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吐血する最強回復魔法師のスローライフ  作者: ぼちゃっそ
1章 ヴィーバ村編
5/17

5話 ルッシュ・ラブカス

「ルッシュはね、すごいんだよ! 小さいのにいっぱい魔法使えるの!」


三つ編みの少女は興奮気味に語る。

短い足をバタバタと動かし、牛乳の入ったコップに手をかける。

先ほどまで眠たそうにしていたのに、ルッシュの話題になると急に元気になった。


ここは居酒屋リンガーに隣接する店主の家。

家族3人で住むには少し大きい。

田舎だからきっと物価が安いこともあって大きくしているのだろう。

リンガーの店主で奥さんは居酒屋とドアを跨いで通じている

リビングへ俺たちを連れてきて軽く挨拶をして、すぐに店へ戻っていったしまった。

今は20時、一番忙しい時間帯だし仕方ない。


父親はどこでなにをしているのだろう。

と、牛乳で喉を潤す三つ編みの少女ハナを眺めていると、

空のコップを勢いよく机においた。


「そっちのはおじちゃんの子供?」


ハナの目線の先には同じく牛乳を与えられたリンゴの姿がある。

リンゴは一瞬「え」と不意を突かれた表情をして俺の方へ目線をやった。

なんと答えて良いのか分からず困り果てている顔だ。


たしかに困る質問だな。

さてなんと返したもんか。

しかしリンゴの歳的に俺がお父さんは無理があるだろう。

俺が26歳でリンゴが11歳。

15歳でリンゴを授かったことになる。


ありえなくもない歳だが、

世間的にはありえないと後ろ指を指される歳でもある。

ないな、親は無い。

なのでここは妥当に、


「いや、親戚の子供だ。ちょっと前に親を無くしてな、俺が親をしている」

「そうなんだ・・・。名前は?」

「スダチという」

「へぇスダチちゃんって言うのね!よろしくね!」


ハナは小さな体をぶんぶんと振って握手を交わす。

その握手にはきっと励ましの意味も込められているに違いない。

リンゴは帽子がずり落ちてしまわないように、片手で帽子を押さえる。


完全に誤解してるなこいつ。


「スダチは俺の名前なんだが」

「はぁ!?おじさんの名前なんかどうだっていいよ!」


ひどいな。

おじさんだって傷つくことはあるんだぞ。

とはいえ元気だなこいつ。

歳はリンゴと同じくらいなのにこうも性格が違う。

やっぱり人格ってのは育ってきた環境がものを言うんだな。


「あなた名前は?」

「・・・リンゴ、です」

「リンゴ!良い名前ね!」

「えへへ」


名前を褒められたのが嬉しかったのか、同年代の娘と話せたのが良かったのか。

リンゴは照れくさそうに笑った。

ハナはリンゴには心を開いてくれたみたいだ。

リンゴには。


「あーそれで?ルッシュ君の話聞かせてくれる?」

「そうだったそうだった」


少女は語り始める。


ルッシュは村長のひとり息子で、本名はルッシュ・ラブカス。

歳はハナと同じ10歳。

碧色の髪をしており、目は前髪でいつも隠している。

性格は大人しく、内向的とのことだ。

そしてなんと言っても魔法が凄いらしい。


彼女の話によるとマジック・ペイントが好きだった節がある。

マジック・ペイントとは空気中の魔素を固定し、着色するもので、

簡単に言うと、魔法で空中に文字や絵が描けるというものだ。

マジック・ペイント自体は小学校でも習う必修魔法であり、何も珍しくない。


しかし彼の何が凄いかというと、

彼の描いた絵はまるで生きているかのように動かせるのだ。

それも5匹以上を別々に3時間以上もだ。


一般的な成人男性でも、3匹で1時間も持たないだろう。

それを超える数と時間。

ルッシュという少年はよほど器用で異常な魔力器を持っていることが分かった。


さて問題はここからで。

その偉大なるルッシュ君の唯一の友達がこの活発少女ハナちゃんであり、

二人はルッシュが引っ越して以来ずっと仲良く遊んでいた。


そんなある日事件は起きた。

ルッシュが外出中に魔物に襲われ大怪我を負ったのだ。

その様子は村の大半が目撃しており、

手負いのルッシュを抱えて門から村へ入ってきたのだ。

そのままルッシュは療養中となり、未だ外には出られてはいないということだ。

そのことを病んだ村長は、医学・回復魔法の研究を始めたらしい。


意外だな、それが本当なら。

俺はふとそんなことを思った。


「ああ、あとねぇ」


少女は続ける。


「爆発音がした」

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