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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
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異世界飯店にて

見直す度、書き直したり削ったり、時間かかり過ぎ!文章書くって難しい。

蘭華亭の店主は異世界人だった。

しかも日本人!マジ異世界食堂だ。


「15年前、22歳の時こちらの世界にきました」


びっくりぽん!


頭に巻いていた布を取ると、私と同じ黒い髪が現れた。

雨宮さんは中華飯店でアルバイトしていた大学生だったけれど、ある日突然こちらの世界に来てしまった。


着いた所は石壁の暗い部屋で、数人の男が周りを囲むように立っていた。

同じように誰かに召喚されたようだけど、私とは違う状況だ。

言葉はわからず意思疎通も出来ぬまま、とある建物に連れて行かれ幽閉された。

そこには自分以外の人間、ヒト族とそれ以外の種族らしい人達も含めて20人程がいた。(すべて男性だったそうだ)


毎日交替で2~3人が何処かへ連れて行かれて、帰ってきた時には皆疲れ切っており、抜け殻状態になっている。自分が連れていかれた時は、白い部屋でベッドに寝かされ眠らされ、目が覚めた時にはやはり意識は朦朧となっており、酷い脱力感で歩ける状態ではなかった。(何されたんだ...)

意識がはっきりしたのは翌日で、また、その日も同じように別の人が連れて行かれていた。

施設はテレビドラマなどでよく見る刑務所のような造りで、運動場もあり、食事もまあまあだった。

定期的に例の場所に連れて行かれる以外は暴力を振るわれることは無かった。ただ、新しく来たばかりの獣人の男が暴れだしたときには魔法で押さえつけていたという。


それから三ヶ月ほどしたある日、計画を立て施設に収容されていた仲間達全員で脱走を実行した。言葉はよくわからないが、同じ境遇の者同士、意志疎通がある程度できたらしい。


自分はたまたま、ユシャさんとオルガさんに出会い助けられ、そのままオルガ(おかみ)さんに預けられて今に至る。

二人は、5年前に夫婦になった。


施設のことは一般住民は知らない。ユシャさんが改めて調べに行った時には廃墟状態だったそうだ。

未だにその実態はわからないまま。

一緒に逃げた人達とはバラバラになり行方はわかってないない。


と、話の内容は大体こんな感じ。

細かいことはわからないけど、秘密組織とかあって、関係しているのかな。

私も一歩間違ってたらその施設に連れて行かれていたのだろうか。

でも、雨宮さんの話には、あの女の子は出てこない。


「大変な目にあわれたんですね」

「君は先にユシャさんに会えてラッキーだったね。しかし、あそこには、女の人は一人もいなかったんだ。何故君は召喚されたんだろう?」


私は身震いした。

もし、あの森(空中だったけど)じゃなく、そんな所に召喚されてたら、逃げ出すことも出来なかっただろう。

いや、あそこでもかなりヤバい状態だったけど。


「なぜ、私はそこではなく、あの森に出てしまったんでしょう?」

「わかりませんね。召喚した人、若しくは召喚した組織が違うのでは?」

「ヒナ、お前に念話接触してきた少女は何物なんだ?何か気づいたこととかないのか」

「私には、わかりません。向こうの世界ににいる時の声は、途切れ途切れで言っていることの半分もわからなくて」

「そうか...」

「あ、でも、こちらに来て連絡が来た時は、かなりはっきりしてて、ただ、何か都合の悪いことが起きたみたいで、すぐに切られてしまいました。それからは何にも」

「ま、いいか。ヒナ、おれに感謝しろよ。変な所にいかなくてよかったな」

とユシャさん。


「....はい」

「何故そこでためらう?」

「ぷっ!うっく」


ノル先生が笑いを堪えている。

そこへオルガさんが、お茶とお茶菓子を持ってきた。


「じゃ、ひと息いれましょうか」


ノル先生の言葉でティータイムになった。

クッキーのような焼き菓子だ。

香ばしいナッツのような物が入っている四角いのと、ドライフルーツみたいなのがのっているのは丸い形。ん~美味~♪


「お前は食べてる時が一番幸せそうだな」

「た、食べてる時だけじゃないもん」

「ほう、他には?」

「え、ええ~と。寝てる時とか...お散歩の時間とか...?」


と、突然言われても、思いつかないって。


「裕司、お前等の世界の18歳ってこっちでいうと何歳位なんだ?」

「そうですねえ。個人差はありますが50歳位でしょうか?」

「えっ!信じられない!マジかよ。このガキが?」


ユシャさんの驚く声。マジって何?なんでその言葉知ってる!

その上ガキとまでいうか!


「ユシャさん何失礼なこと言ってるんですか!」

「事実だ。事実。」

「仲良しだねえ」


ニコニコしながらノル先生が言う。


「「違います」」


声を揃えて反論するも、更に、雨宮さんまで笑う。オルガさんも雨宮さんのそばに来て笑っている。

ああ…何なの。この微妙な雰囲気。


「それはそうと、うちの学校の話はしているの?」


ノル先生の学校?そう言えば学校経営してるって。


「思いついて昨夜、先生に連絡したので、まだ話してないです。」

「そうなの。ヒナさん私の学校に来てみない?」


昨夜って電話も無いのにどうやって連絡...あ、魔法か。

ノル先生の学校か。どんなところなんだろう。魔法中心の学校だよね多分。


しかし、ノル先生によると、学校は初等科から中等科までで、魔法の他、文字、計算、社会についてや歴史等を幅広く教えているらしい。

この国は各地方に個人経営の学校があり、国から補助を受けながら子供達に教育を受けさせている。


高等科は地方でも大きい町にあり、ここからは入学には試験がある。

そして首都には大学、大学院、研究組織等がある。それらは公立で国が運営しているそうだ。


技能職は高等科に進む他、親方について習う方法もある。

魔法も高レベルの魔導師や賢者の弟子になり学ぶという方法もあるそうだ。

但し、魔法使いは偏屈が多いから大変だとはユシャさんの話。

それって、ユシャさんの師匠のことですか?


入学の条件だが、初等科は言葉が話せて自分の身の回りのことができれば入れる。年齢制限は無し。

中には、大人になってから新たに勉強したいと入学してくる生徒もいるとか。そういう生徒は単位制にして自分の都合に合わせてカリキュラムを組むらしい。ちなみに、雨宮さんは卒業生との事だ。

卒業は規定の条件(単位取得など)を満たせばOK。基本は社会生活ができる程度の力がつけば良しということ。


家業の手伝い(農作業等)で休みが多い子供達がいることもあり、かなり融通がきくらしい。

収穫期には学校自体も何日か休みになるそうだ。


「細かいことは学校で説明します。待っていますよ」


ということで、ノル先生は帰って行った。

ユシャさんも用があるので出かけるが、昼には帰るということで、私はこの蘭香亭で待つことになった。



「ヒナちゃん気を使わなくていいのよ」

「いえ。何もしないで待つのも退屈なので」


そろそろ、開店時間だというので、私はお手伝いをさせてもらうことにした。

時間的には11時くらいかな。時間はどうやってわかってるんだろう?


テーブルを拭いて、備え付けの調味料(酢みたいなものとか唐辛子みたいのとか色々)をセットする。

店内の掃除はオルガさんが済ませてあるので、後は雨宮さんさんの所で、洗い物のお手伝い。

オルガさんが頭に白い帽子とエプロンを着けてくれた。

この世界では真っ黒な髪というのはやはり珍しく、全然いないことはないが、目立つらしい。

そのため雨宮さんも自宅以外では極力帽子を取らないようにしているとのことだ。


お昼には流石にたくさんのお客さんが来て結構忙しかった。

収穫期が近づいているので、外から来る人が少しずつ増えているそうだ。

その時間が過ぎると、潮が引くように人がいなくなり、その頃にはユシャさんも帰って来たので昼食を取ることにした。

クッキーを食べていたとはいえ、時間もたっていたし、かなりお腹が空いていた。

やっとお昼ご飯だー♪


「お前は食ってるときが一番幸せそうだな...」


また、ユシャさんがしみじみと私を見ながら言っている。

だって、私の目の前には美味しそうな料理がズラッと並んでいるんですよ。

美味しく頂くのが礼儀でしょう?

しかし、ユシャさんの私に対する見解に反論をしておかないと。


「それだけじゃないですって言ってるでしょう。ユシャさん、なんかすごく私のこと偏見持って見てないですか?」

「いやいや、そのままのお前を見てると思うぞ」


笑いながら言われると、信用できないんですけど...


「どうだ?蘭香亭の料理は。ま、その食べっぷりなら聞くまでもないか」


雨宮さんが腕を振るってくれた料理の数々。美味しくないわけがない。


「凄く美味しいです。特にこの炒飯なんか懐かしくて」


あ、涙が...


「お、おい。泣くな。こんな所で!」

「帰りたい...」

「え?」

「元の世界に帰りたいよ~」


今まで我慢していた思いが一杯になった器から溢れるみたいに涙がポロポロこぼれてきた。

知らない世界にいきなり連れて来られて、ずっとずっと怖かったし不安だった。

唯一の支えだと思った杉下さんともはぐれてしまったし...


「あらあ。どうしたの。ユシャさん女の子泣かしちゃダメじゃない」


奥からオルガさんが出てきて、オルガさんがユシャさんをど突く真似をする。

てか、ど突いてる!


「いてっ。いや、オレは何も!」

「違うんです。私が勝手に雨宮さんの料理があまり美味しくて懐かしくなって...」

「里心ついちゃったのね。逆効果だった?ごめんね」


オルガさんが気の毒そうな顔をする。


「いいえ。嬉しかったです。久しぶりに、あちらの料理を味わうことができて」


オルガさんの顔がパァーッと明るくなった。


「だったら良かった。うちの人は自分がこっちに来たときよりずっと若いみたいだし、どんなに不安で心細いだろうって心配してたのよ。」


あ、そうだったんだ。気遣わせちゃったな。


「それよりユシャくん。さっきちょっと買い物に外に出てたんだけど。ヒナちゃんの噂で持ちきりよ。もうすぐメセナ達の来る時間だから早く出た方がいいわ」

「何でだよ。俺が子供連れてたらそんなに珍しいのか?誰に迷惑かけてるわけでもないし、ほっときゃいい」


オルガさんが半ばあきれ顔でため息をつく。


「いくつになっても自分を知らないって怖いねえ。あんた町じゃ注目の的なのよ。男前の一流魔導師がこんな田舎町にいてしかも独り身なんだから。メセナの相手して欲しい男一位の座、何年維持してるかわかってんの?」

「俺の個人的なことだ。みんなには関係ないだろう。あ、やめろって」


オルガさんがユシャさんにヘッドロックをかます。、オルガさんにはあまり抵抗できないんだ。

ふふっ。仲の良い姉弟みたい。もしかして、オルガさんに弱み握られてるとか?だったら、私も知りたい。


「ヒナ。何を笑ってる!」

「え、笑ってなんか...ククッ」


ユシャさんがあんな風に焦るなんて。オルガさんスゴい。


「オルガもオレをいつまでも子供扱いしないで下さい。俺と30歳しか違わないんだから。」

「え?てことはオルガさん」

「魔法大学の先輩で今、272歳だ。」

「うっそー!若い!そんな風に見えない。」

「あらぁヒナちゃんて、正直でいい子ね♪」


オルガさんに頭をぎゅーってされた。オルガさん巨乳...ちょっと苦しい!でも、オルガさん本当に見た目20代半ば。


「は、はは.. w ありがとうございます。」


「じゃ早く食べてね。ユシャくん。ヒナちゃんもちゃんと女の子なんだよ。あんただけよ、わかってないの」


そう言ってオルガさんは厨房に戻っていった。私達は食事を再開した。無言で。

なんか会話あった方がいいかな...


「あの、ユシャさん魔法大学ってどんな所ですか?やっぱり島浮かせる魔法とか習うんですか?この大陸どうやって浮いてるんだろうって気になってて。大学まで行けたら私も魔法使えるかなあ」

「お前の質問に答えてたら夜中になる。だからそういうことは学校で習ってこい。文字の他にも歴史や色々、知識を仕入れてくればいい」


ユシャさんはそう言うとまた黙々と食べ始めた。私もそれに習う。懐かしい味の数々。

あ、これ海老チリみたい。こっちは魚の餡掛けだ。


「ヒナ、あの赤い魚がフラウラだ。お前みたいだろ。」

「えっ?」


ユシャさんは時々、私のことをフラウラみたいだという。こちらの言葉で金魚というような意味らしいけど...まさか今食べてるのが?!

思わず魚の餡掛けを見つめる。


「それは、海フラウラだ。あそこにいるのが、お前に似てるフラウラ」


ユシャさんの指さす方を見ると水槽があって中に一匹魚が泳いでいる。観賞魚ならやっぱ金魚?

い、いや、赤いし、尻尾はヒラヒラだしお腹ぽっこり...だけど...

だけど....ツノがある~~っ!


「なんで金魚にツノがあるんですか!」

「フラウラは闘魚だ。特に発情期は赤い色が鮮やかになり気が荒くなる。」

「私は発情期じゃないしツノもありません!」


私が怒ったのを見てユサさんは涼しい顔で


「ほら、そっくりじゃないか」


楽しそうに笑ってる。

何なんだ!


その時、突然店の入り口ドアが開いた。


「ユシャ先生!逃げて!」

「メセナ達が来る!」


あれ?さっきの子供達だ。


「なんでだ?お前たち、ちゃんと説明したんだろうな」

「したけど...」


な、何?


「町のみんなが『ユシャさんが若くて可愛い嫁さん貰ったらしい』って噂してて、それ聞いた皆が興奮してて、俺らの話聞いてくれない」


若くて可愛い?それ、私のこと?あ、オルガさんが言ってた噂?


「アベル、オリオン、お前ら、氷華楼と宝珠楼の息子だろう。なんとかしろ!」

「先生無理!俺たちじゃ止められない。魔法で女になったんだとしても、やっぱり若い女と一緒に住んでるなんて許せないって嫉妬に狂ってる」


「魔法で女にってなんですか?」

「いや、それは...」


「じゃ先生。もうすぐ押し掛けてくると思うから、後よろしく」

「あ、こら!逃げるな!」


子供達は奥へ走っていった。裏口から出て行ったようだ。


「ユシャさん...私が魔法で女になってるってあの子達に言ったんですか?」

「仕方ないだろう。町の奴ら、うるさいんだよ!だから服も地味なもの用意させたのに...」


あ、なーるほどって納得してる時か!


「にしても他にも理由作れたでしょ。なんで私が元男なんですか!?」


って、それじゃBLじゃないか~~~!


「だからあいつら、俺を狙ってるんだよ。上級魔法が使える男と...その関係すると...つまり魔法レベルが自分よりかなり高い男と...すると相手の女の力もMPも少し上がるんだ。だから一緒にいるのが男なら文句無いだろうと...」


え?

つまり、魔力強い人とえっちすると自分も強くなれる~みたいな?

...てことは、ユシャさんてかなりレベル高い?


「アレにはかなりエネルギー使うから疲れるし...」


魔法エロゲー...口がポカ~ンと開いてしまう。

なんて国だ....ここは。


「なんで俺がこんな子供に手をだすと思うんだか」

「だから人を子供子供と連発...」


ユシャさんはまた食べ始めた。


「こら!無視するな~!!ん?な、なんか大きな声が近づいてきてないですか?」


雨宮さんとオルガさんが奥から何か持って飛び出してきた。


「ユシャさん、ヒナちゃんとこれを持って逃げて!」

「何ですか?これ。」

「ヒナちゃんにお弁当だよ。」


オルガさん...こんな時にまで気を使ってくれてありがとうございます。感謝です。


「メセナ達が来る!」


雨宮さんが窓から外を見て叫ぶ。


バァーン!!!

勢いよく入り口ドアが開いた。



「ユシャさん!」

「ユシャ様!」

「いたー!」

「ゆっしゃー!」


口々にユシャさんの名を呼ぶゴージャスな美女が十数人!これはド迫力!


これは...逃げられない。


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