2章17 ぶっちゃけました。
見直し&修正してたら少し長くなりました。
よろしくお願いします。
「パザさん!」
驚いてこちらを見るその小さなもふもふは、獣族のパザさん。
「ヒナ殿!なんと、このような所でお会いするとは!」
「その節はお世話になりました。ありがとうございました。直接お礼が言いたかったのに会えなくて気になっていたんです。良かった、また会えて嬉しいです」
「ワレも会えて嬉しいです。ヒナ殿、お身体は大丈夫ですか?」
「はい。めちゃくちゃ元気です」
パザさんがここに居るっていうことは····フィン様もいるってことだ。フィン様は大学に入るために、この大陸に来たのかしら?
「パザ殿、お久しぶりです。ヒナ、感動の再会はいいが、後にして中にはいれ」
「パザ、お前も中に入りなさい」
中から、聴いたことのある声。
「フィン様、良いのですか?ガウラ達が不在ですし、私は護衛としてここに···」
あ、やっぱりフィン様いた。
「大丈夫だ。ユシャ殿がいれば何より心強い」
「パザくん中に入って。君の得意なあのお茶を入れてくれないかい。研究室には結界を張るから心配しなくていい」
結界!?そこまでしなくても。
でも、確かにフィン様は魔族の王子様だし····VIPだもんね。
「では、失礼して。お茶の準備をしてまいります」
スーリヤさんの言葉にパザさんがお茶の準備のため部屋を出ていったので、改めてフィン様にも挨拶とお礼をいう。フィン様、相変わらずお綺麗です。
「改めて紹介しよう。ヒナだ。今、俺が面倒みている。ヒナ、こいつはスーリヤ、この大学の教授の一人で、俺の友人だ」
「初めましてスーリヤさん。ヒナです。よろしくお願いいたします」
「スーリヤです。こちらこそよろしく。ユシャとヒナはフィンと知り合いでしたか?」
「スタラーダで世話になった。特にヒナが」
「ユシャさん、その言い方は無いでしょう!確かに私が原因だけど·····」
スーリヤさんはニコニコしながら見ている。フィン様が慌てて取りなしてくれる。
「私達は大した事はしていないのですよ。うちのパザが少しお手伝いしただけです」
「それは楽しそうなお話ですね。後でじっくり教えて貰いましょう。時間はたっぷりありますから」
スーリヤさんが私の方を見て笑いながらそんなことを言う。時間はたっぷりあるって、話さないと帰れないとか?
「ところで、フィン殿。スーリヤの研究室にいるということは、何かの研究のために留学されたということで間違いありませんか?」
あ、そうだよね。フィン様は首都に用があって下の大地からきたんだよね。
「実は、私は魔霊樹について研究をしているのです」
「「魔霊樹の研究?!」」
ユシャさんと私の声が被った。
フィン様は植物の研究をしていて魔霊樹に興味を持つようになり、下の大地の魔霊樹を調査していたそうだ。
公式情報だと、浮遊大陸は魔霊樹の力で浮いていることになっている。それなら同じ魔霊樹である下の大地の魔霊樹も、もしかしたら浮くのではないか?と調べてみたが、まるでそんな様子はない。
下の大地の魔霊樹とこの浮遊大陸クレッシェンドの魔霊樹の違いは何なのか?同じ種類なのか?大きさの違いか?それとも突然変異か?まるで違う物なのか?
····と色々考えていたら眠れないほど気になってしまったんだとか。
だったら、浮遊大陸の魔霊樹を直に見て研究するしかない!
そう思うと居ても立ってもいられなくなって、あれこれ手を尽くして申請書を出し、やっと今回許可が降りてクレッシェンドの首都ヴォイスの大学に留学してきた、ということだ。
この世界の牧野○太郎博士ですか?
そう言えば、この大陸ってどうやって浮いているんだろう?不思議だよね。ホントに魔霊樹が浮かせてるのかなぁ?あれ?以前、本で読んでことが?なんかドラゴンが関わっていたような?
フィン様が大学に来た理由を聞いていたら、パザさんがお茶の準備を終えてやって来た。しっかりお菓子も添えてある。
「フィン様の乳母殿直伝のお茶です。疲れが取れリラックス出来るという事です。今日はナッツ入の焼き菓子をご用意致しました」
パザさんはテーブルの横にある台に上がり、手早くカップをセットすると香りの良いお茶を入れてくれた。この台はパザさんの踏み台だったんですね。
椅子を勧められ4人でテーブルを囲む。パザさんは少し離れて、さっきの踏み台にちょこんと座っている。
一緒にお茶すればいいのに「ワレは従者兼護衛ですから」と踏み台を持って少し離れて座ったのだ。律義だな。
ふぅ···薬草茶かな?美味しいお茶だ。お菓子も美味しい。
ナッツが香ばしいほんのり甘いソフトクッキーみたいなお菓子だ。
「さて、本題に入る」
ユシャさんがカップを置き口を開いた。何も聞かされてないんだけど、フィン様が聞いても大丈夫なことなのか?
「フィン殿、パザ殿、ここれから話す事事は外には漏らさないで頂きたい。フィン殿を巻き込むことになるが····スーリヤ、フィン殿の意思はきいているのか?」
「あ、まだでした。フィン、どうする?」
え?何。私はいいの?スーリヤさんて天然系?ユシャさん何の話しようとしてるの?
フィン様の苦笑いが可愛い。
「もしかしてヒナさんのことですか?来客があることは聞いていたのですが、お二人が来られたので、そうではないかと····」
「フィン殿はお気付きでしたか」
だから何?私カヤの外なんだけど〜
「ヒナさんは異世界人ですね」
「えっ!」「ええっ!?」
最初は私、後のはパザさん。
フィン様 私が異世界人だって気づいてたの?
「スタラーダで会ったヒナさんは黒髪で黒い瞳でした。今のヒナさんはわざわざ魔法で茶色の髪に茶色の瞳にしています。私の知識の中にも異世界人のことがありましてね。下の大地にも迷い込んだ異世界人の特徴の中に黒髪、黒い瞳というのがありました」
フィン様さすが博識。
「下の大地にも異世界人がいたんですか?」
「ええ、今も下の大地のどこかに何人かいるようです。そして、例外もありますが、その殆どが黒髪黒目だという事です」
異世界に転移、召喚される日本人の確率の高さって異常じゃない?
「実際に会えたのはヒナさんが初めてですけどね。今日会って、わざわざ髪色と瞳の色を変えているのを見て確信しました。ただ、あの時は、ヒナさんが魔力を持っていたので違うかも知れないと思っていたんです」
あ、なるほど。
「さすが、フィン殿は慧眼でいらっしゃるようだ。では、本題に入ります」
ユシャさんの用事って、私についての話をする事?
「フィン殿が言ったようにヒナには魔力があります。そして、知識としてのみ、約100以上の魔法を持っています」
「!」「ええっ!?100以上?!」
あ、言っちゃったよ。ユシャさん私に魔法の知識があることわかるんだ。
「ユシャ、普通異世界人て魔力がないですよね。魔法だって使えないはずだ。フィン、聞いたことがあるか?」
「いえ、私も異世界人は魔法が使えないと聞いています」
「もうっ!ユシャは言葉が足りない。預かっている女の子の事で相談があるから時間取ってくれとだけ言ってきて、説明無しでこれだから。振り回される私の身にもなって欲しいよ······」
パザさんは無言だ。従者が口を挟んではいけないと思っているのか。
「スーリヤには興味深い話だと思うがな。実は·····白の巫女ルセラが関係している」
ユシャさん、そこまでぶっちゃけちゃうのー!?
フィン様が植物大好きっ子だった。スーリヤ先生は浮遊大陸の植物、薬草の研究と魔法合成、新しい魔法の作成の研究をしています。ここの大学の殆どの教授は専門学と一緒に魔法の研究をしています。
魔法も奥深いのです。