2章20 召喚された男
本日2話投稿しております。
こちらは2話目です。1話目まだの方、良かったら1話目からどうぞ。
「スーリヤは少し前に、俺とオルガと一緒にいたユージという異世界人を覚えているか?」
「ああ、あの色々面白い事やってた異世界人ね。今ニニカにいるんだったね」
「まだ他にも異世界人がいるんですか?!」
フィン様びっくりするよね。
異世界人に会ったのは私が初めてだって言ってたもんね。つまり浮遊大陸には異世界人が三人いるのは間違いない。しかもみんな日本人。確率パねぇ!
「できるだけ表には出ないようにしてたけど、異世界の珍しい料理や道具とか色々広めててね。スタラーランドも彼の異世界の知識が基本になって作られたらしいよ。異世界って面白そうだよね」
「そうなんですか····」
「スタラーランド·····」
パザさん、スタラーランド行きたいって言ってたもんね。落ち着いたら一緒に行こうね。絶対パザさん誘うから!
雨宮さんがこの世界に召喚されたのは十何年か前のこと。
その頃、ユシャさんはエルフォンスさんから依頼を受けた仕事で、オルガさんと組んでいた。(実はオルガさんも元アドゥーラ警備隊員で辞めた後は傭兵?のような仕事をしていたそうだ)
ある仕事でオルガさんと首都の北の森に行った時、ボロボロで倒れている人間を見つけた。
それが雨宮さんだった。かなり憔悴していたが、傷だらけではあったが大きい怪我や異常はなかった。
連れ帰り介抱して、なんとか元気になったが言葉がわからない。
(念話も警戒しているのか、ガードが固くうまくいかなかった)
だが、放り出す訳にも行かず、何となく三人で行動しているうちに、お互い打ち解け、念話もできるようになり、言葉も通じるようになってきた。そして雨宮さんから聞いたのが····
自分は異世界人で、ある時突然、こちらの世界に転移してきた。
気がついた時には、灰色のフードの付いた長い服を着た男が8人、自分を取り囲んでいた。
石の壁に囲まれた余り大きくない部屋で足元には丸い魔法陣のような物があった。
言葉がわからないので、何を聞いても文句を言っても伝わらない。
部屋から出されたと思ったら、また魔法陣のような物で何度か移動を繰り返した。
そうして、着いたのは殺風景な広い部屋。そこには、自分と同年代か年上と見られる男性が20人位いた。小さな宿泊施設のような所で外には庭もあるが、周りは高い塀に囲まれている。
余り広くはない部屋に4〜5人で寝起きしていた。後、食堂とシャワー、トイレが共同。娯楽は無し。
俺は囚人か!ここは刑務所なのか?俺が何をしたっていうんだ!
しかし、着る物も清潔だし食事も
普通に貰えた(不味いが)。
暴力を振るわれたり何か仕事を強制されることも無かった。
ただ、常に5人の男がいて自分達を監視していた。
少し慣れて周りの様子を見てみると、言葉が通じているのか会話している者もいたが、自分にはさっぱりわからなかった。自分と同じ黒目黒髪が多いが、言葉は通じない。アジア人なのだろうか?
驚いたのは獣人や魔族ではないかと思われる人間もいたことだ。
獣人には首輪が、魔族の男には腕にごつい腕輪がついていた。どうやら魔法封じの道具らしい。
獣人の男は一度暴れたので首輪をつけられたようだ。獣人の男は少しでも暴れると首輪の魔法が作動して気を失っていた。
「魔族も居たのですか!?あ、すみません。失礼しました。どうぞ、お話続けて下さい」
フィン様、自分の同族がいたらしいことに動揺しているみたい。
そして、何日かに一度2人または3人の人間が何処かに連れて行かれ、帰ってきた時には魂が抜けたようになっていた。
しかし、何日か後には回復していた。
しばらくすると、それは自分も例外ではなく定期的に連れて行かれるようになった。
「なんだ?それは?」
「俺にもよくわからない。ユージも連れて行かれたが、行く時と帰る時は目隠しをされ、着いた所では、眠らされていたそうだ。しばらくしてから、ユージの記憶を辿り、その場所にいってみたが瓦礫の山があるだけだった。」
「証拠隠滅か。一体何をされたのかねえ?気味が悪いな」
私達は空中に放り出されたけど。どっちがマシなんだろうね。
「実は、ユージが一度魔力枯渇寸前の人間を見た時、その状態が似てると言っていたのを思い出した。その時は気にもしなかったんだが、ヒナに魔力があるのを見て、本当に魔力枯渇だった可能性を考えてたんだが····」
「ルセラさんは私の生命エネルギーを魔力に変換するって言ってました。生命エネルギーを増やすため身体を鍛えるようにと言われました」
「ユージ達がいた施設には男しか居なかったらしいが、やはり男のほうが生命エネルギーが多いからだろうな。しかし、今のユージには魔力の欠片もない。だから、その時はそれで話は終わった。だが、今回のヒナの状態を見て関係があるのかも知れないと考えた」
「ユシャ。つまり、生命エネルギーを魔力に変換して搾取していたということなのか?生命エネルギーを魔力に変換する方法なんて聞いたことがない。そんな魔法は一般には知られていないぞ。ルセラ様が知ってるということは、神殿が関わっているのか?」
「まだ詳しい事はわからないが、カジャク導師は禁呪魔法ではないかと言っていた。」
「!·····禁呪魔法」
禁呪魔法?使っちゃいけない魔法ってこと?
「あの···魔霊樹は本来、魔素を吐き出しています。魔素は魔力の素、それが足りていないという事ですか?神殿はどう判断しているのでしょう?」
「情報はない。だが、ルセラはヒナを召喚した同時期に別の誰かがユージ達のように男を召喚しようとしていたとしたら、二人一緒に召喚できる可能性があるんじゃないかとか考えては見たが·····根拠も証拠になる物もない」
「「「「·····」」」」
フィン様の疑問を聞いてみんな黙ってしまった。
この世界のというか、この浮遊大陸の要である魔霊樹を管理している神殿が、皆の信奉の頂点である白の巫女が関わっているのか。
「聞いてみれば良いのではありませんか?」
「パザさん?」
ずっと黙って私達の会話を聞いていたパザさんかポツリと言った。
「その····ヒナ殿がルセラ様と親しいのなら聞いてみてはいかがですか?」
「パザさん、私からは連絡は「そうだな」えっ?」
「俺がルセラに聞いてくれば良いか。パザ殿、良いことを言ってくれた。感謝する」
「ユシャさん?」
「ユシャ様、ルセラ様にお会い出来るのなら、それが良いかと。ワレは、難しいことは分かりませんが、それが早いかと思いまして」
ユシャさんならルーに面会できるの?なんかズルくない?
「ユシャ、どうやって会うのさ」
「·····まぁ、それは····」
「他の学生が話していたのですが、次の奉納舞の日にルセラ様が特別に参加されるそうです。その時に会えないでしょうか?」
「そうだった。ユシャさん、チケット手に入る?」
「それは大丈夫だ。なんとかする。スーリヤ、フィン殿パザ殿もいきますか?チケット準備しましょうか?」
「私も行く〜!」
「わかってる」
あ、左様ですか。
······話が逸れてしまった。
それから、なんとか他の人達と意思疎通が出来るようになった雨宮さん達は、協力して、その施設を脱走したのだ。
お読み頂きありがとう御座います。ぼちぼちですが、続けて行く予定ですのでまた来ていただけると大変喜びます、私が。