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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
44/114

パザさんは見た!

見直しが済んだので更新です。次も見直しができ次第更新予定です。


ホテルのロビーの椅子のあるコーナーに場所を移し、パザという魔族の護衛だという獣族に話を聞く。


「最初にヒナ殿にお見掛けしたのは、そこの玄関です」


ヒナはアレックスと別れた後、彼等と立ち話をしたようだ。パザの説明によると·····



『ヒナ殿はアレックス殿と帰ってこられたのですが、アレックス殿は誰かから伝言を受け取ったようで、急いで外に向かっていかれました。


ヒナ殿が一人になられてからワレが声を掛け、ヒナ殿とワレ達は少し会話しました。その後ヒナ殿はすぐに部屋に戻られたようでした。


少しして、ワレ達が食事に向かおうとしていると二人の少年が外から走ってやって来てそのまま昇降機エレベーターに乗りました。が、彼らは数分後にはまたロビーに降りてきました。


しばらくすると、ヒナ殿が降りてきたのが見えました。ヒナ殿は先に降りてきていた二人の少年達と合流していました。


ワレが目で追っていると、三人はロビーを出てそのままホテルの正門から外に歩いて出て行かれました。』



パザの話し方は独特で少し訛りがあるように聴こえる。元々、獣族の声帯ではヒト族の言葉は発声が難しい。何らかの魔導具で補助しているようだが、首輪のような物が魔導具だろうか。


「ちょうどワレの席からはホテルの正面の門が見えたのです。ヒナ殿は動きやすそうな服装に着替えていて、微かに魔物除けの薬草の匂いがしていました」

「パザは視覚、聴覚、嗅覚がとても良いのです。しかも私の護衛の中で一番、身軽ですばやいのです」

「ほぉ!」


パザは、小さなキツネに似た浮遊大陸では見たことのない動物···いや、獣族だが。

主が褒めるのを照れくさそうにしながら頭を搔いている。


(獣族自体、数が少なく希少生物であり、下の大地の魔大陸にしかいない。ペットとして乱獲された過去があり総ての種が絶滅危惧種で、既に絶滅した種もあるという)


「フィン様、褒め過ぎです。レストランの窓が開いていましたし、ちょうど風が正門方向からこちらに吹いていたので、匂いもわかりましたから。ただ、会話はよく聞き取れなくて、ヒナ殿達がどこに向かったのかはわかりませんでした」


一階のレストランは確かに玄関ロビーのすぐ横にあり、ホテルの正門は見えなくはない。しかしかなり距離はある。想像以上に視力と臭覚が良いようだ。


「ワレはその時のヒナ殿の困ったような表情が気になり、フィン様にお許しをいただいて護衛の職務をしばし離れ、3人の跡を辿ったのです」

「獣族は野生のカンというか異変を感じ取ることがあります。パザをはじめ私の護衛達は皆、素晴らしい知覚の持ち主です。お陰で何度命拾いしたかしれないのです」


フィン殿の言葉に照れながらも真面目な顔でパザは訴える。


「ユシャ様、何か嫌な予感がするのです。ここから離れた森···ジャングルと言うのでしょうか?草の生い茂った場所で見失ったのです。ワレは嗅覚に自信があります。しかしヒナ殿の匂いはわかるのに、どうしても、そこからは追うことができなかったのです」

「そうですか。私も獣族や獣人の危険察知能力は信用しています。取り敢えずその場所に案内して貰えますか。フィン殿パザ殿をお借りできますか?」

「もちろんです。パザ行きなさい」

「はい!」


フィン殿に護衛であるパザを借りる礼を言い、パザの案内のもとアレックスを連れ、ヒナ達を見失ったという場所へと向かうことになった。


ホテルのフロントにアデリーナさん達への伝言を残しホテルを出た。エル達も近々着くはずだ。




ホテルの正門を出て町に続く道を歩く。正門から町迄の道路脇はほぼジャングルだ。モンスターの気配はない。


十数分位歩いた所でパザがふと立ち止まり、『こちらです』と道を逸れ草むらに入る。

彼でないとわからなかっただろう。道はほとんど無く、生えている草の背がだんだん高くなっていく。

草の背はすぐに私達より高いほどになった。

ホテルを包むシールドの範囲を越えたのか体感は一気に変わり、湿気を帯びた温かい空気が身体に纏わりつくような感じになる。魔法で体感温度と周りの空気を調整する。


「む?空気がかわった?」

「さすがですねパザ殿。今、魔法で周りの体感を調整しました」

「魔法でそんなことまでできるのですか?!」

「パザさんのご主人は魔法でやらないんですか?まぁ、魔力の豊富なユシャさんだから自分だけじゃなく周りの空気まで余裕で調整できるんだけどね」


アレックスが自分のことのように自慢げだ。しょうもないことを···


「魔族の魔法は色々なタイプがあります。攻撃魔法特化、補助魔法特化、特殊魔法特化など様々です。生活魔法程度なら誰でもつかいますが適性の必要な魔法もあり、使える物と使えない物があります。

もちろんうちの主様は総て使えますが、ごく限られた方だけです。だから主様以外でこのようなことができる方は珍しいので驚きました。」「パザさんのご主人も魔力多そうだもんね。魔族領って寒暖の差激しい所が多いって聞くけど大丈夫なの?」

「あ、自分自身だけに体感魔法を使える方は多いですが、周りの者にまで使える方は限られると言う意味です。ユシャ様はそういう意味でも魔法量も技術も凄い方だと下の大地では有名なのです」

「へえ、凄いな。下の大地でもユシャさん有名なんだ」

「クレッシェンドと下の大地との交流が始まって随分経ちましたからねぇ。情報は沢山入ってきています。でも、クレッシェンドの民は下の大地のことをあまり知らないみたいで驚きました」

「そ、そうなんだ。ねぇユシャさんなんでなんだろう?」


「お前は歴史をちゃんと勉強したのか?新聞も読んどけ。それとクレッシェンドには正式な魔道飛空船の発着場がティファーンのレイハスにしかないから情報が広がりにくいのかもしれないが、歴史を勉強すればわかるだろう」

「歴史?あー昔、下の大地とは貿易も交流もなかったってこと。そ、それくらい知ってるよ」


それだけじゃないぞ。交流が始まっても情報がしっかり広がらないのは昔の確執もあるからだ。こいつ、魔法ばかりうまくなって他の勉強をおろそかにしてるな。後で、アンデルに言っておかなければ。


「パザさん、まだなの?あいつら何が楽しくてこんなところにきたんだか。冒険者きどりかよ」


アレックスめ、話題を変えたつもりか。

時折、何かわからない動物の鳴き声はするが近寄っては来ない。しかし、アベルとオリオンはスタラーダに来たことがあったとしても、こんなジャングルに来ることはなかったはずだ。

一体何があった?


アレックスは生まれた時からこの町に住んでいる。

だが、彼も含めここに住む子供達はジャングルに入ることはまず無い。

少なからず魔物がいるので、子供だけではジャングルに入ることは禁止されている。

大人でも決められた以上のレベルがある冒険者か複数で行くようにティファーンでは定められている。


ティファーンの大都市から離れた地域はニーロカより強い魔物が多い。それは冒険者を呼ぶために、ある程度人工のダンジョンなどを作っている所為でもある。もちろん自然発生するダンジョンもある。

そのため、小さな村や町でもモンスター避けや対策が観光客の安全も兼ねてきっちりとされている。

つまりティファーンは主に観光客と冒険者により潤っているのだ。


「ユシャさん、僕は行ったことないけど、この辺りには古いダンジョン跡や洞窟がいくつかあるって聞いたことがあるんだ」

「古いダンジョンや洞窟?管理されてないやつか?」

「どうだろう?冒険者が入ってるとは聞いてないから、モンスターも宝も無いただの洞窟じゃないかな」

「ここです!」


パザが立ち止まり振り返る。彼は匂いの後を追っていたが、この場所でどちらに行ったかわからなくなったという。


「時間が経ったので、匂いもだいぶ薄くなっています」

「強い魔法の気配がする。やはり目眩ましの魔法がかけられているな『魔法解除(リセット)』」


魔法でかけられている目眩ましを解除する。

パザは鼻をひくひくさせ匂いを探す。


「あ、こちらです。先程は匂いの方に行っても行っても元の場所に戻されていました。今度は大丈夫です」


しばらく進むと草むらが途切れ、ぽっかりと洞窟が口を開けていた。人一人が通れるほどの入り口だが、奥は見えない。


「どうやら、ここみたいだね。こんなに心配させた三人にはお仕置きだよね!ユシャさん」

「待てアレックス!」


率先して中に入ろうとするアレックスを止める。


「お前はパザと帰れ。もう少ししたら警備隊がスタラーダに来るはずだから知らせてくれ。」

「ええ~~っ?ユシャさん人手はあったほうがいいと思うよ」

「ワレも手伝います!きっとお役に立ちます!」


二人ともなかなか粘る。仕方が無い。三人で洞窟に入ることにする。




お読みいただきありがとうございます。次はアレが出てきます。

気候の変化や、寒暖差で体調崩されている方も多いかと思います。ご自愛下さいませ。

人の事は言えない位、ヘタレな作者ですが花粉の季節が終ればもう少しましになるかな?なるといいなぁ·····

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