YとKの微妙な関係
またまた新キャラ登場します。自分のクビ自分でしめてる…
屋上にある展望レストラン。今日も沢山のお客さんで賑わっている。
昨夜はアデリーナさんの好意で一階のレストランの個室で豪華なディナーをご馳走になった。
今日は屋上のこのレストランでバイキング形式のディナーである。アレックスくんは先に席を取って待っていた。アレックスくん一人みたいだ。
「アレックスくん、アデリーナさんやアンデルさんは来ないの?」
「二人とも忙しいからね。お袋は敷地内の新店舗の打ち合わせ。オープン近いんだって。親父は今研究中の物に使う材料のことで商人と相談中」
「そうなんだ······」
アレックスくんいつも一人でご飯食べてるのか?それって、寂しくないのかなあ。
「ヒナ、なんて顔してるんだよ。親父達が来た方が良かったか?何か聞きたい話とかあったのか?」
「そうじゃなくて。アレックスくんはいつも一人でご飯たべてるのかなって····」
寂しくないのかな?
「ヒナって変なこと考えるんだな。もう慣れっこだし親べったりな年じゃないんだし。ま、小さい時は結構かまって貰ってたし。今回みたいに沢山で食べるのは楽しいけどな。ほら、ヒナ食え。腹減ってると暗くなるぞ」
逆にアレックスくんに、変な風に励まされてしまった。
「俺らも似たようなもんだな、オリオン」
「そうだな。うちは早くから離婚してたから、乳母とかメイドが居たくらいだった。今はアベルがいつも、うちに飯食いにきてるけど」
「オリオンの家のシェフは腕が良いんだよ。一度食わせて貰ってみな。旨いぞ」
そ、そうなんだ、この二人も····
私なんか高校進学で、家を出るまでは、夕飯は必ず家族一緒だった。お父さんも出来るだけ早く帰ってきて、お母さんもパートの時間はご飯の支度ができるように合わせてた。
うちって幸せだったんだなぁ···
「ヒナ、なんか目がうるうるしてるぞ。大丈夫か?」
「俺達、全然そういうの平気だから!」
アベルくんとアレックスくんが気遣ってくれてる。
「アレックスとアベルが焦ってるの面白いな」
「「オリオン!」」
いや···その、私、逆に心配されてる。
「ヒナ、こいつらはもう直ぐ40になるんだぞ。お前より20近く上だし、もう親のことは鬱陶しいくらいにしか思ってないぞ」
「あっ···」
ユシャさんの言葉で思い出した。そうだった。見た目は15、6歳でも、もうアラフォー?私の回りに居たら、もうオジさ···いや、先生でそのくらいの年の人居たかな。あ、お母さん43歳だった。それ考えると、このメンバーの年なら元の世界なら子供いてもおかしくないんじゃ?独身の方もまぁ、たくさんいるけど···
なんとも不思議。保護者に見守られてるような気がしてきた。
「あはは、ごめんね心配させて。私が親とはなれてるから、つい···」
「俺が父親がわりじゃなかったのか?それとも俺が父親じゃ不満なのかな~」
ユ···ユシャさん?何それ、私に気使ってるの?
「お母さんのほうがいい」
「は?」
「ユシャさんがお母さんか!」
「それ面白いな」
い、いや、そういう意味じゃなくて···ジョークだったんだけど。
「ユシャさん女装するならママの服貸すよ」
アレックスくんまで!
「もう、好きにいってろ」
ユシャさんの諦めたような声にみんな大笑い。みんな良い人だな。うん、暗くなってちゃいけないね。
ふと、流れてきた音楽にステージ方面に目をやる。ステージに近い席にあの獣族を連れた魔族の人も来てる。長期滞在なのかな。お近づきになりたいものだ。
あれ?ステージに立ってる人見たことある気がする。
「ヒナ、あれは吟遊詩人だよ。確か、コーリンとかって言う名前だったかな···」
「ふぅん···」
アレックスくんに名前を聞いたけど覚えてない。どこかで、見たことあるような無いような。
でも、良い声だ。
ん?ユシャさんが不機嫌な顔になった。
吟遊詩人て色々な物語を歌にして聞かせる人だよね。ゲームみたいに歌に効能とかあるのかな。
なになに?、白の聖なる巫女と秀でた魔法使いが都で出会い······ん?
どこかで聞いたような話。
はっ!それって、ユシャさんとルセラさんの事では?
アベルくんとオリオンくん、アレックスくんは三人で話に花が咲いてて歌を聴いていない。
ど、どうしよう?
···こ、こういう時は···
『さわらぬ神に祟りなし』って言うじゃない。無視です、無視!
聞いてない聞いてない。私は何にも聞いてない。食事に集中っ!って、しまった!お皿が空になってた。
今日はバイキング形式のディナーなので仕方無く お皿を持って料理を並べてあるスペースに向かう。
海の近くのせいか海鮮料理が多く並んでいる。ニニカでは余り見なかったな。
大きな焼いた魚、フライにした物、カルパッチョ風や大小のエビに似た物の揚げ物やサラダ、ホタテに似た貝。もちろん肉料理もある。フライドチキン、串焼き、ステーキ、サラダやスープ、デザートもある。
雨宮さんのプロデュースなのかもしれないな。
「スマナイが、ソコの肉をトッテくれないカ?」
「はい。これですね。あれ?」
片言の声を掛けられ、私の目の前の肉を取り分け、周りを見るが誰もいない。気のせい?私に言ったんじゃなかったのかな?
「ココだ。ココ」
キョロキョロするが、それでも見つからない。
「はあ~。ココ。アナタの足元にイル」
「はい?」
少し変わったイントネーションで話す声の持ち主を求め下を向く。
「スマンな。ワレは背がヒクイ。連れが居なくなったので、手が届かズ、コマっていた」
それは、私の膝より少し大きい位の背の···犬?いや、違う。でも、獣族なのは間違いないだろう。
彼の皿を受け取り、取り分けた牛肉のような塊を乗せた。
「アリガトう。オジョさん」
「いえ。あの、あなたは···」
「コレは失礼。ワレは下の大地ニ住まう獣族、荒野狐のパザと申しマス」
かっ、可愛い!大きな耳、ふさふさの尻尾、ちょっと細めの黄色い瞳。黒いベストを着てズボンを履いている。ニ本足で立ってるし~
「アノ、どうかシタカ?あ、スマナイ。翻訳の機械が少し調子ワルイ。言葉ワカルカ?」
「あっはい。ごめんなさい。大丈夫です。わかります」
「私は大陸の西のニニカから来ましたヒナと言います。パザさん、他のお料理も取りましょうか?」
「アリガトうヒナさん」
うーん何が良いかな?これじゃ料理が見えないから。
「パザさん。ちょっと失礼。料理選んで下さい」「わぁっ!何スル!」
自分の皿を料理を置いてあるテーブルの空いた場所に置き、パザさんを抱き上げる。殆ど同時に女の人の声が···
「パザ!何やってるの!」
前から別の獣族、黒豹のような女性(胸が大きいから多分)がこちらに向かって来る。
「うわあ、綺麗な方ですね。パザさんのお友達ですか?」
「ガウラ、ヒナがお前のコト綺麗だっテ。彼女はガウラ、ワレの同僚だ」
「そうなんですか。こんにちはガウラさん。ヒナといいます。本当にお綺麗です···」
黒く艶のある毛並み、しなやかそうな肢体。端正と言うか顔立ちも絵に書いたような豹。その瞳は宝石の…そう猫目石みたいだ。ガウラさんは少しの間固まっていたけどすぐに復活した。
「失礼。ヒナと言うのか?あなたは獣族に偏見は無いのか?」
「友達に獣人の子がいますし、かえって親しみがわきますよ。でも、本当にあなたは綺麗だと思いますよ」
「そ、そうか···あ、ありがとう」
「本当のことですから」
「あなたは少し他のヒト族とは違うようだ···」
「違う···ですか?」
「獣人族は見た目が人間に近いので、近年は下の大地でも認めるヒト族が増えてきたが、獣族は動物とほぼ変わらぬ見た目と、それぞれが少数民族であるため、地位が低く仕事も就きにくい」
そうなんだ。クレッシェンドでも、余り歓迎はされないらしい。元の世界なら大歓迎する人が沢山いると思うんだけどなぁ。そして、彼らの雇い主だというあの魔族の人はそんな獣族を差別することなく、適性を見抜き登用してくれる有り難い人だと言うことだ。
「コレでも私もガウラも主であるフィン様ノ護衛担当なのダ」
「そうなんですか。強いんですね」
「ヒナ、ではマタナ」
「パザ、早く翻訳機能治して貰え。ヒナさん、パザが世話をかけた。」
ガウラさんは軽く頭を下げて、パザさんはご機嫌でご主人のいる席に戻っていった。
もちろん両手のお皿に山盛りの料理を乗せて。
自分の席に戻ろうとしたところで、ユシャさんがどこか行くのを見かけた。
「おいヒナ、さっき獣族と話してたじゃないか。どんな話してたんだ?」
「う、うん」
「おい、ヒナどこへいくんだ」
「トイレ!」
アベルくんに生返事して料理を乗せたお皿を自分の席の前のテーブルに置き、そのままユシャさんが向かった方に走る。行き先がトイレというのは乙女としては不味かったかな?それより、ユシャさんのことが妙に気になって····
**********
(吟遊詩人視点)
アデリーナさんに頼んで1ステージ、久々に歌ったが気持ち良かった。
あの歌は当時、実際に吟遊詩人の間で唄っていた歌を教えて貰ったものだ。白の巫女候補ナンバーワンのルセラと魔法大学で天才と噂される美貌の魔法使いの恋。しかも白巫女には婚約者も居た。事実はどうであれ、結構なスキャンダルとして有名になった。
ふぅ···またユシャに嫌われるな。
普通に私が呼び出しても来ないと思ったので、ユシャが嫌がるのを承知であの歌を唄ったのだが···
やはり来たか。おー怒ってる怒ってる。
「コーリンどういうつもりだ」
「久し振りに会う兄にそれはないんじゃないか?ユシャ」
屋上レストランは真ん中にステージ。半分はレストランの客席。反対側に厨房とバーラウンジ。
残りはステージ出演者の控え室と休憩できる狭い庭だ。私はその狭い庭でユシャが来るのを待っていたのだ。
「親父にもお前にも特に会いたくもなかったがな。何を企んでいるコーリン」
「カエサルのことだが···」
「やはり奴の仲間になったのか?」
「暫くの間、共闘するだけだ。それより、カエサルはお前だけじゃなくお前の養い子にも目を付けたぞ。ちゃんと見てろよ」
「祭りの時、襲ってきたのはやはりカエサルの手の者だったか」
「気付いていたなら不用意に連れ回らないほうがいい。この近くにはカエサル達が何かを仕掛けているという情報があった」
詳しいことはわからないが注意だけは促しておこう。奴の計画に余り立ち入り過ぎると私自身と仲間の身が危なくなる。
「ドラゴンのことか?」
「ドラゴン?細かいことまでは知らないが、南地方に何かミッションを準備しているとだけ聞いている。しかもスタラーダにね」
おや?人の近づいてくる気配がする。ああ···あの娘がユシャを探しに来たのか。更に魔力が増えたようだ。
「ユシャ、お迎えがきたようだ。では、気をつけるように」
「コーリン、話はまだ終わってない。お前は何をしようとしてるんだ?俺達や周りを巻き込むな!」
「ふふ、興味ないのかと思っていたが気になるか?」
ユシャは伸ばそうとした手を止めて、戸惑うような顔をした。
「できることなら、関わりたくはない。だが·····」
まだ、色々と思い悩んでいるのか?昔はもっと直情型ではなかったかな。
彼女が視認できる位置まで近付いて来た。一応、隠れてるつもりのようだ。一応挨拶でもしておくか。可愛い弟が世話になっているみたいだからね。
「こんばんは。お嬢さん良い夜ですね。···ユシャをよろしくお願いしますよ」
「へっ!は、はい。!」
加速の魔法を使ってそのままユシャの横をすり抜け、彼女の前に進み、そこからそのままのスピードで地面を蹴り飛行の魔法で空に飛び出す。
「ユーリまた会おう」
「コーリン!ルーは何をするつもりなんだ。コーリン!」
ユシャ(ユーリ)の声がする。追ってこられないように更にスピードを上げた。
私がしている事にルセラが関わっていることも気付いているだろう。ルセラは自分の駒(あの娘)をユシャに託した。いつかは我々一族皆が関わる事になるのは必然なのだろう。···今は、君達は自由でいればいい。
いずれ嫌でも関わることになるのだから。
ビックリした~
ユシャさんを追ってきたら、あの吟遊詩人さんと話してたから、どうしようかと思ってたら、いきなりこちらに来て「ユシャをよろしく」とか、何者?
「ヒナ····」
「あの、えっと、ごめんなさい。ユシャさんがどこか行くのが見えたから、つい····」
「悪かったな。みんなの所に戻ろう」
「あの人、吟遊詩人さんですよね?あの歌って····」
「やなヤツだよな~人の失恋話をいつまでも歌のネタにしやがって、だからあいつは大嫌いなんだ」
はぁ?
ユシャさん、いつもと違う。何か隠してるみたいだ。う~聞きたいけど聞けない。何があったんだ!
席に帰るとアベルくんとオリオンくんに怒られた。ユシャさんは私にした説明をして、その話は打ち切りにした。ただ、アレックスくんは何も言わなかった。何か知っているのかな?
これは明日吐かせなければ!
ガウラさんは長めの尻尾があります。書くの忘れた。