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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
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夢で逢いましょう



『ヒナ?ヒナ?』



『ヒナ、あなた今どこにいるの?』


「へ?どこって、私ここにいるよ。ルーお久し振り~」


『お久しぶりじゃないわよ。ニニカじゃないわね。探したわ。もしかして移動中?』


今···えっ··と····

はっ、そうだった!

私、ユシャさんについてティファーンにいく大陸列車に乗ってたんだ。


「今ね、ティファ-ン行きの大陸列車の中です」

『はぁっ!?ティファーン行き?大陸列車ってどういう事?なんでティファーンに向かってんの?!』


ま、まずかったかな?

ルーに連絡する方法なんてわからないし、最近は全然連絡こなかったから···

ルーに会うのは、ええっと、お祭りの時のモンスター事件···というか、私が怪しい人達に攫われかけて、ドッカンと魔法を爆発させて寝込んだ時以来だっけかな?


『確かにかなり久し振りではあるわね。私からじゃないと連絡取れないから、あなたにだけ文句は言えないけど。はぁ~でも、ヒナは相変わらず暢気ね。あなたがバリアを暴走させかけたとき以来だわ。でも、よくユシャが許したわね。仕事に部外者を連れて行くなんて考えられないわ。それにニニカのユシャの家が一番安全なんだけどね』


ユシャさんちってそんなに安全なんだ。

どういう意味で安全なのよ。うら若き乙女をオオカミのところに住まわせるというのは危険と言わないのか?

まぁユシャさんはいつも私を子供扱いしてて、一人前の女性と認められてないみたいだけど。

ていうか、今日のルーはご機嫌ナナメみたい。

やっぱりニニカを出たのがお気に召さないのかな。


「私がユシャさんに無理言ってついてきちゃったから···ごめんなさい。あの···ええと、ルー、もしかして怒ってる?」


『それはユシャに判断を任せていた私の責任でもあるから、まあ仕方ないわ。···で、あなたと一緒にいるこの青いお魚さんはどなたなのかしら?』


「ああ、ユシャさんの畑のお手伝いをしていた水の精霊でジャオさん。行きがかり上というか···いろいろあって契約したの。勝手に精霊と契約しちゃってごめんね。でも、水の魔法はジャオさんのおかげで上達したんだよ」


ジャオさんがルーを見て固まってる。

なぜかお魚の姿に戻ってるし!

精霊の世界でも白の巫女は有名なのかしら?

いや、ジャオさんビビってるみたい···


『水の精霊···う~ん。ヒナって属性あったっけ?確か異世界人は属性なしだとか聞いて···う~ん、私が水と土の相性がいいからかしら。それか私のあげた魔法の所為かしら?』


なんでも中級位までは、努力次第で使えないこともないらしいけれど、それ以上の魔法を使うのは基本的に個人の持っている属性か、または精霊の助けが必要らしい。

しかも、強い精霊ほど気難しく契約はなかなかできないそうだ。

ジャオさんはまだ若いってことだし、あの時の事情もあるからすんなり契約してくれたのだろう。

火、土、水、風の4つの属性全てを持つ人は稀だそうだ。そして属性の魔法でも上級が使えるようになるのは凄く大変だとか。


属性どうしの相性もあって上級は3種類が限度であろうと言われている。

中には例外もいるということだが、ユシャさんは言葉を濁していたけど···もしかしてユシャさんは全部持ち?あ、ルーも全属性だった?



「ジャオさんとはちょっと訳ありで契約したんだけど、ちゃんとユシャさんに教えて貰って正式に契約したんだよ」

『ユシャが?(なんかユシャってヒナに甘くない?)』


「ルーどうかしたの?」

『え?ううん、なんでもないわ。時間があまりないからあなたにいくつか情報解禁するわね。一度にいろいろ教えると混乱しちゃうから鍵かけてたからね」


鍵?私にあまり教えてくれなかったのはそれでなんだ。そんなに沢山私に教えてなかった事があるんだ。

確かに一度に沢山教えられても覚えられないし、頭の中ぐちゃぐちゃになってただろう。

それを思えばルーの判断は正しかったと言えるのかも知れないけど、私はこの世界で知らないことが多過ぎる。


『次からは眠る度に情報が入るようにしておくわ』


へえ、睡眠学習法、もしくは睡眠中にダウンロードされてくような感じなのかな。

それは便利だな。


『あなたに必要な情報は、贈った石に総て封印しておいたから、全部頭にはいるのは少し時間がかかると思うけど』

「石?あの宝石みたいな石のこと?でも、あれってこの世界に来たときには無くなってたよ」

『あるわよ。あなたの中に』


私の中?って私の身体の中?!


「····え~~~~~~~~っ!!!!」


でも、身体に異常も違和感もないし···ってことは、私の身体の中に吸収されちゃったの?石が?


『大丈夫よ。身体に害はないわ。それ作るのに時間と体力と魔力かなり使ったんだから。私の最高傑作よ。あっ、大変!帰らなきゃ。魔法も随分上達したみたいだし頑張ってね。じゃ』

「ちょ、ちよっと待って。まだ聞きたいことが!」


なんなの、なんなの。

学習教材を無理やり押し付けられてたのか?

ルー!あんたは学習教材の訪問販売員か!


『ヒナ、結晶魔石が身体の中にあるの知らなかったの?』


結晶魔石って、あの私の中に入った石のことか。


「全然知らなかった。ジャオさん気付いてたの?」

『うん。でも、ほとんど融合してるしヒナ知ってるのかと思ってた。ヒナと相性いいみたいだね。石があるの気が付いたのは契約してからかな。普通見ただけじゃわからないしっかりカムフラージュしてある。彼女の魔力すごいから。でも···かなりヒナに···』

「え?」

『なんでもない。もう寝よ。もうすぐ朝だよ』

「いま寝てると思うんだけど···でもなんか疲れた。はぁ」


気を抜いたら意識を持ってかれた。

また、目が覚めたら忘れてるのかな。




******



忘れてなかった。ユシャさんになんて話そう。


目を開けたら前の席ではユシャさんが······寝てた。

貴重なワンショット!写メ撮りたい~

酔っ払って寝てるの見たことはあるけど、普通に寝てるのは初めて見るかも。

閉めてあるカーテンの隙間から朝日が差し込んできてユシャさんの眠る横顔を照らす。

な、なんか神々しささえ感じてしまう美しさ、思わず拝んでしまいそうです~


「ん?······なんだ?お前朝日拝んでるのか?」


あ、起きちゃった。


「そういえば祐司が言ってたな。朝日に向かって手を合わせるのが何とか···」


それは初日の出です。でも、そう思ってくれた方がいいか。私ってば思わず手を合わせてましたから。

もう少しユシャさんの寝顔見てたかったな。

もっと寝ててくれたら良かったのに。




次の駅はティファーン地方の町になる。

ここには大きなお風呂屋さんがあって、観光客や 列車の乗り継ぎの人達で賑わっている。


もちろん私達も入ることにした。

ずっと列車に揺られ、固い椅子に座ってて身体ガチガチだよ。


温泉ではないらしいが露天風呂や打たせ湯、ハーブ湯などがあり楽しめる。ちゃんと男女別々だ。

異世界物の小説なんかでは、温泉とかが混浴だったりすることあるけど、男の子向けの話とか読者サービスってやつなのかもね。

人工海側の町には大きな浴場やプール付の豪華なホテルがあるのだと、お風呂で一緒になったおば···お姉さん達が教えてくれた。


「あら、ニニカから来たの?乗合獣車じゃなかったの?」


お姉さん何故わかる?


「実は朝、バタバタしちゃって列車に遅れそうになったので転移で駅までいきまして···お恥ずかしいです··」

「あ、いえいえ、実はね···」


何でも、一緒に列車に乗るはずだったニニカから来るお友達から念話があったそうだ。

なんと、タピ駅行きの乗合獣車が謎の盗賊に襲われたらしい。

同乗していた人達が割りと強かった事もあり、なんとか追い払ったけれど、誰かを探していたようだったそうだ。ただ、探していた人物は乗っていなかったとか、何とか···

まさか、私達を探してたんじゃないよね。




******



『ユシャ、ユシャ』

「どうしたジャオ」


風呂に浸かっていたらジャオが現れた。

水の精霊だからこういう所は好きなのだろう。流石に女湯には現れにくかったのか?


『夕べ、ルセラが来た』

「詳しく話せ」

『ユシャ、ヒナが心配か?』

「何言ってるんだ。一応俺が面倒みてるし、責任があるとは思っているぞ」

『ルセラは危ない魔法使っている。一歩間違うと凄く危険だ。なんていうか、下手したら二人とも危ない』

「どういう事だ?」

『今すぐどうとかなる事はないと思うけど、あれは禁呪魔法とか言うものだと思う。白と闇の混合のヤツ』


やはり、カジャク導師が心配していた通りか。


「ジャオお前もっと詳しくわからないか?」

『僕はまだ力が弱いから詳しくは···でも危うい魔法だってことはわかる。でもルセラは自分で制御できると思ってるみたいだ』

「止めることは出来ないのか?」


ジャオは困ったような顔をして首を横に振る。


「そうか···知らせてくれてありがとうジャオ。ヒナにはまだ黙っていてくれ」

『ん、わかった』


ジャオは湯の中に消えていった。



********




本当に僕には何もできないのかな。

まだ力は弱いけどヒナを何とか守りたい。

ルセラには悪感情は感じられなかったけど、少し怖かった。

彼女からは凄い魔力と強い意志、後、揺らめく複雑な感情が見えた。

多分、ルセラと僕とヒナの三方が繋がっていたから見えたんだろう。


僕が今できるのは、異変が起きたら直ぐにユシャに知らせること···

僕でヒナを護れるなら全てをかけて護ろう。



********





「ジャオさんどこ行ってたのよ~」


お風呂から出て着替えを済ませ外に出るとユシャさんと人型になったジャオさんが待っていた。


「女の長風呂に付き合ってられなかったんじゃないのか?」


ユシャさんが笑いながらジャオさんに言う。


『これでも僕は紳士なんだからね。女性のお風呂を覗いたりしないんだからね』

「あ、そーか。精霊は性別あるんだ」

『そうじゃなくて、ヒナがいやかなぁ~と思って…』


わぉ、ジャオさんて若いのに気遣いができる精霊さんなんだね~


「ジャオさん紳士だね~。それに比べユシャさんは···」

「なんだ?俺だって覗いた覚えもないし、子供の入浴を覗く様な変体趣味はないぞ」

「はいはい···わかってますよ。巨乳がいいんですね」

「いや程々でいいんだが···無いよりは有った方が···」

「そんなこと聞いてない!!」


全く人間の男ってヤツは!


その日は入った店の一番高い料理を注文してやった。

明日はいよいよ終着駅レイハスだ。

あ、またルーのこと話すの忘れてた。

ま、いっか。




『ユシャって、なんでわざわざヒナを怒らせるようなこと言うんだろうね?』

「知らない。おやすみなさい」




**********




列車の中の人気がない場所を探し、周りを確認してからカジャク導師に念話を飛ばす。混線したら不味いからな。


「···ということです。導師、どうやら心配していたことが的中していたようです。」

『そうか···どうするユシャ。首都ヴォイスの白の神殿に知らせるのか?』


神殿に知らせても信じるだろうか?却ってヒナが危険になりそうな気がする。

それよりルセラの意図がわからない。


「ニコはお前には何も教えてないのだな』

「導師どういうことですか。父は何か知っているのですか?!」

『それはニコに聞いてみなさい。ニコはお前を巻き込むのを望んでいないから私から教える事は出来ない』

「導師?」


つまり、親父に連絡しないと、何もわからないと?

何だ?一体何が起こっているんだ?







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