー」


「ふふっ」


 まるで嘲笑うが如く、三科は鼻で笑った。


「あ?」


「ねぇ、貴方達、もしかして私に勝てるとか思ってるのですか」


「うるせぇ、この尼! 兄貴の許嫁だからっていい気になるなよ!」


 次の瞬間、戸嶋弟が三科に殴り掛かった。

 今度も薫が身代わりになった、と言いたいところだが、先程のダメージが大きく動けずに居た。

 彼女が殴り倒される、と目を背けそうになった刹那、驚くべき事が起こった。何と戸嶋弟の体が宙を浮いたのだ。


「“念力”って言うんですよ、これ」


 三科は微塵も動いていない。

 ただ“念力”の能力で戸嶋弟を宙に浮かべたのだ。


「クソ! 降ろせバカ野郎!」


「野郎ではありませんが、良いでしょう。降ろして差し上げます」


 そう言った凛子は、右手の人差し指を真横に振った。

 それに呼応して戸嶋弟の体が吹き飛ばされたかのように飛んで行き、黒板に激突した。凄まじい音が教室に鳴り響いた。その一撃で、戸嶋弟は気を失ってしまった。


「凛子、テメェ、越えては行けない一線を越えやがったな?」


「何カッコつけてるんですか? 来るなら来なさい」


「テメェ!」


 戸嶋兄の姿が掻き消える。

 『加速領域』に入ったのだ。けど、三科もその能力を持っているはず。


「動きが丸分かりですね」


 三科は右手を開くと、目にも留まらぬ速さで真横に振った。

 瞬間、バチンッと激しい音が鳴り響き、戸嶋兄の体が吹き飛ばされ、弟と同じく黒板に激突した。弟と違うのは、気を失わなかったというところだ。


「かはっ、背骨が折れた…………凛子、助けてくれ…………」


 黒板にぶつかった衝撃で背骨が折れたらしく、戸嶋兄は動けずに居た。しかも相当痛かったらしく、情けなくも涙を流している。


「つい先程まで殴ろうとしていた女に助けを求めますか? 普通?」


 三科は戸嶋兄を助けなかった。

 代わりに残った取り巻きに向かい、「一日中、突っ立ってるつもりですか?」と問うた。


「良いですか? これから“薫くん”に手を出そうものなら、私が相手になります。何せ薫くんは、私の初めての男ですからね」


 誤解を生む言い方である。

 恐らく三科が言っているのは、“初めて自分を殺した男”という意味だが、他の者には違った意味に聞こえただろう。


「で、どうするのですか? 戦いますか?」


 リーダー格がやられた組織は脆い。

 軍隊でもいじめッ子グループでも同じである。

 取り巻き達は戦う事をせず、逃げるように教室を出ていった。


「骨の無い輩ですね。あれで『ハイヒューマン』とは、笑わせます」


 そう言うと三科はくるりと踵を返し、薫の元へ歩み寄る。


「先程はどうも。本当は私の真の実力を見せるつもりだったのですが、まさかここまで弱い連中だとは思わなくて」


「何で助けた…………?」


「決まってます。昨日の借りを返す為ですよ」


 やはり、そうであったか。

 何となくそんな気はしていたのだが、本当にやってのけるとは思わなかった。


「それに兎も角、私は貴方を気に入りました」


「へ?」


「これからは貴方に付いていく事にしますので、そのつもりでよろしくお願いしますね」


 これは予想外の発言である。

 これまた厄介な事になると、薫の勘が告げていた。


「誰か…………助けて…………」


 結局、戸嶋兄弟を助ける者は誰も居なかった事は、因みに記しておく。

 書き終わってて何なのですが、的場薫の『適性銃器』を紹介する機会がありませんでした。

 次がある時は、必ず書きたいと思います。

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