気になるあの子
やっと書けた♪
「師匠!」
「「ユシャ先生!」」
ええっ!師匠?
ハリセンで三人に制裁を加えたのは、ソールくんのお師匠さんだった。
しかし、何故にハリセン。
ソールくんはお師匠さんに、アベルくんとオリオンくんは巻き添えのシドくんと共にユシャさんに、それぞれお説教を喰らっていた。
「お前等の力でこんな街中で魔法ぶっ放して喧嘩なんぞしたら大事になることくらいわからんのか!」
「まったく、お前等はちゃんと周りを見ろ!シド、お前がついていながらどういうことだ」
いや、シドくんは一応止めようとはしてたんだよ。
「すみません···」
それでも謝るシドくん潔い。シドくんてあの三人の中では割と常識あるのかも。
道行く人や蘭香亭に来たお客さんがチラチラ見てる。
何事かと訝しげに見る人、クスクス笑ってる人、これは、ちょっと恥ずかしい。
それこそ、こんな人通りのある道路では邪魔になるという事で、みんなで蘭香亭に場所を移し、奥の席を借りて話···というかお説教の続き。
私は忙しくなり始めた店のお手伝いをすることにした。
オルガさんによると、アベルくんは学校では成績トップでカリスマ的な存在なのだそうだ。リーダーシップはあるが、ちょっと自己主張が強い。なんと女子にかなり人気があるとか。
オリオンくんは普段はクールで冷静なタイプで、いつもならシドくんと二人でアベルくんを止める立場だが、意外に熱血な所もあるらしい。隠れファンが多いそうだ。
シドくんは芯はしっかりしてて真面目、普段は温厚で大人しい。でも腕っ節は三人の中で一番強く剣も格闘技もなかなかの腕前で、どちらかというと後輩男子に人気があるらしい。
オルガさん、何故にそこまで詳しい?
ソールくんはよくわからないとのこと。お師匠さんと一緒に一度店に来たことがあるそうだけど、こちらに来て日が浅いみたいだから知らなくて当然かも。
ソールくんて言葉遣いはあんなだけど、優しくていい子なんだと私は思うんだけど、アベルくん達と相性悪いのかなあ?
お互い力があるから、逆にライバル意識が芽生えちゃったのかもしれない。
暫くして、ユシャさんに声をかけられたので、行ってみると···
あれ?
なんか、みんな仲良くなってないか?まあ、いいけど。
「あの、ユシャさん?」
「ヒナ、話は済んだからオルガに飯頼んでくれ」
はあっ?
なんでそうなるの?私だって心配してたのに。
「ほぉっほっほ。若いものは力が有り余っとるようじゃ。若いとはええのぉ。ユシャ、おぬしも頑張れよ」
「どさくさに紛れて何言ってるんですか、カジャク導師」
ソールのお師匠さんとユシャさんは親しいようだ。お師匠さんカジャク導師っていうんだ。。
何があったかわからないけど、解決したようで良かった。
「俺、帰らないと。ミークに言われてヒナを送って来ただけだから」
「ソールくんご飯食べていかないの?」
「母さんが今日はご飯作って待ってると思うから」
「そっか。ソールくんごめんね。送ってくれてありがとう」
「いや。じゃ、またな。師匠、すみませんでした。失礼します。シド、師匠のところでまた会おう」
「おう、ソールまたな。楽しみにしてるぜ」
え?ソールくん、シドくんと友達になったの?
「こいつも儂の所でしばらく修行する事になったのじゃよ。まだ未熟じゃがソールと同じ力を秘めておるようじゃ。」
「アベルとオリオンも進学で町を出るまで、時間が空いてるときはオレが見てやることになった。色々と叩き直さないとな」
アベルくんとオリオンくんが顔が引き攣ってるよ。
なんでもソールくんとシドくんは、魔法と武芸に才能があり、シドくんは警備隊を目指すなら両方鍛えた方が良いということで、ソールくんの師匠のカジャク導師が指導してくれることになったそうだ。
警備隊には導師の弟子が何人かいるのだとか。
アベルくんとオリオンくんは魔法がメインなのでユシャさんが再び指導をするそうだ。
もちろん指導料は取るそうだ。ユシャさんそこは男気みせようよ···
「特に精神を中心に鍛えないとな。雑念が多そうだし」
アベルくんとオリオンくんが怯えてる····
ソールくんが帰り、お店も一区切り付いてきたので、私も昼食をとることにした。
奥の席に自分の食事を持って行くと、先にユシャさん達とご飯を食べたアベルくん達3人はすでに帰っていた。
「ふぅむ···これはこれは·····」
ユシャさんと導師、二人がお茶を飲む傍らでご飯を食べていたら、導師が私を見て唸っている。
な、なんでしょう。私何もないですが···(本当はあるけど)
「面白いのう。二種類のオーラがまざっとる。その上、微量じゃが魔力が増えていっておる」
えっ!?
え~と、それはルー···そのルセラさんが、私に何かしたからということかな~?
「道理でガキどもが騒ぐはずじゃな。魔法使いは魔力の強いものや、オーラの輝きのより強いものに惹かれる習性があるからのぉ、ほっほっほ」
「導師、最初は魔力の欠片も無かったんですがね。オーラだけは変わってるなと思ってはいたのですが····」
や、ヤバい?私ピンチ?
「ヒナ、何か隠してないか?」
「え?な、何も~」
「隠してないか?」
「隠してないかな~と~」
「隠してないか?」
「···ひっ!」
ユシャさんがどアップ!
そんなに近づかないで~!
エーンわかりましたよ~
「先日、あの子が夢に出て来ました···」
「よし。洗いざらいさっさと吐け!詳しくな」
私は犯罪者か!?
***********
「と言うわけで、間の会話の記憶が全然ないんです」
「導師····」
「うむ····」
「食器片付けてきまーっす!」
食器を口実に私はその場から逃げ出した。
「やはり古代魔法ですか、導師」
「そうじゃな。己の力を他人に移す。一歩間違えば、己の身も心も滅ぼしかねん恐ろしい禁術じゃ。どうやって手に入れたのやら···しかも、これほどの魔法を使ったと言うことは、かなりの使い手じゃ。目的はわからんが危険な魔法に変わりはない」
「下手すれば双方が危険だと?」
「使用した者がどの位まで力を送るかで、何とも言えんが、あの娘が乗っ取られる可能性もある。扱いの難しい魔法と聞くからの。暴走も有り得る」
大昔、病で明日をも知れぬ身となった大魔法使いが、己の全ての魔法を弟子の若い魔法使いに託すため禁術を使用した。
師より魔法を受け継いだ弟子は大魔法使いの力を得て強大な魔術師となったが、やがて徐々に違和感を感じるようになってきた。
時が経つごとにその人格も師匠である大魔法使いに浸食され乗っ取られそうになった。
弟子は必死で抵抗し、最後にはお互いの魔力の暴走で二人とも死んでしまったということだ。
その後も、その魔法を使おうとしては事件が起きた。
そして、その魔法は禁術として封印されたはずであった。
「しかし、そんな強力な魔法を使えるなど、導師クラスでもそれほどはおるまいに···ユシャ?どうした?」
「いえ、何でもありません。しかし何のためにヒナにそのような魔法を使ったのでしょう?」
「何か、途轍もないことが起きようとしているのかもしれぬな」
「何かをヒナに伝えたのに、記憶を封じているのも気になります」
「ユシャよ。あの子から目を離すでないぞ」
「はい」
***********
「へ~、カジャク導師ってクーミン先生のお師匠さんなんですか」
「ああ、ニニカの東の森の奥に住んでいる。魔法と武芸、特に魔法剣の使い手だ。エルも導師に師事していた」
「警備隊の隊長のエルフォンスさんもなんですか?凄い人なんですねえ」
アルクくんに乗って帰宅しながら、ユシャさんにカジャク導師のことを聞いた。
ユシャさんの師匠の飲み友達でもあり、結構なお年なのだが、若い子を育てるのが好きで未だに現役なのだそうだ。
ユシャさんの師匠は、50年ほど前に『もう隠居する』といってどこかに行ってしまったらしい。
魔法使いって変わった人が多いとか、何かで聞いたけど、本当かもしれない。
でも、クレッシェンドに住んでる人ってみんな魔法使えるんだよね。
それってみんな変わってる(変人)ってこと?!
ちなみにハリセンは雨宮さん提供でした。
やっぱりあの人、日本文化かなり持ち込んでるよ。
口にこそ出さなかったが、カジャク導師は気づいているのだろうな。
あのオーラは多分ルセラだ。
何のためにあいつはヒナを召喚し、オレの元に送って来たのか。
しかし、最初ヒナに会った時、ルセラの干渉を 見抜けなかった。
それだけルセラが力をつけたということなのか?
···ルセラに何かが起こっていることに間違いはないだろう。
だが、禁術の古代魔法を使うほどの何かとは一体なんだ?
やはり、暫くは様子を見る他はなさそうだ。
白の神殿に関わるのは危険だ。
それにしても、ガキども、色気付きやがって。
アベルと来たら『蘭香亭の前でヒナが知らないヤツと楽しそうに笑ってたんだ。俺達、ユシャ先生にヒナのこと頼まれてたし、ヒナに何かあったら困るじゃん』とか、『なんか割と出来るヤツみたいだったから、つい、煽ちゃってたんです』とかオリオンまで言いやがる。生意気に嫉妬なんかしやがって。
あのソールという子も、ヒナに好意は持っているようだったしな。
3人ともヒナのことを気に入っていたのは知っていたが、暴走しなきゃいいが···
ガキども同士が仲良くなれば大丈夫か。
ヒナ、あの天然は意外に鈍感だし墓穴掘りまくりそうな気もする。
ここに置いといていいものやら····
部屋に入るとテーブルの上に何かがおいてあった。
「ユシャさんポストからこんな物が···」
ユシャさんの住む土地の山でない方の端っこは崖っぷちになっている(浮いているので下は海)
そこには、可愛いポストが置いてある。
家とその周り数メートルには結界が張ってあるので、誰も侵入できない。
ポストは結界の外にあるので、たまに郵便物(?)が入っている。
何か届いていると家の中に自動転送される。危険な物は転送されない。この機能の仕組みはよくわからない。
テーブルの上には手紙が2通。
「ユーリシアス···シルベール····クロフォード?あれ?間違って配達されたのかな。宛名違いますよ」
一通の宛名がユシャ様になってない。
「いや、間違ってない」
「はぁ?」
「ユーリシアスはオレの本名だ」
「ええっ?!ユシャさんって本名じゃないの?」
「こっちの世界では本名と俗名があるんだ」
知らなかった。ユシャさんてユーリシアスって言うんだ。
「ひとつはトリスタからか」
「トリスタ?」
「出張から帰ったらしい」
「出張?(出張なんてあるんだ。サラリーマンなのか?)」
「もうひとつは·····」
ユシャさんの表情が変わった。なんか、凄く嫌そうな顔をしてる。
「ちっ、いちいち連絡なんて寄越さなくていいのに····」
舌打ち!?そ、そんなにイヤな人からだったのかな?
「ユシャさんどうかしたんですか?」
「いや、大したことじゃない。良い話と悪い話でプラマイゼロって所だな」
「はあ?」
なんだか、慌ただしい一日だったな。
翌日からは収穫期のため、学校は基本お休み。家で家事をしたり、ユシャさんの都合が良い日には学校に補講に行ったり、蘭香亭に手伝いにいったり、たまにミークの家に遊びに行ったりしていた。
ミークの家に遊びに行くと何故か、よくソールくんが帰ってきていた。
学校ではアベルくん達と一緒のことが多く、収穫期の後にあるお祭りにはミークとソールくん、アベルくん達と行くことになった。そして、何故かマイラさんも一緒に行くことになり結局7人でお祭りに行くことになってしまった。
友達が増えるのは良い事だし、ま、いっか。
でも····ユシャさんとも行きたかったな。
ん!?
何故そう思うんだ私!
読んで下さってありがとうございます。
今日はもう一回投稿する予定です。
宜しくお願いします。