3章5 聖獣達の言い訳
来て下さってありがとうございます。
後書きにおまけ話あります。
よろしかったら読んで下さいませ。
1階の食堂に降りると既に他のお客さんがいて談笑しながら食事を楽しんでいた。ちょうどの時間帯のせいか結構混んでいる。
「あ〜ここ、ここだよ。皆遅いよ」
「「「え?」」」
「あれはアルク殿とラクシエル殿ではないか?」
「先に来ていたようですね」
私達の心配をよそに席について並んだ料理を頬張る二人に殺意が湧いても仕方ないと思った私は悪くないと思う!
·····まあ、人数分の席を確保してくれてたことは感謝するけど。
ジュノさんは早速ラクシエルさんになんか文句言ってるみたい。でも、腹が減っては戦はできぬ。まずは注文だ!
トウキクの田舎料理らしい煮物や焼いた肉等に舌鼓を打ちつつ、アルクくんに文句を言う。
「もうっ、なかなか帰ってこないから心配してたんだからね。何してたのよ」
「ちょっと調べ物してたの。内緒なんだけど、僕はずっとユシャが調べてた件改めて検証しようと思ったの。突然の大量死で廃村になった村のこととか、ラクはジュノの生家と明日行く貴族のこととか」
言っちゃったら内緒じゃないでしょアルクくん···でも突然人が沢山亡くなるって何があったんだろう。怖い·····
「アルク、ヒナに言っていいのか、それ」
ラクシエルさんが小声でアルクくんを窘めるようにいっている。まわりに他の人もいるんだし、そういうことは今言わない方がよくない?
「う····ん。いずれはヒナにも話す事だと思うし、早いかなぁ?」
もう、こうなったら洗いざらい吐いておしまい、アルクくん。よっし!今夜アルクくんをシメよう。
「アルク殿とラクシエル殿はアドゥーラという組織の一員だと思っていたのだが、違うのか?」
「え?」
「いや、ヒナさんとアルク殿がかなり親しいように感じるのだが?」
「叔父上!」
クリス様からの思わぬツッコミに戸惑う。なんて答えたらいいの?フィン様が「すみません、叔父は好奇心が強くて」と困惑気味に謝ってる。
「まあ、親しいと言うかなんと言うか·····」
そう言えば、聖獣については下の大地の人達は知らないんだっけ?話していい事なのかダメなのか。
フィン様にもアルクくんのことは話してなかったはず。
「ヒナさんは田舎から出てきた時、ユシャ殿の紹介でしばらくアドゥーラの飛竜部隊の本部でもある第3部隊宿舎にいたんですよ。その関係でヒナさんとも親しくさせていただいていました」
「そうだったのですか。なるほど、それでユシャ殿つながりと」
ラクシエルさんさすが!
アルクくんだと、そこまですらすらとは答えられないわ。
フィン様は私が異世界人ということをクリス様にも黙ってくれてるみたい。フィン様は信用出来る気がする。
その夜。
フィン様とクリス様は魔族とはいえ王族ということで貴族向けのお部屋に泊まって貰い、私は一般向けの2人部屋に1人、後の4人はひとつの大きめの部屋に詰め込まれた。ごめん、私のせいだね。
その大部屋に私は今お邪魔している。女の子1人で男ばかりの部屋に行くなんてはしたないって?でも、大事な用事があるのだから仕方がない。
そう、明日訪問するジュノさんのお母様の嫁ぎ先の情報交換と勝手に自由行動をした聖獣達の申し開きを聞く。
流石に私の部屋は狭いしマズイかな〜っと言うことで皆のところへ来たと言う訳だ。
いや、本当はこれも良くはないんだろうけど。
それとフィン様達を仲間外れにするつもりはないけど、ジュノさんの個人的な話でもあるしね。
「まずはアルクくんの申し開きを聞きましょうか。何処で何してたの。洗いざらい吐きなさい!」
「ヒナ、僕って浮気した旦那様の気分なんだけど?」
「あら、アルクくん浮気したことあるの?」
「あるわけないでしょ。僕結婚したことなんてないもの。しても、ヒナが奥さんなら浮気なんてしない!」
「うっ·····そ、それはどうも」
ジュノさんとバーディ(トリスタ)さんがギャハハハと大笑いしてる。ラクシエルさんは呆れたような顔でため息。さすがに恥ずい。この可愛すぎる駄犬め。
「ずっと人型とってたから疲れたしストレス溜まってたから気分転換したかったんだ。でもユシャから頼まれた用事があったのも本当。ヒナに黙って行っちゃって悪かった。ごめんなさい」
「う、うん」
そんなに素直に謝られるとなんにも言えない·····私ってやっぱりモフモフには弱い。
「バーディ(トリスタ)殿は知っていると思うが随分前から時々あった事件のことだ」
ラクシエルさんが語ったのはーーー
一番最初は二百年と少し前。トウキクのとある村が一つ、流行り病で消滅した。
それから、数年後また一つ同じ様に村人全員が死亡。
まるで、呪いか何かのように村が消滅した。しかもトウキクの田舎の小さな村ばかり。その後、間は空いたが無くなってしまった村が8つ、亡くなった住民が約2〜300人。
「しかし、生き残りがいた村もあったんだ。」
「でも、その後殆どの人が亡くなっちゃってね。今生きてるのは2、3人位なんだ」
悲惨な話だな。そんな怖い病気があるなんて。でもトウキクだけって風土病みたいなものなのかな?
「ヒナも知ってるマイラって子も、その一人なんだよ」
「えっ、マイラさん?!」
そう言えば、そんな話を聞いたような······
「後、ユシャの兄コーデリオン、コーリンでわかるかな?彼のお母さんもその被害者でね。亡くなってるんだ」
「えっ!コーリンさんも生き残りなの?」
「いや、コーリンの母親は薬師を兼ねた治癒師をしていて隣村に治療のために出かけて、巻き添えになったらしい」
「ラクシエルさん、巻き添えって····そこ詳しく教えて貰える?」
なんか理不尽さ満載の話だわ。納得いかない。
※甥と叔父の会話※
「フィン。彼らには何か特別な目的があるように思わないか?」
「叔父上、私たちが余り立ち入るべきではないのではありませんか」
「何言ってんだ。気になってしょうがないくせに」
「叔父上!」
「誰がヒナちゃんの本命なのかねえ」
「叔父上、やめてください。私は別に」
「可愛い甥っ子の恋を応援したい叔父心でだよ」
「だから、やめてくださいって」
「パザがいればよかったのにな。あの子はパザがお気に入りみたいだったな」
「はぁ·······」
その頃中央、スーリヤの屋敷。
「クシュッ」
「パザくんどうした風邪か?」
「大丈夫ですスーリヤ殿ちょっと鼻がムズムズしただけです」
誰かがワレのこと話してるのかな?それにしてもフィン様どうされてるのであろう。ワレも一緒に行ければ良かった。これを機会にヒナ殿ともっと親しくなれれば良いのだが。フィン様は気を遣い過ぎだ。空気読み過ぎ、とかいうのか?フィン様頑張って下さいね!
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フィン様は王族ですが末っ子で殆ど普通の子供のように育っています。ヒロインのド天然はお約束。
次から2話ほど少し重い話があります。苦手な方スルーどうぞ。