2章43 飛行船は快適
本日もよろしくお願いします。来てくださったお客様、有難うございます。
後少しで2章完結です。
豪華な飛行船にはキリッとした乗務員がいて、部屋に案内してくれた。対応が丁寧で動きに無駄がない。やっぱり待遇が違うなあ。
「ところでジュノさん、アルクくん達だけど·····」
「ラクシエルは俺と魔族の王族の護衛。アルクはユシャさんの身内だし、ユシャさんの所までの案内役をしてもらう事になってる。ユシャさんのいる場所知ってるのはあいつらだけだそうだ。どっちも警備隊関係者って事になってる」
「はあ·····」
なんでアルクくんもなのか良く分からないけど、エルフォンスさんが許可したならいいのかな。ジュノさんはアルクくんとラクシエルさんが聖獣なのは知っているが、人型になった姿を見たのは初めてで、かなり驚いたそうだ。
このことは他の人達には秘密にするようにとのこと。
取り敢えずフィン様とクリス様、警備隊メンバー(仮)それぞれの紹介をしよう。
両者の共通の知り合いは私だから私が仕切るべきだよね。
考え込んでいて、ふと振り向くといつの間に勝手に自己紹介が始まっていた。おーい、私の役目は無し?
「ジュノさんには神殿の催事でお会いしましたね。フィノルドと申します。フィンとお呼びください」
「私はフィンの叔父でクリストバル、クリスと呼んでくれ」
「ジュノです。警備隊の文官です」
「ラクシエルです。ジュノと貴方がたの護衛として同行します」
「僕はアルクでーす。ヒナとはユシャつながりです。よろしくお願いします」
アルクくんは、やっぱりアルクくんでした。
まあ、トウキクまで旅する仲間ってことでいいか。改めて私が補足説明した。
フィン様とクリス様は下の大地の魔族の王族であること。クリス様は植物学者でこの浮遊大陸クレッシェンドの植物を見に来たこと。トウキクに行く目的は魔霊樹の研究施設訪問と地域の植物の観察。フィン様も植物について勉強中であり、せっかくなので叔父であるクリス様に同行することにした。
そしてジュノさんは·····実母の再婚相手から招待を受けて訪問するためにトウキクに行くこと。心配性の上司(エルフォンス隊長)に付き添いとしてラクシエルさんが依頼されて同行することになったと説明した。
アルクくんはなんと説明するかねえ。ユシャさんが行方不明になってた事とか怪我した事とかはいちいち教えるのはどうかと思うのよね。
「僕はね、いつもはユシャと暮らしてるの。今回はユシャの実家に遊びに行くの。ヒナも一緒にいくから僕は案内役兼護衛なの。ジュノはどうする?ユシャのパパ、ニコラスに許可貰えたらラクと来たらいいんじゃない?」
ユシャさんは下の大地でも有名らしい。クリス様も知っている様で「ユシャ殿の実家か。ほう、羨ましいな」と呟いていた。
アルクくんが意外とうまくまとめた。·········と思う。アルクくんにしては良くできました。撫で撫でしてあげたい!
はっ!いかんいかん。アルクくんは今は人型、聖獣だとは言ってないからそんな事したらきっと、変な目で見られる。
「ダメだよアルク。エルからちゃんと言われただろ。まずはゲストを優先だ。ダラス殿、我々は貴方の護衛も兼ねてトウキクの植物センターと魔霊樹研究所に共に行かせて頂きます。最後は宿泊されるスーリヤ殿のトウキクのタウンハウスまでお送りする様に言われております」
おおっ、さすがラクシエルさん。伊達にエルフォンスさんの聖獣やってないわね。しっかりしてる。
「その後ラクシエルは私と行動します」
「ジュノさんのお母さんの嫁ぎ先に行くのね」
「ああ、ヒナはアルクとユシャ様の所に向かうと良いよ。クリス様達はトウキクの文官が護衛すると聞いています」
ジュノさん大丈夫かな?お母さんとは長いこと会ってないみたいだけど、しかも行きたく無さそうだった。
「私達も一緒に行ってはダメだろうか?」
「「「「えっ?!」」」」
ク、クリス様何?
「確かに植物センターとか魔霊樹研究所は行く価値はあるし素晴らしい所だろうと思う。だが、やはりそれぞれの植物が自生している場所を見てその環境を知り、その姿を確認したいのだ。だから、一緒に行ってジュノくんの行く所やユシャ殿の実家の場所にある植物が見てみたいのだが?」
「私達だけでトウキクを旅行するのはダメだと言われているのです。どうか私達も連れて行ってはもらえないでしょうか?」
もう、この異世界の○野○太郎博士達は!空気読んでくれ〜。
ジュノさんちはこちらの貴族でしかも複雑な事情があるし、多分ユシャさんの実家ニコラスさんのお家も、アルクくんの案内が無いと行けないような(辺鄙な)所ではないかと思われるのよね。
「僕は構わない?ユシャ様の実家には僕も行きたいし、僕の方は人数が増える事を連絡してみるよ。ダメなら伯爵領の宿を取ればいい」
ジュノさん、随分と緩い判断。いや、一人で行くのが嫌だから私達を巻き込もうとしているのでは?
あ、目を逸らした。やっぱりそうかも。
「ともかく、向こうで待ってくれている案内の文官と相談すればいいでしょう。話を詰めるのはその時にしましょう」
「うん、私、ラクシエルさんが居てくれてホントに良かったと思うよ」
「あ、ヒナ、僕は?僕は?」
「アルクくんも居てくれて嬉しいわ」
「ヒナ、ホントに?」
「ホント、ホント」
別にアルクくんが頼りないとは思ってなくもないけど、居てくれて嬉しいのはホントだからね。先ずは、トウキクに着いてから。
豪華な部屋のふかふかソファで眠気が襲って来る。アルクくんと私はあっと言う間に夢の中。
残りの4人は色々話をしていたらしい。
「お茶でも淹れましょう」
「お構いなく、ジュノさん。お茶くらいでしたら私でも淹れられますから。叔父上、どのお茶に·····っ!叔父上!昼間からお酒は止めて下さい!」
「ん?ダメか?」
クリストバル氏は部屋のキャビネットからグラスと酒の瓶を出している。
「お二人共この部屋の物は自由に食べたり飲んだりしても大丈夫ですよ」
「ジュノ、私達も少し飲まないか?」
「ラクシエルさんも飲めるクチですか?」
「たまにエル···隊長に付き合うこともあるから。ダラス殿、おすすめはコチラの酒です。これに合うツマミはこれとこれ···」
せっせと4人分準備するラクシエル。慣れてる·····
フィンとジュノも飲まされ、後はご想像通り。
酔っ払った聖獣見てみたい。昔飼ってた愛犬がビール舐めてフラフラになってしまったことがあります。二日酔いにはならなかったのかな?
明日も頑張ります。