教えてトリスタさん
短いです。
トリスタさんが妖しく微笑む。
「ルセラのこと少しは聞いてる?もっと詳しく知りたいんじゃないの?」
「う···」
聞きたい···でも···聴きたくない。
やっぱり聞きたいような聞きたくないような···
あ゛~~~!
ルセラさんのこと聞きたいけど···何だろう。胸がザワザワする。
「あ、あのトリスタさん良かったら教えて下さい。ルセラさんて白の巫女だったんですよね」
「う~ん、そうだねえ。俺が初めてルセラに会ったのは、まだ彼女が白の聖域の研修生だったころだったけどな。」
「白の聖域?研修生?」
また知らない言葉が出た。
「あ、最初から説明しなきゃいけない?」
「ほんっとに何にも知らなくてすみません···」
「いやいや君は異世界から来たんだし知らなくて当然だよ」
*************
白の巫女·····それはこの世界では聖女と同じ意味を持つ。
研修生······次代の白の巫女の候補としてクレッシェンド各地から集められた女性達のことだ。
白の神官または官女·····白の巫女に選ばれなかった研修生の中で成績の良い者が希望すれば、就くことができる神殿の職席。研修生の指導、神殿の管理など、神殿に関わる仕事に就く管理職。
――簡単に説明するとこうなります。
白の神殿について…
浮遊大陸クレッシェンドの首都ヴォイスの真ん中あたりに魔霊樹があり、その下に塔と呼ばれる建物がある。
魔霊樹と呼ばれる白銀の葉と幹を持つ巨大な木の下に建てられたその塔は魔霊樹と同じく白と銀の美しい建物だ。その塔の周り一体が白の神殿と呼ばれる建物だ。
この国のシンボルと言えるその大樹の根は、この大陸を抱くように広がっている。
この大樹こそが浮遊大陸を浮かせ支えているのだ。(どうやって浮いているかとか詳しい説明は省略)
白の神殿では魔霊樹の守りこの大陸を維持するために作られた。
「木の世話をするために神殿建てたんですか?御神木みたいなものなんですか?」
「ん~、ご神木というより、浮遊大陸の基礎であり、この大陸が浮いていられるのは魔霊樹に送る魔力のおかげだからね。白の神殿に魔力集めて魔霊樹に送り込んでるんだよ。本来の魔霊樹は魔素を吐き出す性質なんだけどね。足りないらしい」
「???」
つまりこの大陸は魔法で浮いてるで正解···かな?
「この国では何をするにも魔力を使うから、国を覆う結界、天候の調整、水の循環、ほとんどの物が魔法で成されているんだ。白の神殿はいわゆるエネルギーの管理しているんだ」
「へえ~~~」
エネルギー庁でもあるということか。
「そして、白の巫女だけど、白魔法が使えて容姿端麗で頭脳明晰な女性が選ばれるんだ」
白魔法ってゲームでも聖なる魔法で回復や補助が主で、攻撃はホーリー位しかなかった様に記憶してるけど、加えて容姿端麗て···それ必要か?
「白の巫女は白魔法が使えて、MPが大きいことは必須条件だが、後、歌とか踊りも上手いことも条件だ。理由は俺も良く知らないんだけどね」
まさにアイドルじゃないの。あの映像で見た限り、可愛い系とか綺麗系ばかりだったもんなあ。
民衆の人気取りって意図を感じるのは私がひねくれてるのかしら···
「当時、ルセラは研修生だったから、聖域に住んでたんだ。聖域は首都でも魔霊樹(白の神殿)の近くの街にあって、神殿の関係者や巫女の研修生とかが住んでいる地区のことなんだけどね。聖域には一般の人間は入れないが、研修生はお使いや買い物とかで聖域からは出て来られるんだ。神官とかは滅多に出てくることはないんだが、研修生だったルセラとは町に買い物に来ていた時知り合ったんだ」
なる程、ルーは可愛いからナンパでもされたかな?
「白の巫女って神殿でどういう仕事しているんですか?」
「よく知らないけどこの世界の平和を祈るらしいよ。白の巫女になれるのは何十年かに一人いるかいないか。巫女は魔霊樹の塔の祈りの部屋に籠もりたった一人で祈り続ける。命懸けて世界を守るという崇高なお役目らしい。」
お祈りするだけの簡単なお仕事ですってか?ひとりぼっちで?
「あの~」
「何?」
「ご飯は誰が作るんですか?」
「えっ?」
「だってずっと一人で祈らなきゃいけないってお腹すくでしょ。」
「···」
あれ、トリスタさん固まっちゃった。
「あっはっはっはっは!」
「トリスタさん?」
何かツボっちゃった?トリスタさん笑い出して止まらない。
「あ~ひ~最高!君、面白いね。ユシャさんも毎日楽しいだろうな。」
そ、そうかなあ?
でもご飯のこと、そんなにおかしかったっけ?
「祈るのは一人でも世話をする人はいると思うし、日常生活はしてると思うよ。巫女も一応人間だし」
「あ、そうか!そうですよね。すみません、変な質問してしまって···」
「いや、しかし、あの下りでご飯の話になるとは思わなかった。」
トリスタさん涙流して笑ってる。そんなにウケちゃった?なんか、私凄くおバカな子認定されたかも。
「はぁ~苦しかった。。おっとお茶が冷めたね。入れ替えようか。」
「俺にもお茶いれてくれるかな?」
その声は···
「「ユシャさん!!」」
「あ、ユ、ユシャさんお帰りなさい」
「楽しそうだねえトリスタくん」
いつの間にかユシャさんがいてイスに座ってる···あれ?トリスタさんが出したイスは2個だったよね。
自分で出した?
「いや~ユシャさん、お早いお帰りで。」
「トリスタくん。何をこいつに吹き込んでるのかなあ~?」
「いや、あの神殿についてとか、アドゥーラとかサルタイラとか···」
トリスタさん、ユシャさんに睨まれて焦ってる。神殿とか巫女とかは、私には教えちゃいけない事だったのかな。
「わかったわかった。ヒナ、ティータイムは終わりだ。アルクに水飲ませてやってくれ」
「はい」
ユシャさんにはバレバレだろうから、私トリスタさんに悪いことしちゃったかな?
「アルクくん、おいで」
「ウォン」
「ヒナちゃん、いい子だねえ。」
「あの子には色々教えない方がいい」
「え?どうして」
「いずれは向こうの世界に返してやるつもりだ。その時よけいな記憶は消す。多すぎると消した時の副作用も大きくなる。」
「本当に帰すの?ユシャさんあの子、ユシャさんのこと······」
「それよりトリスタ、何か用があったんじゃないのか?」
「あ、ああ、そうでした。例の情報が···」
二人で何か真剣な顔して話してる。
結局、ルセラさんに関する詳しいこと聞けなかったなぁ。
「え?トリスタさん、もう帰っちゃうの?」
「うん。また今度ゆっくり遊びに来るよ。」
「そうですか···」
「ヒナちゃん俺に惚れた?」
「は?何でそうなるんですか!」
「違った。君はユシャさんが···」
「トリスタさん!シーッ!」
慌てて口に指を当てる。言わないでー!
「何だ?呼んだか?」
「何でもありません!」
「何でもないですよユシャさん」
態とだ。絶対態とだ!ユシャさんといい、トリスタさんといい、人のことからかってばかり!
「ああ、そうだ。トリスタ、酒ありがとな。」
「どういたしまして。また珍しいの手に入ったら持ってきますよ。」
トリスタさんは浮遊魔法で空を飛んでいった。
彼もレベル高いんだろうな。
「トリスタさんて優しい人ですね」
「あいつは止めとけ。結構女たらしだから。」
「酷い言い草ですね。お友達なんでしょう?」
「今日だって、お前を見に来たようなもんだ。女と聞くと興味津々だからな。本人も自覚してる。」
「ふ~ん···」
確かユシャさんも結構遊んでたって話だったけど。
「あいつそんなこと言ったのか?!」
「わっ!ビックリした!」
心読まれた!
「若い頃のこと持ち出しやがって···」
「ホントなんだ···」
「若気のいたりだ。」
「へ~え」
「なんだ?妬いてんのか?」
「ち、違いますよ!なんで私が妬かなきゃいけないんですか!」
「違うのか?俺のこと好きなのかと思った。」
「誰が!全然違います!」
素直になれない···
心読まれるなら隠してもバレてるんだろうけど、ユシャさんの前で認めたら負けのような気がして、つい憎まれ口をきいてしまう。
ユシャさん片思いしたことあるのかなぁ?無かったらルセラさんとの事、きつかっただろうな。
しかし、私がユシャさんのこと好きだって本人にバレてるのって······
非常に、ひっじょーにマズい!!!
あ~~~~~!頭から水被りたい気分だ~!!
読んで下さってありがとうございます。