2章46 トウキクに到着
やっとトウキクに到着しました。
2章最終話、宜しかったらお読み下さいませ。
今日、大陸列車の駅のあるトウキクの王都アルマリに到着する予定だ。
今はジュノさん、ラクシエルさん、アルクくん組、私とフィン様、クリス組だ。
アルクくんに何やら確認したい事があるからというジュノさんとラクシエルさんが申し出た。アルクくん、何か言っちゃいけないことクリス様達にバラしたとかかしら?
列車の中でフィン様は口数が少なかった。パザさん達の事が気になるようだ。
「パザさん達はスーリヤ先生のお家にいるんですよね?」
「はい。お屋敷の皆さんは魔族や獣族に対してとても親切ですし、偏見も無いようでした。使用人の中には獣人の方もいましたし、大丈夫なのはわかっているのですが、ダメですね。私の方が彼らが側にいるのが当たり前過ぎて淋しいみたいです」
うんうん、なんか分かる気がする。
「獣族は獣人と同じかそれ以上に鼻や感がいいので、随分助けられていましたしね」
「じゃあ、パザさん達は香辛料はダメなんじゃないんですか?ティファーンでは普通に食事してた記憶があるんですが、大丈夫だったんですか?」
「私が魔法で食べてはいけない物は除去していました」
「えっ?!そ、そうだったんですね」
フィン様って意外と過保護なのかも。フィン様にとっては子供みたいな物かな。
「下の大地の屋敷には他にも獣族がいて祖父が面倒見てくれています。他の子達も一緒に来たがっていたのですが、今回は知らない土地に行くということもあり護衛も出来て自衛する力のある者を選びました。ヒナさんには、いつか他の子達にも会って欲しいです」
「因みにどのような種の獣族さん達がいるんですか?」
「そうですね······」
下の大地には、他にウサギ、馬、羊、リス、ネズミ、狼等数種類の獣族さん達がいるそうで、すべてが絶滅危惧種だそうだ。今回は体が小さ過ぎる者大きすぎる者、幼い子等はお留守番になったそうです。パザさん達は大丈夫だと認められたんだね。
それにしてもフィン様ってば、異世界の牧○富○郎でしかも厶○ゴローか!
でも、いつか下の大地に行けるならフィン様のお家に行って他の獣族さん達にも会ってみたい。
「いつか、下の大地に行く事ができたら、その時は、皆さんに会わせて下さいね」
「はい、もちろんです」
「そしたらうちの温室にも寄ってくれ。変わった植物が沢山有るんだ。後、蝶とか昆虫も沢山いる」
「虫?ああ、植物と昆虫は切っても切れない関係ですものね」
「さすが、ヒナちゃんは話が分かる。獣族にも虫にも動じない。貴重な女子だな、フィン」
「ホントに、ヒナさんは素晴らしいですね」
「いや、ええっと····苦手な虫はいますよ、あの足の多いヤツとか···」
最後は小さくなった私の呟きは社内放送の声にかき消された。
『まもなく王都アルマリに到着です。ダッハ行の列車は向かいホームです。お乗換えのお客様は列車が完全に停止してから移動をお願い致します』
そうか、北のダッハにはトウキク経由で行くんだ。
ニーロカのタピが始発駅でダッハが終着駅になるのか。列車ではニーロカからダッハには直接は行くことは出来ないんだ。私、全然気づいてなかった。
列車のスピードが落ちてきた。もうすぐアルマリの駅だ。
建物が増えてきた。可愛い!ヨーロッパのどこかの街みたい。ひときわ高い塔の様な建物が見える。もしかしてあれはお城の尖塔か?
駅は思ったよりたくさんの人でプチラッシュ状態。はぐれないように出来るだけ固まって移動してやっと駅を出た。
「!」
真正面に見えるのは立派なお城。シンデレラ城?
いや、トウキクの王族のお住まいの城です。
門は開け放たれているが、その手前には小さな橋があり、その橋のさらに手前にはアーチがあり脇に料金所の様な物がある。係員らしき人達が通る人をチェックしている。やっぱり有料?
その現実に反して奥に見える優美なお城は白の壁に水色の屋根。めっちゃファンタジー。
クリス様、フィン様、ジュノさん、私はポカ〜ン
と口を開けてその大きなし城を見上げるばかり.。
「こんなにデカかったんだ。僕がトウキクを出る時は全然気にしてなかったから気が付かなかった。」
「ジュノさんは小さい頃はトウキクで暮らしていたんだったね」
ジュノさん、ユシャさんに手を引かれてトウキクを出る時、列車に乗るまでフードを深く被ってずっと俯いていたそうだ。
「色々あって人目に晒されるのが怖かったんだ。···この城って意外と綺麗だったんだな」
今も周りの人達、特に女性がチラチラ私達を見ている。私意外はみんな超美形だもんな。私はただでさえ地味なのに魔導具の腕輪で髪色と目の色を変えてるし···いや、普通でも地味子なんだけど。気にしたら負けだ。
クリス様とフィン様も興味津々なようで何か感心しながらお城を見ている。
「美しい城だな。昔見たあの国の城に似ているな。あそこの王家の子孫かな?」
「そうかも知れませんね。あの国は今はもうビルばかりで城の跡形も無いですから貴重ですね。今のあの国にはもう魔法を使える者はいないと聞いています。魔法使いは、皆こちらに移住したのでしょうか?」
「かもしれないな。でも爺さんに良い土産話が出来たな。フィン」
「はい。いつかまたお爺様とも一緒に来たいです」
二人もそれなりに楽しんでるようで良かった。お上りさん丸出しの私達の方へ一人の男の人が近付いてきた。
「ようこそトウキクへ。文官のジュノさんと魔族の王族の方々ですね。お待ちしておりました。皆さんの案内役を務めますアドゥーラ、トウキク支部の文官バーディです」
「お世話になります。こちらがエルフォンス隊長からの書簡です。よろしくお願いします」
ジュノさん達が話している場所から少し離れていた私とアルクくんラクシエルさんは、首を傾げた。
あれ?
あれれれ?
この魔力、覚えがある。
「ラク」
「アルク」
アルクくんとラクシエルさんが頷き合ってる。
「ヒナ」
「ヒナ」
「うん、アルクくん、ラクシエルさん」
この人·········「「「トリスタさんだよね!」」」
あまり大きくない声で3人で答え合わせ。
バーディと名乗ったこの人、姿形はまるで違うけど魔力がトリスタさんだ。
聖獣である彼らと同じで魔力がかなり多くなった私には魔力の違いがわかる。
はっはっは、アサダ・ヒナ19歳(多分)違いのわかる女だぜ。ニマ〜っと笑う私達に気がついたのかバーディさんはビクッとした。
多分、何か理由があってトウキクでは文官バーディを名乗り演じているのだろう。リナリナさんみたいに仕事で何かあったのかもしれない。やっぱりハニトラとかでやらかしちゃったとか?
こちらを見たので、私が声を出さずに『ト・リ・ス・タ・さん』と言うと人差し指を口に当てて「シーッ」だって。
やっぱりトリスタさんだった。
トウキクに行く事が決まった時、やたらトリスタさんは自分が行けないアピールしてたり、私に自分が一緒に行けないから寂しくないか的なことを言ったりしてたのはこの匂わせだったのね。
みなまで言うな、私だってそんなバラすとかそんな無粋な真似はしませんよ。アルク君達にもバラさないように念を押す。お仕事中だから邪魔しちゃダメなのよ、ってね。
「始めましてバーディさん、ヒナ・アサダです。よろしくお願いします」
次話から3章です。また、しばらくお休みを頂きます。トウキクでのフラグ回収頑張ります。
5つの鍵の残りのヒントは見つかるのか?
ユシャさんになにがあったのか?
ジュノさんを、招待した貴族の思惑は?
魔族の叔父、甥コンビは何かやらかすのか?
どうぞ、お楽しみに!