学校へ行こう①
一週間で更新できず!本当に何度見直しても修正箇所がある。
このあたりはまた書き直すかもしれません。
それから二日後。
私は今日から学校に通う。
ユシャさんが町までアルクくんで送ってくれることになっている。
嬉しいけど、ちょっと申し訳ない。
やっぱり、オルガさんの所にいる方がいいのかな···と思ってしまう。
あれから、ユシャさんはいつも通りに接してくれている。
私は···ドキドキすることもあるけど、普通にできている···と思う。
「え~~~っ!学校まで送ってくれないんですか~?」
アルクくんに乗り、ニニカの町の近くに降り町の入り口に来た所で、ユシャさんから一人で学校に行くよう言われた。
「地図もあるし、場所はわかるだろう。」
「でも初日ですよ。いわば入学式みたいなものですよ。保護者が同伴すべきじゃないですか?」
「俺はいつからお前の保護者になったんだ?」
いや、ユシャさんは、この世界での私の保護者だと思うんだけど?
「お前と一緒に歩いてるとろくな事がないからな。それにお前はもうあちらの世界では大人なんだろ?大人の、ヒ・ナ・さん!」
「うっ···」
こういう時は子供扱いはしてくれないのね···
「じゃあな。終わったら蘭香亭で待ってろ。迎えにいってやる」
「は~い」
「いつにも増してだらけた返事だな。頑張ったらご褒美をやるぞ」
「何くれるんですか?」
「それは後のお楽しみだ。」
「ふ~ん···」
「ケチとか言わないのか?」
無視して背を向ける。
「行ってきまーす。」
「はい。いってらっしゃい」
一人でずんずん歩く。
ホントは不安。
高校に入学して一人暮らしを始めた時よりもずっと。少し歩いてから立ち止まり振り返る。
そこにはユシャさんはもう居なかった。アルクくんの姿も見えない。
なんでこんなに不安なんだろう?
小さくため息をついてから、気合を入れようと深呼吸をする。
「よっし!」と声に出した後、再び歩き出す。
町の中に入った。
先日通ったメインストリートを真っ直ぐ突き抜けると行くと学校がある。
収穫期が近いと聞いたけど、確かに人が増えてるような?朝早いのに、道を歩いている人はこの前より多い。
おおっ!
歩いていると、この間は見かけなかった容姿の人達が目に入った。
あれは猫耳?!犬耳?!モフモフしっぽ!?
あちらのガタイのいいお兄さんは、タンクトップから出ている腕や肩が毛に被われている。
多分、獣人と呼ばれる種族の人達だ。
あのちっこくてガッチリした体つき、そして長い髪と髭の人は、ドワーフか?!
こっちの超美形の人は耳が尖っているからエルフではなかろうか?!
キャーキャー!!これぞファンタジーの世界!
声かけたい!触りたい!でも、突然そんなことしたら、きっと怪しい変態だと思われてしまうだろう。
こういうのは、誰かに間に入ってもらった方がいいかもしれない。オルガさんとかオルガさんとかオルガさんとか。顔広そうだもの。
うわぁ···顔がにやけちゃう。これはいい世界だなぁ。
今だけは来られて良かったと思える。
ん?
何か視線を感じる。
こんなに誰かの視線を感じるなんて初めてだ。
誰?どこ?
····キョロキョロしちゃダメだ。さりげなく、さりげなく辺りを見回す。
いた!
人混みの向こう、こちらを見ている人が一人。
銀色のストレートのロングヘア。偏光グラスのようなメガネをかけている黒ずくめの男の人。
メガネをかけていてもかなりの美形とわかる容姿。セ〇ィロスばりの格好良さ。
これで魔法も剣も強ければ、間違いなくラスボスだ!
気づかない振りで、目を逸らし道を急ぐ。
少し歩いてからさりげな~く振り返る。
いない···
私を見ていると思ったのは気のせいか。うん、気のせいだ。今日は帽子も被って髪も隠してるし。
さぁ、学校に行こう。
「君。」
「わっ?!」
さっきの私を見ていた男の人が声をかけてきた。
「君は、この町の人間か?」
低めの艶のあるすごくいい声。近くで見るとホントにかっこいい。
革のロングコート、革のズボンにブーツ、革の手袋はすべて黒で、どこかの組織のお偉いさんのようだ。顔以外の見た目はドS。部下が失敗したら容赦なく制裁を加えるタイプか?
でも何故か怖いとは思わない。
「ちょっといいかな。聞きたいことがあるんだけど···」
「あ、あの、私」
怖くはないけど、何故か私の中で、近づくなって声がする···『エマージェンシー!』
思わず後ずさり。逃げなきゃ、だよね。ど、どうしよう(汗)
明らかに向こうが強そうだし、魔法とか使われたら絶対逃げられないと思う···いやいや、私、足遅いから走っても逃げきれないと思うぞ。まず、すぐ捕まるだろう。絶体絶命のピンチか?!
「おーいヒナ、おせーぞ!早く来いよ」
「おーはようヒナ。早く早く」
「ヒナ、おはよう」
「アベルくん、オリオンくん、シドくん!」
学校の門の所で例の悪ガキ3人組が私を呼んでいる。
どうやら私を待っていてくれたらしい。助かったけど、名前を連呼しないでくれ!
「ごめんなさい!学校にいきますので、失礼します!」
「あ、ちょっと」
急いで3人の方に走っていく。
「どうしたんだよ。あれ」
アベルくんが怪訝そうな顔をする。
「わからない。いきなり声かけられたの」
「ナンパされたの?」
「違うと思うよオリオンくん。」
てか、この世界でもナンパってあるんだ···
「なわけねーだろ?あの人は警備隊の隊長のエルフォンス様だろ?」
「シドくん知ってるの?でも警備隊の偉い人がなんで私に声かけて来たんだろう?」
「さあ?警備のついでじゃねえか?今、収穫期近いから外から色んな種族入ってきてるし」
確かにいろんな種族の人がいた。
私、怪しかったかなぁ?
収穫期には、たまに異種族とのトラブルもあるので、警備隊は本隊からも応援に来たりしているらしい。
でも、隊長が来ているのは、珍しいのだそうだ。
「警備隊はパトロールの途中にニニカに物資補給のためにもよく立ち寄ってるみたいだから、補給の方じゃないかな?応援に隊長が来るわけないし。なあアベル、マール先生って昔、警備隊にいたって聞いたけど、ホントかな?」
「マジかよシド?」
「あのマール先生が?信じられねー!」」
アベルくんとオリオンくんが驚いてる。確かに、あのほわほわした人が警備隊にいたなんて私もすぐには信じられない。
「警備隊って、アドゥーラの中でもエリートというか花形だろう?そんなすごい人には全然見えないけどな?」
おいおい。そこまで言っちゃ失礼でしょ。
でも、アベルくんのいうアドゥーラって、なんか聞いたことはある名前だな。
「アドゥーラって何?」
「アドゥーラはこの国の防衛機関だよ。警備隊はアドゥーラに属してるんだ。エルフォンス様の部隊はドラゴンでパトロールしてるんだぜ。すげえよな」
「シドくん詳しいんだね」
警察とか自衛隊みたいな組織かな?
ちょっと照れくさそうに「えへへ」と頭を掻きながらはにかむシドくん。こういう所は普通の子供だなあ。
「シドの叔父さんのヒースさんはアドゥーラのニニカ支部を任されてるんだ。つまり支部長だ。
ヒースさんはアドゥーラの本部にもいたことがあるんだってよ。エルフォンス隊長とも親しいみたいなんだ」
アベルくんが説明してくれた。そうなんだ。
だったら、マールさんの知り合いなのかも。失礼な生徒だと思われちゃったかな。
マールさん何故辞めちゃったんだろう。そんな職場って入るの難しいだろうに。
「さあ、いこう。ヒナ、事務室まで連れて行ってやるよ」
「あのさ、みんな何年生なの?」
「3人とも中等科の特別生だよ。もうすぐ高等魔法学校に進学するんだぜ。今年この辺りの学校で一発合格したのは俺達だけなんだ」
誇らしそうなアベルくん。何にしてもスゴい事みたいだ。しかし、特別生ってなんだ?
高等何たらに進学って事は中3くらいかな?
「3人ともすごいんだね」
「魔法ができると上の学校だって行きやすいし、将来もいい仕事につけるって、うちの婆ちゃんが言ってた。オレ、将来は警備隊に入りたいんだよな。」
「シドくんは身近に警備隊に叔父さんがいるし、警備隊って男の子の憧れの職業なんだね。」
「僕は医者。この町にはユシャ先生以外、医療に詳しい人は少ないからね」
「オリオンくんはお医者さんかぁ、すごいなあ。アベルくんは?」
「俺は最終的には元老院議員かな?おやじのあとなんか絶対継がねえ!」
おお、かなりの野心家かも。
確か、アベルくんちって氷華楼とか言う妓楼だって言ってたな。
「あ~っ!やべー!俺達が遅刻するぞ。急げ!」
カランカランと鐘の音がなった。予鈴というやつらしい。
アベルくんの言葉に慌てて校内に走り込んだ。
***********
「隊長どこいってたんですか?急にいなくなるんだから···」
「悪い、ちょっと不思議なものを見たんでな。女の子なんだが···」
「え?ナンパですか?」
「どうしてそうなる···」
「隊長が女の子を気にするって珍しいっすね。」
「いやオーラが綺麗で、それに見たことのあるような色が混じっていたような···」
「なんですか?」
「いや、なんでもない。サライ、レト立ち寄り所に帰るぞ。」
「はい!」「はい!」
俺のサングラスは自分の魔力を抑える働きがある。つまり俺の目は見え過ぎる。
だから、サングラス越しであんなオーラが見えるのは珍しい。何か不思議な感じのする娘だった···
(ニニカのアドゥーラ支部、警備隊立寄所)
「お帰りなさいエルフォンス隊長。ユシャ様ですが、ご不在のようですが、どう致しますか?」
「留守なら仕方ない。ヒース、手間をかけたな。ユシャには、私からまた連絡を入れる事にする」
「手間などと、とんでもありません。いつでも何でもお申し付け下さい。ドラゴンの準備はできています。」
「いつもすまんな。世話をかけた。では出発する。サライ、レト。用意はいいか?」
「「はい!」」
警備隊は大陸周辺をいくつかの地区に分けて何隊かで、定期的にパトロールしている。
飛空警備隊は飛べるタイプのドラゴンに乗ってパトロールする。大陸に点在する立ち寄り所ではドラゴンの世話もしている。ドラゴンは陸で言う馬代わりというところだ。
警備隊のドラゴンは主に中型で、スピードが早く体力のある種類の物だ。繁殖も警備隊が管理している。
「この近くでビオーラクラの目撃報告があった。注意していけ」
「最近ですよね。ビオーラクラがこの大陸近くで目撃されだしたのは···」
「厄介だな。どこかの浮き島か大陸の裏側に潜んでいるかもしれないと言う話だ。被害が出てからでは遅い。」
「あいつ、水属性のモンスターなのに、水がなくて大丈夫なんでしょうか?」
「サライもそう思うか?俺も信じられないんだ。隊長、どう思いますか?」
「わからん」
「····」(隊長、部下の手前それはどうなんですか····せめて、見解位言って下さい)
「····」(即答?!いいのか?そんなんで)
「俺にわかるわけないだろ。ああいう骨のない生き物は嫌いだ。俺に聞くな」
「た、隊長····」
「クッ···クックッ···隊長ああいうの嫌いだから」
「レト、うるさい。いくぞ!」
軟体動物が苦手な隊長だった。
超美形でクールな外見と中身は別物らしい。この二人の前だからというのもあるらしいのだが·····
************
登校初日なので、事務室までアベル君達に案内がてら送ってもらった。
校舎は木造建てで木の良い匂いがする。
見た目は大きなログハウス、この町の建物は基本、木造だ。(レンガや石の部分もあるらしい)窓は透明なガラス(多分)ニニカの町の建物を見ただけでは、文明の高さは私では正確に判断できない。でも、文化レベルがメチャメチャ低いわけでもなさそうだ。
事務室は玄関のすぐ横だった。中には男の人が1人と女の人が2人いた。
担任の先生は先に教室に行っているということで、ライムさんという女の人(見た目30歳くらい)が教室まで案内してくれた。
男の人は事務長兼用務員のセガさん。ライムさんは、もう一人の女の人チェルシーさんと事務と救護、給食と、収穫期の託児を担当しているのだそうだ。託児所まであるのか。
私の入るクラスは初等科の1~3年の合同クラスで2つあるクラスの内の一つ。1クラス30人位。
ライムさんによると収穫期が近いので休んでいる人が多いため、今日は半分くらいしかきていないらしい。
子供でも貴重な労働力ってことなんだろうか。
教室には、生徒が10人位いた。教壇にはマールさんが立っている。担任はマールさんなんだ。
「はーい。皆さん注目!今日からこのクラスに入るヒナちゃんですよ。みんな仲良くしてね」
「はーい」と言う良いお返事。
普通の小学校の転校生紹介とおんなじだ。
「ああーーーーーっ!!」
な、何!?
いきなり立ち上がって指差しで叫び声をあげたのは···
「あーーっ!」
私も同じ様に指差し、声を上げてしまった。
先日、蘭香亭に来ていたピンクの髪の女の子だ。
「あら~マイラちゃんと知り合い?」
「はぁ···まぁ···知り合いって言うか···」
「顔見知りって言う程度ですけどね」
彼女は私を煩そうに見ながら座った。名前マイラさんていうんだ。
若いのに妓楼で働きながら学校に来てるなんて···勤労学生なのか。エラいんだな。
そう言えば、大人になってからも勉強するため学校に来てる人もいるってノル先生が言ってたっけな。
「じゃ、ヒナちゃん席についてね。空いてる所ならどこでもいいから」
私は後ろの方の空いている席についた。
隣には小学校高学年位に見える可愛い女の子が座っている。座る時、会釈したら笑い返してくれた。
「私は、ネリア25歳。よろしくね。あなたは?」
えっ?!私より年上?
「こちらこそ、よろしくお願いします。ヒナです。えっと18歳で···」
「魔法で大人になった転入生ってあなたなのね。よろしくヒナさん。頑張ってね。」
「あ、ありがとう」
この世界の人の成長の仕方って····てか、私、魔法で姿が大人になったって設定なのね。
普通の人には異世界人だとはいえないよね。
今はホームルームのような時間だったらしく、連絡事項などが終わると、慌ただしく席を立つ。
その人の勉強のすすみ具合によって教室が違うため、それぞれの教室に移動する必要がある。ネリアさんとは一旦お別れ。
マールさんが作ってくれたカリキュラムと学校内の地図を見ながら教室を移動する。
う~~~む。指定された教室に入ると、殆どの子が見た目がかなり幼い。
10歳くらいか?いや、もっと上なのか?
初等科の一年生、つまり学校に入ってあまり間がない人達が主なようだ。
でも何人かは、見た目大きい人もいる。単位制授業だから学年とか年齢はバラバラなのは当たり前なんだろうね。
一人の子と目が合った。
「こんにちわ。私はミーク、よろしくね」
目が合って、声をかけてくれたのは猫耳の獣人の女の子だった。
マジか!獣人の女の子がいるなんて、大歓喜!
読んでいただきありがとうございます。