2章33 お久しぶりの二人
一応見直しが済みましたので更新致します。宜しかったらお読みくださいませ。
「よぉ、久しぶり」
「なんでアンタがここにいるのよ、ユシャ!」
ムカつく笑顔でユシャがソファに座っていた。何寛いでんのよ!
「元気そうだな」
「元気そうだじゃないわよ。なんでアンタが来たのよ。ヒナが来ればよかったのに」
「ご挨拶だな。お兄様がせっかく神殿の防御システムを掻い潜ってやってきたのに」
はあ、ユシャが来るかも、とか考えないわけじゃなかったけど、まさか本当に来るなんて。ユシャと私は母親の違う兄妹だ。知っている者はごく少ない。
「ヒナを連れて来るという選択肢は無かったの?」
「俺一人でもやっとだったのに、ヒナを連れて来たら危険度がどれ程上がると思ってるんだ。まだ中級魔法でさえ使えないのに」
「はいはい。わかったわかった」
は〜、ヒナってば警備隊でドラゴン達と遊びまくってたわね。何となく魔力量だけは増えてると思ってたけど、まだそんなレベルだったなんて。前途多難だわ·····
「それでルー、なんでヒナを召喚した?」
「聞いてどうするのよ」
「これから先のヒナの人生をどうするか考えているのか?何か理由があってヒナを召喚したんだろう?説明しろ」
出た!こいつ実は俺様キャラだった。
ん〜······これ、ユシャに言ったら絶対怒るわよね。さて、なんて言って納得させよう。
「正直に言えよ。いい加減な理由言っても納得しないからな」
「あ、ズル!スキル使ったわね」
「俺のスキルはこういう時に使わないと」
く〜〜〜っ!ムカつく!
「ヒナには召喚した理由は言ってあるわよ。ただそこの記憶だけ封印してるけど」
「記憶封印だと?そんなにヤバイことなのか?」
ふぅん、ユシャがそんなにヒナのこと気にかけてるなんて意外。メチャ心配してるみたいじゃない。
「私を殺して貰おうかと思って」
「は?」
ユシャの顔がめっちゃ凶暴になる。
「冗談よ冗談」
ユシャの機嫌がめっちゃ悪い。ははは···
今の私はユシャに匹敵する魔力がある。そしてユシャの知らない魔法も知っているし使うこともできる。ユシャの追求を交わすことも出来ると思う。
「ヒナには魔霊樹を止めてもらおうと思ってる。封印というか、魔力の凍結というか、それから·····」
「止める?どういう意味だ。魔素を出させない様にすると言うことは枯らせるつもりか?」
「枯らせる気はないわ。活動を休止させたいの。私は魔霊樹と繋がっているから魔霊樹に不利な干渉は出来ないのよ。つまり私には魔霊樹のシステムを止めることは出来ないの。でも、ヒナにならできる」
私の魔力を受け継いだヒナならね。
「そんな事をしたら、この大陸は·····」
「落ちるわね」
「本気で言ってるのか?!」
ゆっくりと頷く。どちらにしろ、遠くない未来、この浮遊大陸は落ちる。何年先か何十年先かはハッキリわからないけど、落ちるのは間違いない。だったら何とかしてその前に下の大地に下ろしたい。
「落ちるより降ろした方が衝撃が少しでも少なくなるはずだから。······魔霊樹はもう·······寿命なの。魔霊樹も下の大地に帰りたがってる。準備が出来たら総ての住民は下の大地に移住して貰うつもりよ」
「神殿が納得しないだろうな。甘い汁を一番吸ってるのは神殿、神官達だろう?それにすぐに移住なんて無理だ。何年、何十年かかるか。下の大地に行ってから住む所があるのか?生活はどうなる?」
だからユシャに話したくなかったのよ。思いっきり正論かましてくる。
「そんな事を言ってるうちに魔霊樹は完全に力尽きて落ちちゃうわよ。私だって被害は出したくないから神官長や導師様に何度も訴えたけど、信じてくれないのよ。だから····」
「だから、何故その役をヒナに押し付けた?」
は、そこ?うわ、うわぁ、ユシャ、ほんっとにヒナのためにここまで来たの?
「ヒナは私がやっと見つけたの。ヒナは私と、いえ、私の魔力と一番親和性があるの。私の魔力を渡して私の代わりに魔霊樹を止めてもらうの。あなたも気付いていたでしょ?神殿が異世界から人間を召喚して体力を魔力に変換して搾取してたの。ユシャが助けた異世界人、彼はその一人」
ユシャが驚いたような顔をした。確か、今はニニカにいるのよね。実は、神殿の一部の者は気付いてる。
「彼は私の魔法を余り抵抗なく受け入れていたの。だから、もしかしたら彼の住む世界にもっと私の魔力と相性の良い人間がいるかもしれない。そう思って探したの。神殿の魔導師達が召還するターゲットを探すのに合わせて意識を一緒に飛ばしたの。長い事探して探して、やっとヒナを見つけたわ」
突然ユシャの気配が変わった。怒っている。異世界人の召喚に白の巫女が関わっていることは、薄々感づいていたと思っていたのだけど、知らなかった?
「ということは、やはりお前も関わっていたのか?誘拐だぞ拉致誘拐。犯罪だろうが」
「仕方ないでしょ!白の巫女の仕事は魔霊樹と一緒に···アレの為に魔力を集めて送ること。足りない魔力を補わないといけないの!魔霊樹の生む魔力はもう·····だいぶ前から····足りてないのよ」
「!」
ユシャの顔が苦しげに歪む。魔力の多さでは白の巫女以上。最強の魔導師5本の指に入るニコラスの子供ユシャ。その魔力の多さゆえに幼い頃、創世主に狙われ捕まり······実験台にされた。
「ヒナの封印はいつ解ける?」
「え、ああ、解除キーワードがあるの」
「教えろ」
「なんで、ユシャに教えなきゃいけないのよ。それ知ってどうするつもり?」
「今は、ヒナの封印を解くべきじゃない。間違って解けた時、ヒナはパニックを起こすかも知れない」
はい?何考えてるのユシャ!過保護過ぎない?ふふっ
「随分とヒナにご執心みたいね〜」
「は?何ニヤニヤしてんだ。ヤキモチか?」
「んな訳ないでしょ!もー、まさかここまでユシャがヒナに過保護になるとは思わなかったわ」
「ふんっ」
でも、確かに私がヒナに話した時、かなりショック受けてたみたいだからユシャが側にいてフォローしてくれると助かる。
鍵は早く見つけて貰うに越したことはないし、ユシャの協力があれば、ヒナも頑張れるかもしれない。
「わかった。条件とキーワードを教えたらきっちりヒナのフォローしてくれるわよね」
「俺にできる限りはな。所で、コーリンは何をしようとしてるか知ってるか?」
コーリン!コーリン兄様は、今どうしているんだろう。
「コーリン兄様がサルタイラに協力してるらしいって事は神官長から聞いたわ。噂だけだから何をするつもりかは神官長も私も知らない」
「ああ、サルタイラのカエサルは俺やヒナも仲間に入れたいらしい。ティファーンで酷い目にあった例の事件。あれはコーリンが絡んでいた」
「········」
私が黙り込んだのでユシャが気遣わしげに覗き込む。
「お前は小さい時からコーリンに世話になってるから心配なのはわかるが、何か考えがあるんだろう。俺よりはまともなヤツだから大丈夫だ。きっと···」
「『きっと』って何よ。やっぱりコーリンに何か起きてるの?」
「お前コーリン兄ちゃん大好きだな」
「だ、大好きって。あ、当たり前でしょ!兄妹なんだから!」
「俺も一応お前の兄なんだが?それなのにコーリンに比べて扱いが酷いと思うんだけどな。お前、かなり拗らせてないか?」
ユシャにそんな事言われたくない!
やっぱりユシャにはキーワード教えてやらない!
なんとか、出来るだけ早くヒナと連絡とらないと。
お読みいただきありがとうございます。
魔力量は、ヒト族では、ユシャが一番多くルセラ、ニコラス、???。大きく差があって上級魔導師などになります。魔族は個人差がありますがニコラス位かそれ以下です。