ドキドキが止まらない
本日二話目の投稿です。恋愛要素盛り込んだつもりですが、楽しんで頂けたら幸いです。
収穫期も後半。
今日は一日家で家事をしたりアルクくんと遊んだりしていた。
お昼ご飯が済んで、洗い物をしていたら、ユシャさんが出かける準備をしていた。
「今からお出かけですか?」
「ああ、ヒナ今日は遅くなるから先に寝てなさい」
「ご飯もいらないんですか?」
「今日は久しぶりに友人と会うからな。一緒に飯を食うことになっている」
なんだかユシャさん楽しそう。
今も付き合いのある友達いるんだ…
··当たり前か···
でも、ユシャさんって、一人っきりで(アルクくんはいるけど)人里離れた場所に暮らしてるから『人間嫌いなのかもしれない』とか思ってたんだけど、ちゃんと友達いるんだったら人間嫌いでもないんだ。
なんかちょっと嬉しいな。
相変わらず意地悪だし、私のこと、からかって笑ってたりするけど、優しいところもあるんだよね。
なんで、彼女とか作らないんだろう?
100年前の恋人を忘れられないとか?いや、ルセラさんのことだけど。
ん~それは、矛盾するよね?
100年も同じ相手と一緒に居られないようなこと言ってたし···
わ、私には関係ないけどね。
「あれ?ユシャさんアルクくんは一緒にいかないんですか?」
「お前のお守り役に置いていってやるよ」
「また子供扱いする!」
「今日は遅くなるって言ったろ?そんなに遅くなったらアルクも可哀想だろ」
「···もしかして、女の人?」
「なんだ?妬いてるのか?」
笑いながら私を覗き込む。
「!んな訳ないでしょ!」
「じゃ、いってくる。いい子にしてろよ。」
「いってらっしゃい!」
ドアを開け、外に出て一応お見送り。
転移魔法を唱えるとユシャさんの姿はあっと言う間に消えてしまった。煙みたいに消えてしまうって、なんだか味気ない。
***********
ふぅ···
はぁ···
まだ帰ってこない···
もう、真夜中過ぎたよね···
今頃、何してるんだろう?
なかなか帰ってこない旦那様を待つってこんな感じ?
いないと用事が片づくなあ~なんて思いつつ、やっぱりいないと淋しい。
な、何考えてるのよ!
まあ、毎日一緒にいる人がいないのは確かに寂しいけど···
そ、そんなんじゃないんだからね!
絶対、違うんだから!
····私、誰に言い訳してるんだろう···
アルクくんは寝てる。起こさないように、そっとドアを開け外に出てみる。
「わあっ!」
見上げると満天の星。
「すごい···綺麗」
こんなすごい星空を見たことない。来たばかりの頃は、そんな余裕無かったしな。
他に強い明かりがないから、大きな星も小さな星もよく見える。
多分、お金では買えない眺めだ。
―シュン
何か音がした。
振り向くとユシャさんが立っていた。
「あ、おかえりなさ···」
「あれ~まだ起きてたんだ~」
なんか様子が変。
「ちょっと眠れなくて」
「ふふ~ん。俺のこと待ってたんだ」
「ち、違います!」
あ、ユシャさん···お酒飲んでる?
「ユシャさん、お酒臭い!」
「照れちゃって、かーわいい♪」
きゃーーーーっ!!ユシャさんが私を抱き締めようと手を広げ近づいてくる。
私は後ずさりしようとして石につまづいた。
「きゃっ!」
ユシャさんと一緒に倒れ込んだ。
短い草がびっしり生えているので痛くはなかったが、この状態···どうすればいいの?
ユシャさんの下敷き···つまり、押さえ込まれてるような体勢。
「あの!ユシャさん!」
「じっとしてろ···俺は今日、すごくいい気分なんだ···」
いや、あなたはそうかもしれませんけど私はどうなるの?!
下手したらこのまま寝ちゃいそうじゃありません?
それは···
すごーく困る!!!
「私、もう寝たいんですけど!」
「あれ?眠れなくて外に出てきたんじゃなかったっけ?」
さっき言ったこと覚えてたんだ。
酔っ払いなのに記憶力はしっかりしてるなんて、厄介だ···
「もう、眠くなったんです」
「寝てもいいぞ」
「へ?」
「お前をベッドに運ぶ位できる。だから寝てもいいぞ」
こ、こんな体勢で寝られるわけないじゃないですか~!
「久しぶりにあいつと飲んで···」
あいつ?今日一緒だったお友達のこと?
「あいつ、俺が昔みたいに、よく笑うようになったってすごく喜んでた。お前のことも話した」
私の事も話したって、異世界人だって事話せるくらいの仲なのか。やっぱ、親友とか?
「あいつが言うには、お前が俺にいい影響を与えているんだと」
「私が?ユシャさんに?オルガさんもそんな事言ってましたけど、みんな私のこと買いかぶりすぎなんですよ」
「お前はいい子だよ」
急にそんなこと言われても、こそばゆい···
「お前に最初会った時はサルタイラかアドゥーラの回し者かと思ったけど···お前バカ素直なんだもんなあ···」
バカ素直···
「ちょっと新鮮だった」
めちゃめちゃ照れくさくなってきた。でも、誉められてるのかバカにされてるのか微妙だけど、ユシャさんに嫌われてないことは間違いないみたい。
「きっと、帰れる方法探してやるからな······きっと······」
帰れる方法···
本当に帰れるのかな?
ルーもそんなようなこと言ってたような···
うん、帰りたいよ
帰りたい···
帰りたいけど帰ったら、もうユシャさんには会えなくなるんだ···
「ん?」
「ユシャさん?」
「ユシャさん?」
「zzz···」寝息?
寝てるし~!
私はユシャさんの下からやっとこさ這いだした
ユシャさんを担いだり引きずったりしながらなんとか家の中に入った。
擦り傷とかいくらか出来てたとしても不可抗力だからね。
「ハア···ハァ···ユシャさん細く見えるけどやっぱり男の人だな、重い」
ユシャさんの部屋まで運ぶのは無理だと思ったので、アルクくんの寝床に運んだ。
「ごめんねアルクくん。今夜はユシャさんと一緒に寝てね」
「クゥン」
起こされてしまったアルクくんは仕方無さそうに起き上がり、ユシャさんが寝る場所を空け少し脇によって、また寝てしまった。
ユシャさんが酔っ払ってアルクくんの寝床で寝るのって、これが初めてじゃないのかもしれない···
私も自分の部屋に戻り着替えてベッドに潜り込む。
思い出すと、またドキドキしてくる。
ユシャさんの身体···熱かった。
お酒飲んでたからかもしれないけど···熱が伝わってきて私も熱くなって···
何なの?
この気持ち。
心臓がキューンってなる。
眠れない···
ユシャさんのバカ!
ますます眠れなくなっちゃったじゃない!
次の朝。
ユシャさんは昨夜の記憶はどこかへ置き忘れてきたらしい···
バカヤロー!
私のドキドキを返せー!
「なんだ?何、怒ってるんだ?ああ、そうだ土産があったんだ」
「お土産?」
ユシャさんが私の手のひらにポンと乗せたのは不思議な形の人形?
「何ですか?この変な人形みたいなものは。」
「人形だ。昨日飲んだ店で売ってた御守り人形。薬草を編み込んで作った人形だから、ちょっと臭いけどな」
「なっ!···くさっ!」
確かに薬草のようなキツい臭いがする。
でも食べ物以外のお土産は初めてだし、有りがたく頂いておこう。
でも、この人形···可愛くなーい!
ユシャさん、ゆうべのこと···本当に全然覚えてないのかなあ···
そうだ!
「ふっふっふっ♪」
ユシャさんを、ちょっといじめちゃおうっと。
「ユシャさん、ホントに昨日のこと覚えてないんですか?」
「ああん?俺が何かしたとでも言うのか?」
「ひどい!」
「はぁ?」
思いっきり、悲しそうな顔をしてユシャさんを見つめて···
「あんな事しといて忘れるなんてっ!」
「オレが何したって?そんなひどいことしたのか?」
焦ってる焦ってる♪
「ユシャさん、私のこといつも子供扱いするから安心してたのに···」
「だから、俺が何したっていうんだ。言ってみろ」
「そんなこと···私の口からは言えません··」
「言わなきゃわからないだろうが」
「乙女の口から、とても言えません···自分の胸に聞いて下さい」
「······」
いつもからかわれてるんだもの。この位の意地悪なんて可愛いものよね。
あれ?ユシャさんが私に近づいてくる。
「口に出せないような事をしたのか俺は?」
「え?え~っとあの···あまり近づかないで貰えます?」
「だったら1回するのも2回するのも大して変わらないよな」
あ、あの···なんでそんなに接近してくるかな···
後ずさりし過ぎて、もう背中壁まで来ちゃったんだけど。
「逃げるなよ」
ドンッ!
ひえ~っ!壁ドンだぁ〜!
ユシャさんが目の前だ。壁に片手をついて私を見てる。
「俺、酔っ払ってて記憶ないからもう一度、その口にはできない事したいんだけど?」
「ど、どうするつもりですか」
「だから、ヒナが言ってくれないからわからないだろ。俺なりに考えてやってみようかと」
「わ、私なんかユシャさんにとっては子供でしょ。100歳以下は未成年なんでしょう?」
「でも、ヒナの世界では18歳は大人なんだろ?だったら問題ないだろ?」
ユシャさんの顔が近づいてくる!
「私みたいなの好みじゃないんでしょう」
「お前は可愛いよ」
えっ…
··
思わず固まる。
くちびるがふれてしまいそう···思わず目を堅く閉じる。
突然、頭の中にルセラさんの姿が浮かんだ。
何故かルーではなく、ルセラさん。
あれ?
そっと目を開ける。
ユシャさんがどアップ!
「ばーか」
「へ?」
パチン
「いたっ!」
デコピンされた···
「お前の考える事なんてお見通しなんだよ。」
バレた。
ユシャさん、私の心読んだんだ。
しまった···ユシャさんにはその手があったんだ。
「ユシャさん、魔法使ったでしょ」
「ふふん」
「ずる~い」
やっぱり勝てない。悔しい~
「俺に勝とうなんて300年早いぞ。魔法なんぞ使わなくてもそのくらいお見通しだ」
「300年も待ってたら死んじゃうし、ユシャさんだってその時には長生きしてたってよぼよぼのおじいさんじゃない!」
負け惜しみが止まらない。
ドキドキしてた自分を誤魔化そうとしてるんだ···私
「口の減らないやつだなあ」
チュ
「!」
「やっとおとなしくなった」
キ···
キ···
キスされた~~~~~!!!!
思わず口を押さえる。
心臓が爆発しちゃう!
「バカ····」
「え?なんだ。」
「ユシャさんのばかあ~~~!」
自分の部屋に飛び込んだ。
何なのよ!
人のこと何だと思ってるのよ!
私、きっと顔真っ赤だ。
やだ、涙まで出てきた···
あんなのキスのうちに入らない。
なのに···
なのに···
もおっ!
ユシャさんのばかあ~!
バカバカバカ~!
ベッドに突っ伏し手足をバタバタさせた。
だいたい、キスしたこと位、私だってあるんだから···
···って、あったっけ?あれ?
そうなる前に別れたんだった。
じゃあ、あれがファーストキス?
そんなあ···
「ちょっとやりすぎたかな···」
しかし、不思議だ。なんであんなことしてしまったんだ?
他にもやりようはあったのに?
確かにあいつのことは可愛いと思ってる。
だが、それは小さな子供に対する···またはペットに対するそれだと思っていたが····
「何でだ?」
読んで下さってありがとうございます。