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空に魅入られたモノたちへ  作者: 御伽 零
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プロローグ in ヒュームーク

はじまして御伽おとぎれいと申します!

はじめて小説を出させていただきます。

この小説はずっと書きたいなって思っていまして、しっかり文章に起こしたのは初めてです!

つたない文章になるかとはおもいますが修正しながら、そして書きながら文章力を鍛えつつ、ストーリーをお届けしていきたいと思います。

異世界ものですが異世界だけでなく地球も登場いたします!そして主人公も1人ではありません!!

そんな一風変わったファンタジー小説になる予定ですので、ちょっと新鮮な感じで楽しんでいただければと思います!!

ーハルジオン王国・ルミナ草原ー

一面に敷かれた背の低い草の絨毯を、夜風がザァと撫でる。

揺れる草の中に、腰掛けるシルエットがあった。

「何してるの?こんな遅くに」

背中に声が投げかけられ振り返ると、そこに立っていたのは1人の少女だ。

「シファー」

「はい、シファーです」

名前を呼ぶと茶化すように返事をし、彼女は並んで腰掛ける。

「こんなところで何してるの、レシス」

彼女の再びの問いに、少年は顔を上げる。

少年は思わず、月光を反射する銀色の長い髪に目を細めた。それから彼女と同じ色をした自分の髪を意味もなく掴んでみる。

「いよいよ明日か…と思ってさ」

両足を折り、自らの身体を丸めるようにレシスは縮こまる。

「やっぱり、怖い?」

「シファーは怖くないの?戦争なんて」

「私はこの傭兵団に入って長いからね」

傭兵団ルミナ・クロイツ。ここ、ルミナ草原を拠点に活動する大陸屈指の傭兵団。シファーはその魔法隊の隊長だった。

「でも、私だって最初は怖かったよ。私はみんなの怪我を治すことが主で、あまり前線には出なかったけど、それでも怪我をして目の前に運ばれてくる人たちを見るのは辛いし、とても…怖かった」

「俺は…シファーのように魔法に長けてる訳でも、剣が使える訳でもない。この傭兵団で一番弱いし…きっと、すぐにやられちゃうよ」

「そしたら、私が治してあげる。絶対に死なせたりしない。私が、絶対に君を守るよ」

言って、シファーはそっとレシスを抱き寄せた。

一瞬驚いたレシスは、女性特有の甘い香りと、シファーの身体の柔らかさに思わず赤面する。

「死にたくないよ…」

「うん」

「でも、みんなが傷つくのも見たくないんだ」

野盗に襲われ絶対絶命だった所を傭兵団に救われた過去が、レシスにはあった。そしてその頃行く当てのなかったレシスを、傭兵団のみんなは迎え入れてくれたのだ。

「うん」

シファーは頷き、レシスの頭を撫でる。

くすぐったさと心地良さを感じながら、レシスはしばらく身を任せていた。

明日、この地で戦争が始まる。

自分たち以外にもあちらこちらにキャンプを張っている部隊があり、それらがぶつかり合うのだ。

そしてレシスは、全く知らない。

この戦争が、世界の奔流に彼を誘うきっかけになることを。


***


ー翌日早朝ー

ルミナ・クロイツ、テント内にて。

「ほんじゃ、まぁ簡単に今回の戦争について再確認だ」

テント内には、各部隊の隊長ら幹部が集まっていた。その人数は6人。ちなみにこれは全体の4分の1にあたる。

大陸屈指の傭兵団と名高い傭兵団であるが、人数は24人と少なく、少数精鋭な組織だ。

「な、なんで俺が呼ばれてるの…」

幹部会議と呼べる席に、1人。なんの肩書きもないレシスはなぜか会議に呼ばれ、魔法隊シファーの隣に座っていた。

思わず、呟いたレシスに話を進めようとする団長は一度目を向ける。

団長、ギルバート。彼は片目しかない右目をレシスから外し、全体を見渡す。巨大な身体を持つ彼は、しかし威圧感を放っているわけではなく、居心地は悪くない。

「んじゃロア、頼むわ」

「はい、団長」

ギルバートの補佐、実質の副団長に当たる女性、ロアは指名を受けると一歩前に進み出る。

「では、今回の戦争の概要について確認します。今回の戦争は、私たちが組する大陸東のハルジオン王国と北のオキトラデン大帝国によるものです。ハルジオン王国は共和派ピーストン、オキトラデン大帝国は武断派ファントムに属しています」

黒縁のメガネをクイと指で正しつつ、ロアは説明を始める。

レシスのわからない単語が次々出され、レシスは話の内容が分からず、困惑する。すると、一ヶ所から手が挙がった。

「ロアちゃーん、その、共和派とか武断派ってなんだっけ?」

軽い調子で声をあげたのは、工作隊隊長のカルア。言った後、彼はロアにわかるようにレシスへ視線を送る。工作隊隊長であるカルアが、情勢を知らないはずがないので、これはレシスへの配慮なのは明確だ。思わずレシスが頭を下げると、カルアは軽く手を振る。

茶色の髪に、グレーの瞳を持つ彼はいつも軽い調子に見えるが、それは仮の姿で、本来は思慮深い性格だ。女性関係にだらしがないという難点はあるが、それでもこういった気遣いができるあたり、彼が異性から好かれるのは当然のことのように思える。

その様子を見ていたロアは一つ咳払いを入れ、再び話し始めた。

「失礼。共和派、武断派というのはある勢力との関係性に対する主張です。その勢力というのは…」

「ガイアス。所謂、地球人って奴らだな」

ロアの言葉をギルバートが引き継ぐ。

ガイアス。その言葉にはレシスも聞き覚えがあった。

この世界には2つの世界が存在する。

一つはレシスたちの暮らす世界ヒュームーク。

もう一つが、ガイアスの暮らす地球だ。

この2つの世界はある日唐突に繋がった。

とある偉大な魔法使いがゲートと呼ばれる扉を開き、地球との道を繋いだとされている。

「ハルジオン王国とオキトラデン大帝国は各主張の筆頭国にあたります。今回の戦争の結果によっては、対ガイアス政策が大きく変化するでしょう」

「オキトラデン大帝国は数年前から他国を攻め滅ぼす戦争国家だ。ここで一度、叩いておく必要があるだろう…ってのがピーストンの考えだ。ハルジオンだけでなく、同盟国であるアトォーデン王国も参加してるし、ガイアスの連中は物資の支援をしている」

「えっと、ガイアスは戦力を出さないの?」

レシスは思わず疑問を口にする。自分たちと、もう一つの世界の在り方を問う戦争だ。それに参加しないのはおかしい話だろう。

「いいかい、レシス君。ガイアスはね、戦力を出さないんじゃない…出せないんだよ」

悟すような口調で、レシスはシファーとは反対隣から声をかけられる。

そこに座るのは騎士隊隊長ヴィクタール。

ピンと伸ばした背筋と、凛とした佇まいはおよそ傭兵のものとは思えない。

「出せない?」

「えっとね、ガイアスはゲートを通過することが出来ないんだよ」

シファーが、ヴィクタールの言葉を引き継いでレシスへと説明する。

「私たちヒュームークの住人、ヒュムクスは魔法を使えますがガイアスは魔法が使えません。これは、体内にあるマナポッドという臓器の有無が原因です」

「ガイアスは、そのマナポッドを持っていないってわけさ。そして、ゲートはマナポッドを持たない生物を通すことはないんだよねぇ」

幹部たちから次々とされるという贅沢な講義に、レシスはようやく納得できた。

「なるほど。だから戦力を出せないんだ。物資だけならヒュムクスが貰いに行けばいいわけだし」

「まあ、そういうことだ。んで、話を戻すぞ。今回の戦争だが、兵力がこちらはおよそ2万。対してあっちは1万5千。数の上では優っているが、厄介な点がある」

ギルバートが話を戻し、戦争の具体的な議題になると場の空気が一変し、緊迫感が増す。

「今回、あちらには傭兵団デスジャックがついています」

「デスジャック…か。それは確かに厄介だね」

普段クールなヴィクタールが珍しく眉間に皺を寄せ、忌々しげに呟いた。

「レシスちんは知らないよね。デスジャックってのは、まあ言うならば俺らの商売敵っていうところかなぁ」

対して、平静なように見えるカルア。だが彼の足は小刻みに地面を叩いており、落ち着きがないのが見て取れる。

「まぁデスジャックと俺たちの因縁についちゃぁ、おいおい説明する。何が厄介かっていうと、俺たちの手の内がほとんど割れていることだ。それも個々人の戦闘力、思考能力諸々を、正確にな」

「つまり、今回の戦争でデスジャックが私たちを抑えにきた場合、確実に私たちは苦戦を強いられます。ましてやあちらの団員の数はこちらの倍を超えます。そして、私たちがデスジャックに足止めされて戦争に参加できない場合、戦争の行方を左右する事態になりかねない」

驕りでも慢心でもなく、客観的な事実としてギルバートとロア…いや、ルミナ・クロイツのメンバーは、自分たちの存在が戦争の結果に大きく関わると確信していた。それほどまでに強力な傭兵団なのだ。

「だから、奴らの予想を上回る必要がある。つってもそんな大掛かりなことじゃぁ〜ねぇ。ちょっとした隙を作れればそれでいい。デスジャックを叩く必要はないからな。隙を作って突破、戦争へ合流しちまえばいいってわけだ」

「でも、そんなに上手くいくのかな?第一、どうやってその隙を作るつもりなの?」

「僕はなんとなく見当ついてるけどね。ギルバート、聞かせてもらえるかな?」

シファーの質問にヴィクタールが口を挟み、話の続きを促す。

「ああ。ロア、例のものを」

「こちらに」

ギルバートがアゴでしゃくると、ロアは壁に立て掛けてあった長方形の箱を抱え、全員の前に置くと、その蓋を開けてみせる。

中にあったのは見惚れるほどの鋼の輝きを放つ片刃の剣。すなわち…

「刀だねぇ。これは確か、前回の任務の報酬でもらった品だろう?」

「魔剣、空蝉。精霊を宿し、その能力を増幅して放つことに特化した片刃の剣だ。こいつには今、光魔法バーミテノーチスを扱う微精霊が宿っている。つっても微精霊だ。数回効果を発揮しただけで消えちまうだろう。ましてや俺たちには精霊術師がいない。もったいないっちゃあもったいねぇが、仕方がねぇ」

「これを使って敵を欺くのはいいけれど、それは団長が?」

「いーや?俺がそれを使うんじゃぁまだ敵は警戒しちゃくれねぇ。敵さんが警戒するのは未知の存在。知らないってことはそれだけで恐怖の対象になりうる」

シファーとギルバートのやりとりを聞くレシスは、どうして自分がこの話を聞かされているのか見当もつかなかった。

だから、直後のギルバートのセリフに目を白黒させてしまう。

「レシス。こいつを使うのはお前だ」

ギルバートの言葉に、幹部全員の視線が集中する。

「…え……?」

「お前はうちに入ってまだ日が浅く、デスジャックの連中には知られてねぇ。なら、お前がこいつを使うのが一番効果がある」

「む…無理だよ!俺はこの中で一番弱い。知恵も、体力も、戦闘技術も!!」

「そのための魔剣だ。こいつならお前でも扱える」

「でも…でも…」

俯くレシスが居たたまれたくなったのか、カルアがギルバートに向き直る。

「だんちょぉ〜。その役目、レシスちんには荷が重すぎない?」

「そ、そうよ!レシスは戦争も初めてなのよ?なのに、そんな役目…」

カルアとシファーも言葉に、ギルバートは首を横に振るう。これについて譲るつもりはないようだった。

「僕たち騎士隊が、護衛役として彼の脇に付こう。それは構わないよね、ギル?」

「それは、構わんが」

「だ、そうだよ。カルアとシファーはそれでもレシス君が心配かい?」

ヴィクタールがカルアとシファーに声をかけると、カルアは納得した表情をみせる。シファーは俯くと、

「でも…レシスは私が守るって……」

と呟いた。

隣にいたレシスの耳にその言葉が届いた瞬間、恥ずかしさにレシスは思わず顔を赤らめる。

女の子…しかも想いを寄せている相手に自分を守ってもらい、自分は何もせずにいるなど出来るはずもなかった。

「俺…やるよ」

「レシスッ!?」

レシスの決断に、真っ先に驚きの声をあげたのはシファーだ。こんなにも驚かれてしまうことに、益々自分が情けなくなる。

「分かってるの?この作戦は、君を最前線に出すって事なのよ?なんの経験もないレシスが…」

「それでも、俺が少しでもみんなの役に立てるのなら、俺はみんなの為にやるよ。いや、やらせて欲しいんだ!」

「レシス…」

憂いの目を向けるシファーに、レシスは真っ向から見返す。その様子を見ていたギルバートは口角を上げると、机を叩いて立ち上がった。

「よおし、話は決まりだ。ヴィクタール。レシスはお前に預ける。デスジャックを突破する方法もお前に任せる」

「相変わらず人使いが荒いね、まったく。承知したよ。それじゃあ行こうか、レシス君」

「う、うん」

ヴィクタールに連れられ、テントを出る。

その時、気になって見たシファーの寂しげな、不安げな表情がチクリと胸に刺さった。




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