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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
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みんなのアイドル、ヒナのアイドル

遅筆ですみません。やっとここまできました。ティファーンのはなしが終わったら図々しくも他の人のエピソードを書きたいと妄想中です。


『アレックス親衛隊』そう名乗る彼女らは、お子さま向けアニメのヒロイン達のような決めポーズを取る。

あの~なんの意味が?


「え~と~あの、アレックスくんて何か芸能活動でもやってるの?」

「はぁ?あなた何言ってるの?」


う~ん···単に人気者なだけ?魔法レベル高いみたいだし顔良いし、モテるのはわからなくはない。


「スタラーダの学校に通ってる子でアレックス・タナーのことを知らない人はいないわ」

「それにアル様はティファーンでは人気の雑誌ティファガールで行われる『素敵な男の子人気投票』で5年連続トップなのよ」

「アル様の特集だって何度も載ったのよ。何度も取り上げてもらえるって凄いことなんだから」


なんだ?その俗っぽいティファーンの雑誌。ティファガール?しかも人気投票イベとか。


「お前ら!それ、いちいち人に言うな!」

「アレックスくん」

「「「アル様!」」」


いつの間にか現れたアレックスくんが真っ赤な顔でわなわなしてる。彼にとっては恥ずかしいことみたいだ。その後ろでアベルくんとオリオンくんがポカーンとしてたりする。


「誰もあんな雑誌に応募してくれとか頼んだ覚えはない。お陰で付き合ってくれとか手紙は来るわ、うちに突然押しかけてくるわ、お袋経由で縁談までくるし!」


「ア、アル様、そんなに怒らなくても···」

「だいたい、お前らなんで俺達の後つけてんの?ストーカー行為で訴えるぞ!」


「ごめんなさい···」

「まあまあ、アレックスくんもうそのへんで。そのおかげで襲われかけたの助かったようなもんだし····」

「え?マジ?!」

「それ、いつ?」

「襲われかけた?ヒナが?」


あわわ···三人の顔つきが変わった。


「···さっきトイレで」

「どんなやつだった?」

「この前、ニニカの祭りの時襲ってきた女の人だった」

「間違いないか?」

「うん。間違いない」


アベルくんが真剣な顔で迫って来た後、オリオンくんと二人でユシャさんに頼むと言われていたのに、と凹んでいた。

まあ、女子トイレまで着いてくるのは君達には荷が重いでしょう。仕方ないよ。


「ユシャさんにヒナから離れるなと言われたのは、そのせいか···」

「あの····アル様、彼女はどういう方なのですか?」


確かパラディナさんていったっけか。言葉遣いは丁寧だし、いいとこのお嬢様っぽいな。


「うちのホテルのお客さんでユシャさんの連れだ」

「ユシャ様の?!」

「そ、それは知らなかったとはいえ失礼を!」

「あ、あの、ユシャ様と、ど、 どういうご関係なのですか?」


え?ユシャさん、ここでもかなり有名人?


「えーっと…私はユシャさんちの居候で···」

「一緒に暮らしてらっしゃるの?!」

「まあ···」

「素敵···」


彼女達、な、なんか誤解してる。そんないいもんじゃないんですよー


「ユシャさんのペットみたいなもんだな」

「ペット?」

「アレックスくん!」


アレックスくんてば、人のことユシャさんのペットって、ペットって!ヒドくない?


「あーそうかも」

「ヒナ、気にしない方がいいと思う。でも違うとも言えない気がする」


ちょっとちょっとオリオンくん~アベルく~ん。あなた達私の事そんなふうに見てたんかい?



ニニカの祭りの事件を簡単に説明した後、パラディナさんの案内で施設内の警備係の所に行き、施設内の不審者のチェックをして貰った。

しかし、それらしい人はいないようだった。

さっさと逃げたんだろう。

どっちかと言えば私達を尾行していたパラディナさん達のほうが怪しいくらいだったけどね。



3人のお嬢様はアレックスくんのクラスメイトでアレックスくんのファンだということだった。

しかもパラディナさんのお父さんはこの施設のオーナーで、やはり彼女はセレブなお嬢様だった。(後の二人も割と裕福な家庭のお嬢様らしい)


パラディナさんが親衛隊を作って自ら隊長になり、アレックスくんのファンをまとめ、アレックスくんに迷惑をかけないようにルールを作って、陰ながら応援しているのだとか。

まあ、どうしても中にはルール守れない人とか、行き過ぎたことをしちゃう人がいるんだろうね。



それで、今日は3人はたまたま、ここに遊びに来たところアレックスくんを見つけたが、アレックスくんが見知らぬ女の子を連れているのを見てパニクったということらしい。



パラディナさんが申し訳無さそうな顔で頭を下げる。

こちらの世界でも謝るときは頭を下げるのか。


「ヒナさん、うちの警備が至らなくて危ない目に合わせてしまってごめんなさい」

「ヒナでいいよ。パラディナさん、こちらこそごめんなさい。あの人達は私が狙いだし、迷惑かけたのは私の方よ」

「私もパラディナと呼んで下さい。ユシャ様の大切な方とお知り合いになれて光栄ですわ」


大切な方···ってどうなのかなあ···

どうやらパラディナさんの中で私は『悪の組織に狙われており、ユシャさんに保護されているやん事無きご令嬢』という設定ができたようである。

夢見る乙女の妄想(ゆめ)を壊す必要もないと思い否定はしなかった。


「今日はもう帰った方がいいかもな」

「そうね、帰ろうかな」


アレックスくんの言葉に同意してアベルくん達を見ると


「そうか、残念だな。俺達はもう少し遊んでいくよ」

「アレックス、ヒナを頼む。夕方には帰るから」


え?え?

二人は手を振りながらアトラクションの方へ駆けていった。


「この薄情者ーーーっ!!!」



***********




やれやれ···

お姫様はやっとご帰還か。

若いナイト達にはまだ完全には任せられないみたいだな。

ユシャさんから頼まれてこっそりガードしていたけど、さすがの俺も女子トイレにまでは入りにくいや。

ま、彼女が自分でなんとか出来たのは良かった。


色々とユシャさんのことをヒナちゃんにバラしたので、お詫びにヒナちゃんのボディカードをしろと言われた。しかも若いナイト達にバレないようにって····

ユシャさん過保護なんじゃないかと思ってたけど、ホントに奴ら来ちゃったなあ。本気でヒナちゃん狙ってるのか。


···ふむ。


さて、お姫様も帰るみたいだし大丈夫か。俺は、あの女の後を尾行するとするか。

上手くいくと、この土地での例の奴らの活動拠点が見つかるかもしれない。

ユシャさんには、念話で報告入れとくか。


「あーユシャさん?トリスタです。」



**********




ホテルに帰り着くとロビーでパザさんを見かけた。

雇い主であるという魔族の人と一緒に窓の側にいて外を見ていた。

魔族の耳ってエルフの耳より少し短いんだな。お祭りの時見かけたエルフらしき人はもう少し耳が長く肌が透き通るように白くて金髪だった。エルフの髪色は金髪か銀髪が主で、魔族は黒が多いらしい。

レイハスで会った魔族の人は色白だったけど、この人は黄色人種っぽい肌の色だ。


アレックスくんにアンデルさんが呼んでいると伝言が来たので、部屋まで送ると言われたけど断った。ホテルには沢山人がいるし大丈夫でしょう。


早速、部屋に戻ろうとエレベーター擬きに向かった。


「ヒナさんではないか」


声に振り向くと小さいモフモフした塊り···じゃなくてパザさんが駆け寄ってきた。


「パザさん、こんにちは」

「ヒナさん、われの主を紹介したいのだが今いいか?」

「え、いいけど。他の皆さんはいないの?」

「皆は今、外でトレーニング中だ。主はそこの窓から見守っているのだ」


パザさんに手を引かれ庭に面した大きな窓に向かう。あ、肉球。柔らかい···うわ~萌える。

それより、パザさん翻訳機治ったんだ。でも、喋り方はやっぱりこんな感じなんだな。


魔族の主さんは窓の側に立ち外を見ている。

スラッと背が高く綺麗な顔立ちをしている。異世界イケメン率高いな。目の保養になるから大歓迎だけど。


この世界のガラス窓の透明度は外を眺めるには充分だ。意外に技術力あるのかな?専門的なことは良く分からない。

窓の外、広い中庭の花などのない開けた場所にガウラさん達がいた。確かあそこには、アレックスくんの作った魔法陣(初日に転移した)があった所だよね。撤去したんだ。


おおっ!ああいう戦いみたいなトレーニングは組み手というんだっけ?

ガウラさんとライオンみたいな獣族さんが素手で戦っている。スゴい!格ゲーみたい!

狼みたいな獣族さんは剣のような物(多分木刀)で素振りをしている。


「フィン様、こちらが昨日話したヒナさんです。ヒナさん、我等が主、フィノルド・パルコルス・タプセーム様です。我等はフィン様とお呼びしております」


「ああ、貴女が。パザが世話になりました」

「いえ、そんな。私は浅田妃奈といいます。ヒナとお呼び下さい。ええと、フィノルド・パー····」


う、名前覚えられない。


「フィンとお呼び下さい」

「は、はい。フィン··さ··ま··」


クスクス笑われた。

キリッとしたイケメンだけど笑うと可愛い。


「ヒナさん、フィン様は数ある魔族の国でも最大の王国タプセームの王族の一員なのですよ」

「えっ!王子様?!」


そ、そんな高貴な方なんだ。


「私の父が王なだけだ。それに私は8人兄弟の8番目だし、一般人と変わらない」


八男···それは···きっと大変だろうな···


「ヒナ殿、失礼ですが、その、貴女は浮遊大陸生まれですか?ここに住む他のヒト族とどこか違うような感じがします」

「え、え~と···生まれたのは確かに別の所なのですが、色々ありまして···」

「やはり···事情があるのですね。失礼しました。忘れて下さい」


みる人が見ると何か違うって分かるものなんだね。フィン様只者じゃない。でも、さすがに『私は異世界人です』なんて言えないよね。

でも、フィン様ってイケメンだし人当たりがいいんだけど、底が見えない感じ。パザさんには悪いけど完全に信用するのは危ない気がする。でも、私ってぱっと見、クレッシェンドの住人には見えないのかな?


「あのフィン様···私、他の人とどこが違いますか?」

「え?」

「あの、つまりフィン様から見て、私はこの大陸の人間には見えないってことですよね?何故、そう思われたのですか」

「ああ。そうですね。まず、貴女の黒い髪、肌の色は魔族に多い。しかし顔立ちは、下の大地のアダシア地方に住むリーシャン族に近い。またその魔力量はまるでエルフか龍人に匹敵する···と、まあこんな所ですね」


そ、そこまで一目で分析されちゃったのか。それに下の大地にも東洋系の顔立ちの民族がいると言うのも驚きだ。異世界って何でもアリなのか?


「フィン様は民族学、動物学、植物学、その他にも魔法論理、魔法陣等、色んな学問を修められたのだ。知識が豊富で慧眼で有られる」


パザさんが自分のことのように自慢げだ。

ご主人様大好き!って感じだね。


「あ、そう言えばヒナさん朝からどこに出かけていたのだ?」

「アレックスくん達とスタラーランドって所に遊びにいってたの」


ユシャさんに許可貰えたから、魔法の練習休みにして朝から行ってたんだよね。


「スタラーランド!」

「パザさんも知ってるの?」


うわっ、目がキラキラしてる···


「『夢とおとぎの楽しい不思議なスタラーランド』というキャッチフレーズで下の大地でも宣伝されてて、とても有名なのですよ!フィン様!フィン様!仕事終わったら我等も行きましょう!」


パザさん、それが素なんですね。


「ふふ···パザ、わかったよ。終わったらね」


何、この人、すごく優しい目でパザさん見てる。。絶対モフモフスキーに違いない。ていうか、パザさん可愛すぎる。思わず顔が緩む。


「あ、ヒナさん違う。これは、その···」

「パザさん、わかってますよ。あそこは大人も子供も楽しめる素敵な場所ですものね」

「そ、そうなのだ。ガウラやゾフィー達だって、行けば喜ぶと思う···多分」


パザさんて本当可愛いなあ。護衛なんて仕事してるけど、まだかなり若いんじゃないだろうか。


「ところで、ヒナ殿は昼食はお済みですか?彼等のトレーニング後にと思っていたので、これからなのですが、まだでしたらご一緒にいかがですか?」


スタラーランドでお菓子とか軽食食べながら回ってたから、余りお腹空いてないのよね。おやつには早い時間だし。


「ありがとうございます。せっかくですが、今回はご遠慮させていただきます。向こうで色々食べちゃいまして、お腹一杯なんです」

「それは残念。では、またお誘いさせていただきます」

「はい。是非」

「ヒナさん、きっとですよ。われはもっとヒナさんと話がしたい」

「うん、私もパザさんともっと話したい。じゃ、またね」


二人と別れ、部屋に戻るべく再度エレベーター擬きに向かった。





「パザがうらやましいな」

「何がですか?われはフィン様に羨ましがられる才などありませんよ?ただの獣族ですが?」

「いや、いいんだ。世の中には毛皮に包まれたものがとても好きなご婦人がいるというのは聞いたことがあったが、事実だという事が今わかったというだけだ」

「···はあ?」

「パザ気にするな。忘れてくれ。(可愛い女の子と気軽に話が出来るお前がうらやましいなんて···言えない)」



フィン様おかしなことを言う。どの種族のお嬢様方も皆、フィン様と親しくなりたい見初められたいと憧れ、いろいろ策を弄しているのに。

頭もいいし性格もいい見目もいい。我等獣族から見ても素晴らしい方だし、しかも魔族の王子で有られるし、自慢のご主人様なのに、何故、われをうらやましいなどと思うのだろう?




頭を傾げながらフィン様について行くパザさんの後ろ姿を、エレベーター擬きに乗って上がりながら眺める。

可愛い···めっちゃ可愛い···



あれ?



入り口からロビーに入ってくるのは···

アベルくんとオリオンくん。

もう帰ってきたの?もっと遊んで来るかと思っていたのに。


そして、私が部屋に帰ってから5分もしないうちに、アベルくんとオリオンくんがドアをノックしたのだった。






読んで下さってありがとうございます。

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