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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
33/114

旅は楽し?


昨日、バタバタと旅の準備をして、当日の朝。

現在位置はタピの町です。ここで大陸列車に乗ります。


今朝のすったもんだで、ニニカから乗る予定だった乗合獣車に乗り遅れてしまい、ユシャさんの転移魔法でタピの大陸列車の駅まで移動。

乗合獣車を引いている馬に似たドラゴン見たかったな。



タピ駅前、ここはニーロカとは思えない賑わいです。

転移してきたのは所謂、駅ビルみたいな大きな建物で、1階が駅、乗合獣車ターミナル、列車乗り場やチケット販売所と転移魔法の到着ポイントがある。

色んな場所に突然現れると迷惑だということで大きな駅には転移魔法到着ポイントが設けてあるのだそうだ。

私達もそんな人達に混じり転移してきたのだけど、乗合獣車よりかなり早く着いてしまった。


「出発までには、まだ時間があるな。なにか飲むか?」

「はい。今回は転移酔いしなかったからご飯だって食べられそうです!」

「お前、朝飯食ったよな?」

「たとえですよ!もののたとえ!」


今回は酷い転移酔いにならなかった。少し慣れてきたのかも。


駅ビルの建物は5階建で、2階が土産物屋等、3階と4階が駅の事務所と貸しオフィスになっている。最上階である5階がレストラン街になっており、その中のひとつの店に入った。

ユシャさんはコーヒー、私はケーキと紅茶のセットを頼んだ。建物のデザインとか風景は違えど、元の世界の最寄り駅のビルが思いだされて、懐かしく感じる。


ユシャさんは、家ではいつも自分の畑で採れたお茶を飲んでいるけれど、コーヒーも飲むんだ···

知らなかった。


私もだいたいはお茶を飲むのだが、オルガさんに貰った紅茶や果物のジュースも飲んだりしていた。

ユシャさんは仕事で他所に行ってる時は、こんな風にいつもカフェでコーヒー飲んでたりしてるんのかな。


「懐かしいな···」

「えっ?」

「昔、親父とあちこち旅して回ってた頃は、こんな風に駅のレストランやカフェで飯食ったりしたもんだ」


ビックリした。私が懐かしいとか思っていたら、ユシャさんも懐かしいだなんて言うから。


「お父さんは、転移魔法使わなかったんですか?」

「ニコは、あぁ、親父ニコラスって言うんだけど、祭りの日に来てたろ?」


祭りの日?

あ、そう言えば····記憶を辿ってみる。


あ、思い出した。金髪で青い瞳の人なつっこい笑顔。少しユシャさんに似てたかも。


確か····

(ニコラス「自己紹介させていただきます。僕はニコラス・クレイスト・クロフォード、ニコと呼んで下さい。ユーリの···」      ユシャ「クソ親父ぃ~~!」   ニコラス「そう、クソ親父···ってそれ酷くな~い?」 )

二人の親子漫才が思い出されて、思わず笑顔になる。

ユシャさんてユーリって呼ばれてたんだよね。なんか可愛いな。


「思い出しました。あの明るいお兄さん。ユシャさんのお父さんていうよりお兄さんみたいに若く見えましたよ(実は弟みたいだった)」

「親父はエルフの血を引いてるから普通の魔法使い以上に長命だし、容姿があまり変わってないんだ」


エルフはやっぱりこの世界でも長生きなんだ。魔法使い以上長命ってことは不老不死に近いとか?

てことは、息子であるユシャさんもエルフの血を引いてるから長寿ってことになるね。


「ニコは自分で転移魔法使うと酔うんだ」

「は···?」


自分で使うと酔う?転移魔法で?私がユシャさんんの転移魔法で酔うみたいに?

それって、まるで自分で運転する車で酔っちゃうみたいな感じ?それは不便だ。


「ニコは魔力量はスゴく多いし神聖魔法まで知ってるし、俺が知ってる魔法使いでは、シェローデイル師匠と並ぶ実力を持っていると思う。だが、転移魔法には何かトラウマがあるらしくてな。それとは別にあの性格にちょっと問題があるし、色々大変だったんだぞ」


明るくて優しそうなお父さんだと思ったんだけど、変人とか?問題がある正確ってなんだろう?でも、お父さんのことを話してるユシャさん優しい顔してるし楽しそう。

クソ親父なんて言ってるけど、本当は大好きなんだね。指摘すると全力で否定しそうだな。ふふっ


「ずっと乗合獣車や列車で移動していたんだが、俺が転移魔法が使えるようになったら、今度は俺を足代わりにしてあちこち連れ回るようになったんだ。お陰で俺の転移魔法のレベルは大陸トップクラスと言われるようになったから、良かったか良くなかったと言われれば···良かったのかもな。その分、それまで以上に転移魔法を使わなくなったニコは、未だに移動は交通機関に頼ってる」


そ、そうだったんだ。あの凄いと言われてる転移魔法はお父さんのおかげなんだ。

ユシャさんは窓の外を見ながらコーヒーを一口飲んだ。

お父さんの事を考えているんだろうか?突然の思い出語りにちょっとビックリしたけどユシャさんのことをまた一つ知れて嬉しい。


「でも、何故そんなにあちこち旅を···」

「ヒナ、見てみろ。あの白い塔がタピの白の神殿だ。すぐ隣が魔法学校高等科。アベル達が春から通う所だ」

「え?あ、あの青い屋根ですか?」


話を逸らされた気がするけど、まぁいいか。

駅の前の商店街の向こうにあるらしい神殿の隣に魔法学校の高等科があるのか。確か乗合獣車は神殿前を経由して駅が終着点だった。

乗合獣車だったら神殿や学校が見られたのに、ちょっと残念。ユシャさんは高等科には行かずお父さんと旅をした後、師匠の勧めで魔法大学に入学したそうだ。大検みたいな制度があるのか?

というか、ユシャさんがそれだけ優秀だったのかな。


そして列車の出発時刻になった。

う~ん····

流石に元の世界のJR新幹線のようにはいかないか。

素材は金属と木。アンティークな雰囲気はいいし、乗り心地は悪くない。しかし遅い。

この列車も魔力式道具で魔族との技術提携で作られたそうだ。

線路の替わりのような板の上を走るので揺れは少ない。浮いてる感じだ。リニアモーターカー?

私達の席は一応個室で4人用。貸切にしてあるので2人だけだ。

車両は5両あり前の3両は一般席。短距離の移動の人向けだ。後ろの2両のうち1両が私達の乗っているような個室、長距離移動向けのエコノミークラス。

残り1両はVIPクラスや新婚旅行用の客向け車両。

食堂車は無く売店が2両目と4両目にある。

5両目だけはVIP(金持ち)、新婚旅行用だけあって、ちょっとしたホテルのような豪華さでダブルベッドもあるそうだ。(以上、駅にあった案内チラシよりの情報)

そっちに乗りたかったけれど··やはり、お高いらしい。


この席でも寝られないことはないけど、ちょっとキツい。

窓は割りと大きくカーテンも付いている。


ニーロカは平野が多く、畑や牧場が見えていて、こちらの世界で牛に相当する、ムートという家畜がのんびり草を食む風景が見られた。


南に行くに連れて森や山が多くなり木も枝振りや葉っぱの形状が珍しく楽しくて、ずっと見ていた。なんせスピードが遅いので観察出来る。

最初は珍しくて窓に張り付いていたけれど···


飽きた。


最初の頃以上にスピードが出ないのは、山を避けてくねくねと走っているせいだろうか?

トンネルがあれば、ショートカットできるし、時間もかからないはずだ。

もしかしたら、トンネル無いの?そう思いユシャさんに聞いてみた。


「ユシャさんこの路線にはトンネルって無いんですか?トンネルあればもっと時間短縮できると思いますけど。」

「ん、トンネル?南にはないな。この辺の地面や山は掘るとアースドラゴンの巣に突っ込む可能性があるからトンネルを掘るのは無理だな」


あ、やっぱり無いんだ。ん?南にはって言った?他にはあるのか?ま、他所のことは今はいいか。


「魔法でドラゴンの巣避けてチャッチャと穴掘れないんですか?」

「それが出来るほど強い魔法や魔力量を持っている人間は少ないからな。いたとしてもこんなキツいし、割に合わない仕事は引き受ける奴はいないし、予算もかなり必要だから国もやらないさ」

「そ、そんなに大変なことなんだ」


元の世界の鉄道関係者の皆さん凄いです。改めて讃辞と感謝をを送りたいです。

私の住んでた世界の、私の住んでた時代って恵まれてたんだなあ···




お昼は売店で買って食べた。

サンドイッチのようなパンとスープ。他には焼いた肉や果物も売っていた。

魔法の袋の特大版みたいなのと、大きな鍋があって魔法で温めていたようだ。火は危険なので使わないらしい。

5両目には専用厨房があってシェフがいるとか。

お金があれば、何でも有りなのかと、ちょっと捻くれたくなる。


次の駅には夕方着く。そこで3時間ほど止まる。

車両点検や掃除等があり、乗客はその間に町に出て夕食や観光、買い物などをする。

今夜と明日の夜の2回だ。終着駅のレイハス到着は明後日の朝。


今夜の停車駅ニーロカとティファーンの境にある町に着いた。

まだニーロカの食べ物や土産物が売られている。

明日、止まるのはティファーン地方の駅だから、様子も変わるだろう。

なんか不思議だな。

旅行なんて元の世界の修学旅行依頼だ。まさか、こっちに来てから旅行に行くなんて考えもしなかった。


夕食を済ませ 列車に戻る。蘭香亭の料理とは違うこちらの世界の定番料理らしかった。

まずくはないけど、蘭香亭の方が···ゲフンゲフン····食べられるだけ有難いと思わなきゃ。


ユシャさんは本を読んでいる。列車の中には魔石を使った灯りがあり、消灯時間以降は各自の魔力で灯りをつけることができる。私は備え付けのブランケットを身体に巻き付けて寝ることにした。


なんだか、上司と出張に行っているOLのような気がしてきた。

もっとハッピーでルンルンになれるかも、と期待していたんだけど···




ヒナは眠ったようだ。


つい、昔話とかしてしまった。

何故だろう、ヒナといると時々余計なことまで喋ってしまうようだ。

少し一緒に居すぎたかもしれない。

いつかは、元の世界に帰してやりたい··そう思うのとは反対にこのままでもいいか···と考える自分がいる。


余り色々な知識をつけるのは、記憶を消す時のリスクを増やすことになる。

だが、魔法の使い方を教えなければ、無駄に多い魔力を持て余し、かえって危険だ。

ヒナの気持ちを知っているから、俺のこともあまり教えない方がいいことはわかっている。


なのに···


初めてかもしれない。

こんなに自分の気持ちを持て余すのは。




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