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クレッシェンド〜浮遊大陸の記憶〜  作者: ふゆいちご
第1章
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学校へ行こう③



アベルくん達の魔法の授業を見てから、蘭香亭に戻った。

オルガさんのお手伝いをしていたらユシャさんが迎えに来たので、夕食を蘭香亭で購入し、アルクくんの待つ場所に転移魔法で移動。私はまた転移魔法酔いした。

便利だけど、慣れるまではちょっとツラいかも。



食事の後、今日の出来事を自分なりにダイジェストにしてユシャさんに報告する。

なんだか、お母さんに学校での話をする小学生のような気分だ。


「最近は、下の大地からの移住者を引き受けているのは聞いている。逆にこちからも下の大地に移住する者は以前から居るようだしな」

「ユシャさんこの大陸には、元々はヒト族しかいないんですか?この間は、ニニカで他の種族の人は見かけなかったのに、今日は沢山いましたよ」

「ああ、それは···」


ユシャさんによると···


浮遊大陸クレッシェンドでは、基本種族別に棲み分けしている。

エルフは南東の森に住み、獣人は北東の森に住んでいて、ドワーフは浮遊大陸には元々はいなかったそうだ。エルフも獣人も最初からの住人はかなり少ないとのことだ。


下の大地には、ヒト族中心のグラント大陸とヒト族以外の獣人、エルフ、ドワーフ、魔族等が多く住むレグル大陸がある。後は大小の島々が沢山点在している。

浮遊大陸クレッシェンドが元々在った場所はグラント大陸寄りの地域だった。(もともと、この大陸はグラント大陸の一部だったそうだ)

当時はヒト族ばかりでエルフや獣人が居ることは後からわかったとか。

大雑把なのか?


「後、妖精があちこちにいる。なかなかヒト族の町では、隠れていてあまり見ないがな」

「妖精もいるんですか?!」

「妖精とか精霊は自然現象みたいな物だからな、結構いるぞ。この向こうのお前が落ちた森にもいるが気がつかなかったのか?」


全然、気がつかなかった···

私にはそういうの見る能力無いんだ···ショック!


「お、おい、泣くな。妖精に気付かなかったのがそんなにショックだったのか?」

「うう···妖精見たかった〜」


聖獣はいつのまにか住み着いていたりするので生息地ははっきりわからないようだ。そして、浮遊大陸が浮上して安定した後、長い年月が経ち約100年位前から、少しずつ下の大地からの収穫期の労働者や観光目的の入国を認めるようになってきた。

収穫期に働きに来てその後、稼いだお金で観光して帰る人もあるそうだ。

しかし、人数制限や滞在期間制限、許可条件がかなり難しくプレミアチケットらしい。

長く交流が無かったため、国の偉い人は警戒と言うか未だに神経質なようだ。

観光は割と早く許可されたが、移住が認められるようになったのはここ10年位と、まだまだ始まったばかり。そんな厳しい条件を乗り越えてきたミークのお父さんって何気にすごくね?


警備隊の隊長だという人に会ったことも話した。


「エルフォンスか。帰る少し前にエルから念話が来た。お前と一緒にこちらに来たスギシタとかいうヤツは、警備隊が保護しているらしい。今は首都ヴォイスにいるそうだ」

「ユシャさん、あの人お知り合いなんですか?···って、えっ!杉下さん警備隊にいるんですか。てか、なんで首都?」

「警備隊の本部兼訓練所兼宿舎ってのが首都にあるからだ。ヒナ、彼に会いたいか?」

「ん~、会いたいっていうか、あんな形で別れたから無事でよかったな~と。会えるなら会いたいかも。でも、う~ん」

「なんだ?まぁ、行きたいと言われても今すぐには行けないけどな。」


会いたいことは会いたいけど。そしたら、私が首都まで行くってことだ。···てことは、そしたら向こうで暮らすことになるんだよね、多分。

今のこの生活を捨てて行くことになっちゃうし、それはちょっと···今は保留にしておきたいな


「でもユシャさんが警備隊の隊長さんと知り合いなんて意外です」

「エルは大学で一緒だったからな。エルは、お前が気になってるらしい。珍しいオーラをしていると言っていたぞ」


え?なんだろ。珍しいオーラって、この世界でのくどき文句とかなのかな?


「私に惚れると火傷するぜって言っておいて下さい」

「なんだ、それ?」


ユシャさんが微妙な顔をする。このギャグはウケなかったか。

それから、魔法の授業を見学させて貰ったことと、マールさんに聞いた話をした。


「アベルは人よりかなり魔法が使える奴だからな。ちょっと悪さが過ぎたから俺が一度、個人授業をしてやった。それからは、割と大人しくなったな」


それは、教育的指導ってやつかな?自分の方が魔法では上だってことを身をもって教えるという···


「ユシャさん熱血教師だったんですか。続ければよかったのに」

「冗談じゃない!二度と御免だ。あんな疲れる仕事、ノル先生が短期間だからと頭を下げるから仕方なく受けたんだ。もうやらない!」


そんなに嫌がらなくても···子供みたいだなユシャさん。

みんなユシャさんのこと好きみたいなのに。


「クーミンとマールはエルからの紹介で来たんだ。エルもマールのことは心配していたからな。よく立ち直ってくれたと思うよ」

「そうなんですか···じゃあ、クーミンさんもアドゥーラだったんですか?」

「いや、クーミンは大学を卒業してある導師の弟子になって修行していたんだ。オレも知っている人なんだが、エルに『ノル先生の学校で魔法の教師を探しているが、誰かいないか?』と話したらエル経由で導師からクーミンを推薦されたんだ」


ふぅん···ユシャさん意外に顔広いんだ。

元々は普通に良い人なのかな?人間嫌いとかではないんだ。

そう言えば、オルガさんが『ユシャくん、いい顔で笑うようになったわ。ヒナちゃんのおかげね』なんて言ってた。『私はユシャさんにはいいオモチャなんですよ』とため息まじりに言ったら『違う違う!元々はユシャくんは明るくて優しい子なのよ。色々あって、ちょっと愛想悪かったり、キツかったりするけど、あなたが来てから、あの頃に戻ってきたみたいなのよ』と慌てて説明された。

まあ····優しくないこともないけど。

私のおかげってことは、ないんじゃない?


明日も学校へ行くので、早めに部屋に戻った。




あ、マイラさんのこと聞くの忘れた。

ま、いっか。




****************




『ヒナ·····』



『ヒ〜ナッ!』



「ん?」『久しぶり。元気そうね』


「あ~~~っ!あんた!ちょっと!ひどいじゃないの!変なとこにヒトを放り出しといて音沙汰無しってどういうことよ!」

『ごめんなさい。私の方も色々あってね』

「あんたね。だいたい人の人生を何だと思ってるのよ。いきなり知らない所に連れて来られて、酷い目にあったんだから」

『その割には楽しそうに見えるんだけど?』

「うっ!」


は、反論できない。確かに最初は大変だったけど、今は学校に行き始め友達第1号もできたし、周りもいい人たちだし、ここが異世界ということを除けばそんなに問題はないかも。


『なんとかユシャさんにも受け入れられたみたいだし』

「(受け入れられてるかどうかはわからないけど)それより 

あんた狙ってここへ私を送ったの!?」

『まぁね。でもヒナ、さっきから私のことあんた呼ばわりは無いんじゃない?』

「あんたの名前きいてないし~」

『あれ?そうだったっけ?あはっ、私はル···えっと、私のことはルーって呼んで。』

「ルーね。ルー改めてよろしくね」

『ヒナってちょっと変わってるっていわれない?』

「なんで?」

『さっきまで私のこと凄く怒ってたのによろしくなんて····』

「それより今日は、ゆっくり話せるの?訊きたいことが沢山あるんだけど?」

『そうね。私には時間が無いから···手早く進めないと』



·····



最後にルーは言った。

『今は魔法の練習をして。私の力を分ける。私が贈ったもの今は分からなくても徐々に思い出すから。そして、時が来たらすべて教える。ヒナも元の世界に帰せるかもしれない。また、連絡するわ』


でも、間の会話の記憶がない!

あれは夢だったの?

『時が来れば』って何?『徐々に思い出すようになるから』ってどういうことよ。

確かにルーと名乗った彼女と会えるのはだいたい夢の中なんだけど。何か大切な事を聞いたような気がするんだけど、思い出せない。


私に何をさせたいの、ルー

記憶が曖昧すぎて、ユシャさんには話せなかった。



***********




収穫期が始まる。学校はお休みになる。

でも、自主学習のために学校を使える。収穫期は託児所が開くので、先生が当番で必ず誰か常駐するからでもあるらしい。

収穫期は約一ヶ月。

今回は人手が多く集まったので少し早く収穫が終わりそうだということだ。昔は長いと二ヶ月かかっていたとか。

この地方ってそんなに人いなかったのかな?だから、下の大地の人受け入れる様になったのかもしれないな。

収穫期が終わる頃、お祭りがあるそうだ。


今日は私の世界で言う終業式の日だ。

簡単な注意の後解散。希望者にはキアン先生が取って置きの宝物を見せてくれるという。

私もミークやアベルくん達といってみた。

他の教室よりやや広めで、地域の人の会合にも貸したりしている部屋で、視聴覚教室みたいな事にも使う部屋のようだ。


キアン先生は剣が得意ないわゆる体育担当の男の先生で、見た目二十代後半の細マッチョなちょっとイケメン。

アベルくん曰く白巫女マニア、簡単に言うと私達の世界のアイドルオタクのような人らしい。この世界にもいるんだねぇ。

白の巫女は毎月、神殿前の広場で祭礼を行う。それはこの大地を支える魔霊樹様に歌と舞を奉納する儀式だ。

その巫女達は、容姿端麗、美声、舞も上手く老若男女の憧れの的らしい。

つまりアイドルなんだね


本来、教卓を置く場所に少し低めの台がありピンポン玉位の緑色の石が置いてある。魔法道具かな。



「今日苦労して手に入れた私の一番のお宝をお見せします。」


キアン先生は嬉しそうに言うと魔力を送り始める。

ん?何故か魔力が流れていくのがわかる。そう言えば、あれから魔力が身体に蓄積しているような気がする。

ルーが私に何かしたのかと思ってしまう。

一体何したんだろう···



窓はカーテンが引かれ教室内は薄暗い。緑の石の後方にステージが現れガヤガヤと声が聞こえる。

おお!まるでライブDVDだ。

野外ステージの周りは人で一杯だ。演奏が始まり案内の声が始まりを告げる。

先ずは『巫女見習い』達の歌と踊り。

見た目が中学生位の女の子達が可愛いひらひらの衣装で歌い踊る。どの子も可愛くてまるで美少女アイドルグループのようだ。 それから、徐々に年齢が上がっていく。

しかし、みんな綺麗な人ばかりだ。世の中って不公平、それは、この異世界でも同じ。


「さぁ、いよいよですよ」


キアン先生が少し興奮気味に言う。


「白の巫女ルセラ様です。千年に一人の類いまれなる美貌と才能を持つ逸材とのことで、この時のお披露目はすごかったですよ。あの音楽堂に入りきれない人が沢山いまして、それで急遽、記憶魔石メモリーストーンが追加販売されました。これが凄く売れたので神殿側は味をしめたらしく、次からは毎回、祭礼のメモリーストーンを販売数を増やしたのですが、この時のメモリーストーンの販売数が今までの最高記録をずっと維持しています」

「凄い美人ねぇ、それに綺麗な声。聴いてるだけで癒されちゃう。ヒナ、どうしたの?固まっちゃって」


隣でミークが何か言ってる。私はその映像に釘付けになったままだ。


あれは、ルセラさんは、間違いなくルーだ!



ああ、やっぱり的な展開ですみません。ヒロインをチートになるかも。

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