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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
25/114

ささやかな決意

ドオォォーーーン!!


突然、大きな音がして、皆が顔をそちらに向ける。

町の奥の小さな住宅が並ぶ地区の方からだ。確か、あちらは避難指示が出ていて誰もいないはずだが、何が起きたのか?


「ユシャさーん!」

{マイラ?」


マイラが息を切らせながら走ってくる。ヒナ達と蘭香亭にいると聞いていたが?


「どうしたマイラ。」

「ユシャさん大変!変な奴等が蘭香亭に来て!そいつらユシャさんに化けてて!ヒナが狙いだったみたいで!」


かなり興奮していて話の意味がよくわからないが、ヒナに何かあったようだ。


「落ち着け。ヒナがどうした?」

「もうっ!ユシャさん落ち着いてる場合じゃないよ!ヒナがさらわれちゃう!」


つまり、怪しい4人組が蘭香亭に現れたが、そのうちの1人は俺に変装していたらしい。

魔法も武術もかなり使えるらしく、魔法バリアをした扉を壊して押し入ってきたと言う。

狙いはヒナらしい。そして、当のヒナは皆が止めるのも聞かず、ミークという獣人の友達と二人だけで店から飛び出したと。

まさか、さっきの音は·····


「マイラ、アベル達と一緒に居ろ。アベル、オリオン、マイラを守ってやれ!ちょっといってくる」

「えっ?ユシャ先生どこへ?マイラ何があったんだ。」

「ユシャさん気をつけてね!ヒナとミークを助けて!」




意識を集中しヒナの気配を探し、その場所に向けて転移する。

そこは、瓦礫に囲まれていた。そのなんにもない円状の空き地の真ん中に二人は倒れていた。


これは·······ヒナがやったのか?




***********




「もう、ヒナったら無茶するんだから」


あれ、ルーだ?

気がつくと目の前にルーがいた。

ああ、そうか。これは夢の中なんだ。意識がぼんやりしてる。


「ビックリしちゃったよ。アラーム聞こえたから何とか連絡取ろうと思ったんだけど···ごめんね間に合わなくて···」


「私どうなったの?アラームってなんのこと?」

「貴方は今眠ってるのよ。それはわかるわね。アラームというのはね、あなたに何か危険な事が起きたら、私にわかるようにセットしておいたの。」


「····そうなんだ。ねぇミークは無事?」

「う~ん、大丈夫なんじゃないかな。ごめん、私では詳しいことはわからないけど、命の危険はないみたい。それよりヒナ、あなた魔法の練習してなかったわね。魔法の基礎も何もなくあんな大きな魔法使ったら危ないじゃない!」


ルーが怒ってる。

でも、小さい子の姿で「めっ!」とかされても、可愛いだけなんですけど。


「えっ···と、ごめんなさい。魔法の練習とかどうやっていいか、わからなくて···」

「ユシャに聞けば良いじゃない」


ユシャ····って呼び捨てなんだ。


「あのさ······ルーって、ルセラさんなんだよね?」

「そうよ。」


「白の巫女のルセラさん?」

「ええ、先に言わなくて悪かったけど、へんな先入観持って欲しくなかったの。」


「やっぱり、そっかぁ······」


わかってたけど、なんか複雑な気分。何故なんだろう···先入観?白の巫女に先入観て?わかんない。


「何?どうかしたの?」

「あなたのこと、メモリーストーンで見た。」


「あ~ああ。あれね。····見たんだ。」

「凄く綺麗だった····」

「あ、ありがとう····」


話が続かない······別にルーがルセラさんだってことを黙ってたこと、怒ってるわけじゃないし、聞きたいことだって沢山あったはずなのに····出て来ない。


「ねえ、どうして私に会いに来るときは小さいの?(いや、本当に聞きたいことは、それじゃないでしょ私!)」


「あ~、それはね。余り魔力使うとヒナの位置が知られたくないヤツにバレちゃうから、魔力節約したらこの姿になっちゃうのよ」

「へえ、そうなんだ······」


「今回のことでわかったと思うけど、ちゃんと魔法の練習してね。どれ位のエネルギーでどれ位の規模の魔法が発生するか加減覚えないと危険だからね」


「はあ···」

「まだ、頭がボーッとしてる?本当に何にもわかってないって感じね。」


ふーっと大きくため息をつくルーは、幼い姿だけど、やはりどこか大人びた気配も漂わせている。


「あなたを襲った奴らは、200メートルは吹っ飛ばされたわよ。つまりね、使った魔法はバリアと言う防御魔法のようなものだったけど、威力がハンパなかったから攻撃並みの反動があって、至近距離にいたあいつらは弾き飛ばされたってわけ。私も防御魔法であそこまでの破壊力出せるとは思わなかったけどね。」


「へーえ。」

「こら!へーえじゃないでしょ!魔力の加減ができてないから、魔力殆ど使っちゃってて魔力枯渇寸前だったわよ。完全に0になったら死んじゃうんだからね!」


顔は一応笑顔だ。でも、声が怒ってる。しかもその笑顔怖いんですけど···


「すみません···」

「あなた達の住む異世界はもともと魔法は無いから、魔力として使える生命エネルギーを変換するの。あなたは魔法が使えるように私が魔力に変換できるようにしたから、徐々に魔力が増えてきてるわ。だから、こちらの人間と同じように、魔力の完全枯渇は命取りなの。魔力量に気をつけて使わなきゃだめよ。」


それって、私の身体はかなりヤバかったってことですか?


「ええっと、私の場合、生命エネルギーイコール魔力というか、HPとMPは同じなんですか?」

「ヒナは、生命エネルギーと魔力の割合を2:8で落ち着かせるつもりだから、今よりかなり魔力増えるわ。HP2だったら、MP8ね。それにしても異世界人の生命エネルギーってハンパなく多いわねえ。割合が2でも結構あるわよ。寿命が私達より短い分、ギュッって凝縮されてるのかしら?」


そうなんだ。私って体力(生命エネルギー)はあるのか。てか、私が弾き飛ばした人攫い達、無事なんでしょうか。


「なんか色々と、本当にすみません。」

「わかってくれたならいいわ。でも、あなたが無事で良かった」


私も魔法が使えるようになったのか。魔法の世界が実感できるのは嬉しいかも。折角の魔法ちゃんと勉強して無駄にしないように使わなきゃいけないなあ。


「あ、私もう帰らなきゃ。二度とこんなことしないでね。まずは、ちゃんと魔法の練習すること。じゃ!」

「え、ああ、はい。」


ルーは片手を上げにぱっと笑うとスーッと消えていった。

なんか、聞く事いっぱいあったはずなのに、全然聞けなかった。




***********



んん···ここはどこだろう。確か、変な奴等に追いかけられてミークが私を守って戦って、あれ?


「あ、ヒナが目を覚ましたわよ。」


目の前にピンクの髪の女の子がいた。あ、マイラさんだ。


「ヒナ大丈夫か?」

「ヒナ!」

「ヒナ、わかるか?」

「ヒナ心配したぞ。」


ソールくん、シドくん、アベルくん、オリオンくん、みんなが心配そうに覗き込んでいる。


「ここ、どこ?」

「町の治療所だ。」

「みんな、心配かけてごめんね。ミークは?」

「大丈夫だ。手当てして貰って眠ってる。ほら隣にいる。」


ベッドの私をみんなが覗き込んでいる。マイラさんがみんなの後ろから{ほら、ここよ」と声をかけてくれる。皆の間から見える隣のベッドには包帯を巻かれたミークが眠っている。ルーが言った通り、ミーク無事だったんだ。でも、包帯ぐるぐる巻かれてミイラみたいになっちゃってる。


「ソールくん···ごめんね。ミークにいっぱい怪我させちゃった···」

「心配すんな。ミークは大丈夫だ。いつも俺の練習に付き合ってたんだ。ちょっとやそっとじゃ壊れやしねぇって」

「良かった····」


安心したら気が緩んだのか、私の意識は薄れ、また眠りに落ちてしまった。



「ヒナちゃん目を覚ましたの?」


オルガとユシャが部屋に入ってきた。 オルガはヒナのベッドの脇に来てのぞき込んだ。皆が少し後ろに下がり、マイラが一歩前に出る。


「つい、さっき目を覚ましたけどすぐにまた寝ちゃいました。」

「怪我はしてないようだし、次に目が覚めたら連れて帰る?ユシャくん」

「そうだな····友達が心配だからすぐに帰るとは言わないかもしれないが。後で本人に決めさせよう」


ここはニニカ唯一の診療所の一室。モンスター襲撃から、すでに丸一日経っていた。

診療所では専属治癒師やユシャをはじめ治癒、回復魔法が使える者達が怪我人や具合が悪くなった者達の治療にあたっていた。


ミークの怪我はかなり酷かった。骨折や内臓の損傷などをユシャと治癒師達で回復と治癒の魔法を重ねがけして、なんとか全治一ヶ月までに持ち直した。後は普通の治療と安静にすることで大丈夫だろう。


街はモンスターに壊されたのは屋台位で他の建物は殆ど無事だった。ただ、ヒナが魔法を発動した場所はその3メートル四方の建物が崩壊した。

幸いその地域は全員避警備隊支部の建物に避難していた為、無人だったので、ヒナの魔法での怪我人は出ていない。ヒナ達を襲った奴等は別としてだが···


後、その崩壊した家々の修理や建築費はユシャが自腹を切ったのは一部の人間しか知らない話だ。

ヒナの魔法の大音響に驚いたのか、誰かの意図かはわからないが、残っていたモンスターはいつのまにか、全ていなくなっていた。


『モンスターとの戦いで、多少の怪我人は出たが、死人は出ず、他被害は無く人々をホッとさせた』

と警備隊の日誌はそう締めくくられていた。

ヒナの件は····本部に報告は、ユシャからの頼みで保留にされている。詳しいことはヒナ達が目覚めてから事情聴取した後、直接エルフォンスに報告することになっている。


ヒナの秘密を首都の本部にいるバカ共に知られない方が良いというユシャの独断だが、ニニカ支部長のキースからも他のメンバーには口止めしてある。ユシャのコネかといえば······はっきり言ってそうである。




***********




「随分と無駄をしたようだね。」


「も、申し訳ありません。まさか、あのように強い獣人が娘のそばにいるとは。しかも、あのような魔法が使えるとは思わず、不覚をとってしまいました。」


厚めのカーテンの隙間から光がさすだけの薄暗い部屋で、背もたれ椅子に座った男、カエサルの前に跪いた女が、身を震わせながら、詫びている。女の身体はあちこち包帯で包まれ痛々しい。


「言い訳はもう良い。下がれ」

「はっ」


傷だらけのその女は少しふらつきながら、部屋を出て行った。

カエサルは女の怪我を気にする様子もなく、その美しい顔に苛立ちを滲ませたまま立ち上がる。


「だから、私は止めておけと言ったはずですが?」


そばに立っていた金髪の男が、彫刻のように整った顔で、ため息をつきながら声をかける。


「御しやすそうに見えたのですがね。ちょっと甘かったかもしれませんね。やはり、ルセラの力が働いていると考えて間違いないですね。」


カエサルは忌々しそうに言いながら、先程女が出て行った扉に向かう。


「今回は、町と下の大地人に恐怖を植え付けるのが目的では?二兎を追う者は一兎も得ずといいますよ。カエサル」

「あんな弱いモンスターばかりでは恐怖など有り得ませんよ。甘いのはあなたでしょうコーリン。今回のあなたの計画、あれでは、ただの余興だ。それとも弟の立場を気にしておいでかな?」


カエサルとコーリン。

魔法至上主義過激派サルタイラ総帥と憂国組織アビリトスのリーダーである。お互い言葉使いは丁寧だが、信頼し合っているようではない。指摘された男コーリンは表情は変えず、できるだけ静かに答えた。


「死人を出すのは本意ではありませんでしたから。」


コーリンをカエサルは胡散臭げに見やる。


「ふん、今さら善人ぶるな。我々と近い思想を持っていると思ったので共闘することにしたが、お主のような緩いやり方では意味がない。」

「それはそれは。しかし、魔法至上主義ならば同じ魔法を使える同胞を傷つけるのは、避けたいかと思いましたので。」

「大望に犠牲はつきものだ。私は小さいことは気にしない。次は私が指揮をとる。」

「ご自由に。」


部屋を出ていくカエサルの後ろ姿を見送りながら、コーリンはユシャが手元に置いている不思議な娘の事を思い出していた。

先程の女の報告では、雷系魔法と防御魔法を使ったらしいが、魔力のコントロールが出来ていないようだ。

しかし、それだけ強力な魔法力をもっているとなると、カエサルは簡単には諦めないだろう。寧ろ、そちらの方が厄介だ。


「私も新たな策を取らねば計画が進まないだろう。ユシャは協力···してくれないだろうなぁ」


水色の髪の自分とは違う顔立ちの魔法使いの弟を思い、自然と口角があがる。


「少し、構ってやるか」


楽しそうに目を細めるのだった。




***********




次に目が覚めたらユシャさんがベッドの脇に置いてある丸い椅子に座って本を呼んでいた。


「目が覚めたか?」


穏やかと言うか、優しい顔で私を見る。なんか照れくさいぞ。


「具合はどうだ?痛い所はないか?」

「はい、大丈夫です。私何日位寝てましたか?」

「今日で3日目だな。」

「3日も····」


一度、目が覚めて皆の顔を見たのは覚えてる。怪我したわけじゃないのに、よく寝たな。

はっ、ミークは!隣のベッドには誰も居ない。


「ユシャさん、ミークは!ミークはどうしたんですか!」


起き上がろうとしてフラッとなりユシャさんに支えられ、再び横になる。


「あの子は大丈夫だ。酷い怪我だったのに、もう昨日から起きていて、体がなまると言って、今、外で体操してる。さすが、獣人族だな、凄い回復力だ。」

「はあ~~~?」


獣人はもともと身体が丈夫で回復力もヒト族よりはるかにある。ミークは怪我の治療の後、みるみる回復したそうだ。なんかズルい。


「ヒナ、お前は体力もつけた方がいいな。」


ユシャさんに言われるまでもなく、自覚しております、はい。

よしっ!体力作りと魔法の修行。今、私に出来ることから、頑張る。


まずは、身体を回復させなくちゃ。




登場人物が増えています。まだ増えます。

書ききれるのでしょうか自分?


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