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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
39/114

友、遠方より来る


何で、二人がここに?


半透明のバリアの向こうにアベルくんとオリオンくんの笑顔が見える。

幻?じゃないよね。


シュインッ!

アレックスくんが魔法バリアを解除した。


「ヒナの知り合いか?」

「うん。ニニカの学校の友達だよ。アベルくんオリオンくん、何でここにいるの?」


二人は半袖Tシャツを着て元の世界でよくいる高校生みたいだ。いつもよりちょっと大人っぽく見える。


「休みだから旅行に来たんだよ」

「ヒナがユシャさんとスタラーダに行ったって聞いたから、アベルが俺達も行こうって騒いじゃってね」

「オリオン余計なこと言わなくていいから!」


そうなんだ。


「ところでヒナ、そいつ誰?」

アベルくんがアレックスくんを不審そうに見る。


「あー彼はアレックスくんといって、ここのオーナーの息子さんなの。今、魔法の練習に付き合って貰ってたの」


ん?


なんか不穏な空気。


これは…


初めてソールくんに会った時の二人と同じ雰囲気…ヤバッ!


「ねえねえ、シドくんとソールくんやミークとかマイラさんは一緒じゃないの?」

「え、ああ、あいつらは修行休めないとか、予算がないとかってことで来なかったんだ」


オリオンくん、シドくんがいない今、アベルくんを止めるのは君しかいないんだよ。気付いてくれ!

頼むよ~


「それそれ。まったく、俺が費用出そうかって言ったら、4人とも『それは嫌だ!』なんて言いやがるんだぜ」


はは…そりゃそうだろう。

アベルくん、庶民は普通、こんな高級ホテルに気軽に泊まらないんだよ。

てか!


「二人だけでこのホテルに泊まるの?親御さんは一緒じゃないの?お金は大丈夫?」

「俺達、たまに店の手伝いとかアルバイトしてたから、なんとかなるんだけど、何故か親父が旅費と宿泊費出してくれたんだ。ヒナも行ってるなら一緒に遊んで来ればいいって小遣いまでくれた」


そうだった。この二人はお坊ちゃまだった……


「でも、なんで私の情報がアベルくんのお父さんにまでいってるの」

「俺たちは喋ってないからな。でも、まさかユシャさんが仕事にヒナを連れて行くとはみんなも思ってなかったみたいだったぜ。オルガさんも校長もビックリしてた。それに親父はそれなりの自分の情報網持ってるしな」


そうだった。アベルくんのお父さんは西地方でもかなりの有力者だった。きっと独自のネットワークが有るんだろう。

オルガさんと学校にはユシャさんから連絡いれたし、アベルくん達にも、知らせてたからなぁ。


「それと、ここのホテルに色々なアドバイスしたのは蘭香亭のユウジさんだって聞いてたから、オルガさんにホテルに連絡してもらって泊まれないか聞いてもらったんだ。そしたら偶然キャンセルがあってさ、なんとか泊まれることになった」


雨宮さん?!こちらの世界では有り得ないようなあのサービスの数々はあんたの仕業か!

いや、快適だし良いんだけどね…

でもホテルに連絡ってどうやって?電話とかはないし、念話とかかな?


「それより、アレックスっていったっけ?お前、ティファーンの高等科試験トップのアレックス・タナーじゃないのか?」


えっ!アレックスくんて、そんな出来る子なの?!アレックスくんは私の横を通りアベルくん達の前に進み出る。


「そっちもニーロカのトップ、アベル・ヒューイットと次点のオリオン・ディアスだろ」


ええ~っ!そうだったの!二人ともそんな好成績で合格してたんだ。

不穏な空気から一変して三人は妙に仲良くなった。

魔力が強い人間同士は仲間意識でも芽生えるのか?心配して損した。

しかもアベルくんは氷系、オリオンくんが雷系、アレックスくんは水系が得意とバラエティ豊か。

あ、アレックスくんは火や土も結構できるらしい。天才か…


そして、明日から午前中は魔法の練習して、午後からは遊ぶことになった。

スタラーダの町中にある娯楽施設に遊びに行ったり、海に泳ぎに行ったりすることになった。


夏休みが来たみたいだな。子供の頃は、近所の公園で遊ぶか、泳ぐのも学校のプール位だったけれど、なんかリッチな気分になれそう。


アベルくんとオリオンくんは何日かしたら学校が始まるので帰らなくてはいけない。それまでは、めいっぱい楽しもう。でも私はユシャさんの仕事が終わるまで帰らないつもりだけどね。アレックスくんは学校には家から通うようだ。


今日の午後は、アベルくん達も来たので、ホテルの敷地内をアレックスくんに案内して貰うことになった。


ホテル・アデリーナはスタラーダの町からは少し離れている。

そのため敷地内に色々な施設があり泊まり客を飽きさせないようにしている。その施設目的の日帰り客もいるということで、観光スポットとしても有名らしい。

今も新しい施設を建設中とか。但し、男性の喜ぶお姉さん達が接待してくれる店はない。

そういう所へいきたい人はスタラーダの街へいくそうだ。


ホテルの敷地を出ると、畑やジャングルの如き森があると言う。反対側はもちろん人工海だ。

山側の森には冒険者が探す迷宮とかいう物も沢山あるらしい。聞かなかったけど、ニニカにもあったのかなぁ。



私とユシャさんの部屋は5階だ。アベルくん達の部屋は3階なので一旦部屋に帰った私をランチに誘いに来てくれた。


ランチの後、アレックスくんにホテルの敷地内を案内して貰うことになっている。


部屋に入るなり…


「ゲッ!これってスイートルームっていうヤツじゃないのか?」

「アベル、落ち着け。でもさすが無駄に広くて華やかな感じだな~」

「だってよ、オリオン!スイートルームといえば…ヒナ、本当にお前ユシャさんとは何にもないのか?!」


な、何を言ってるんだ、この子は。

そんな知識はどこから仕入れた!


「オリオンくん、アベルくんが変だよ。暑さにやられたんじゃない?」

「う~ん。ヒナ、スイートルームって意味知ってる?」

「言っとくけど寝室は別だし、私達そんな関係じゃないからね」


ご夫婦とかカップル向けだとは聞いたが、マジにそんな関係ではないのは自分が一番よく知っている。

言っててちょっと切ない…

なんとか二人を落ち着かせ一階のレストランに向かった。

アレックスくんはランチが終わる頃を見計らってレストランにやってきた。ランチは自宅で取っていたらしい。


ホテルの敷地内は小さな商店街のようだった。店の数自体は少ないけれど、どの店もいい感じだ。ブティックや美容室、カフェや、スィーツの店、雑貨店、スポーツジムや規模は小さいが美術館や植物園まである。

働いている人達は場所を借りて営業しており、地元の人が中心だそうだ。美術館などはホテル側が中心になって運営しているとのことだ。

しかしホテル・アデリーナ、どんだけ資産があるんだ。


そして、敷地の隅にはアレックスくんのお父さんアンデルさんの工房がある。カラフルで玩具の館みたいな外見だ。


「パパ、ちょっといい?」

「ん?アレックスか」

「友達に工房の中見せていい?」「いいよ。奥の試作品倉庫以外ならどこを見せてもいいぞ」

「わかった。ありがとう」


丸いメガネをかけた優しそうな人だ。お父さん大好きなんだねアレックスくん。あれ?アンデルさんの髪って緑系だ。アレックスくんの髪は隔世遺伝とかかな?


それからアレックスくんに案内され工房内を見て回った。

訳のわからない発明がたくさんあったけど、中には、完成すれば使えるものもあるらしい。


「そう言えば、パパはユシャさんの師匠にも教えを受けたことがあるって言ってたな」

「シェローデイルさんに?」


あの超美形だというユシャさんの師匠。


「ここだけの話だけど…ユシャさんの初恋の人って師匠らしいんだ」

「その師匠ってそんな美人なのかアレックス」

「いや男の人だから…」

「………」

「………」


アベルくんとオリオンくんは固まった。


ユシャさん…アレックスくんにバレてたよ…

そして、アベルくん達にもバレた。


一応、アレックスくんは、ユシャさんが最初、師匠が男だと知らなかったことと、まだ小さい頃だったことを説明(釈明?)はしていた。


不味いことを言ったと気がついたのか、助けを求めるような目でアレックスくんが私を見たけど…

私は知らないからね。関係ないからね。

ジャオさんも知らんふりした方がいいと小さな声で言った。




**********




その頃、ドラゴンシード島では…



「ハックション!」

「ユシャさん大丈夫ですか?」

「ああ、失礼。なんでもないです」


研究者リーダーに心配されてしまった。

今日は5人体制で産卵地の周りを調査している。

しかし、ガキども、なんか俺の噂してやがるのかも。アベルとオリオンが来るとオルガから連絡が来たが、もう着いたのかもしれないな。


「ユシャさん!今日はこれで終わりにします。」

「何か手掛かりは?」

「余り大きな収穫はありませんでした…ただ、魔素の乱れを発見しました。魔法の形跡かどうかは確実な判断ができませんでしたが、そうでないともいいきれません」

「そうですか…」


魔素とは空気中に含まれる魔力の素みたいな物だ。乱れがあるというのは、魔法が使われた可能性があるということだ。魔法が使われたか判断し難いほどカムフラージュする力のある人間が魔法を使ったのだろうか?

だったとしたら厄介だな。子供でもドラゴンを連れ去るとなると複数の人間が関わっているだろう。

俺一人で対処できるのか?

エルがこちらに着くのはもう一日か二日かかるだろう。それまでに調べられることは調べておこう。



**********




ユシャさんが帰ってきた。


「お帰りなさい。お疲れ様です」

「ただいま。何もなかったか?」

「アベルくんとオリオンくんが来てます」

「ああ、そうらしいな」


ニニカでも普通に、こんな風にやり取りしてたのに、なんだか今は、ちょっと新婚さんぽい気がして妙に照れる。アベルくんが変なこと言うからだ。


「あ、そうだ。明日、町の娯楽施設に遊びに行って良いですか?アレックスくんが案内してくれるっていうから、アベルくん達と4人でですけど」

「もうみんな仲良くなったのか。まあ良いだろう。気をつけていけよ」


お、あっさりと許してくれた。


「知らない人に着いていくんじゃないぞ」

「なっ!私はそこまで子供じゃない!」

「まあ、アレックスやアベル達がいるから大丈夫だとは思うが、気をつけろよ。祭りの時みたいな事がないとは限らない」


あ……


「はい…」


あの時はみんなに迷惑や心配かけたなぁ。私なんで狙われたんだろう?

ルセラさんと何か関係あるのかなあ…

ユシャさんの手が私の頭に置かれくしゃくしゃっと髪の毛ごと撫でる。


「そんな顔するな。大丈夫だ。だが用心だけはしとけ」

「はい」


いかん…顔がにやける。

コンコン。ノックの音がした。


「ユシャさん、ヒナ準備出来てる?」


アベルくん達だ。夕飯はみんなで取る約束をしている。


「おう、いいぞ。ほら行くぞ。俺も腹ぺこだ」

「私もお腹ペコペコです」


あ~もう、なんか幸せ。無理言って付いて来て良かった。

さぁ、ご飯食べに行こう。



読んで下さってありがとうございます。

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