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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第2章
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3章3 魔霊樹研究所は怪しい

 今日も来て下さったお客様ありがとうございます。宜しくお願いします。


 また、あのメルヘンなステーションの転移陣での移動。以前より慣れたとは言え、やっぱり苦手だわ転移陣。皆、平気そうだから私だけ泣き言を言う訳にはいかない。うぷっ気持ち悪·····


 着いたのは広さと屋根はあるけど壁のない四阿の様な場所。ここはもう研究所の敷地内らしい。特別な許可が必要な場所なのだろうか?

 目の前には研究所員だと名乗る男性が5人も待っていた。

 見るからに不機嫌そうな顔で、どう見ても歓迎されてる雰囲気じゃない。しかも名乗らない。なんと呼べと?


 前に2人後ろに3人、私達を挟んで歩く。第一研究棟と呼ばれる建物のみ立ち入り可能ということで、そちらに向かう。周りを見回してジュノさんが呟く。


「噂に違わぬ田舎だな」

「ジュノさん知ってるの?」

「聞いたことはあったからね」


 確かに遠くに小さな村らしきものが見えるだけで、後は畑と森、山、山、山って感じ。高い山の向こうは中央、つまりウ"ォイス。


 敷地内にはいくつかの建物、5、6棟はあるかな?そのうち3棟が研究棟と呼ばれる建物。それ以外は研究所員達の生活に必要な施設や住宅と言う事だ。


 神殿や中央の偉い人が来ても宿泊することはまず無く、転移陣で一番近い街のホテルに行くようになっているそうだ。


 基本観光客は受け入れていないので、今回の私達の訪問受け入れは例外中の例外で異例の事ですからと先頭に立つ研究所員に何度も言われた。

 それって凄く迷惑って事?

めちゃくちゃ歓迎されてないのね、私達。

 あれ?アルクくんとラクシエルさんがいない?


「アルクくん達は····「しっ」」


 バーディさんが私の言葉を止める。


「彼等は『面白そうじゃないから』とここに来る途中で別行動になりましたよ」

「は、はぁ···」


 嘘だな。転移陣に乗る時には一緒だったもの。何を企んでるのよ。後で追求してやるから覚悟してなさいよ二人とも!

 と言うことはバーディさんことトリスタさんも何か知ってるのか。


 観光客を受け入れていないと言っていたけれど、唯一見せて貰えるという第一研究棟という建物は思いっ切り観光客向けの施設だった。お土産まで売ってるじゃない。


 魔霊樹と浮遊大陸クレッシェンドの歴史や成り立ちのわかる絵巻物のような物の展示に始まり、それぞれの時代の魔霊樹の絵姿や計測した数字。(私には何かわからない)

 百年以上前に咲いた魔霊樹の花の押し花や葉っぱ?でかいな。

 魔霊樹の種で発芽しなかった種を乾燥させて展示しているもの等。

 フィン様とクリス様は大喜びだったけど、私はさっきの植物園の方が良かった。


「発芽した種は育てているのですか?だいぶ大きくなったのでは?見せて頂けませんか」

「いえ、それが····半分以上途中で枯れてしまったのです。」

「えっ?!」


 フィン様が質問した研究所員は決まり悪そうな顔をしながら答える。


「発芽した物はいくつかに分けてそれぞれ担当チームが観察と研究を続けていましたが

、半分以上は枯れたと報告がありました。まだ残っている苗は成長が遅く、下の大地の魔霊樹にさえ及びません」

「····そうなんですか····」


 そんなに成長が遅いのか····うまく行けば今の魔霊樹に代わってこの大陸を守る事が出来たのかな。一体あの大きな魔霊樹はどれほどの時を生きてきたのだろう。


 この研究棟以外は見せて貰う事は出来ないので早々に帰ることになった。外に出て畑を見ると何か草のような物が植えられている。野菜?ではなさそう。この広い畑で何を育てているのだろう?


「あの、ここの畑には何が植えられているのですか?」

「ああ、魔草ですよ」


近くにいた研究所員に恐る恐る訪ねてみたら、そんな答えが返ってきた。


「魔草って何ですか?」

「あれ?ご存知ないですか?」

「はい。私はただの付き添いみたいな者なので、植物に詳しくなくて····すみません」


 私も植物研究をしてると思われてたのね。この人は意外に親切みたい。


「魔草は魔素を普通の植物より多く取り込む事ができるのですよ。中でも今育てている何種類かは魔霊樹に近い機能を持っているので研究中なんです。」

「魔霊樹に近い機能?」

「ある程度成長すると魔素を生み出す事ができる様になるみたいなんです」

「えっ?」


 マジですか、それ!じゃ、この大陸の魔力不足解決にストップかけられる大発見かも。


「マッシュ。何、余計なことを喋ってる。皆さんお帰りだ。さっさとこっちへ来い!」


私に話をしてくれたマッシュさんという研究所員は先頭にいた研究所員に叱られ引っ張って行かれた。

 そうか、あの人マッシュさんっていうのか。一応こちらは入リ口で来所者名簿に記入したし、その時に氏名確認されているけど、向こうは名乗らなかった。ただ、感じ悪いなと思ってたけど、変じゃない?この研究所やっぱり訳ありかも。


ちょうど私達と入れ替わるように10人ほどの団体が現れていた。観光客来てるじゃん。


「あれは、中央の神官の身内か神殿の許可がある者だろう。そういう観光客は受け入れてるらしい」

「ええ〜ズル〜い」

「ははっ、ヒナちゃん素出し過ぎ」

「トリ···じゃないバーディさんもね」


 ちょっと前までヒナさんとか呼んでたからね。

 でも、足りない魔力を補えるような魔草の研究してるならもっと公にしても良さそうなのに、なんでだろう?




 この日は研究所から少し離れた町にある宿に泊まった。

 この宿は一般の旅行客がよく使う宿だということもあり感じが良かった。フィン様達が魔族と聞いても嫌な顔もせず、逆に興味津々で色々質問していた。


 明日はジュノさんのお母様の嫁ぎ先、お貴族様の御屋敷訪問だ。ワクワクドキドキ、ちょっぴり不安。






 

 



 魔霊樹はまだまだ秘密だらけです。魔霊樹の花のイメージはホウノキ?とにかく大きな感じ。もっと綺麗なほうがいいかな?とかまだ模索中。読んで下さってありがとうございました。


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