奴隷と私
「お、帰りなさい、ませ。お嬢、様……」
見事なまでに似合わない言葉を鬼の娘は涙目でプルプルと震えながら言った。
私はその姿が可愛くて思わず笑ってしまった。
「こら、笑うでない」
鬼娘は笑われた事に腹をたててすぐ様噛み付いてくる。
こちらの顔が本来の彼女の顔だった。
しかし、私は主人で彼女は奴隷だ。
確かに買った時からそれなりに時間は経ってるし、奴隷と主人で片付けられない関係にもなった。
それでも、関係は変わらない。何よりも強気な彼女を虐めるとドキドキする。
「ほーら。こ、と、ば」
一字一字を強調する様に言うと、彼女は悔しそうに頬を膨らませて、プルプルと震える。
「主人様は意地悪でありんす」
ポツリと彼女は言ってしまう。私攻める為の隙を見せてしまう。
嗚呼、本当にこの娘はこう言うところが愛おしい。そんなに私に虐められるのが好きなのだろうか。
「ふーん、そんな事言うんだ。これはお仕置きが必要かな?」
そう言うと彼女は途端に顔を赤くした。
まあ、そうだろう。自分で言うのも何だが私は好色家だ。お仕置きと称して彼女に色々な事をした。エロエロな事と言い換えても良いかもしれない。
初心な彼女だ。色々を思い出すと顔を赤くしても仕方がないだろう。
「それじゃあ、優しい罰か、きつい罰。どっちが良い?」
「それは……、どう違うん?」
「試してみる?」
私は優しく聞き返すと、彼女は慌てたように顔をブンブンと振った。
拒否されるとは思ったけど、そんな強く否定する事も無いのに。と私は少しだけ悲しくなった。
「それでどっち?」
「優しい、ほう」
「そう」
まぁ当然の答えを聞きながら、私は彼女の細い肩を掴んで顔を近づける。
人形の様な整った顔が真っ赤になって、体を固くして私のことを見つめる。潤んで揺れる瞳を覗きながら彼女の甘い匂いを吸い込む。甘い少女の匂いに私も興奮してしまう。
すぐにでもその柔らかそうな唇を奪いたいのを我慢しながら、私はいった。
「キス、するね」
「う……それ、は……」
彼女の国は同性愛を否定していた。そして、そんな事をすれば戒律の厳しいその国には、戻る事ができなくなるだろう。
私とには生き辛い国としか思えないが、その国を故郷に持つ彼女には違うのだろう。
「嫌ならきつい罰にしようかなぁ?」
「ち、違うんよ……その、主人様は……その」
迷う様に私から視線を逸らし、何か決心をつけようと深呼吸を繰り返している。
そして再びこちらに向き直った時、彼女は涙目で唇を震わせながら言う。
「あ、るじ様は……私と、一生居てくれるかえ?」
そんな当たり前の事を聞いてくる私の愛おしい奴隷に、私は優しい罰を与えた。