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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
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お騒がせな探検隊誕生


スタラーランドで遊んでいるとばかりと思っていたアベルくんとオリオンくんがいきなり私の部屋にやってくるなりこう言った。。


「ヒナ、冒険しようぜ。冒険!」


は?冒険?突然何言い出してんの?


「やっぱり冒険は男のロマンだよな!」

「だよなっアベル!」


私は女ですけど?それより二人ともテンション高っ。


「二人でスタラーランドを満喫するんじゃなかったの?」

「アベル、ちゃんと説明しなきゃ」

「ああ、そうだったな」


アベルくん達二人はスタラーランドで遊んでいて、たまたま知り合った人から、このホテルから程近い場所に小さなダンジョンがあると聞いた。

しかも、そこは初心者向けの低レベルな場所で、強い魔物もいない。つまりあまり良い物が手に入らないため、今はほとんど潜る人がいないということだ。

ゲームでは強い魔物の方が倒したとき良いお宝がゲットできるというのがお約束。うん、ゲームの常識だ。あれ?この世界って実はゲームだった?いや、そんなはずはないけど‥‥


だいたい南地方のダンジョンは地方府が管理にしているはず。そんな変な誘い方ある?まず、管理しているギルドにいくことからでしょ。



「君達、若いけど強そうだし力試しに行ってみたら?そんなに深くない洞窟だから短時間で楽しめるちょっとした冒険だよ。女の子と行ったら『キャーあなたって強いのね。頼りになるわ。ステキ!』とかなっちゃって。モテモテ間違いナシだぜ···とか言われたそうだ。


なにそれ、ひと昔前のシチュエーションか?めちゃくちゃ怪しい。

超胡散臭いのに二人ともチョロすぎる。なぜ変だと思わないの。

しかも、帰って来るの早くないか。私達と別れてからそんなに時間たってないよね。


「やっぱり聞いたからには行かないって手はないよな。オリオン」

「ヒナだって前よりずっと魔法使えるようになったんだろう?だったら試してみないか?」

「モンスターもレベル低いのが少し居るだけらしいから却って物足りないか?ハハハッ」

「ユシャさんが帰るまでには戻れば大丈夫だろう?」


二人は熱心に私を誘ってくる。


「なっ、帰ったらシド達に自慢しようぜ。俺達ダンジョンに潜ったんだぞってさ」

「祭りの時にあれだけ戦えたんだからイケルさ。ヒナ、俺達がいるんだから心配なんていらないぞ」


ん~···なんか違和感。いつもの二人らしくない。


「さあ、いこう」

「わかったわかった、わかったって。すぐ準備するから下で待ってて」

「なんだヒナ、怖じ気づいたのか?」

「女の子は準備が必要なの!着替えしたいし、虫対策とかしたいの!」


二人は「仕方ねーな」とか言いながら「ロビーで待っているからはやくしろよ」と念押しして部屋を出ていった。


う~ん二人に何があったんだ?

私にサプライズしようとしてる?

···そういうのとも違うような気がする。


取り敢えず動きやすい服装にして、薄手の長袖上着、それに例のお守り装備。腕にはアルクくん召喚バングル。それに、いざとなったらジャオさんいるし、なんとかなるでしょ。

ジャオさんは人の多い場所にいるときは姿を現さず眠っている。もしもの時は起こせばいい。





***********






「ユシャさん、ヒナ達がどこにもいないんだ!」


ホテルに帰ると俺を待ちかねていたらしいアレックスが焦った様子で、ヒナがアベル、オリオンと共に行方不明だと訴える。


アレックスからは一度、「ヒナが部屋にいない。探してみる」と連絡は受けていた。

あいつのことだから何か珍しい物を見つけて夢中になっているのだろうと思っていたが、ホテルの敷地内にいないというのはどういうことだ。


今朝、ヒナからはアベル達と4人でスタラーランドという遊園地に遊びに行くと聞いていた。

アレックスは昼前、スタラーランドからヒナと二人だけで先に帰ってきたらしい。

ホテルに着いてすぐ、父親であるアンデルさんが呼んでいるという伝言がきたので、ロビーでヒナと別れたそうだ。

だが、アンデルさんの工房に行く途中、雑誌の記者と名乗る男にしつこく取材を迫られ、やっと追い返し、アンデルさんの工房に着いたときには、既に30分以上経っていた。

しかもアンデルさんはアレックスを呼んではいなかったと言う。

怪しいと感じ、すぐにヒナを探したが部屋にいない。従業員にも手伝ってもらいホテル中を探したがいなかった。


フロントの者は、昼頃、ヒナ達が三人でロビーを出たのを見たと言う。そのまま、ホテルの外に出たのだろうか?

アベルとオリオンはスタラーランドで遊ぶと言ってわざわざ残ったはずなのに早々に帰ってきたということか。

何が起こってる?


トリスタからスタラーランドで起こったことは聞いている。

トリスタはその後、ヒナを襲おうとした女の後を尾行したが、そのまま滞在している宿に戻り、その後は外出していないようだ。宿には一人で泊まっているようだった。


探索魔法でヒナの気配を探ってみたが見つからない。近くにはいないのかもしれない。やはり何かに巻き込まれたと考えるべきか?

アレックスが半分泣きそうな顔で俺を見上げる。


「ユシャさん、ごめんなさい···僕が油断してた」

「大丈夫だ。アベルもオリオンも一緒みたいだし、ヒナにはお守りも持たせてある」


そう言って頭をくしゃっと撫でる。ジャオもいるし、アルクを呼べるバングルもある。多分、大丈夫だと自分にも言い聞かせる。


「俺、魔法も勉強もその辺の奴らに負けないし、自分はもっとしっかりしてると思ってた。でも、俺の油断でヒナが、ヒナ達が危険な目に遭ったりしたら···」

「アッレクス、今は落ち込んでる時じゃない。まず、俺達に出来ることからしよう」

「···はい」


ヒナはともかく、アベルもオリオンも以前よりずっと慎重になっていたし伝言も残さずいなくなるというのは考えにくい。事件に巻き込まれた可能性が高いか。


「もし···ヒナ殿の関係者の方ですか?」


黒髪の男性に声をかけられた。容姿から見て魔族、しかも着ている物も上等だ。ただの旅行者とは思えない魔力の色···


「はい。ヒナは私の連れですが、あなたは?」

「申し遅れました。私は下の大地の『タプセーム』より参りました。ハスクハルト・パルカトル・タプセームが八男フィノルド・パルコルス・タプセームと申します」


タプセームは下の大地の魔大陸(3つある大陸のひとつ)の魔族の国でも一、二の大きな国だ。


「ああ、タプセームの王族の方でしたか。私はユーリシアス・クロフォード、魔導師のユシャと申します。私の連れのヒナのことで何かご存知なのですか?」


「あなたがユシャ殿!」


驚いたように目を見開いた後、満面の笑顔になった。俺の噂を聞いたことがあるのか?しかし整った綺麗な顔をしている。男女問わず見惚れそうな容姿だ。魔族にしてはやわらかい雰囲気を持っている。


「フィノルド様、私のことをご存知でいらっしゃるのですか?」

「フィンとお呼びください。ユシャ殿のお名前は下の大地でも良く知られております。幻の大魔導師ニコラス様の直系でその魔力、魔力量はニコラス様をも凌ぐと聞いております。お逢いできて光栄です」


親父は幻の大魔導師と言われてるのか。珍獣みたいだな。


「そ、そうですか···それでフィン様、ヒナに何があったかご存知なのですか?」

「見かけたのは私ではなく私の護衛の者です。パザ」


彼の護衛?どこに?


「あの···ユシャ様、ここです」


下のほうから声が。

目線を下げると、小さな毛玉···い、いや、どうやら獣族らしい。

そういえばヒナが何か言っていたな。この獣族のことだったか。

護衛と言うからには強いのだろうが、見た目はまるでぬいぐるみだ。女性や子供が喜びそうだな。


獣族は基本、魔力を持たないので魔法を使うことができないと言われている。

だが、それぞれの種族が特殊能力を持ち、その精度は非常に高く、時には魔法をも凌駕することがあると聞く。

とすると、彼はスピード重視の戦闘タイプなのか。


「失礼。パザ殿、ヒナ達の行方をご存知なのですか?」



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